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No.36568の一覧
[0] [R15]装甲悪鬼村正 守護者編[オリ主]本編後[空男](2014/03/29 19:38)
[1] 第一幕 Ⅰ[空男](2013/01/26 11:47)
[3] 第一幕 Ⅱ[空男](2013/01/26 11:47)
[4] 第一幕 Ⅲ[空男](2013/02/19 10:25)
[5] 第一幕 Ⅳ[空男](2013/02/24 13:34)
[6] 第一幕 Ⅴ[空男](2013/03/03 23:51)
[7] 第弐幕 問悪鬼編 Ⅰ[空男](2013/03/09 21:32)
[8] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅱ[空男](2013/03/31 00:10)
[9] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅲ[空男](2013/03/31 10:48)
[10] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅳ[空男](2013/05/12 14:30)
[11] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅴ[空男](2013/05/12 14:30)
[12] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅵ[空男](2013/07/06 20:18)
[13] 第参幕 問英雄篇 Ⅰ[空男](2013/07/06 20:15)
[14] 第参幕 問英雄編 Ⅱ[空男](2013/09/03 23:36)
[15] 第参幕 問英雄編 Ⅲ[空男](2013/09/03 23:31)
[16] 第参幕 問英雄編 Ⅳ[空男](2013/11/17 01:38)
[17] 第参幕 問英雄編 Ⅴ[空男](2013/11/24 09:54)
[18] 第参幕 問英雄編 Ⅵ[空男](2013/12/21 14:38)
[19] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ①[空男](2014/03/23 17:35)
[21] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ②[空男](2014/01/19 04:39)
[22] 第参幕 問英雄編 Ⅷ[空男](2014/02/28 16:32)
[23] 第参幕 問英雄編 Ⅸ[空男](2014/03/23 17:37)
[24] 第参幕 問英雄編 Ⅹ[空男](2014/03/29 19:29)
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[36568] 第一幕 Ⅳ
Name: 空男◆ebc8efbe ID:300702e8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/02/24 13:34
額に沸いた汗を、手の甲を使って拭う。少し長く伸びてしまっている前髪を、疲労を感じさせる表情でかき上げる。右手に持つのは焼け爛れ、雨水に打たれたことで、腐ろうとしている木片。一年半という長い時間放置され続け、もはや原型を留めていないが、そこは元々大きな屋敷だった。山奥の集落。ふたこぶの山の谷間にある集落に、以前の様な活気は微塵も感じられない。一度だけ訪れたことのある、在りし日のその村の姿をふと思い出した。
“山に蝦夷あり、不要に近づくな”
その言い伝えは、守道の住む村の村人ならば、物心つくころには掟として認識する程に徹底されてきた。数々の剱冑を打ち上げてきたその一族が迫害されるのは、何もこの村に限ることではない。風潮・雰囲気。そう言った実体のない物が、彼らを追いやったのだろう。守道自身も、その例に漏れることなく、山に近づくことを避けてきた一人だ。もっとも、それも二年前までの話で、陽炎と出会ってからというもの、そう言った偏見は消え失せてしまっていた。

村の様子がおかしいと気付いたのは、もう日が暮れようとした頃だった。村の至る所で煙が上がるのに先に気付いたのは陽炎だ。

「守道様、村の様子がおかしいと思いませんか?」

「煙?
 この時間ならば、炊事の煙だろうが……
 ………確かに此れは……火災か………! ?」

慌てたように目を凝らす。風が冷たくなり始めた夕暮れの中、確かに不自然な煙が村の随所で上がっている。思い出されるのは一年前の山火事。村から見上げた燃え盛る大火がフラッシュバックし、陽炎の家族を奪った光景が頭を掠める。

「村へ降りる、陽炎! !」

その手に持っていた焼け焦げた木材を放り出す。目を向けた先には、此方を真っ直ぐに見据えて頷いた陽炎。それ以上言葉を発することなく、陽炎を引き連れると、村までの帰路を全力で駆け抜けた。







