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No.36294の一覧
[0] こんなNARUTOは嫌だ[さば](2013/02/24 01:08)
[1] こんなNARUTOは嫌だ2~もう一人の化け物~[さば](2012/12/27 04:07)
[2] こんなNARUTOは嫌だ3[さば](2013/01/01 22:00)
[3] こんなNARUTOは嫌だ4の1[さば](2013/02/24 01:47)
[4] こんなNARUTOは嫌だ4の2[さば](2013/04/07 23:03)
[5] こんなNARUTOは嫌だ5[さば](2014/03/28 03:58)
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[36294] こんなNARUTOは嫌だ4の2
Name: さば◆cc5fc49e ID:f15c353b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/07 23:03
 最悪な夢により休日の朝を迎えたサスケ。そのサスケに差し入れを持参して、突然訪れたナルト。その後、朝っぱらからサスケ宅ではその夢の続きが始まり……………なんて事になる訳が無かった。
 朝食のカップラーメンを食べ終えたサスケは、ナルトに頼まれた通り、うちは集落にある老舗の煎餅屋へとナルトを案内した。
 道中の二人は始終無言であった。ナルトは目的地に到着するまでの間、うちは集落のたたずまいが物珍しいのか、しきりにキョロキョロと目を動かせている。サスケも先ほど見た夢の影響か、食欲を満たされた後でも敏感な股間が反応する事は無く、久々に静かな休日の午前中を過ごせていた。
 あの事件により、今のうちは集落にはサスケ以外は誰もいない。普段は性欲に縛られているサスケではあるが、今日に限ってはそんな気になるような事は無かった。通り過ぎていく集落の民家や商店からは、以前に住んでいた一族たちの息遣いが聞こえてくるようであった。その息遣いを思い出していくうちに、サスケはある一人の男の事を思い出す。『うちはイタチ』サスケの実兄にして、あの忌まわしい事件を起こした張本人である。何が目的で、あんな事をしたのだろう。なぜ、俺一人を生き残らせたのか。兄に対しては遠い昔の思い出などは消え失せ、残された感情といったら復讐しかなかった。煩悩から解き離されたサスケが、改めて一族を失ったという孤独を実感し兄への復讐を思い出し始めたころ、二人は目的地である煎餅屋へと到着した。

 到着してからの、ナルトの仕事は早かった。『心細いから一緒に居てくれよ』と、サスケに言うや否や、バタバタと煎餅屋に上がり込んでいき、家中の引き出しを開けたり、扉や襖を開けたりと、ものすごい勢いで目的の物を探し始める。そして、驚くような速さでナルトは目的であった『うちは煎餅製造法』という、一冊の古びれた本を探し当ててしまったのだ。
 誰もいないとはいえ、通帳や権利書にも値する秘伝の書をたちまち発見して見せるというのは、至難の技である。それをごく短時間でやってのけたナルトは、盗人として生まれ持った嗅覚が優れていたか、何回かこういう事をやっていたかのいずれかであろう。いずれにせよ、ナルトは盗人としての天稟を持っていたのだ。
 その一部始終を見せつけられたサスケは、今まで落ちこぼれとばかり思っていた同級生の非常に意外な一面を垣間見て、呆れるとともに感嘆した。自分に無い物を持つというのは、それだけで引き寄せられる事もある。

「これがお目当てのブツなんだってば!」

 古びた書物を手に、ナルトは無邪気に喜ぶ。余程嬉しいのか、埃まみれの書物に息を吹きかけほおずりしている。そして、嬉々としたまま大切そうに懐へといれた。

「サスケ!本当に六四でいいんだよな!」
「…………好きにしろ、と言ったはずだ」
「念のためなんだってば!これに名前書いてくれよ!」

 ナルトは懐から一枚の、何やら文字がびっしりと書かれた紙とペンを取り出した。丁寧にもサスケの名前がうっすらと鉛筆で下書きまでしてある。

「わからない文字とかあったら言ってくれってば!」

 興奮冷めやらぬ、といった表情でナルトはサスケを覗き込んでいる。

「何だこれは」
「契約書みたいなものなんだってば!これに名前書かねえとせっかくの煎餅の売り上げがお前に入らない、なんてことも。俺が売り上げ全部持って行ってもお前は文句言えなくなるんだってば!もちろん俺はそんな外道な事はしないけど、念のためなんだってば!名前さえ書いてくれりゃあ、お前のためになるんだってば!絶対に悪い話じゃないんだってば!楽に考えようぜ!口寄せの契約みたいなもんなんだってば!これで仲間になれるんだってば!」

