「んばば!なんて言いません!」
【タイトル全否定!?】
『んばばって何語なの?』
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 南国少女p…ナナちゃん
ルーファウス歓迎式典が始まる前に「言われなくてもスタコラさっさだぜい」したかったナナとハニーは、ゲッチョゲチョに大人
組に叱られた後一休みだけしてジュノンを後にした。
ファンシーショップで「こどものおこづかい」で買える程度のメッセージカードで、しっかりとルーファウスにメッセージをしたためて。
もちろん護衛二人はコスタ・デル・ソル行きの船へおいてきぼり。ナナは優雅にハニーとの水上ドライブを楽しんでいた。
「凪いでるから、中々の眺めだねー。あ。サメ」
【いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!】
楽しんでいたのはナナだけだったが。
【サメを何度けり殺した事か…】
「よかったね、ハニー。今度から「てゐ」って呼んであげよう」
【毛皮むしられること前提じゃねーか!つーか足の裏あちい】
白い砂混じりの街道を歩くチョコボ、その背に乗るナナ。熱い太陽を受けて、軽く目玉焼きつくれるかもと思えそうな砂を踏みし
めたハニーがプルプルと足を振る。
「爪以外を保護できるような靴でも作ってもらおうか、幸いにも逗留先はコスタだし。趣味人御用達の職人ならいるっしょ」
【是非是非頼むわ。いくら皮が丈夫でも、ちょっと腫れてきそう】
「それならダッシュしちゃって、周りに注目されてもいいから」
言外に、「注目されて、身動きが取りずらくなるよりも、ハニーのほうが大事」と伝え、それにハニーも目を細めて頷く。
【よっしゃ、まかせとき。フルスロットルでいってやんぜ!】「クエエエエエエエエエエーッ!!」
「お、おお、おおお! おーっ!!」
高らかにハニーが鳴き声を上げ、グングンとスピードを上げていく。その加速に、ナナの声がドップラー効果を起こして流れていった。
「と、いうわけで。随分前に若社長から言われた別荘に来ました」
やる夫的な「キリッとした顔」で「こちら」を見るナナ、ふっかふかのソファーにその体を沈ませている。
そのすぐ側には、丈夫な革張りで出来ている丸くて大きなクッションが。その上にハニーがモコモコと鎮座していた。
【俺も靴を作ってもらってます。二日で出来るらしいから、うっかりするとメインメンバーと鉢合わせしそうです】
同じく「キリッ」と「こちら」を見るハニー。こっちみんな。
「でもまあ、途中で遠回りして追い越せばいいし。しばらくゆっくりしましょう」
ね、小母様。とナナが笑いかけた先には、枯れもしない薄紫色の一輪の花が試験管のなかに納められ、テーブルに立っていた。
『そうね、身動きできないのはもうなれてるけれど…南国ってこんなに彩りが豊かなところなのね』
ゆらり、と試験管の中の花が、開け放たれた窓へと向く。そこからは白い砂浜と青い海、別荘の周りに植えられた、彩り豊かな花
たちが競って咲き誇っていた。
試験管の縁には、パステルバイオレットのボールペンで書かれたタグ。
“JENOVA HEART”
『ちなみにこの花はスカビオサ、和名では松虫草と呼ばれているの。花言葉は…私は全てを失った』
「でも、私達が居ますし。全て失ったのだから…」
【これから全部ゲッツってことですね】
『わかります。うふふ』
【ウワァン最後のセリフ取られた!というかジェノバさんが開放的!】
「『南国だからじゃない?(かしら?)』」
【ワー、ナンゴクッテスゴーイ】
その後、別荘を管理してる(【俺の悲痛な棒読みスルーされた!?】)会社に連絡して、日雇いでメイドさんを呼びました。まる。
