「いびつな、わたしのたましいのかけら。もどっていらっしゃい。 さあ、リユニオンしましょう」もうさびしくなんてないの。わたしのかけらたち。きっとわたしたち、またこのほしで、しあわせになれるのよ。首の無い淑女が、恐怖の中小さくささやいた。そっと、心の中で、小さな少女からもらった花を一輪だいて。Song dedicated to youFF7:名無しのNANA- スタートダッシュは二個目のランプ点灯直後で 「変だな…」「何がだよ、ソルジャーさんよ」「…静かすぎる」不思議な青い瞳の青年が、ラボ階を見渡す。「本来なら研究者たちがいなくてはいけない。こんなに静かだなんて、おかしすぎるとは思わないか?」「ヘッ!俺達アバランチ様に恐れをなして避難したんだろ!」たくましい肉体の男が、鋼の片腕をなで上げた。「………」そんなこと、あるわけが無い。そう言い返そうとしたその瞬間、辺りを見回し続けていた黒髪の女性が声を上げて、離れた場所の床を指差した。「ねえっ!見て!あそこ!!」開きっぱなしになっているラボの奥から、上へ向かう階段に向けて「何かを引きずった跡」が続いていた。かすかに血液らしきものが「跡」には滲み、その「跡」は薄桃紫色の液体だった。「…これは…っ!?」訝しげに、ラボの中を伺う青年。人気が無いことを確認し「跡」をたどると、奥には半円状のドームと無理やりこじ開けられたドア。そこから溢れる薄桃紫色の液体。唐突に青年の脳裏に、同じ色の液体に浸された異形の女性がフラッシュバックする。「グッ…!」―図に、乗るな―ぎんいろの、だれか。ははとしたう、だれか。ばけもののような、だれかのはは。「クラウド?クラウド大丈夫?」「あ、ああ。大丈夫だティファ。…ジェノバ…ここに…」いびつにゆがめられた記憶が、本当のクラウドを押し隠していた。『ああ、間違いない。セフィロスだ』キッと事務椅子を軋ませて、中階層の監視室で仰け反る少女と、スーツ姿の男性と白衣の女性。トランシーバーからの音声と、監視カメラの映像を刷り合わせる。耳に響く、低音の宝条の声に、傍らにいたルクレツィアがかすかに微笑み、震えた。「でも、本当のあの子じゃあない」『そう、あれはリユニオンによって「現状で最適である」と認識されたジェノバ因子を持つ成れの果てに過ぎない』ナナの傍らで腕を組み、似合わぬサングラスをかけたルクレツィアが搾り出すようにささやき、遅れてトランシーバーから宝条の声が返る。当のルクレツィアは、似合わないサングラスに濃い目の化粧。少々露出の高いボディコンシャスなスーツの上に白衣を纏った姿をしており、いわゆる「変装」をしていた。「でも小父様、危ないことはしないでね?」ナナがどこかわざとらしく両手を組み、願うように呟くと、宝条の押し殺したような笑いが帰ってきた。『大丈夫だ。とりあえずコイツをどうにか…うわっ』『ナナ、一体どうしたのだ?この緊迫した空気は…』『レッドよさないか、備品ではなくて実費で購入したのだからな!ああああツメで引っかくな!』緊迫感をぶち壊すみみっちい会話がトランシーバーから賑やかに漏れ出てくる。かすかに吐息を漏らす音に、ナナが振り返れば。ヴィンセントが顔を伏せつつ、掌を口元に押し当てて肩を震わせていた。耳を赤く染めて震えるヴィンセントを靴でつつき、ナナは椅子から飛び降りた。「じゃ、後は小母様と小父様に任せて私たちは出ましょ?ルートはカーム、ミスリルマインを経由してジュノン」「了解した。そういえばお父上はどうするんだ?ライゼン大佐には何も知らせてないんだろう?」「そこんところはヘーキ。小父様のおかげで、アイシクルエリアに長期任務になったから。お出かけも、随分許してくれるようになったしね。針鼠を拾ってきてからは「上に立つ者の貫禄が着いてきたな!さすが娘!」ってなんか方向違う褒められかたされて、アイツがいればある程度許してくれるの。元ソルジャー様々ってとこだよねー」「お前にとってはソルジャーもお出かけの手駒、というわけか。末恐ろしいな」「すてきな褒め言葉どうもありがと☆」子供らしい笑顔を浮かべたナナが言い放ったのは子供らしくない言葉。「かなわないな」と肩をすくめ、ヴィンセントはルクレツィアと視線を交わす。「後は任せてちょうだい。あの人と合流したら、ジェノバを連れて行くわ」「頼む」ハードボイルドで大人なムードを醸し出す会話を尻目に、ナナはさっさと監視室から立ち去っていく。未だ無事に動き続けるエレベーターに乗り込み、背後から駆けてくるヴィンセントを乗せ、地下の駐輪場へと向かっていった。「はやくハニーと合流しないと」「車でなくて良いのか?」「車なんて小回りが効かないじゃない、バイクは手足が届かないし。それに 海 渡 れ な い で し ょ ?」「…納得したよ」-クェップシ! …クェ?- だれか噂でもしてんのかな。その頃、ブルル、と頭を振った金色のチョコボは、ウロウロと地下駐車場を右往左往していた。「……」ふと、エレベーターの向かいのビルに自分が乗ったエレベーターが映る。その視線を上に辿れば、神羅ビルの最上階も映っていた。-あそこで、プレジデントが。死ぬ。-一度も会ったことがない、神羅の頂点。見殺しにするのかと微かにココロのそこで誰かが嘲るが、所詮微かなささやき。伊達に隣の住民が死んでも三ヶ月も気づかなかったりする現代日本人ではない。そう自嘲すると、ナナはその視線をミッドガルの地上へと降ろす。「そう思えば、私の人殺し(見殺し)被害者第一号なのかしら」「ナナ、何か言ったか?」エレベーターの機械音に消されると思っていた呟きは意外に大きくて、ヴィンセントの耳に微かに届いたようだ。呼ばれたのかと思ったらしいヴィンセントがナナを見下ろしてくるが、表情を特に変えず、ナナは首を振る。「ちょっと今後のことを一人言ってただけ」「そうか」「そうそう」チン。と目的階に着いたことをエレベーターが知らせる。扉を開いた先には、退屈過ぎて丸まった金色羽毛玉になったハニーが居た。------------------------------------あとがき:ちょっとシリアス!お久しぶりですMです。TOA二次創作を最近みています。なんていうかツッコミどころ満載な原作とか開発陣とかおもしろいですよね!(褒め言葉のつもり)