<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.36981の一覧
[0] 【機動戦士ガンダムSEED】もう一人のSEED【改訂】【オリ主TS転生】[menou](2013/06/27 11:51)
[1] PRELUDE PHASE[menou](2013/03/13 20:07)
[2] PHASE 00 「コズミック・イラ」[menou](2013/03/16 22:26)
[3] PHASE 01 「リナの初陣」 【大幅改訂】[menou](2013/06/27 11:50)
[4] PHASE 02 「ジャンクション」[menou](2013/06/27 17:13)
[5] PHASE 03 「伝説の遺産」[menou](2013/07/21 18:29)
[6] PHASE 04 「崩壊の大地」[menou](2013/07/21 19:14)
[7] PHASE 05 「決意と苦悩」[menou](2013/08/25 16:23)
[8] PHASE 06 「合わさる意志」[menou](2013/08/17 16:11)
[9] PHASE 07 「ターニング・ポイント」[menou](2013/08/29 18:01)
[10] PHASE 08 「つがい鷹」[menou](2013/09/11 10:26)
[11] PHASE 09 「モビル・スーツ」[menou](2013/09/16 14:40)
[12] PHASE 10 「流星群」[menou](2013/09/23 23:47)
[13] PHASE 11 「眠れない夜」[menou](2013/10/01 16:10)
[14] PHASE 12 「智将ハルバートン」[menou](2013/10/06 18:09)
[15] PHASE 13 「大気圏突入」[menou](2013/10/17 22:13)
[16] PHASE 14 「微笑み」[menou](2013/10/22 23:47)
[17] PHASE 15 「少年達の向く先」[menou](2013/10/27 13:50)
[18] PHASE 16 「燃える砂塵」[menou](2013/11/04 22:06)
[19] PHASE 17 「SEED」[menou](2013/11/17 17:21)
[20] PHASE 18 「炎の後で」[menou](2013/12/15 11:40)
[21] PHASE 19 「虎の住処」[menou](2013/12/31 20:04)
[22] PHASE 20 「砂漠の虎」[menou](2014/01/13 03:23)
[23] PHASE 21 「コーディネイト」[menou](2014/01/29 22:23)
[24] PHASE 22 「前門の虎」[menou](2014/02/11 21:19)
[25] PHASE 23 「焦熱回廊」[menou](2014/02/15 14:13)
[26] PHASE 24 「熱砂の邂逅」[menou](2014/03/09 15:59)
[27] PHASE 25 「砂の墓標を踏み」[menou](2014/03/13 20:47)
[28] PHASE 26 「君達の明日のために」[menou](2014/03/29 21:56)
[29] PHASE 27 「ビクトリアに舞い降りる」[menou](2014/04/20 13:25)
[30] PHASE 28 「リナとライザ」[menou](2014/04/27 19:42)
[31] PHASE 29 「ビクトリア攻防戦」[menou](2014/05/05 22:04)
[32] PHASE 30 「駆け抜ける嵐」[menou](2014/05/11 09:12)
[33] PHASE 31 「狂気の刃」[menou](2014/06/01 13:53)
[34] PHASE 32 「二人の青春」[menou](2014/06/14 20:02)
[35] PHASE 33 「目覚め」[menou](2014/06/30 21:43)
[36] PHASE 34 「別離」[menou](2015/04/20 23:49)
[37] PHASE 35 「少女が見た流星」[menou](2015/09/16 14:36)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[36981] PHASE 04 「崩壊の大地」
Name: menou◆6932945b ID:bead9296 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/07/21 19:14
「コロニー全域に電波干渉! Nジャマー数値増大!」
「なんだと!」

物資の搬入と部隊の再編成の最中の警報。アークエンジェルのブリッジで、オペレーターが悲鳴に近い声を挙げた。
ついに、クルーゼ隊が再攻撃を仕掛けてきたのだ。作業中に、なんて間の悪い。
ブリッジに詰めていたクルーが艦内警報を鳴らし、その警報はリナがいる格納庫にも響いた。

「ほらぁ! お前らがボサッとしてるから、敵さんが待ちくたびれちまっただろうが!
搬入してないコンテナは諦めろ! ハッチ閉めるぞぉ!」

マードック軍曹の怒鳴り声が響き、整備科と補給科のクルー達の動きが慌しくなる。
公園の臨時物資集積場から重機が戻ってきて、慌てた様子で格納庫に戻ってきて、最後のクルーが戻った直後に正面ハッチが閉じられていく。