ヘリの強風にあおられ、舞い上がる砂を思わず腕でカバーする。そこから降り立ったのは金髪を揺らした女性と、黒髪を後ろで縛った…。
「セフィロス…!?…いや、違う…だが…」
似ている…。少し老いを感じさせた男性が、金髪の女性に手を取られ、そのまま立ち去っていく。
コスタの街並みに消えていく二人をちらちらと見ながら、俺たちも砂混じりの甲板からコスタへと入った。
途中、ミスリルマイン付近の森で出会った、新しい仲間「ユフィ」。彼女が生まれたての子鹿のような足取りでフラついていたのと、長時間
の緊張におかれていたことを考えて、一晩コスタの宿屋に世話になることとなった。
「むぅ、肉球がつらいな」
「レッド、大丈夫か?」
神羅ビルにて、しゃべる犬のような種族。レッドXIIIも仲間に入った。特に実験動物としての虐待を受けていたわけでは無いようだが、
本人曰く「知人が居なくなったから、居る必要もなくなった、途中まで一緒にいこう」ということだった。
「クラウド、バレットもう行っちゃったよ?エアリスたちも疲れてるみたいだし、いこ?」
「ああ」
クラウドは、照りつける太陽を掌で遮り、ここまでのことを思い返しながら、仲間達の後に続き、宿屋へと向っていった。
・
・
「きゃっ!」
甲高いティファの悲鳴と、固くて重いモノが床に落ち、割れる音。それにクラウド達が振り返ると、ティファが愛想笑いを浮かべて、両手に
二個に割れたレンガ状の砥石を持っていた。
「あはは…ごめんなさい。キャンプナイフの手入れをしようとおもったら落としちゃって…あ、新しいの買ってくるわね!」
慌てて立ち上がり、個人管理をしている財布を鞄の中からさぐりだし、ティファはその勢いのまま部屋を出て行こうとする。しかし、目を輝か
せたエアリスがクラウドの背を強引に叩き、クラウドはティファのすぐ側へと押し出されてしまった。
「あっ、え?クラウド?」
「…エアリス…?」
「うふふ~」
ビッと親指を立てて見せたイイエガオのエアリスに、クラウドはため息を吐いてティファに向き直り、財布をもった手を取る。
「コスタは開放的になりすぎたヤツラが多い、付き合う」
「ありがとう、クラウド」
「いってらっしゃぁぁ~い♪」
「あ、クラウド…なんか酸っぱくてさっぱりするもの買ってきて…ウプ」
「俺ゃ別になんもなくていいぜー」
「やけど用の傷薬」
イイエガオで見送るエアリスと、未だベッドに沈み込むユフィ、それに見かねて頭に氷嚢を乗せてあげているバレットの声が続く。レッドは
どこか不機嫌そうに自分の肉球を舐めている。あきれたようにすこし肩をすくめたクラウドは、何故か俯いているティファの肩を叩いて部屋
の外へと促した。
「(クラウドとちょこっとデート…!?)」
「まったく…人を小間使いみたいに…、ティファ?どうかしたのか」
「ふぁえあ!?ななな なんでもないわよ!?」
「そ、そうか…」
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「ふむ…コレがジェノバかね?」
「ユーj…じゃない。あなた?「これ」だなんて物扱いはジェノバさんに失礼でしょう」
『あら、いいのよ。見た目はただの花だもの』
試験管の中の儚げな花は、さらっと軽く言葉を返す。それに二人は目を瞬かせ、感嘆のため息を漏らした。
「セフィロス・コピーが外を出歩いた影響なのか…随分と人間らしい受け答えになったな、ジェノバ」
「そうね、ビルから出る前はまだカタコトがすこし混じっていたのに…」
『うふふ…そういえば、ルクレツィア。貴方髪の毛の色金色だったかしら?』
「ああ、これ?変装用のかつらよ、かつら」