玄関を出た先で見たのは、逃げ惑う民の群れだった。孝道は瞬時に危機を理解する。

「千鳥………………父上……っ! ?」

上空はるか高くを騎行する武者を二人視認する。その内の一つが良く知る千鳥であるならば、仕手は父に違いは無い。
それでは、もう一方の武者は…………。
しかし、自分のすべきことは此処で父の戦を傍観することでないのは容易に理解できる。
眼前に現れた光景は、この村を収める道場の現頭首として、到底看過できるものでない。地上、門の向こうでは、装甲した武者が丸腰の民の頭を撥ねる。胴を割く。五体を切り刻む――――。
頭の中で何かが音を立てて切れた。

「焔あ! ! ! ! ! !」

自らの内から湧き出る殺気と共にそう怒声を発した。

<<…………御堂……これは……! ?>>

女性の、女性にしては低く、くぐもった声が語りかける。金打音。家の中を駆け抜けるように現れた狐は、主に侍る従者の如く、孝道の真横に並び立つ。しかし、孝道の眼はそれを映さない。孝道の耳はそれを捕らえない。唯、隣に並んだことを感覚するのみ。その見据える先には虐殺を繰り返す竜騎兵。視認できるだけで3両の武者。父の助太刀という考えは最初から頭にない。それが父への最大の信頼の証だ。焔の言葉をまるで無視するかのように装甲の口上を口にした。

「我、刀なり! ! 我、剱なり! ! 我、汝が敵を屠る者なり! ! !
 其の眼前に屍は重なり、其の道に残りしは聖者のみである! ! ! ! !」

初めての装甲は予想よりも遥かに早くやってきた。
軽い金属音が体の随所で上がる。身に纏いしは、真紅の剱冑。双筒の合当理は唸りを上げ、引き抜かれた長刀は夕焼けを反射し紅く染まる。これから血で其の身を染めるのを予言するかのように……。

「霧島流合戦術“火花”が崩し――――“飛火”(とびひ)! !」

高速で放たれる突き。父が最も得意とする突きを我流に改良した突きだ。元は生身で放つことを想定されていた突き。腕を小さくたたみ、安定性を増すことで首をかき切るだけの威力を出す。しかし、其れを剱冑を装甲した速度で敵に当てるのは至難。しかし、そんな無理もおして通る。其の名の通り、大火の飛び火が如く速度で、数十メートル離れた敵に突きを放つ。当然、敵も木偶ではない。
敵機が途中振り返る―――目が合う―――。
それでも、“飛火”は突き進む。慌ててその手の刀で防ごうとした敵機は、すぐに自身の過ちに気付くかのように、防御から回避に行動を変更する。突きとは、当てることが難しい。ならば防ぐこともまた至難。されども、やり過ごす方法ならば、いくらでもある。そう、躱せばいいのだ。一点の突きなど、上下左右、どちらにも避けられる。この竜騎兵の判断は正しく、また、一瞬で正答に至った点では、優秀な武者であった。
しかし、飛火はその常識を打ち破る。
飛火が真に狙うは首にも心の臓にも非ず。其れが狙う先は、唯一点。“起こり”。敵機が躱すならばその足を。敵機が防ぐならばその腕を。敵機が打ち合うのならばその刃を。激突に一瞬先だって最大まで伸ばされた腕は、切っ先一点のみしか視認出来ない敵の距離感を偽る。刀を点でしか捉えることの出来ない敵機はその足からしか距離を測れない。途中、時間を早めたかの様に錯覚する程、突然眼前に切っ先がある。敵の見誤ったその一瞬先に敵の起こりを断つ。それが“飛火”。
何年もかけ磨いたその技は、剱冑を装甲してなおその鍛錬を意味ある物と証明して見せた。躱すことを選択した敵機が、焔の右脇に回り込もうとするその先に、刃を置くように差し出す。“トサリ”と軽い音を立てて、左腕だった肉塊が地面に落下する。突撃の力も込めた突きは腕を食い千切るに十分な威力だった。痛みに身を硬直させた敵機を、一切の容赦なく切り捨てる。敵竜騎兵が力なく崩れ落ちた。刀を引き抜くとそれを追いかけるかのように、鮮血が宙に放物線を描いた。
残る敵機が振り返る。共に同じ型の竜騎兵だ。