 サスケが紙に書かれた文章を読もうとすると、耳元でナルトが大声でまくし立ててくる。苛立ちを覚え始めたサスケは乱暴に名前を書くと、ナルトに紙とペンを突き出した。

「ありがとなサスケ!これで俺たち、仲間なんだってば!」
「……フン、金の亡者め」
「褒め言葉なんだってば!」

 ナルトは突き返されたそれを押し戴くように受け取ると、再び大切そうに懐へとしまい込んだ。
 煎餅屋の時計が十二時前を指している。ナルトの早業があったいえど、何だかんだで時間は進んでいた。里の中心街ならば昼食をとりに店に向かう人々で通りが賑わう時間帯なのだが、サスケとナルト以外には誰もいないこの集落は、物音は何一つ聞こえない不気味なほど静かなものであった。

「用が済んだのなら、帰れウスラトンカチ」

 煎餅屋から表へと出ると、サスケはナルトに背を向けて自宅の方へと歩き始めた。未だ性欲を感じないサスケの背中は、いつもよりも寂しそうな雰囲気を背負っている。性欲を感じない分、他の事に気が回ってしまうので、一族の事はもちろん、失った家族や兄の事を考えてしまうのだろう。
 歩き去っていくサスケの哀愁を帯びた背中を見たナルトに、悪戯好きという生来の性分が沸き起こってくる。気づかれぬように印を組み、ナルトが覚えた唯一の術と言ってもいい、変化の術で自身の姿を変えた。変えた姿は、金髪全裸。

「サスケェ!」
「!!!」

 雑誌の表紙や新聞のピンク欄で覚えたポージングをとり、ナルトはサスケの名前を叫ぶ。振り向いたサスケの反応は、早かった。

 人間が感情というものを持つように、筋肉もまた感情を持つのだろうか。
 金髪全裸の姿を見た瞬間、サスケの前身の筋肉は躍動を始め、目の前の金髪全裸へと飛び掛かる。間合いを詰め、体を制し足を払う。雑音を発せぬよう手は口を覆い、馬乗りとなった足は獲物が起き上がることを防ぎ、残された片方の手は自身の下半身へと伸びていた。この一連のまったく無駄の無い動きの中に、サスケの思考は一切入っていない。性的な興奮を覚えるたびに苛められてきた筋肉が、その過程で体に刷り込まれていった技術が、金髪全裸の姿を目撃した瞬間にサスケの思考回路をすっ飛ばして反応していたのだ。まるで、こういう時のために、日々鍛えられていたのだと言わんばかりに。
 すぐに飛びつかなかったあたり、夢の中のサスケの方が現実よりもはるかに理性的であった。

「…………」

 組み敷かれ声を発する事もできないナルトは、覆いかぶさっているサスケを恐怖におびえた目で見る事しかできなかった。サスケの名前を叫び、サスケが振り返った直後、物凄い勢いでサスケが飛び掛かってきて、気が付いたら組み敷かれていたのである。その恐怖により、ナルトの術は解けていた。

「…………チィィィッ!」

 組み敷いた獲物が雌ではなく雄だと認めると、ようやくサスケに理性が戻ってきた。大きな舌打ちのあと、ナルトの上から体を動かした。

「サ、サスケ……お前、目が」
「お前に何が解る!ウスラトンカチ!」

 組み敷かれた時にナルトが見たものは、車輪のような模様をしたサスケの眼であった。その事を指摘され、サスケは怒る。それは奇怪な眼についてなのか、裸体に反応した自身の筋肉についてなのかは、本人にしかわからない。ここはうちは一族の名誉のために、前者という事にしておきたい。