すこし照れ混じりの笑い声を上げたジェノバ(花)に、宝条とルクレツィアが続けて笑う。そして、いつの間にか合流していたヴィンセントとザックスが
買い物袋を携えて部屋へと入ってきた。
「よっと…。くっはー!流石は天下のコスタ・デル・ソル!もー食いモンから雑貨までたけーったらありゃしねえ」
「同感だ。まったく…ボスが家に関係なく資産持ちなのが幸いだな」
あきれた顔をしながら、テーブルの上に買い物袋を乗せ、どっかとソファーに沈み込む二人に、ルクレツィアが主婦の興味なのか身を乗り出して
買い物袋を覗こうとする。ザックスは、それに気づいて体を袋に寄せ、「はいよ」とオレンジを一個ルクレツィアの手に乗せた。
「へぇ…なかなか良い形…って50!?ミッドガルでもそんなにしないわよぉ?」
「ッスよね!ッスよね!俺、ヘタクソだけどミッドガルでも自炊ちょこっとしててー、それで少しは物の値段わかるんすけど…これたっかいっすよね!」
主婦と貧乏性の会話が弾み、置いてきぼりにされた男二人がコーヒーをすすり、久しぶりの会話を交わしていた。
「そういえば、お前の銃なんだが」
「ん?」
「麻酔弾が欲しいといっとったろう、あれは注射器型と、対象に当たって粉末、もしくはガスが撒かれる物、どちらにする?」
「コストと維持の手間が決めてだな。…どうだ?」
さらに残りの二人に置いてきぼりにされたナナとハニーは立ち上がり、「お散歩いこうか」などと話している。テーブルの上で所在
なさげにふわふわと揺れていたジェノバを掴み上げ、散歩に誘う。
「小母様もいく?」
『あら、いいの?是非お願い』
「ああ、ナナ」
ザックスと共に、「昨今のレタス値上がりについて」白熱したグチを言い合っていたルクレツィアが、ポケットから何かを取り出し
ながら、立ち上がった。
「これにジェノバさんをつけてあげて」
綺麗な薄緑色をしたビーズをチューブの中に沢山埋め込んだ輪が、ナナの手の上に乗せられる。「これは?」という視線で
見上げるナナに、ルクレツィアが胸を張って宝条を指さす。
「ユージと一緒に、ヘリに乗ってる間に作ったの。名付けて「お出かけジェノバさん」よ!」
「……………」
黙りこくったナナに、宝条の追い打ちがかかった。
「…名付けたのはルクレツィアだ」
「へぇー……」
「…何か…?…で、このビーズも穴が開いてるから、この隙間にこうやって…」
試験管から、スカビオサ・ジェノバを取り出し、ルクレツィアがそっとチューブの中に茎を押し込む。ぱっと見「花モチーフ付きの髪飾り」となった。
そして、その輪をナナのボンボン飾りの奥へとくくりつける。
「どう?ボンボン飾りで抜けることはないし…手に試験管を持って歩くより安全でしょう?その内部のビーズは超純粋なマテリアよ。魔晄のエネルギー
をものすごく凝縮してみたの。どうかしら?」
『大丈夫よ。こんなに高濃度のマテリアなら、数週間はイケるかも』
ナナも首を勢いよく振って見るも、しっかりとゴムチューブと魔晄ビーズで固定されたスカビオサ・ジェノバは抜けることなく、ナナの髪飾りの一部として
鎮座ましましていた。
「うん、私も大丈夫だよ、小母様。じゃあいってきまーす!」
『いってきまぁす』
「クエー」
「はい、いってらっしゃい」
別荘の扉から、ナナとハニーが飛び出ていくのを、ルクレツィアは優しい微笑みを浮かべながら、手を振って見送った。照り返しから生まれた陽炎に
紛れていくその影が、ふっと銀色の子供の幻覚へと変わる。
「…私、こうやってあの子を見送ることを、捨てて逃げていたのね」
脳裏に残るナナの笑顔が、銀色の子供へとすり替わる。「いってきます」と「ただいま」を繰り返し、自分にしがみついてくる小さな子供が、幾度も幾度も
優しくルクレツィアを苛んだ。
-母さん、父さんをしばくの、やめてやったらどうだ?