「ついに来たか……っ。連続で戦ってるんだから、休んでればいいのに!」

無理なことをぼやきながらも、整備用のコンソールパネルを閉じて、キーボードを格納する。
コアファイターのコクピットに乗り込もうとして、ハンガーのストライクに視線を向ける。自分がアレを使えたならいいのに。
残念ながら、自分には使えない。試してはいないが、おそらくは無理だ。
試してみたいとは思うが、そうホイホイと専任パイロットでもない人間が使って良い代物でもない。
もちろん、あのキラが専任パイロットというわけでもないが……キラは「確実に動かせる」のだ。それを知ってる分、歯がゆく感じた。

『総員第一種戦闘配置。繰り返す。総員第一種戦闘配置』

ブリッジのクルーによる艦内放送が流れる。誰の声なのかは、クルーの名前なんてほとんど知らないから分からない。

「お嬢ちゃん! 出るのか!?」

小さな身体をコアファイターのシートに納めたとき、マードックが声をかけてくる。
まるでそれで出るのは良くないとでも言いたげな語調だ。気にすることなく、各部センサーを立ち上げていく。

「今出撃できるのは、この機体だけです! 時間稼ぎくらいはできます!」
「やめとけ! 落とされに行くようなもんだぞ!」
「黙って沈められるよりはマシですよ! トラックとコンテナをどけてください! エンジンに火を入れますから、下がって!」

マードックら整備員が離れたのを確認してからジェネレーターを点火。小さな機体が唸りをあげ、微震動を起こしてパワーを充填していく。
シートの隣に置いていたヘルメットを被り、バイザーを下ろそうとスイッチに手を伸ばしたところで、まるで見ていたかのような放送が釘を差してきた。

『MAの発進は許可せず。出撃体勢を維持し、待機せよ』
「えぇぇ!?」

スピーカーがある(であろう)天井を見上げて絶叫した。
マードックは、やれやれという表情で頭を掻きながらリナを見上げる。見るからにショックを受けているが、そんなに出撃したかったのだろうかと内心首を捻る。
ザフトのMSの恐ろしさを知っていたら、そこはホッとするところだ。

「だから、そのMAだけじゃ無理なんだって」

あきれ気味のマードックを、きっ、と睨み付けると視線を泳がせた。

(お前に、出撃したくてもできないパイロットの気持ちが分かるんか、あぁん!?)
「~~~何考えてんだ、あの魔乳!」
「……え、今なんて言った?」

リナが思いも寄らぬことを口走ったので、マードックは耳を疑った。
まさかこんな年端も行かない(見た目が)少女の口から、そんな荒っぽい言葉が出てくるとは思わなかったのだ。
マードックが呆けている間に、リナは小さな体をコアファイターのコクピットから飛び出した。

「お、おい! 出撃体勢のまま待機って――」

マードックの制止に耳を貸さず、通りすがりの整備兵を押しのけてブリッジに飛んでいく。

(あの魔乳、今度こそそのふざけた乳をぶち揉んでやる、この○○○め!)



- - - - - - -



「ラミアス大尉は!?」
「居住区の子供達と話していますが…中尉、待機じゃ――」
「ありがとう!」

走りながら、すれ違ったクルーにマリューの居場所を聞いて弾丸のように艦内を駆けていくリナ。
居住区に到着すると、マリューとキラら学生達が、なにやらもめているのが見えた。

「――マリュー大尉!」
「シエル中尉!? 待機のはずじゃなかったの?」
「君は、確かリナさん……?」

マリューとキラ、それぞれの反応をする。共通しているのは、二人の意外そうな表情。
この二人の組み合わせはなんだ? そう思ったが、容易に想像できる。唯一あのストライクを動かせる彼に、出撃するよう説得しているところなのだろう。
まあ彼にも出てもらわないといけないんだけど、こっちだってせっかくの戦果を出せるチャンスを潰されそうなんだ。

君とか、年下のキラに言われちゃったけど、今は気にしている場合じゃない。
キラを押しのけるようにマリューの前に出る。くっ、この狭い通路だと威圧感があるな……特に胸の。

「マリュー大尉、私はすぐにでも出られます! 許可いただけないのですか?」
「え、ええ……まだ出るのは早いわ。もう少し待って。あとで指令を出すから」

なんつー灰色なこと言いやがるんだこの魔乳。日本人か貴様は。
マリューからは上官というカリスマが無い。技術将校だからしょうがないだろうが、それはそれでありがたい。強気に出よう。
小さな肩を思い切りいからせ、目を吊り上げて顔を近づけた。できるだけ威嚇!