「一気に畳み掛ける。焔っ! !」

<<諒解よ、御堂>>

二両の剱冑に向き合い中段に剣を構える。剱冑を纏っていること以外はいつもと何も変わらない。門下生のただ一人にも負けることなく頭首としての威厳を守った。父との立ち会いも五分以上の勝利を収めた。自身は紛うこと無き現霧島最強の男であると自負している。その構えには力が溢れ、しかし一切の力みは無く。迫り来る二両の剱冑に相対す。一対二。数の差は圧倒的不利。百対百一とは訳が違う。踏込に力が入る。合当理を用いた、超低空での加速“ブースト”。“飛火”同様に剱冑との距離を一気に詰める。
剣術に限らず武術と呼ばれるものは須らく初の構えを有する。意を悟られては先の先を断たれるとは、この時代では武術の心得無き者も知る常識の一つである。故に同様の構えから繰り出す技の数は即ち、相対すことの出来る敵の数であると言っても良い。相性が勝敗を決することの多い拮抗した戦場では当然である。
最もオーソドックスな中段での構えから繰り出される技の数は、相手の虚をつく目的を度外視するならば、正しく正道を行く最強の構えに他ならない。

選択したのは薙ぎ。長身の刀が中段の構えから一文字を描く。剣戟の開始をどの技で“入る”かは、その勝敗を決する上で重要な因子となる。一撃の邂逅を基本とする空中戦以上に、地上戦ではその重要度が増す。放った後の此方の体制、敵方の構え。追撃に出る事が出来るか、防御に回らざるを得なくなるか、それを決定付けることとなる。
一両の竜騎兵が刀を受け止める。しかし、此れは想定通り。もう一方の竜騎兵は当然の如く此方の背後に回り込もうとする。一旦は其方を無視。眼前の竜騎兵に集中する。
初撃に薙ぎを選択したのは、“受ける”しかないからである。縦に長い人の姿からして、横なぎを受け流そうとすれば、其れは足なり首なりを撥ねる。躱すには後ろに退く必要があり、それでは突撃の勢いをつけた剱冑と、後退により勢いを殺した剱冑の間に、埋められぬエネルギーの差が生まれる。故に、受け止める以外の選択を禁ずる。
そして、鍔迫り合いからの剣戟に、孝道は絶対の自信を持っていた。間近で敵機を見据える。十字を為して交し合う二本の刀からは、双方を折らんとするかの様に火花が散る。

術は二つ………。
退くか、押すか。

短く息を吐く。時間にして数瞬。何百分の一秒にも満たぬ思考の果てに、孝道は“押す”ことを選択する。合当理が一層力強い音を立てて火を放つ。元より、突撃した自分と、受けた敵機では覆せぬエネルギーの差がある。素人が見るならば力任せの押し。達人が見るならば当然の押し。徐々に、と言っても数秒とかからぬ間だが、焔が押しきり始め、剣ごと竜騎兵を切り裂く。瞬間、バックステップを踏むと、目前で竜騎兵が爆散した。
その爆炎を盾に更なる戦闘に備える。煙の向こう側に立つはずの竜騎兵を睨み付ける。

<<……っ! ! 御堂! !>>

瞬間、煙が揺らいだ。
反応出来たのは、孝道の天性の、また弛まぬ努力により鍛え上げられた反射神経の為である。爆炎を盾に距離をとった焔に対し、竜騎兵は距離を縮めるための事象として爆炎を利用した。本来ならば倍以上あるはずの距離が、爆炎に隠れることで半分に縮まったのだ。孝道の御株を奪うかのような鮮やかな突き。竜騎兵とは思えない速度。右手で刀を逆手で持ち、左手でそれを支える。顔の高さまで掲げられ、目線に合わせられた切っ先は点。迫り来る突きに対し、間髪入れずに回避行動に移る。間一髪。目の先にその切っ先を感じながら、脇を潜り抜ける。躱した勢いのまま振り返り、通り過ぎていく敵機に向き直る。剱冑の上からとはいえ、はっきりとした怒りが見て取れた。

………同胞を二人も殺されたのだ。
それも当然か……。
…………だが、此方にも怒りはある ! !