-あらいいのよ、セフィロス。この宿六(やどろく)ったら、大切な結婚記念日忘れて研究所にこもってたんだから。
-…がんばれ、父さん。
-…少しはこちらの味方をせんか、息子よ。
ソルジャー服ではない、大人しい私服に身を包み、ボコボコの父親を苦笑いで見下ろす息子の夢が、見えた気がした。
「謝って許されることじゃないけれど…私は…」
「ルクレツィア?どうした」
開きっぱなしのドアを、ずっと見つめていたルクレツィアの後ろに、いつの間にか宝条が訝しげに立っていた。
振り向く前に、微かに滲んでいた涙を指でぬぐい、笑顔を浮かべて振り返る。
「ちょっとね、ハイスクール時代を思い出してただけよ」
・
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・
『すごいわナナ、コスタ・デル・ソルの海はこんなに青いのね!』
「きれーだねぇ、ぜーんぶ終わったら、みんなで泳ぎにこようね」
「クエー」
キョロキョロと辺りを見回しながら歩く幼女に、幾人かの大人の優しい視線が集中する。たまに一緒のチョコボが甘えるようにすりつくのも
大人達の心をほっこり癒す光景になっているようだ。
そして、注意散漫になったナナが角にさしかかった時。角の向こうから現れた人影に、ナナの顔が埋まる。
「にゃぶっ?」
「ああ、すまない」
「ううん、わたしのほうこそごめんなさい」
ナナは慌てて後ずさり、笑顔を浮かべて「相手」を見上げると。つんつん頭の金髪に、冷たい青い目。クラウドだった。
思わず目を丸くし、びっくりした顔を浮かべてしまうが、すぐに表情を切り替えて頭を下げる。
「(やべぇ、すぐ離脱せんとあかんな)」
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-このこは、おれの、みかた。
-このこは、わたしの、みかた。
クラウドの中で、ジェノバのかけらがうごめく。
-このこの手は、やさしく俺を受け止めてくれる。
-このこの手は、やさしく私を受け止めてくれた。
-ひとでない私を。
-…ではない俺を…。 何ではない?俺は、何ではない?
「クラウド?ねえクラウド、どうしたの?ねえってば」
「あの、おねえさんごめんなさい、わたしいきますね。ぶつかっちゃってごめんなさい!」
「あっ、待って!…行っちゃった…、ねえ、クラウド、本当にどうしちゃったの?」
「………え?」
暖かい暗闇の中で、女と向かい合ってつぶやいていたような気がする。ん?暗闇?女?いや、今俺は何を見ていた?何も見ていない。
そういえば、ぶつかってきた女の子がいない。…あの ヤ さ し イ コ が イ ナ い。誰が?誰が優しい?いや、そんなことよりも買い物だ。
「…すまない、ティファ。ぼうっとしてたみたいだ…早く買い物を済ませて宿で休もう」
「そうね、こんなに日が照ってるものね。そうしましょ」
「そうだな。…あの子に、もう一度会えるといいな」
「クラウド、何か言った?」
「ん?そうだな、といったが?」
「そう?」
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「っっやっっべ!超接触しちゃったよー!顔覚えられてたらどうしよう!!」
ばっちり印象に残っていたこともつゆ知らず、ナナは両手でムンク状態を作り、路地の隅っこで悶えていた。
『ナナ』
「なぁに小母様」
『あの子ね、クラウドって』
「そうだよ、クラウド・ストライフ。私の記憶にあった「カギの子」だよ」
『……ジェノバ因子が、私に感応したみたいなの、強制的に貴方に対する好意がすり込まれちゃったみたい…。
自我意識を持つ、ジェノバ細胞の塊である私が側に居たから、あの…勝手にシンクロしちゃって…ごめんね、ばっちり
好印象のお嬢さんだったみたい…』
「ちょ」
「クエ」【mjsk】
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あとがき:
クラウドの精神に寄生するトリップ女主人公も美味しいなって思えてきた。
だけど貴腐人のMさんはセフィクラ派なんだ。
だけどMさんにとっては、全員受けにみえるようになってきたよ。フジョシをこじらせすぎたかしらん。