「こちらのほうが手駒が少ないのに、出し惜しみしてる場合じゃないですよ!」
「…………そう……ねぇ」

予想通り、マリューが怯み始めた。なんか半笑いだし、顔赤いけど酒でも飲んでたんだろうか。

(まあ酒好きそうな声だし、飲んでても不自然じゃないけどな)

マリューが怯んでいる間に、畳み掛けるように早口でまくし立てる。

「小型戦闘機でも、牽制くらいはできます。それに、この少年はMSを動かせるとはいえ軍事行動に関しては素人なんですから、将校クラスの軍人が間近で監督する必要があります。違いますか!?」
「……そうね、その通り……だわ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 僕はまだ、あのMSに乗って戦うとは……」

まるでキラの出撃が決まっていたかのようなリナの口ぶりに、キラが反論する。
まだキラの説得の最中だったようだ。余計な時に割って入ってしまったかもしれない。
振り返って、キラの紫色の瞳を見上げる。キラはそんなに背が高い方でもないけど、40cm近い身長差がある。ぐぬぬ。
身長差で悔しかろうが、キラには是非乗ってもらわねばならない。ここは自分で説得するか……。

「君は民間人だからね。確かに、敵兵と戦う義務は無い。君のほうが筋は通っている」
「だったら……僕にあんなものに乗れなんて言うのは、やめてくれ」
(なんでタメ口なんだコラ。こっちは二十三歳の大人のレィディなんだぞ?)

あくまでキラは、褒められるのを嫌そうに視線を逸らして俯きながら、拒絶してくる。
生意気な口を利いてくるが、ここはあえて目をつぶろう。細かいことを気にしてる場合じゃないしな。
そんな彼を腕組みしながら、半眼で見た。

「ふん。確かにボク達は君達学生に頼るような、情けない大人だ。軽蔑してもらってもかまわない」
「おと……な……?」

なにやら口を挟んできたが、構うものか。

「でも君にしかできないことがある。
君には君の友達を守るための力があるじゃないか。それを振るわずに、友達を見殺しにする気かい?」
「み、皆を人質に、脅迫するつもりか?」
「どうとられようと、それが事実だよ。キラ君。
君達は艦を降りることはできず、その艦は今まさに撃沈の危機に陥っている。撃沈は君達の死も意味する。
けれど、君はそれを防ぐ力を持っている。ボクにも、マリュー大尉にも、この艦のクルーの誰にも持っていない力だ」
「だからって、僕を利用するのか!」

その反論に、頭を振って取り消した。

(まったく極端な奴め、最後まで話を聞け)
「その力をボク達大人を守るためじゃなく、友達を守るために振るうと思えば……戦うのも悪くないと思うよ?
友達のために力を振るえるのなら、これほど幸せなことは無いとボクは思う。ボクにはその力は無いからね」

格納庫に向かうために背を向ける。長い黒髪が、さらりと広がった。

「それでもボクは戦うよ。君と、君の友達を守るために」

振り返ることなく告げられた静かな言葉には、決意が宿っていた。
リナ自身、死ぬつもりも無ければ友達を守るつもりで言ったわけではない。結果からいえばそうなるだろうが、戦果を挙げてガンダムのパイロットに選抜されるための決意表明だったに過ぎない。
だがキラは、額面どおりにその言葉を受け止め、戦わない、と連呼する自分と対比する。
リナの背中は、あまりに小さく、細かった。プライマリースクールで遊んでいるような子供が、戦うと言った。

(こんな小さな子が戦う!? あの子だって怖いんだ! でも戦うのか…皆を守るために。
僕はこんな小さな子に守られるためにこの軍艦に来たのか? ……違うッ!!)

