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No.36568の一覧
[0] [R15]装甲悪鬼村正 守護者編[オリ主]本編後[空男](2014/03/29 19:38)
[1] 第一幕 Ⅰ[空男](2013/01/26 11:47)
[3] 第一幕 Ⅱ[空男](2013/01/26 11:47)
[4] 第一幕 Ⅲ[空男](2013/02/19 10:25)
[5] 第一幕 Ⅳ[空男](2013/02/24 13:34)
[6] 第一幕 Ⅴ[空男](2013/03/03 23:51)
[7] 第弐幕 問悪鬼編 Ⅰ[空男](2013/03/09 21:32)
[8] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅱ[空男](2013/03/31 00:10)
[9] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅲ[空男](2013/03/31 10:48)
[10] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅳ[空男](2013/05/12 14:30)
[11] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅴ[空男](2013/05/12 14:30)
[12] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅵ[空男](2013/07/06 20:18)
[13] 第参幕 問英雄篇 Ⅰ[空男](2013/07/06 20:15)
[14] 第参幕 問英雄編 Ⅱ[空男](2013/09/03 23:36)
[15] 第参幕 問英雄編 Ⅲ[空男](2013/09/03 23:31)
[16] 第参幕 問英雄編 Ⅳ[空男](2013/11/17 01:38)
[17] 第参幕 問英雄編 Ⅴ[空男](2013/11/24 09:54)
[18] 第参幕 問英雄編 Ⅵ[空男](2013/12/21 14:38)
[19] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ①[空男](2014/03/23 17:35)
[21] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ②[空男](2014/01/19 04:39)
[22] 第参幕 問英雄編 Ⅷ[空男](2014/02/28 16:32)
[23] 第参幕 問英雄編 Ⅸ[空男](2014/03/23 17:37)
[24] 第参幕 問英雄編 Ⅹ[空男](2014/03/29 19:29)
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[36568] 第参幕 問英雄編 Ⅸ
Name: 空男◆ebc8efbe ID:f0e1f31e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/23 17:37
「―――父上ッ! !」

「おお、了。少しの間、家を外す。
 村とみんなの事を頼んだぞ」

ほんの僅かな荷物だけを手にした父の後ろ姿を今でも鮮明に覚えている。
まるで町の市場に買い物に出るかのように、彼は玄関に立っていた。

「なあに、心配するな。すぐに戻ってくる」

「ポン」と頭に手を置かれる。『もう子供じゃないのに』等と言う文句が浮かんだが、其れよりもその手の温もりに安心した。
軽く右手を挙げながら村を出た父の後ろ姿。見送る事しかできなかった自分。

―――――――次に対面した「父上」は、首から上が無かった。


何故?
了は一人自室で考えていた。
何故、武がこんなことにならなければならなかったのだろうか?
思い出すのは武の亡骸。そして、父の亡骸。

「許さない、絶対に許さない……」

静かにそう告げる。自身に言い聞かせるように。
西が刻限とした日没は既に超えていた。此方の対応は、もう西も分かっているだろう。
予想通り、西は夜間の戦闘を避けてきた。
理由は二つ。
一つに戦力差。面と向かって戦いをしたとして、まず西の勝ちは揺るがない。戦力差の面では、あちらに分があるのは明白。ならばこそ、夜間の戦闘での奇策や奇襲、予想外の出来事を排除したいのだろう。
奇策とはリスクを背負う物である。
戦力で勝る戦において、わざわざ危険を冒すことも無い。
二つ目に、西の武術。即ち、投擲と抜刀術。特に投擲を生かすためには、視界の良さが求められる。街灯立ち並ぶ東の街を戦場にするとしても、光源が心もとないのは事実である。加えて、剱冑入り混じれる戦闘において、投擲は諸刃の剣になりかねない。味方への同士討ちなどを避けるためにも、視界が開いているに越したことはない。

