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No.36568の一覧
[0] [R15]装甲悪鬼村正 守護者編[オリ主]本編後[空男](2014/03/29 19:38)
[1] 第一幕 Ⅰ[空男](2013/01/26 11:47)
[3] 第一幕 Ⅱ[空男](2013/01/26 11:47)
[4] 第一幕 Ⅲ[空男](2013/02/19 10:25)
[5] 第一幕 Ⅳ[空男](2013/02/24 13:34)
[6] 第一幕 Ⅴ[空男](2013/03/03 23:51)
[7] 第弐幕 問悪鬼編 Ⅰ[空男](2013/03/09 21:32)
[8] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅱ[空男](2013/03/31 00:10)
[9] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅲ[空男](2013/03/31 10:48)
[10] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅳ[空男](2013/05/12 14:30)
[11] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅴ[空男](2013/05/12 14:30)
[12] 第弐幕 問悪鬼篇 Ⅵ[空男](2013/07/06 20:18)
[13] 第参幕 問英雄篇 Ⅰ[空男](2013/07/06 20:15)
[14] 第参幕 問英雄編 Ⅱ[空男](2013/09/03 23:36)
[15] 第参幕 問英雄編 Ⅲ[空男](2013/09/03 23:31)
[16] 第参幕 問英雄編 Ⅳ[空男](2013/11/17 01:38)
[17] 第参幕 問英雄編 Ⅴ[空男](2013/11/24 09:54)
[18] 第参幕 問英雄編 Ⅵ[空男](2013/12/21 14:38)
[19] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ①[空男](2014/03/23 17:35)
[21] 第参幕 問英雄編 Ⅶ ②[空男](2014/01/19 04:39)
[22] 第参幕 問英雄編 Ⅷ[空男](2014/02/28 16:32)
[23] 第参幕 問英雄編 Ⅸ[空男](2014/03/23 17:37)
[24] 第参幕 問英雄編 Ⅹ[空男](2014/03/29 19:29)
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[36568] 第参幕 問英雄編 Ⅵ
Name: 空男◆ebc8efbe ID:f0e1f31e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/12/21 14:38

ハッ……ハッ!
闇夜を駆ける。
見慣れたはずの路地を回り、人気の無い道を選んで。
武は一心不乱に足を進めた。急ぎ走る胸は息切れからか、短い間隔で鼓動を刻んでいる。何故だろうか。心臓が口から出るかのようなそんな圧迫感が込み上げる。
右手には刃。復讐を遂げる刃。
あるいは銅鑼。開戦を告げる銅鑼。
駆け抜けた路地の先。東町への入り口。嘗て初めてここを通った時のことを思い出す。
涙に崩れ、彼に肩を抱かれながら俺はこの町へと足を踏み入れた。
ふと足を止める。
その先には鳥の像。
この村への来客を歓迎するその鳥は、あの日の俺も迎え入れてくれた彼の姿を思い出させる。
東野 京(きょう)。了の父にして、武の恩人。
あの日彼は、自分が復讐に捉われた殺人鬼となることを止めてくれた。だが、自分は今日、復讐者として刃を振るう事を決意してしまった。
彼への想いだけが胸の内のしこりとして残る。じっと彼を象徴するかのようなその鳥を見つめた。
だが、其れまでだ。この決意は変えられない。それでも遂げねばならぬ。
歩みを進め、その脇を通り過ぎる。
“申し訳御座いません”と。そう呟いて。
――――――――あの日果たせなかった復讐を。





東町の朝は活気づいている。勤め先へと足を向ける人々の群れ。その中に守道と陽炎の姿があった。家事とまではいかないが、居候の恩を返すため食事の準備をするべく街に繰り出したのだった。
幾つもの並んだ朝市には新鮮な野菜を始めさまざまな食糧が積まれている。大勢の主婦がその品定めに夢中だ。

「あら、霧島さん。お早う御座います」

此処に住み着いて数週間。もうすっかり顔も覚えられたようで、何人かの主婦が守道たちに挨拶をし、自分が品定めをした野菜を譲ってくれた。露店の商人たちも東野の家の遣いだと言えば、今日一番の品を笑顔で差し出した。此方が財布を出そうものなら、慌てて止められてしまう始末である。