キラのプライドが、仁の心が燃え上がるとき、口は勝手に言葉を吐いていた。

「……待って」

キラの低い、力の篭った呟きがリナの背中に浴びせられた。マリューもキラに、驚いて振り向く。
利用されるからじゃない。いや、利用されるとしても。戦える自分が、女の子だけを戦わせて済ませていいはずがない。
自分を鼓舞しながら真っ直ぐ二人を見据え、胸の前で拳を作って宣言した。

「僕も戦う。僕しか扱えないんだ……あのモビルスーツは!」


- - - - - - -


アークエンジェルが発進する。艦が一瞬揺れて、ふわりと浮揚感。この感覚に慣れないリナは、コアファイターのコクピットで少し戸惑った。
同艦の両舷の格納庫では、ストライクがソードストライカーに換装作業が行われ、もう片方の格納庫がコアファイターが発進位置についていた。

〔ソードストライカー? 剣か……今度はあんなことはないよな〕
「大丈夫だよ、キラ君! 思いっきりぶん回しちゃって!」
〔う、うん! わかった!〕

(うんうん、キラ君、君は本当にいい子だよ〕

既にリナは保護者面であった。リナは精神年齢は十六+二十三歳だから、仕方が無い部分もあるかもしれないが。
実際、自分は先ほどの宣言どおり、キラの監督役を担うために出撃する。
あくまで近接支援であって、打撃力として勘定されていない。有効な武器を持っていないのだから、当然なのだけれど。

〔ヤマト、シエル中尉。敵は工業用ゲート、ならびにタンネンバウム地区から侵入してきています。
ストライクは前衛、シエル中尉はストライクに対する前線指揮と援護を頼みます〕
「了解」

急遽オペレーターとして選抜されたナタルが、サブモニターで(地球連合軍の暗号通信と接続できたのは、ひとえに整備兵のがんばりのおかげだ)指示してくる。

(しかし、ストライクに前線指揮か。士官学校のテキストに、MSと戦闘機の連携なんてマニュアル無かったよな)

悩みながらもジェネレーターを起動させ、各種電子装備に命を吹き込む。操縦桿を握り、操縦系統のテスト。

「シエル機、ジェネレーター出力安定、各部センサーオールグリーン、発進シークェンス・ラストフェイズ」
〔了解。シエル機、発進。……ご武運を〕
〔りょーかい! リナ・シエル、行きます!〕

カタパルトがコアファイターのボディを押し出し、ヘリオポリスの空へと射出される。

〔続いてストライク、発進せよ〕
〔キラ・ヤマト。行きます!〕

通信機から。ナタルの号令の後に、自分を真似たような掛け声が聞こえた。
キャノピーの両側に後付けで取り付けられたバックミラーを見ると、アークエンジェルの甲板ハッチから飛び立つ光点が見えた。ストライクか。
角度的に、そのストライクの出撃する雄姿を見れないのは、リナにとって残念ではあった。

(さて……ストライクの本格的な初戦闘、どんなものか見せてもらおうかな)

まあアムロも初出撃は苦戦してたし、無双とまではいかないだろうが。性能を知ることができるチャンスだ。
気を取り直し、すぐにレバーを引き起こして上空に機首を向ける。見つけた。光点が四つ!

(エレメント(二機編隊)が二つ…離れて機動を行っているということは、片方はAA狙いか!)

姑息な真似を。
だが、四機と同時に戦うことになっていたら落とされていたことだろう。かえって分散してくれてよかったというもの。
リナは手にじっとりと浮かぶ汗を握りつぶすように、レバーを握る手に力を込めた。
ここはもう、キラに全面的に期待するしかない。その歯がゆさに、思わず舌打ちが零れる。


クルーゼ隊の攻撃部隊は、ヘリオポリス内部に突入すると、アークエンジェルの頭をとって突撃する軌道をとっていた。
戦闘隊長であるミゲルは、艦載機であるストライクと戦艦のアークエンジェル、この二つを分断する戦術を決定する。

「オロールとマシューは戦艦を! アスラン! 無理矢理付いてきた根性、見せてもらうぞ!」
「ああ」

アスランは気のない返事をするだけだった。ミゲルの言葉など、耳に入ってはいない。
親友の、キラ・ヤマト。
彼のことが心配で無断で出撃したのだから、それ以外など眼中にはなかった。そして、その横を飛ぶ小型の戦闘機のことも。