 サスケの眼に現れたものは『写輪眼』という、うちは一族につたわる瞳術であった。三大瞳術の一つに数えられる写輪眼は、忍術や体術といったものを瞬時に見切ったり、動体視力が飛躍的に向上したりという、うちは一族の代名詞ともいえるものであった。
 感情によって影響を受けるこの瞳術をサスケが開眼したのは、恐らく家族が死んでしまったあの事件の時であろう。しかし、開眼はしたものの、サスケ本人が自覚したのはこの時では無かった。自身に特別な瞳力があると知ったのは、サスケが性に目覚めてからしばらく経った時である。
 土手沿いを歩く人妻の尻によって性的な興奮を覚えてから、サスケは自慰に狂うようになっていた。その回数は、一晩で二十や三十という、常人では考えられない回数をこなしていた。アカデミーを卒業していないまだ年端もいかぬ少年が、だ。
 度重なる射精によって脳への刺激が異常になると、ホルモンバランスが大きく崩れてしまい命の危機となる事もある。俗に言う、テクノブレイクという現象である。
 連日連夜に及ぶ自慰を繰り返していたサスケの体に、ある日異変が起きる。いつものように射精をして、その開放感に酔いしれていた時であった。体が重く感じたサスケは、その場に横たわる。そのまま天井をぼんやり眺めていると、次第に視界が狭くなっていき天井の模様がぐるぐると回り始めた。早打ちしている心臓の鼓動が体に伝わり、明らかな異常を教えている。意識も遠くなっていったサスケは、このままでは死んでしまうと何とか起き上がろうとしたが、重い体が言う事を聞かない。早打ちしていた心臓の鼓動が弱くなっていき、視界も更に狭くなっていく。サスケは下半身を露出した状態で『死』というものが身近に迫っている事をその身をもって実感していた。
 サスケの体に奇跡が起きたのは、その時であった。
 サスケが意識を手放そうとしたその瞬間、後頭部を何者かに叩かれたような感じがした。その衝撃により、重くのしかかっていた瞼が解き放され、はっきりと見開けるようになった。さっきまでは狭くなっていた視界が広くなり、ぐるぐる回っていた天井の模様は鮮明に映し出されている。心臓の鼓動も、いつも通りに戻っていた。
 体が正常に戻ったので、性欲に憑りつかれているサスケは懲りずに手元にある成人向け雑誌のページをめくる。素人撮影コーナーの撮り下ろし写真を目にした時、サスケは自身の目にある異変が生じている事を知った。
 いつもなら美しく見える女性達の写真が、醜く、いや、鮮明に見えすぎているのだ。丸みを帯びているはずの尻や乳房が、よく見えすぎているためか点の重なり合いのように見えてしまう。写輪眼により視力が劇的に向上したサスケの目には、画素の荒い投稿写真などはドットの集まりのように映ってしまうのだ。
 目をこすったり目薬をさしてみても見え方は変わらず、おかしいと思って洗面所の鏡を覗き込んだとき、サスケは自身の瞳に車輪のような紋様が浮かび上がっているのを確認した。
 一族伝統である写輪眼の存在を知らないこの少年は

(このままだとエロ本読みづれえな)
 
 としか思っていなかったが、時間が経てば自然と消えるようだったので、あまり気にする事はなかった。
 そして、この日を境にしてサスケは己の精子によって生死の狭間を彷徨うたび、写輪眼を発動させていた。何回かそういう経験すると、ある程度なら自由に写輪眼を操れるようになっていたのだが、エロ本が読みづらくなるので普段の生活において発動させる事は無かった。
 サスケが禁欲の道に入ってからは、この瞳の状態になるとチャクラの消費が多くなるという事に気付き、並の修行では性欲が鎮まりきらない場合、ちょこちょこ発動させている。
 写輪眼を知らないが故に、サスケは使い方を完全に間違えていた。しかし、うちは一族の天才は、そうやって知らず知らずのうちに牙を磨き続けていたのである。

「俺はあの事件のせいで一族を失った」

 理性を取り戻したサスケは地べたへと座り込み、奇怪な写輪の模様を浮かべた目を押さえながら呟いた。体を解放されたナルトはすぐさま距離をおき、サスケの様子を伺っている。