「しかし、この村の東野への信頼はすごいな」

「そうで御座いますね。
 先代への恩がある方が殆どだ武様が仰っていました」

手にいくつもの袋を持ち、帰途についていた。勿論、隣には陽炎が歩いている。その手にも食材が入った袋。俺が持つと進言したが、少しは運ばせてくれと頑なに守られてしまった。
ごく平凡な一日が、景明や霧島の事の傷を徐々に癒してくれている。
と同時に昨晩の一条からの問いへの返答を考える余裕も出来つつあった。
何時までもこの村に留まる事は出来ない。しかし、この村を出たあとも少なくともしばらくは平穏な毎日を陽炎と送ろうと考えていた。其れほどにこの毎日は魅力的で、そして何よりも自分の役割は、兄を失ったことで終わったのかもしれないと、そう考えるようになっていた。
この世に在って、武術で負け命を落とした者の復讐という話は少なくない。寧ろ、普通ともいえる。だが、霧島の家訓には自ら攻め込まぬという、無暗な殺生を禁じる誓いがあるのも事実だ。其れを身内の為に犯すことがあっていい物なのか、また、兄と父はそれを望むのかという疑問も残る。

「おい、あれ見ろよ」

ふいに道を往く一人が空を見上げた。つられるように一人、また一人と西の空へ目を移す。
その先には黒い影。最初は鳥かと思った。が、近づくに連れてその影は形を変えていく。
人の形に、武者の形に。
次第に近づいた合当理の音。それは加速を続け、上空を飛び越える。その先に在るのは東野の屋敷。
嫌な汗が背を伝った。飛来した方向。それが示すのは、彼らが西森の武者であるという事。

「陽炎!」

短く叫ぶと、屋敷の方へと駆け出す。道往く人の合間を縫って、元来た道を駆け抜けた。




「突然、どういった了見だい?」

珍しく了は声を荒げた。庭に飛来したのは西森の武者。数は4。慌てて知らせに来たのは、同じく庭で稽古の為に竹刀を振るっていた一条だった。彼女は今にも飛びつきそうな様子で、彼らを睨み付けている。

<<………昨日、何者かに此方の村の見張り人が殺された。
 どういうことか説明してもらおうか!?>>

………ッ!
了と一条の顔が強張る。それに構わず、もう一歩にじり寄る西森の武者。無言で斬りかかってこないのが不思議なほどの殺気を身に纏っている。
ふと、了はその場に武が居ないことに疑問を持つ。
真逆、そんな筈は………。
武が何かしたとは考えたくなかった。

<<無言は肯定ととっても良いんだな?>>

「待て、東野は一切関わっていない」

必死に言葉を取り繕うが、聞く耳もない。後ろに立つ一人が、高々と右手を掲げ、空に向けて煙弾を放った。高く高く上昇したそれは、風に流されながら白の狼煙を空に上げた。

バタンッ!
突然の音は屋敷の門が開けられる音。其れを開けたのは守道だった。目の前に広がる光景にいち早く状況を理解した守道は、了と武者との間に割って入った。

「東野殿、此処は俺たちが!!」

「………お任せ出来ますか。西森へ出向き、話をしてくるまでの間、時間を稼いでいただきたい」

チラリと目を移した先にはモノバイクが止まっている。恐らく使えという事なのだろう。

「……無茶な要求とは分かっていますが……出来れば殺さないで頂きたい」

「承知いたしました」

間髪入れずに短く返すと、了は一つ頷き振り返る。当然のこと、それを追おうとする武者。その前に立つ。了は振り返らない。小屋の中からバイクを取り出すと、飛び乗り走り出した。
その姿が小さくなるのを横目で見送り、再び武者と相対した。

「お前、西町で見た顔だな?
 この町の者じゃないなら引っ込んでた方が身のためだぜ?」

聞き覚えのある声。そうだ、あの日陽炎に唾を吐いたあの男だ。一瞬脳内が沸騰するが、それもすぐに押し留める。戦闘を前にして昂ぶった気持ちは、されど暴発することは無い。