「そーら、落ちろぉ!」

ミゲルは撃つ前から勝利を確信した声を挙げ、ストライクを照準に入れた途端、何の躊躇も無く重粒子砲を撃つ。
収束力が弱いため、緩い放射状に伸びる重粒子の砲撃をキラは難なくかわすが、シャフトを支える支柱に命中、溶解し切断!
支柱が砂煙を挙げ、建造物を押し潰して地上に倒れこむ。その惨状に、ちっ、と舌打ちしてジンを睨むリナ。

「やっぱりお構いなしか!」

ミゲル機はリナを無視し、執拗にストライクに照準を定めて乱射している。
しかしそのたびにコロニーの地上が焼かれていく。コロニーの中ということを忘れたかのような戦闘だ。
いや、気にしていないという方が正解か。まだ避難民がシェルターに隠れているというのに、危険な奴だ。
なんとかしてあのジンを止めないと!

〔コロニーに当てるわけにはいかない! どうすればいいんだ……!〕
「距離をとっていたら、撃ちまくってくる! キラ君、距離を詰めろ!」
〔でも、あんな大きな銃で狙われてたら近づけない!〕
「そのためのボクだ! 援護する!」

レバーを引き、スロットルを開ける。マシンの唸りが、スロットルレバーの押し込みに比例して急激に加速!
甲高い音から激しく燃え上がる音に変わり、思わぬパワーに、シートが身体に押し付けられる。

(くぅっ……!?)

コアファイターのスピードを侮っていた。速度計は、既にマッハ3を超えた。
すぐさまスロットルを戻し、旋回してジンとストライクの対峙する空間の近くを飛び回る。
パワーはメビウスの比じゃない。スロットルを開けるのが怖くなるくらいだ。コロニー内では五分の一で充分だろう。

そうしてコアファイターのパワーに翻弄されそうになりながら、機首をストライクとジンに向ける。
相変わらず、まるで戦闘機の巴戦のようにぐるぐると回りながら撃たれたり斬りにいったりを繰り返している。
そのたびにコロニーが無残に破壊され、コロニーの内壁がむき出しになっていく。一部溶解して、かなり脆くなっているとわかる。
これ以上てこずっていたら、コロニーが崩壊する!

「キラ君! ボクが合図したら上昇をかけろ!」
〔!? わ、わかった!〕

キラとの連携を意識してタイミングを計る。
冷静に見ていると、ストライクと対峙しているミゲル機の動きの癖がわかってくる。
重粒子砲を撃つ直前は、一瞬減速して止まり、撃った直後はやや後ろにずれて硬直時間がある。機体と重粒子砲の威力のバランスが良くないのだろう。
ならば、狙う隙は充分にある。
リナはぺろりと唇を舐めて、集中力を研ぎ澄ませる。火器管制をモード2へ。30mm機銃のターゲットを表示させ、ミゲル機を見据えた。

ミゲル機が撃つ、キラがかわす。キラが斬る……かわされる……。
最初は左上後ろに避けた。次はストライクの上を通りすぎて回りこむ。

ストライクの背中とジンの姿が重なる。


――!!


頭の中で、閃くものがあった。

「キラ君、今だ!」
〔!!〕

リナの叫びのコンマ数秒の後、ミゲル機が減速をかけた。しかしそれはほんの刹那だ。
普通の人間が見ても、それは知覚できないほど。だが、その瞬間が来ることが「わかった」。
その刹那の隙間を狙い、キラが合図のとおり上昇。リナはその真下をくぐるように突撃!
ミゲル機が重粒子砲の銃口をストライクに向けて上を向いたそのとき、ジンの腹がむき出しになった。
ミゲルから見ると、ストライクの背中から突然コアファイターが現れたように見えただろう。そこへ容赦なく三十mm機関砲弾を浴びせる!
ジンの機体にいくつもの火花が咲き乱れ、白煙を挙げ、ジンのボディがぐらついた。

「なにいぃぃ!?」
「うわあああああ!!」

予想外の出来事に、ミゲルは対応できないでいた。半ばパニックに陥り、操縦桿から手を離してしまう。
そこへキラが雄叫びを挙げながら肉薄。シュベルトゲベールを振り上げ、両断!
ミゲルはジンごとビームの刃によって真っ二つにされ、悲鳴を挙げる暇も無いままジンと共に爆炎の中に姿を消した。

「ミゲルゥゥゥ!!」

絶叫するアスラン。思わぬところでの戦友の死に、目を剥いて爆炎を眺めることしかできない。
まさか、黄昏の魔弾と呼ばれた赤服候補がこんなところで撃墜されるなんて。あまりにあっけなさすぎる。
あのGと戦闘機がやった。G――ストライクのパイロットは……本当に、あの優しかったキラ・ヤマトなのか?