再び、中段の構えをとる。竜騎兵も刀を中段に構えた。一目見ればわかる。敵機は手練れだ。構えに一切の揺らぎがない。怒りに任せた乱れが見当たらない。強敵だと賞賛すると同時に悔しさが頭を掠める。何故、此れほどまでの腕を持ちながら、このようなことに加担するのかと。思えば討ち取った二機もそうだった。その鍛え上げられた剣技は見ずとも分かる品だった。故に口惜しい。何故、道場で共に競い合う仲として対面できなかったのかと。

数秒間睨み合う。

仕掛けたのは同時。激しい打ち合いが生じる。ここは空中ではない。互いに示し合わせたように飛び上がろうとはしなかった。理由は一つ。先に飛べば、続く空中戦を有利に進められる。即ち、頭を抑えられる。しかし、共に手の内の一つを見せた。其れは、速度を上げた突き。直線の動きで敵機が此方を上回っていた場合、先に飛び立ち背を見せる行為は自殺に等しい。足を地に付けた斬り合い。一撃では剱冑の装甲を打ち破ること適わずとも、動きを鈍らせ騎行能力を低下させる事は出来る。その後に連続で打撃を加えれば、その装甲も打ち破る事が出来る。
敵機の刀が頬を撫でる。其れは、紙一重のところまで迫られているという事実と同時に、紙一重で躱す事が出来ることを示す。実力は互角か、やや不利。

<<此の侭では此方に不利。陰義の使用を推奨>>

焔から送られたのは当然の助言だった。陰義。真打と数打の決定的な違い。アウトロー。剱冑での修練を積んだ孝道にとっても未知の領域。
だから、どうした! ?其の様なことで怖気づく霧島孝道ではない! !

「往くぞ、焔! !」

<<諒解>>
<<纏うは焔。約束の焔。燃え盛れ。焼き焦がせ。灰塵となり果て消え失せるまで! !>>

「真炎爆発! !」

巻き起こるは火炎。焔の名の通り、爆炎を撒き散らしながら身を包む炎。
敵機も此方の陰義に反応して、身をさらに深く沈める。そして、地面を蹴って間合いを詰める。
迫り来る竜騎兵。二度目の衝突。振り下ろされた刃には、しかし先ほどまでの重さを感じない。
焔の陰義。其れは、火炎操作。霧島の人間ならば、知らぬ者は無い。身に炎を纏う。敵機の刃はその焦熱によって勢いを失い、此方の刃は其れによって勢いを増す。正に、焔の鎧。極めて、強力な陰義。爆炎を纏いながら立つ焔に敵機がさらに警戒を強めた。

「霧島流合戦術――――――“炎柱”! !」

振り上げた刃。其れを渾身の力を込めて振り下ろす。其れは一度竜騎兵に撃ち止められ、徐々に押し切っていく。受け止めた敵機の刃が沈んでゆく。力に任せた一撃。圧倒的なまでの熱量の差を見せつけるかのような兜割。
焔の鎧による推力を得た太刀は―――遂に竜騎兵の刃を砕いた。
正に一刀両断。纏いし炎の熱エネルギーを、一転、運動のエネルギーへと変換し剱冑の兜から股を縦一文字に切り裂いた。

額に汗が浮かぶ。初めて使用した陰義による熱量の消費は想像を超えるものだった。体が鉛の様に重く、瞼を閉じれば落ちるように意識を失いそうだ。風にさらされて蝋の日が消える様に燃え盛っていた焔の鎧も姿を消した。
その場に転がる人間だった肉の塊に目をやる。
………此れが………人を殺めるという事か…………。
まるでこの手、血に染まりし赤ではないか…。
つるぎの赤が無性に恐ろしく感じる。火の付いた家屋がパチパチと音を立てながら燃えていた。

<<御堂、上! !>>

耳に聞こえしは、刃が空気を斬る音。瞬時に刀を構えなおし上空を見据える。まず目に入ったのは飛来する一本の太刀だった。其れは重力に任せて落下し、孝道から数メートルの地面に突き刺さる。
白い太刀だった。刃は鋭さを見せつけるかのように眩く光り、柄は純白の翼を思わせるほどに白い。
―――――――――父の太刀だった。

「貴様ァァァアアアア! !」

再度見上げるは遥か上空。此方を見下す紅の武者。そして落ちて往く白の鳥。
重い体に再び力が宿る。怒りが熱量に変換されるのを感じる。
再び合当理が唸りを上げた。砂埃が舞いあがる。

「うおおおおおおお! !」

強く地を蹴り上空へと飛翔する。
夕日も力を失うように山影へと向かう。次第に薄暗さを感じるようになる村の上空に二本の光が尾を引いた。


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