だが、西は一つの思い違いをしている。
此方の戦力は、西に劣っていない。確かに東町の軍だけを見ればそうかもしれない。しかし、守道と一条が居る。彼等を遊撃部隊に選んだのは、西が彼らの情報を多く持たないことも一つの理由だ。奇襲とあれば多くの人員を裂くことで、敵に見つかる恐れもある。少数での施行は、戦力面での不安を残すが、その点でも実力者である彼らに不安は無い。一度もその戦闘を見たことは無いが、一対二の戦闘を、敵を殺さないという条件のもとで勝利したのだ。実力に疑いを掛ける点は無かった。

勝利するための条件は整えた。
「あの時」とは、父上の時とは違う。俺には今、力がある。そして、どうしても許せない敵が居る。武を殺した西森をけして許すことなど出来ない。

「………父上ッ……」

苦々しげに呟いたのは父の名だった。何故、俺はあの時、力が無かったのか。何故、敵を討ちに出なかったのか。大鳥中尉の言ったことは正しかったのだ。
殺されたならば、殺すしかない。復讐を遂げずして、前に進むことなどありえない。死した者のために在ってはならない。

夜明けまでに、まだ時間がある。だが、寝付くことなど到底出来そうも無かった。





酷く穏やかな夜だった。雲の狭間から月影が落ち、あたりを照らしていた。
だが、一方で守道の胸の内が晴れることは無い。座ったまま目を閉じ、明日の事を考えていた。傍らでは陽炎が寝息を立てている。
「守る」と決めた村がそこに在る。其の為に人を殺す。
刃に迷いを纏わせては、戦場での死に繋がりかねない。理屈で理性を抑え込む。動悸が少しずつ早くなる。息が上がる。苦しい。
――――――それでも、戦わなければならない。
そう、結論は出ている。あとはその結論へ至る「過程」を自分の中で組み立てるよりほかない。

「―――――守道様」

不意に陽炎の声がした。次いで体に微かな重みと温もりを感じた。彼女に抱かれたということはすぐに理解できた。
温かい。そう思う。心の中の靄が、陽を浴びて明るく光る。

「私の幸せは、守道様と共に在ることで御座います。
 この身に代えても必ず、貴方を御守りします。ですから、斬ってください。皆を、何よりも御自身を御守りするために」

「………だが、其れは許されることなのだろうか?」

「『私』が許します。たとえ世界の全てが貴方を責めようと、私だけはどんな時も、貴方の傍に居ります。
 そして、守道様が罰を受けると仰るのならその時は、地獄であろうと共に参りましょう」

決意。
彼女の中に俺に無い物を感じる。
身体を包み込む腕にかかる力が、少し強くなった。
いつの間にか呼吸は落ち着いていた。喧しく鳴り響いていた胸の鼓動は息を静め、代わりに陽炎の鼓動がゆったりと伝わった。心地よい鼓動だった。

「―――――――――陽炎」

短くその名を呼んだ。少しだけ顔を離した彼女の顔が視界いっぱいに映る。

「ありがとう。
 俺の幸せもお前無しでは有り得ない。
 ―――――必ず、守る」

決意を込めて、そう返す。戦える。俺は刃を取ることが出来る。
心の内の霧は晴れない。だが全体が淡く光り輝いていた。
―――――――――迷いも含めて俺だ。
目を逸らさない。この思いを凌駕した決意を胸に戦おう。
陽炎がゆっくりと微笑んだ。再び抱き寄せ唇を重ねた。

重なった陽炎の唇が、確かに『はい』と紡いだ。





早朝。
まだ日も明けぬ東野の屋敷にはずらりと兵が並んだ。緊張の面持ちを隠せないままに、それぞれが最後の確認をしている。その傍らにはモノバイク。数打が並ぶ。その隊列とは離れたところに守道と一条は立っていた。傍らには陽炎と正宗の姿がある。

「それじゃあ、二人とも頼んだよ。
 此方の状況が落ち着き次第、増援に行くから」

隊列に混じり話をしていた東野が二人の前に立った。それぞれの顔を見つめるとそう指示を出す。その表情には不安。そして、確かに戦果を期待する輝きが宿っている。

「しかし、本当に私たち無しで大丈夫なんですか?」

「大丈夫さ。心配しないでくれ。
 それよりも二人の方が。数で劣る此方の勝利には二人の戦果が最低条件だ。
 でも、あくまで目的は奇襲。敵戦力の分断だから。僕が応援に行くまでは騙し騙し足を止めて欲しい」