「守道さん、剱冑を!」

一条が声を上げる。モノバイクまでは距離がある。急げという指示だろう。だが、俺には数打など必要ない。陽炎が居るのだから。

「我、鎧なり! ! 我、鋼なり! ! 我、汝を敵より護る者なり! ! !
 其の眼前に屍は無く、其の道に残りしは聖者のみである! ! ! ! !」

辺り一帯を炎が包む。炎に身をまかれるように陽炎が守道を包み込んだ。
西森の武者と、そして一条が息を飲むのが分かった。
腰に据えし二本の刃。その内の一つ。名刀“白沙耶”を手に取る。

「一条殿、下がっていてください。あとは俺がっ!」

振り返ることなく一条にそう言い放つ。東野殿は殺すなと言った。其の要求、必ず、実現して見せる。

<<中々に見所のある漢だとは思っておうたが、真逆真打を要しておるとはのう>>

今度は此方が驚く番だった。後ろから唐突に聞こえた金打音。どこからともなく姿を現したのは、天牛虫。その纏う雰囲気、当に天下の名物。

<<そして、その心意気、真、気に入った!我らも力添えをしようぞ、御堂!>>

「……ああ、其のつもりだッ!」

「世に鬼あれば鬼を断つ。
世に悪あれば悪を断つ。
剱冑の理ここに在りッ!!!」

濃藍の鋼が彼女を取り巻く。甲高い金属音を立て、藍い武者が姿を現した。その姿。待機状態でありながら放っていた威圧感は、それの比ではない。武者としての感性が告げる。紛れもない天下の名物であると。

<<守道さん、二人はお任せします。
後の二人は私たちが何とかします>>

言うが早いか、上空へと飛び出した。一瞬の後に守道もそれに続く。
景明殿を殺すと言っていたが、真逆、彼女の様な幼さで真打の武者とは………。
様々な思いが胸を過るが、今はそれどころではない。

同じく上空へと上がり、此方に向けて反転した剱冑と目を合わせた。一対多の戦闘は、遠藤殿の島で体験したとおりだ。ならば今回も、やはり突きで仕留めるのが上策。
白き名刀を中段に構え、迫り来る二領の剱冑に向けて合当理を吹かす。狙うは敵機の合当理。決して命を奪うことはあってはならない。敵機は数打。機体性能では圧倒的優位。
だが、もう一つ危惧すべき点がある。其れは戦場の眼下に広がるのが東野の町であるという事。村人たちが慌てふためく様子が、上空からでも見て取れる。

まずは戦場を移すべきか……。

敵機の選択は薙ぎ。襲い来る初撃は“払い”によって避ける。続く二領目の突きは脇を通り過ぎることでやり過ごす。その速度のままに西町とは反対の山へと突き進む。逆に一条は西町と東町とを隔てる山を戦場に選んだようだ。互いに背を向け、民衆に危害が及ばぬ場所へと戦場を移した。

追ってくる敵機を確認しながら、再度、策を練り直す。
敵機を落とすことなく戦闘不能にする。そのためには合当理の破壊が最良。そのための技も霧島の武術には備わっている。

「陽炎、“真炎爆発”を減速の為に一瞬だけ行う。
 ……出来るな?」

<<勿論で御座います。承知いたしました>>

狙うは“陰火”。すれ違いの瞬間に刃を後ろに突出し、その背後にある合当理を破壊する。そのためには、急激な減速が必要。そのためには、大きな推力を借りる必要がある。問題はそのあと。

「墜落した彼らの命はこの高度からでは無いに等しい」

<<接地戦を仕掛けましょうか?>>

「………否、彼らが其れに乗る理由が無い。幸い下は森だ。
陽炎、可能な限り高度を落とし、合当理への傷も浅いものにする」

<<諒解>>

直線に飛んでいた軌道を下に向けて潜るようにして敵機に会頭する。敵機は刃を収め、後を猛進してきている。即ち、勢いでは向こうが優勢。陰火は敵機との速度の差があれば使えない。

「次の一撃は避けるのが妥当か」

<<次撃に備えてタイミングを推し計るのが良いかと>>

「ああ、そのつもりだ」

ふと疑問が生じる。敵機は一向に刃を抜き放とうとしない。
距離は900と言ったところか。まだ彼らの刃を構えるには早い。しかし、刃を抜かぬ理由は無い。だが、抜かぬというなら、それも好都合。構えを見せぬ不安はあるが、初撃では何も出来ない此方にとって、容易に受け流せるのであればそれに越したことはない。
距離300。敵機がようやく手を刃に掛ける。

