男は叩き起こされた。
「私を悪夢から呼び起こす者は誰d……誰?」
「寝てるだけを罪の償いとか抜かしてる色男はいねがー」
「クエックェエ!」
(801本では大抵宝条に掘られたという扱いをされた色男の棺おけはここですか?)
Song dedicated to you
FF7:名無しのNANA- 戦略的撤退という名の勝ち戦 そのさん
「いわゆる、スキマ話とか補足話。閑話なのね~」
【身もフタもねー!】
「…あ、お。うう」
【なぁ】
「何よぅ」
少女は隣を歩くチョコボを“見下ろし”唇を尖らせた。
「絶対降りないからね!あいたっ!」
【ランプがアタマに当たるぞって、遅かったか。ケケケケ】
「っっキィー!イン&ヤン!ハニー殴っちゃえ!」
「おー、おおー」
少女が乗っていたのは、代表的な神羅屋敷モンスター「イン&ヤン」の肩。…の、内側。ちょうど顔と顔の間にすっぽりと
収まるように座っている状態だった。
命じられるままに、どこか楽しそうにペチペチと平手で軽くチョコボを叩くイン&ヤン。
【あっ!あっ!やめて!アタマ叩かないで!首が長いからすぐ揺れるんだよコノヤロウ!こうしてやる!こうしてやる!】
ハニーも負けじと百烈突付きで応戦し、じめっとした地下はにぎやかな声とペチペチカカカという音に支配されていく。
「あー…」
「ん?なに、イン&ヤン。呼んd –ガッ- ほぉわっ痛(つ)ー!!」
ペチペチと(比較的楽しそうな表情で)ハニーとの攻防戦を楽しんでいたイン&ヤンが、自分達に乗っている少女を見上げ、うめく。
その呼ぶような声と仕草に、首を回して見下ろすと、その「見下ろすという動作」に近づいていたランプという力も加わり、盛大に
おでこをブチ当てた。
「うぉ…」
盛大にぶち当たったランプは、わんわんと金属が揺らぐ不思議な音を響かせている。
額を押さえ激痛をやり過ごす姿に、イン&ヤンも顔をゆがめて痛そうに見上げた。
「おほわー…ハンパ無く痛ぇー」
【大丈夫か?】
「何とかへいきー…って、もう着いたか」
顔を上げて前を見ると、丁度地下道の終わり。実験室のドアが目の前にあり、横を向くとさび付いた鉄板のドアがあった。
「さあて、ご開帳と参りますか?」
イン&ヤンの肩から降りて、ポケットの鍵を鍵穴へと差し込む。錆付いているように見えた鍵は、まるで油を注したかのように軽く回り、
小さな金属音を立ててその役目を実行した。
「確か真ん中だよね?」
振り返り、チョコボを見上げて確認を取る。チョコボはその言葉に頷き、首を動かして先へと促す。
ナナはテクテクと小さな足で中央の比較的綺麗な棺おけと近づいた。
【ん。他のは死体だかんな、気をつけれ】
「オッケーっす、あ、その前にね?」
ゴソゴソゴソ…カポッ。
【何してんだ? …ちょ!wwwみwwなwwぎwwっwwwてwwwきwwwたwwwぜえええwwww
俺も!俺も!てか、良く用意出来たな】
「大丈夫、用意してある。いやー、ゴールドソーサーのツテでね。
よし!TP300%!伝説の突き技www【パワースラッシュ】wwwwいwくwぜwえwぇw!!w」
急激に盛り上がる棺おけ部屋。そして中央の棺おけが、低い木摺り音を立てて開いていく。
「私の眠りを覚ますものは…」
・
・
・
・
-眠る、眠る、眠る。
そして訪れる悪夢に魘され、飛び起きることすら許されず、この小さな棺おけの中で私は眠り続ける。
悪夢よ、訪れよ。
悲劇よ、わが身を苛め。
悪友と、憧れた女を守りきれなかったこと。止め切れなかったこと。そしてそれから悪夢へと逃げ込んだこと。
私が今のうのうと苦しみの中に生きていくこと。
それが私の罪。
…ほぉわっつー…
…クエ?クエェ…キュー…
…おぅ…おおおお…
人の声?いや、チョコボの鳴き声も…、それにこの館を徘徊するモンスターのうめきも聞こえてくる。
フッ、我が悪夢も新しい方向か?
少女をモンスターがズタズタに引き裂く猟奇ショーの悪夢でも見せるつもりなのか。
…我が夢で殺される少女よ、夢想の中の激痛と叫びに彩られた悲劇も、私の罪なのだ。
ガチャッ キィ
しかしおかしい、施錠された扉が開く音がする。声が鮮明になっていく。
うるさい うるさい うるさい。 私の罪を、悪夢を、邪魔するな。
…確か…なかだよ…?
