―――――――気が付くと、ツギハギだらけの部屋だった。―――――――カーテンがゆらゆらとゆれてる。―――――――外はとてもいい天気だった。「おはよう少年。…確か、錨シンジ君だったね。」「…おはようございます。錨、じゃなくて碇です。」どこかの部屋で目が醒めた僕に、眼鏡をかけたお姉さんが逢いに来た。燈色のアクセサリーを身につけたそのお姉さんは、優しい笑顔を浮かべている。「そうそう、そうだったわね。ごめんなさいね。」お姉さんはそう言うと、掛けていた眼鏡をゆっくりと外す。「…貴様はどこまで覚えている?」突然、お姉さんの目つきと口調が変わった。温厚そうな先ほどの表情とは変わって、威圧的、とも思える口調。僕はその変貌振りに思わず驚いて、脅えてしまった。バタンッ!「…姉貴、あんたこんなイタイケな少年を驚かせてどうするんだっ!」「…お前がこいつを持ち込んだんだろうが。助けてやったのは私だ。私の好きにさせて貰う。」突然、部屋のドアが開いたかと思ったら、紅い髪の女の人が怒鳴り込んできた。その後ろには、僕より少し年上の男の子がいる。「先生、燈子さんを怒っちゃダメですよ。…巻き込んだのは先生が」「ほぉ~、志貴は私より燈子のほうを支持するのぉ」紅い髪の女の人―――青子って呼ばれてたから青子さんだろう―――は、後ろの少年を蛇のように睨む。髪の毛が蛇のようにうねっていた。その様子を、呆れた顔で見ている眼鏡のお姉さん――多分、燈子さん――は、何事も無かったかのように眼鏡をかけなおした。「うふふ、ごめんなさいね。ちょっと驚かせちゃったカナ?」また、口調が変わった。また、僕は驚いてしまった。「それで、君はどこまで覚えているのかな? できればお姉さんに教えてくれないかな?」燈子さんは、温厚そうな口調と笑顔で、僕に語りかける。その言葉を聞いて、少しずつ、僕は思い出した。確か、母さんが『じっけん』でいなくなって、父さんが『しんせき』の所に僕を預ける事にして、僕はそのおじさんの家に向かっている途中で………「……すいません、おじさんの家まで行く途中だったんですけど…。」僕の言葉に、部屋でぎゃぁぎゃぁ騒いでいた青子さんと少年、燈子さんはピタリと止まった。「…まずいわね、もしかしたら捜索願とか出てるかも……」「…その状況にしたのは先生でしょう……」「二人とも、今はそんな事言っている場合じゃないわよ?」青子さんと少年の言葉に、燈子さんは温厚そうな笑顔を湛えながら、明らかに怒っていた。