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No.36568の一覧
[0] [R15]装甲悪鬼村正 守護者編[オリ主]本編後[空男](2014/03/29 19:38)
[1] 第一幕 Ⅰ[空男](2013/01/26 11:47)
[3] 第一幕 Ⅱ[空男](2013/01/26 11:47)
[4] 第一幕 Ⅲ[空男](2013/02/19 10:25)
[5] 第一幕 Ⅳ[空男](2013/02/24 13:34)
[6] 第一幕 Ⅴ[空男](2013/03/03 23:51)
[7] 第弐幕 問悪鬼編 Ⅰ[空男](2013/03/09 21:32)
[8] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅱ[空男](2013/03/31 00:10)
[9] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅲ[空男](2013/03/31 10:48)
[10] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅳ[空男](2013/05/12 14:30)
[11] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅴ[空男](2013/05/12 14:30)
[12] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅵ[空男](2013/07/06 20:18)
[13] 第参幕 問英雄篇 Ⅰ[空男](2013/07/06 20:15)
[14] 第参幕 問英雄編 Ⅱ[空男](2013/09/03 23:36)
[15] 第参幕 問英雄編 Ⅲ[空男](2013/09/03 23:31)
[16] 第参幕 問英雄編 Ⅳ[空男](2013/11/17 01:38)
[17] 第参幕 問英雄編 Ⅴ[空男](2013/11/24 09:54)
[18] 第参幕 問英雄編 Ⅵ[空男](2013/12/21 14:38)
[19] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ①[空男](2014/03/23 17:35)
[21] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ②[空男](2014/01/19 04:39)
[22] 第参幕 問英雄編 Ⅷ[空男](2014/02/28 16:32)
[23] 第参幕 問英雄編 Ⅸ[空男](2014/03/23 17:37)
[24] 第参幕 問英雄編 Ⅹ[空男](2014/03/29 19:29)
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[36568] 第一幕 Ⅱ
Name: 空男◆ebc8efbe ID:300702e8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/26 11:47
ざわつく大広間に今日の主役が足を踏み入れた。長く伸びたその部屋を、二本の親戚の列の間を通り歩く。親戚の数はゆうに40を超える。その最前列で待ち構えるは父、そして祖父。その眼前まで歩き、身を翻す。

「本日より、霧島本家の当主を務めまする霧島孝道でございます。
 父、忠道を模範にし、霧島一族千年の繁栄のため、また、霧島流合戦術の伝承のため尽力していく所存にございます。」

「前頭首、忠道の頭首としての在り様。我が息子ながら実に見事であった。特に一年前の山火事。あれの功績と村人から得た信頼は大きい。よくやってくれた。隠居した後も霧島のため尽力してくれ。」

拍手が部屋の中で巻き起こった。
これから行うのは、霧島流を継ぐ者が初めに行う儀礼だ。幾人もの女中がお猪口と徳利を運び、部屋の中へと入ってくる。それを一つつまみ上げると、杯を交わすべく二本の列へと歩を進めた。







雑念を捨てる。すべては兄を守るために………。
守道はふすまの向こうで行われている儀礼を背に座禅を組む。
新しい頭首の顔見せとしての意味合いが強い今日の会合に私の居場所など在る筈も無し。
さみしいとは思わない。悔しいとも思わない。幼き日は自らの運命を呪ったこともあった。気付いたのは何時の事だったろう?
力無き者がこの世を生きる方法は二つ。自らが強き者となるか、強き者が救いを差し伸べ守るかだ。この命救いしは、我が兄。ならば、その為に生涯を捧ぐことに躊躇いは無し。
“ふう”と大きく息をついて立ち上がる。
ここに俺のすべきことはない。道場で竹刀を振るった方が、自身のためになるだろう。