「いえ、大丈夫です。
 俺達で西に残った兵は何とかして見せます」

守道は、鋭くそう口にしていた。
驚いたように顔を此方に向けたのは東野の方だ。

「……正直、あまり気乗りしてないと思っていたけど………。
 そう言ってくれるなら有り難い。是非、信用させてもらうよ! !」

「パン」と音を立てて握手を交わす。
送り出す東野が力を込めて言った。

「互いの武運をッ! !」

「「はいっ! !」」

陽が昇り始め、街は太陽に照らされる。いつもと違うのは住民が避難したために何時もの活気が無いという事。
陽の光を浴びながら、そんな村の大通りを駆け、二つの影が屋敷を出て西の森へと消えていった。


「――――――――――来たぞッ! !」

その背をゆっくりと見送る事すら許さず、見張りに出ていた男が声を上げた。なるほど、日の出と同時の侵攻開始。流石、同じ村の一族。考えることは同じといったところか。

「総員に告ぐッ! !
 昨日も確認したが、皆にやってほしいのは足止めだ。止めは僕が担当する。勿論、出来るなら落としてしまって構わない。でも、無理をする必要もない。
 ………武の為にも…………必ず、今日の戦、勝利するぞッ! !」

「「「「「「「「「「おおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

西の空から飛来する敵機に向けて、一人、また一人と数打を纏い、空へと飛びだした。
東野は静かに息を吐く。
今日の戦、勝敗を左右する最大の要因は自分だ。それは十分に理解している。
さあ、武。お前の弔い合戦だ。

「さあ、往くぞ、烏丸(からすまる)ッ!!!」

何処からともなく鳴り響く羽音。機械仕掛けの翼。陽を浴びてその身を照らすは、黒一色の羽ばたき。戦場に舞い降りた戦鳥。

「ひれ伏せ、傅け、跪けッ! !
 我が往く道は破邪の道!!!!
 天下を統べる破邪の道ッ! !」

彼だけの剱冑。真打。銘を『烏丸』。翼を思わせる双筒の合当理。腰に据えし刃。その全てが黒一色。しかしその身は黒光りすることなく。寧ろ、陽の光を吸収しその身に沈めているかの如く深き黒。その姿、当に闇烏(レイヴン)。
「ゴウ」と音を立てて戦場へと舞い上がる。
その先で西の武者たちが陣形を変え、独特の形状を持つ刃を抜き放った。





山道を急ぐ。正宗も姿を現し三人と一領、否、二人と二領は山を駆けだしていた。

「…………あれは……………ッ! !」

上空を黒い影。西の軍が頭の上を掠め、行き違う。第二陣といった処か。無論、此方に気付く様子も無ければ、攻撃を仕掛けてくる様子も無い。一先ずは安心できそうだ。

「急いだ方が良さそうですね。
 思ったよりも数が多い。分断すると言っても此方が向こうに着くまでに全軍が出たとあっては意味が無い」

「そうですね。…………正宗、先に行って様子を見ておけッ! !」

<<承知致した>>

言うが早いか、濃藍の剱冑は三人を置いて飛び出した。「ザワザワ」と木々を揺らしながら西町への一本道を駆け抜ける。瞬く間にその後ろ姿が小さくなり、程なくして見失った。

「私ではお力になれず………申し訳ありません」

陽炎が小さく肩を落とした。彼女にしては珍しい動作だ。同じ剱冑として、やはりこういった事態で単騎行動できるだけの力が無いことを気にしているらしい。

「そんな…気にしないで下さい。それに、正宗を向こうへやってしまいましたからね。
 何かあれば頼りにさせて頂きますよ」

一条なりの気遣いに頭が下がる。守道としても、陽炎の傍らを離れることはしたくない。
それは昨日誓った戦う意味。自身に立てた制約。陽炎を守る。村を守る。
其の為に剣を取る。其の為に命を獲る。
そうまでして守らなければならない者の為に刃を振りかざす。
そうしなければ守れないのなら、守るために刃を振りかざす。
―――――――――正義の名のもとに。