やや太めの刀身。抜き放たれる刃。
――――――その刃、両刃造。



「まずい!!!陰義を防御にッ!!!」

<<えっ!?>>

次いで閃光、奔る。太陽の光を受けたその刃が、武者の手から放たれた。
抜刀術、否、投擲術。嘗て相対した剣術が眼前で繰り出された。
ガガガッ!
剱冑が軋む音に、刃が鋼を削る音が重なり、不快な音が耳元で生じる。寸での所で発動した焔の鎧は、しかし、完全にその刃を遮断する事は出来ず。だが、其れも無ければ此方の兜は間違いなく砕けていたことだろう。

“ウチも仲間を戦で何人か失ってな”

西森の言葉が甦る。
真逆、西森の一族とは……!

<<この剣術は遠藤様の島の……>>

「ああ、そういう事らしい」

相対した二領目は刃を放ってはいない。一領目の剱冑は空いた手に予備の刃を収めていた。
以前、相対した三領の武者。島の人々を傷つけ、剱冑を探し求めていた武者。それが西森の一族だというのなら、俺は………! ! !
込み上げる怒り。一度は消そうと、胸の内でくすぶり続けていた怒りの焔。其れが再び顔を出す。今の自分の表情はまるで鬼のようであることは明白だ。
ギリッ
噛み締めた歯が軋みを上げた。
自然と刃が上を向く。一撃必殺の構え。其れに向けて構えが変容するのを、強い意志で留める。

<<守道様! !感情に流されてはなりません!!!>>

陽炎がその意思に添え木を当てるように言葉を寄越す。
鼻から息を吐き出すと構えを戻した。
そうだ。決して復讐者であってはならない。

再び会頭。敵機の携えし刃は三。その内一つを失った者が一。
先程、後に続いた男が今度は先頭に立ち此方に迫り来る。

「そう何度も奇襲が通ると思わないことだっ!」

彼らにとって奇襲であっても、此方からすれば、既に一度破った術。
焦りも怒りも無く。ただ冷静に、その二機を見据えた。あらかじめ、余裕のある速度を保ち、陰義の使用を前提に、刃から逃れる道をイメージする。
一領目。先ほどと同じように投擲を選択。今度は上段から放たれた刃を想定通りの道へと逃げ込む。

「陽炎、右下方へ向けて推力を!!」

<<諒解に御座います>>

空中で半回転するようにその刃を退ける。焦りが表に出た一両目は脇を通り過ぎるに留める。
狙うは二領目。此方の選択は抜刀術。鞘に納められたままの刃が唸りを上げて引き抜かれた。だがそれも既知の術。奇襲となり得ないその術はかえって好都合だった。刃の軌道が読み易い抜刀術は、押し留めるのもまた容易い。そして、押し留めるという術に置いて俺には絶対の自信がある。
横なぎの軌道上の敵刃に合わせるように白沙耶を差し出す。一瞬の鍔競り合いが起きるが、此方はそれに付き合うつもりはない。手首の力を抜き、刃を返すことで受け流す。

「陽炎ッ!!」

短く叫び、速度を急激に留める。後ろを確認するでもなく放った“陰火”。其れは、機体後方の合当理を傷つけた。
その確認もなく、再び上空へと速度を上げる。その後方で、煙を上げながらゆっくりと斜めに森へと墜落して行った。
残るは一機。此方の落ち着きに怖気づいたのか。その動きは意識が散漫としたものであることを思わせる。まだ若さを感じさせる単調な突撃。狙うは間違いなく抜刀術。此れならば、陰火を使うこともない。
邂逅の瞬間。
間違いなく見事と賞賛されるべき抜刀は、しかし――――――――

「霧島流合戦術―――“合火神”ッ!!!!!」

下方から現れし刃によって上空へと投げ出される。宙を舞う刃は風切り音を上げながら回転を続けた。勢いもなくし、刃もなくした敵機の後方に回り込む。
その合当理も、先ほどと同じように撫でるようにして切り裂いた。


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