襖が擦れる音がしたのは、背を向けて歩を進めた時だった。

「やはり、此処に居たか、守道よ。」

「兄上。……儀礼はどうなされたのですか?」

「厠へ行くと言って抜けてきたわ。」

そう言って手を差し出す。その手に握られるは……。

「酒、ですか?」

「そう。今日の儀礼は、頭首がこれから束ねる者達と杯を交わし結束を強めるのが目的。
 ならば、我が最愛の忠臣と杯を交わさぬ訳には行くまい?」

兄は良い言い訳を思いついたと言わんばかりに笑みを作る。
全くこの人は…………。
その手からお猪口を一つ貰い受ける。二人、杯を酌み交わし、一気に呷った。

「なあ、守道よ……。
 俺にこの家をまとめることなど出来るのだろうか?」

兄の口から洩れたのはおおよそ兄らしくない言葉だった。どう答えたものかと思案を巡らす。
そのような力、十分に備わっていると思うのだが……。真逆、そのような言葉を望んでいるわけではあるまい。ならば、俺に出来る返答など一つしか無い。

「兄上が望むのなら、障害となる者全てをこの守道が切り伏せましょう。障害となる物事全てをこの守道が解決致しましょう。反乱を起こす者、敵対する者。其の全てから御身を御守り致しましょう。」

それは、俺の決意でもある。兄が進むは、人の上を行く道。ならば、この守道が行くはその下、守る道。最早それを生まれもっての宿命とは思わない。自身の意思でこの兄を守る事は、とうに決意していた事だった。

「………っ!
 そうか………そうか……。」

「……………兄上、そろそろ戻らなくてはならぬかと。」

「おう、すまんな。この程度しか時間が取れずに。またの機会に二人で飲み明かそうな。」

襖の向こうへと去っていく兄の姿がどこか誇らしげに映った。







翌日の朝は更に早かった。
親戚も遠くから来た者達は客間に泊まっていったが、半分ほどは昨日の内に彼らの家へと帰っていった。そんな中でも孝道の朝は変わらない。朝目覚めると、枕の傍らに置いてある刀をとる。そのまま道場へと赴き、剣の修練をするためだ。道場のずいぶんと重くなった扉を開く。重い音がして戸が開いた。
まだ早い時間とはいえ、その中に先客がいるのは最早確認するまでも無い。道場の片隅。甲冑を纏った藁に向かって竹刀を振る者が一人。何度見ても息を飲むことを禁じ得ない程に磨き上げられた剣術。その竹刀は鎧の合間を縫い打ち込まれる。打ち込むたびに甲冑が軋みを上げ、藁が舞った。決して正道を行くとは言えない剣術。ただ、人を排除する事だけを目的にした剣。正に従者が振るうに相応しい剣術だった。
一つ打ち込みんだ際に首にあたる部分の藁が宙へと身を投げた。“フッ!”と力強く息が吐き出される。そして竹刀は、その藁を正確に捉え地面へと叩き落とした。

「お早う御座います。兄さん。」

その大きな背、肩から力が抜けこちらを振り返ると同時に、そう声を掛けられた。

「ああ、お早う。」

最早、此方の気配に気付いていたという事実など、この弟にしてみれば驚くに値しない。
この男が霧島頭首となっていればどうなったのだろうか……。
二人きりの朝の稽古は、門下生の一人が道場に訪れるまでの間続いた。



門下生、数十人と共に食卓を囲んだ。これも霧島の朝の光景の一つだ。そんな中、守道に話しかける。

「今日の正午過ぎ、父上と剱冑の間へ降りる。守道、お前も付いて来い。」

「しかし、兄上。あの間に降りる事が許されるのは……。」

「何、この現頭首孝道が許可を出しているのだ。よもや父上も反対されまい。」

剱冑の間。霧島には一両の剱冑が先祖代々伝わっている。それは、普段装甲するとうな数打とは違う。真打、それも、もはや出所が定かで無くなる程に遥か昔から継がれる業物だ。

昼過ぎ、存在は知りながらもくぐることは愚か、その鍵が開かれたという事も知らぬ門が開かれた。それは、霧島頭首が代々使ってきた一室の奥。この場に居るのは父と弟。思わず息を飲んだ。綺麗に清掃された父の部屋とは異質の空間だった。
この先に、真打が……。
目前に広がるは、地下へと続く階段。地下から魔物の類が湧き上がってくるかのように空気が押し出されるのを感じた。
足元を照らす光は手に持つ蝋燭1本のみ。

「我が霧島家は古来より武芸に秀でた一族であった。
 その頭首となった者は、軍の長として在ることを義務付けられ、1両の剱冑を与えられてきた。
 これが先祖代々霧島家の頭首が乗り継いできた剱冑だ。」