…クェ、クェェ、クエッ…
…オッケーっす、そのまえにね?…
…ギョワッ!?グエックエエエックェェッ!クエックエックエッ!キュルルルー!…
…大丈夫、用意してある。てぃーぴー300%!伝説のつきわざ、ぱわーすらっしゅぅ!…
うるさい!
私は棺おけの蓋を押し開き、我が身のすぐ側で聞こえた会話の主をにらみつけ、叫んだ。いや、叫ぼうとした。
「私を悪夢から呼び起こす者は誰d……誰?」
私の眼下にいるのは、斧を片手に持った小さなウサギの着ぐるみ。その着ぐるみが顔を上げ、私を見つめる。
どんよりとした半目の、プラスティックで出来た目が、私を。
その着ぐるみは、とぼけた笑顔のウサギで、その首と腹が赤かった。特に…そう、何かを喰らい尽くしたかのように、口周りが赤く。
赤く。赤く。赤く。
「寝てるだけを罪の償いとか抜かしてる色男はいねがー?」
その小さな身長にあわせた、とても愛らしい声が着ぐるみの中からくぐもって聞こえてくる。
「クエックェエ!」
チョコボの鳴き声に目を向けると、そちらには鉄板をいびつな三角形にしたものを頭にかぶったチョコボ。
ぶぉん。という空気を切る音に、思わずジャンプし、棺おけの後ろへと飛びのく。
自分がいた場所には、赤く錆付いた斧があった。
「ちぇ、外れちゃった。まあ外れて当然かな?…えへへ」
かわいらしい笑い声をくぐもらせ、大事なもののようにウサギの着ぐるみは斧に頬を寄せ、抱きしめた。
これは一体何なのだ?私に何が起きている?これも私の罪なのか?久しく訪れなかった「怖い」という気持ちが湧き上がる。
「ねえねえ、おっかけっこしようよ。私が鬼でいいからさ」
ねえねえ、いいでしょう?
本当にこのウサギは子供なのか?女の子なのか?それとも他の何かなのか?
思考の海に溺れかけるが、ウサギはそれを許さない。
「逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?逃げないの?にげ にげ にげにににに
にににににににに゛に゛に゛nnn あはっあははっ あーっはははははははははっはははhっきゃはははは!!!」
怖い。
「あはっあはははっあはっあはっきゃはっきゃはは キャキャキャキャキャ!!」
笑い声が部屋いっぱいに響く、地下道まで漏れ出し、湾曲した笑い声が再び部屋へと戻ってくる。
ウサギは着ぐるみの頭だけを激しく震わせ、笑う。
「追いかけっこだよ!追いかけっこだよ!」
激しい笑い声とは裏腹に、ゆっくりとした動きでこちらへと近づいてくる。
原初の恐怖というのは、このことを言うのだろうか?
実を言うところ、私はこの後のことをほとんど覚えていないのだ。
覚えているのは、そう。必死に屋敷を逃げ回るが、先回りしているウサギや、チョコボ。追いかけられる私。そして最後の記憶。
あら、久しぶりね。ヴィンセント。赤い目なんて、ウサギのつもりかしら?
懐かしい彼女の声と、明るい屋敷の外。
そして目の前に迫るフライパンに、懐かしい風貌の、少し老いた悪友の「かわいそうなものをみる」顔。
激痛。
・
・
・
・
-おまけ-
「貴方が、ナナちゃんね?」
「そうだよ、はじめまして。ほーじょーせんせいのおくさん」
「あら、礼儀正しい子ね。それにしても、ずいぶんホラーな格好ね、なあに?それ」
「静岡!」
「…シズオカ?」
「うん」
「ふぅん…」
「あの、…ヴィンセント、ヘリに運ばないか?」
「そうねぇ。じゃ、アナタ、よろしくね」
「…ハイ…」
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あとがき:
gdgdになってもキニシナイ!だってそれがMクオリティ。
また間が開きました、こんにちは!
SDU内では屈指の悲劇ぶりを見せ付ける色男をゲットしました。
FF7でも悲劇だったけど、なんというかSDUでは「ナナにこき使われてるザックスといい友人関係築いちゃう」ような
悲劇っぷりでいくはずです。きっと。
これからもSDU:名無しのNANAをヨロシクお願いします!
追記:静岡サイトを巡ってきました。ロビー君いかす。
でもMさんは怖いものが大嫌いなので(自分が怖いものになるのは大好き)
おトイレに早めにいこうとおもいます。ぶるぶる。