〔アスラン! どこに居るんだ、アスラン!〕

呆然としていると、味方からの援護要請の通信が入る。しかし、アスランはキラと対峙していてそれどころではなかった。
キラも、アスランが現れて当惑している。

(皆が危ない! でも、目の前にイージスがいる……君なのか、アスラン!?)

その二機の対峙に、リナは割り込むことができず、イージスを視認できても機首を向ける気にはなれなかった。
フェイズシフト装甲には実体弾が通用しない。コアファイターでは流石に手に余る――というより、相手にもならない。
歯がゆい気持ちで操縦桿を握り、ぐるりとコアファイターの機首をめぐらせた。

(あのイージスガンダムに乗ってるのはアスラン・ザラ、だよな。そうか、この時は敵だったな。
下手に割り込んでも、逆にキラの邪魔になりそうだ。ジンを狙うか!)
「キラ君! ボクはアークエンジェルの護衛に向かう! 同じG兵器相手は辛いかもしれないけど、持ち応えるんだよ!」
〔……〕

キラからの応答は無い。アスランとどういう関係だったのかは推し量りかねるが、決して悪い仲だったわけではあるまい。
アスランのことはキラに任せよう。まさかガチの殺し合いには発展はすまい。
そう決まると、アークエンジェルのほうに機首を向けて、アークエンジェルの周りを飛び回っているジンに向かってコアファイターを直進させた。

「くそっ!」

一機のジンが、今まさにアークエンジェルにミサイルを放とうとしている。
アークエンジェルはそのサイズからいってもかなりの機動性がある。しかし、あの角度からでは避けきれまい。
まだあのジンの隙を見出していないが、ジンにターゲットを合わさったらすぐさま曳光弾をばらまいていく。
集束率の低い火線がジンに浴びせられ、いくつかが当たったようでジンのボディに火花が散る。

「……!? な、なんだ、戦闘機か! 脅かしやがって!」

ジンのパイロット、マシューは被弾の音を聞いて肝を冷やしたが、それがただの戦闘機からの攻撃だということを知ると、すぐに照準をアークエンジェルからコアファイターに向きなおす。
小型の標的だということを忘れて、両腕の外側に装着された大型ミサイル、キャニスを発射した。
白煙を曳いて、コアファイターに向かって一直線に飛んでいくキャニス。
リナはすぐさまそれに反応し、微妙なペダル捌きでラダーを駆使、くるりとシザー機動で回避!

「さすがにそんな鈍重なミサイルに――しまった!」

回避したことに得意げになっていたが、すぐさま次に起こるであろう惨事を予想して、思わず後ろを振り向いた。
キャニスが一直線にシャフトに吸い込まれ、爆発。シャフトが激震し、今にも崩れそうに全体をたわませている。
あんなに巨大な構造物も、まるで紐のように揺れる。まるであの共振現象によって揺れたタコマナローズ橋のように。
あと一撃なんらかの攻撃を受けたら、もたないかもしれない――!

「これ以上やらせない!」

そう叫ぶものの、コアファイターではジンに決定的な打撃を与えることはできない。
なら、強力な火力を持つアークエンジェルに任せるしかないのだが、果たしてアークエンジェルは当ててくれるだろうか?
再び機首をジンに向けて三十mm機関砲弾をばらまくが、味方の援護なしには当たるはずもなかった。

悠々とかわされ、脚部ミサイル、パルデュスを発射してくる。
これも同じく誘導弾だが、Nジャマー数値が高く、かつ多くの障害物や熱源があるこのヘリオポリス内ならかわせる!
ミサイル警報がビービーとやかましく鳴り響くのを無視して、地面に向かって突撃。旋回できるぎりぎりを狙って操縦桿を思い切り引いて上昇!
ミサイルはコアファイターを追いきれず、地面で炸裂。
スロットルを一気に引いて減速、操縦桿を引いて逆さまになりながらジンに振り返り、空中で静止。
同時に小型ミサイルを、ロックオンもそこそこにジンに向けて撃ち込んだ!