大きく開けた広間へと出た。あたりはまだ暗い。目が慣れてきたと言っても此処は地下なのだ。備えられていた部屋の隅の蝋に灯が灯る。
そこにあるのは感覚していた。“それ”が放つ空気は明らかに自分の知る剱冑で無い。
真打とは此れほどの違いがあるものだろうか。

「其の名を焔(ほむら)。古来より伝わりし、霧島の守り神よ。」

父の眼の先に其の名の通りに赤い狐が在る。赤ではなく紅。深紅ではなく紅蓮。圧倒する焔の様なその機体は崇め奉られるかの様に其処に在った。

「おお、此れが……。」

此れが俺の駆る剱冑か……。
胸の内に“焔”の一文字が浮かぶ。

「霧島の制約だ。此方からの戦闘は仕掛けない。敵が此方を侵害する場合のみこの剱冑で我が一族を守るのだ。」

此れを駆りたい。今まで装甲してきた剱冑は、所詮はGHQや六波羅の目を潜り抜けた型落ちの物ばかりであった。だが、此れは違う。そんなものとは比べ物にならぬ。その圧倒的な力を戦場で自らの物として騎行したい。
湧き出る感情は武者として抑え難い物だった。その高揚感を何とか押し留める。
帯刀の儀に、時間は掛からなかった。
その剱冑を駆る日が来ないことを願いつつ、また、心の何処かで来ることを願いつつ、剱冑の間を後にした。







「御堂、昼食の準備ができたわよ。」

「ああ、すまない、今行く。」

妙齢の女性が自身の一室まで食事の用意が出来たことを知らせに来た。手にしていた手帳を静かに閉じ、腰を上げる。
いただきます。
目の前に出された食事は、焼鰆、味噌汁、白米。
味噌汁に手を付けた。

「ほう、これは……。味噌を変えた……わけでは無いな。出汁の取り方を変えたというところか。」

「流石、御堂。これに気付くとは……。」

「これならば、あと2、3分出汁を採る時間を短縮すると良い。少し臭みが残ってしまっている。しかし、料理も随分と上達したものだな、村正。」

村正と呼ばれた女性は一瞬気の緩んだ様に、ぱあっと笑顔の花を咲かす。それも一瞬。何かに気付いたかのように表情を戻しそっぽを向くと、ぶつぶつと小声で呟く。

「この位、当然よ。良いじゃない。私だって日々努力してるんだからね。」

二人きりの食卓を悲しいとは感じない。この相棒が隣にいる限り、孤独は感じない。
人としての生命機関へと動力を送るのとは別に、この食事には意味がある。明日は、出撃が予定された日だ。今は、少しでも熱量を蓄えておきたい。

「御馳走様でした。」

「ええ、御粗末さまでした。
 ねえ、御堂。明日は私たちが出ないといけない程の依頼なの?」

席を立とうとしたところで村正に再び呼び止められた。

「明日は、GHQ進駐軍を殲滅、もしくは撤退させるまで戦闘。
 その後、村へ行って善悪相殺を完遂する。」

「そこよ、御堂。進駐軍が相手なら、他の人たちに任せておいても大丈夫なんじゃない?」

今までもそう言った事例は何件かあった。そのほとんどの場合、敵は数打――レッドクルスだ。其れらが相手なのであれば今の武帝軍が敗北する未来はない。

「否、今回危惧すべき相手は進駐軍ではなく、村人だ。あの村には一つ気になる言い伝えがあるのでな。大道場があるのだが、代々その主が真打の仕手であるらしい。」

食事とは打って変わって真剣な表情を作る景明。それにつられるかのように村正も一層表情を引き締める。

「成程、それが今回の私たちの担当ってわけね。」

「ああ、進駐軍の方は、他の者に任せることにする。何しろ相手は代々受け継がれた剱冑だ。用心に越したことは無かろう。」

「諒解。」

聞くことは全て聞いたと言うかのように、村正がお盆を持って身を翻す。その背中を見送ってから、景明も食卓を後にする。縁側から空を見上げながら息を吐いた。

“やはり、村正のエプロン姿というのは見ているだけで、なんというか……まずいな。”


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