「何としてでも一族を再興させなきゃならねえんだ……一人でも多くを、な…………一族を失った事ののないお前に、俺の気持ちが解るかナルト!」
「……全然わかんねえってば」

 股間を押さえながら睨みつけてくるサスケに対し、ナルトは怯えた調子で答える。サスケはフンと鼻を鳴らすと、股間と目を押さえたままその場でうなだれた。
 住人がいないうちは集落は、非常に閑静なものとなっている。時折集落で耳にする小鳥のさえずりや発情期をむかえた猫の鳴き声は、今となっては亡き一族に対する読経のように聞こえる。
 ナルトとサスケは互いに沈黙したまま、集落の道に座り込む影となっていた。






「かいつまんで言うと、子供をたくさんつくらなきゃいけねえって事?」
「まあ、そう……かな」
「で、一発も無駄にはできないから修行して抑え込んでるってわけか」
「…………」

 太陽が里の真上に差し掛かった頃、無言で座り込む影となっていた二人はうちは集落の通りをとぼとぼと歩いている。
 物言わぬまま座り込んでしまったサスケに対し、ナルトはいっそのこと置き去りにして逃げてしまおうかと思っていた。しかし、そうはさせなかったのは、サスケがうちは煎餅の保有者であったからである。煎餅の製造法を手に入れたナルトは、サスケが後になってから四の五の言ってくる事を懸念していた。契約書は先ほどサスケに署名させたものの、真の保有者が誰かと問われれば誰の目から見ても一族の末裔であるサスケがそうである。つまり、後から言い出しても大義名分はサスケにあり、世論はサスケに同情する可能性があるのだ。
 煎餅で一山当てようと目論むナルトにとってサスケはお得意様であり、契約書を書かせた時にも言ったように実質的な仲間ともなっていた。座り込んでしまったサスケにこのままへそを曲げられてはまずいと思い、あれからナルトはサスケを落ち着かせ、なだめ、時には褒めたりしながら必死に機嫌をとっていたのだ。
 その努力が実を結んだのかサスケは冷静さを取り戻していき、ナルトに誘われて煎餅屋から帰宅の途についていたのである。その道中、ナルトは絶えずお得意様に語り掛け続け、一族を失った苦悩や性的な悩みなどを聞くに至っていた。

「でも、サスケの夢はここじゃあ難しいかもなあ」
「……どういう事だ」

 気が付けば、サスケ宅の前へと足は進んでいる。そこでナルトに夢を否定され、サスケの足は止まった。ふつふつと激情が煮えたぎっているのが伝わってくるが、ナルトの口はそこでは止まらなかった。

「だってホラ、一夫多妻制とかじゃないだろ、ここ」
「一夫多妻制、だと」
「一人の女に子供を産ませようにも限界ってもんがあるんだってば。よそで女と子供つくっても、認知できねえから一族とはみなされないんじゃないのかなって」

 ただ相手の言い分に対し肯定しているだけでは、真の信頼を得る事はできない。幼少より蔑まされ、金に魂を売ったナルトが、人を騙して生きていく為に培った人生哲学であった。一か八かではあったが、会話に乗ってきたサスケを見て邪悪にほくそ笑むと、続けて畳みかけていく。

「ここで女を囲うってのも大変なんだってばよ。経済的にも、世間体的にも。木の葉って親戚とか多いじゃん」
「………」

 一理ある。
 ナルトの言に、サスケはそう思った。
 法治国家火の国においていかに忍者といえど重婚など許される訳がない。ひそかに愛人を作った政治家や芸能人が、誹謗中傷の目に晒されて哀れな末路を辿り没落していった様を、サスケはワイドショーなどを通じて知っていた。
 ではどうすればいいのだろうか。真の意味で一族の再興を果たすためには。
 考え込むサスケの様子を見て、ナルトの口角は邪悪に歪む。

「南の方の国は、そういうのおおらかだって聞いた事あるような」
「どういう意味だ」
「一族の再興……その夢を成し遂げるには、一夫多妻制の国に行くしかねえんだってば」
「里抜け、か」