「なっ……」

その機動を初めて見たマシューは、驚きに固まる。見とれてしまったのだ。
いくつもの地球軍の戦闘機を見てきたが、あの機動を見たことがなかった。
それも当然、あの空中機動は実戦向きの機動ではなく、ただの曲芸だ。普通の兵士なら、強敵であるジンが目の前にいて実践できるほど無謀ではなかった。
だが「ハッタリ」は効いた。マシューは今の謎の機動に身体が硬直した。
リナが放った小型ミサイルの先端がジンのモニター一杯に映り――ジンの頭部が大破消滅。
爆炎は肩も消し飛ばし、キャニスが暴発、あさっての方向へ飛翔していく。

「か、勝手に飛んでいくな!」

リナが悲鳴を挙げる。すぐさまキャニスに照準を向けようとするが、標的が細かいうえに、集弾率の低い内蔵型バルカン砲では、キャニスを撃墜するのは不可能に思えた。
コロニーのあちこちで炸裂するキャニス。空中から見てもわかるほどにコロニーが揺れて、今にも崩壊しそうだ。

「あ、ああ!」

まるで空き缶の中に入れられて、バットで殴られたような爆音と衝撃が、小さなボディのコアファイターを襲い、シートに座っていたリナ自身も凄まじい衝撃を受ける。
コアファイターが損傷を受けたと報告し、警報を鳴らしてくる。コンソールパネルに次々と赤い表示が点灯。幸い自動消火装置が作動したが、失速状態に陥った。
ボーっとしている間に、ジンが放ったパルデュスの至近爆発をもらった! 落ちる!?

「う、くっ……! まだ落ちるな、このっ!」

掴む風を見失った主翼に風を見つけさせるため、操縦桿とラダーペダルを引っ切り無しに操作する。
煙に包まれながらも、機体はエアインテークから爆風を吸ってしまったからか、地面に向かっていることはわかる。
空力制御での立て直しが不可能だと判断すると、姿勢制御用のスラスターを駆使して体勢を強制的に立て直し、操縦桿を引いて再び戦闘機動に戻る。

「なんだと!? あれで落ちないのか!?」

爆炎の中から、ほとんど無傷で立ち直るコアファイター。それを目撃したオロールとマシューは驚愕に目を見開いた。
直撃でなかったにしろ、あの至近距離で爆発を受けて、
オロール機のミサイルをかわしたあの機動性とパワー。比較的小型の弾頭とはいえ、パルデュスの直撃にも耐え切った装甲。
あれがメビウスなら、粉々に粉砕していたはずだ。まさか、あれもナチュラルの新兵器なのか!?

「ありえない! ありえ――ぐわああぁぁ!!」
「……!!」

もう一撃をコアファイターに加えようと真っ直ぐ飛翔したところを、ムウが放ったアークエンジェルのゴットフリートによって狙撃され、オロールはジンと共に消滅した。

しかしそのゴットフリートの向けられた先がいけなかった。
ゴットフリートの余波と輻射熱によって、シャフトの崩壊が決定的になる。
ミサイルの爆風によって脆くなっていたシャフトは連鎖的に崩壊し、コロニーを形成しているブロックが決壊。
人が住んでいた大地が裂け、黒々とした虚無の空間が覗く。それはまるで世界の終わりのような光景。
真空の世界へ空気が逃げて行き、まるでコップが割れて水が飛び散るように、暴風が吹き荒れる! 

「わああああ! やりやがったあああああ!!」

その世界が崩壊するような絶望的な風景に本能的な恐怖を覚え、思わず絶叫する。
その黒い隙間から逃げるようにコアファイターのバーニアから火を吹かせるが、それでも機体はゆっくりと後ろに流れていく。
アークエンジェルやストライクはおろか、コアファイターの推力をもってしてもその気流に逆らうことができずに流れてしまう。
スロットルを全開にしてもこのザマだ。ストライクの姿は既に見失っているし、アークエンジェルの白い巨体も宇宙に放り出された。
まずい、このままだとアークエンジェルとの通信圏外に放り出されてしまう。

「うまいことスロットルを調節して、機体をコントロールしないと……うっ!?」

接近警報。正面に迫ってくるのは、引き剥がされた地面。

「しまっ――」

姿勢制御スラスターを動かすも、時既に遅く。致命的な衝撃。目の前が暗闇に閉ざされる。
脱力したリナを乗せたコアファイターは、そのままコロニー外に吐き出されていった――


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.025826930999756