ふいに横を走る少女の言葉を思い出した。
『湊斗景明を討つ為に力を貸してほしい』と。
今なら、討てるかもしれない。彼は悪鬼だ。世の人々を守るために。彼の前に為す術無く殺される民の為に。彼に刃を向けることが叶うかもしれない。其の為にこの手が血に濡れることなど厭わない。第一、この手は既に血で染まっている。
此れ以上失わないために。父を、兄を、恩人を彼の刃は切り裂いた。悪鬼を討つに相応しい理由が俺にはある。

「………守道様?」

黙り込んでしまったことで気を遣ったのか、陽炎が怪訝な表情を浮かべながら此方を覗き込む。そんな彼女に「大丈夫だ」と微笑んでみせると、顔を上げ行くべき道を見据えた。
西町はすぐそこまで迫っていた。





西町を通り過ぎ、村はずれの屋敷の前に立った。今のところ護衛の姿は無い。
以前に比べ、西の屋敷は静かだった。だが、同時に張りつめた空気を漂わせている。その雰囲気は正に戦場の其れだ。
初めて足を踏み入れることとなる一条は、一層の緊張の面持ちを浮かべている。

「…………良かった……。
………屋敷にはまだ何人か残っているみたいです」

正宗を通して得た情報を一条が静かに告げた。単騎屋敷の中に潜入しているのだろうか。此方からでは正宗の姿も敵兵と同様に確認できない。
あとは、潜入のタイミングを計るだけだ。
潜入と言っても、敵戦力の分断が目的である以上、『忍び込む』必要はない。可能な限り撹乱。それが出来なくなれば戦闘。この場で装甲し、城壁や屋敷を焼き払えば事足りる。

「…………一条殿、往きますッ! !」

一条が頷く。その隣で同じように陽炎が頷いた。
瞬時に正宗が主の元に姿を現す。一条が何かを祈るように胸の前で両手を結んだ。

「我、鎧なり! ! 我、鋼なり! ! 我、汝を敵より護る者なり! ! !
 其の眼前に屍は無く、其の道に残りしは聖者のみである! ! ! ! !」

「世に鬼あれば鬼を断つ! !
世に悪あれば悪を断つ! !
剱冑の理ここに在りッ! ! !」

藍と金色。二色の剱冑が面を上げる。
二領の剱冑は自らの刃を抜き放ち、合当理に火が灯る。足に僅かの溜めを作り、上空へと飛翔した。



「…………お前、この間のGHQの遣いと一緒にいた奴だな?」

唐突に空に声が響いた。屋敷の屋根の上。其処に立つ一人の大男。腕を組み此方を見下すように立つその男を俺は知っている。

「………西森……ッ! ! !」

「…………随分と嫌われちまったようだが………。
 まあ、了の考える作戦なんてのは御見通しってわけだ。
 お前とは一度やり合いたかったもんでなッ! !」

言うと同時に彼の周りに金属片が浮かび上がる。それが剱冑であることは確認するまでも無い。
その後を追う様に屋敷の奥から次々と武者が飛び出した。其の全てが守道を無視し、一条の元へと集まる。

「この量は……ッ! !」

「そうだ、そっちの武者にはウチの者の相手でもしてもらおうか! ?」

<<敵影………八! !
小癪な真似をしおって………! ! !
全て捻り潰してくれるわ!!!!!!!!!!!!!!>>

取り囲むように一条の元へ集った剱冑に正宗が鋭く吠えた。
拙い。流石の一条殿でも、一度にこれだけの相手をするのは不可能。
しかし――――――

<<どこ行こうとしてんだよ?
お前の相手は………この俺だろうがぁァァ! ! ?>>

装甲を果たした西森がその行く手を遮った。
手には西の象徴たる両刃刀。仕手を現すかのような巨体。やや紫がかった銀の鎧が鈍く光る。単筒の合当理が唸りを上げ、西の町での戦闘の開始を告げた。


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