 忍者にとって禁忌とされる里抜けであるが、今のサスケにとっては希望に満ちた魅惑的な響きを持っていた。
 あの事件により一族を失ってしまった訳であるが、果たして里は何をしてくれると言うのだろうか。国のため里のためと、戦乱が起きるたびに一族達は少なくない命を散らしていった。一族は少なからず貢献してきたはずだ。しかし、そんな一族を失った今、周りは同情の目を持って見てくるだけで、具体的な再興についての行動など何一つ無い。上の連中は厄介者が減って良かったとでも思っているんじゃあないのか。
 一夫多妻制という現実を前に、サスケの中に里に対する疑心の念が浮かび上がってくる。
 そして、疑心暗鬼となっているサスケに対し、ナルトはここぞとばかりに言葉を続ける。

「里抜け里抜けっていうけど、もうそんな時代なんじゃないんだってば」
「何だと」
「忍者は自分の実力に見合った環境に身を置くべきなんだってば。そこに古びれた里の掟なんて関係ない。一昔前の忍者はみんなそうだったんだってば。損得勘定をはかりにかけて合理的に行動するのが本当の忍者なんだってば。そうは思わないかね、サスケ君」
「…………」

 ナルトの手前勝手な言葉は、夢に出てきた金髪全裸の悪魔の囁きのようにサスケの心を揺さぶってくる。一族再興という野望を抱いているサスケにとって、一族の再興と里の掟をはかりかけた場合、傾くのは当然前者の方であった。

「今はまだその時じゃ無いけど、俺もいずれは里を抜けてやるんだってば」
「…………何」
「俺の夢は金持ちになる事。落ちこぼれっていわれている俺がこのまま真面目に忍者になったとしても、一生下忍の日銭暮らしで終わるだけなんだってばよ……いつかこの里を抜けて、大金持ちになって、俺の事を馬鹿にしてきた奴らを見返してやるのが俺の夢なんだってば」
「……ナルト」

 手前味噌な事を言い終えたナルトの心境は『我が策、ここに成れり』といった感じであった。
 いずれは里を抜けると言い放ったものの、それはナルトの本心ではなく、疑心を抱いているサスケに擦り寄るための方便であったのだ。形は違えど同じ志を抱く者として、サスケの心に刷り込ませるのが目的である。今までとは少し違う目でサスケが自身を見ているのを
察知すると、ナルトの邪悪な笑みは更に醜悪なものとなる。

 全く違う過酷な運命を背負った二人の少年が、誰もいないうちは集落において、それぞれの思惑は別として夢を語り合った結果となった。
 ナルトは念願の煎餅製造法を手にし、サスケは一族の再興へと向かう道をそそのかされた。
 サスケがこれから辿っていく道は、原作からは大きくかけ離れたものであるのかもしれないし、そうでないのかもしれない。迷える一族の末裔にとって『里抜け』という道は、決して避ける事のできない大きな壁となっている。正義感溢れる原作のナルトにとっても、一歩間違えていればそうであったであろう。

 二人がサスケ宅の玄関先に着いてから、しばらくが経った。互いに沈黙したままであるが、先ほどのような空気の重苦しさは無い。サスケの脳裏には、一族の再興とナルトに言われた里抜けの事が駆け巡っている。一方のナルトは、サスケを愚策に陥れた事に満足し、帰るタイミングを見計らっていた。

「サスケ、一つだけ聞きたい事がある」

 黙り込んだサスケにたまりかね、ナルトが口を開いた。聞きたいことなど特に有りはしないのだが、何かきっかけになればと単純に気になっていた事を聞くつもりである。

「赤玉が出るのをを防ぐために頑張ってるみたいだけど、どうしても出ちゃう時とかあるだろ?」
「どういう意味だ」
「え~と、アレだよアレ!朝起きたら出ちゃってるやつ!夢精、って言うんだっけか」

 全力で射精を阻止しているサスケに対し、ナルトがふと抱いた疑問であった。覚醒時なら催してもそれ以上の負荷を体にかければ、勃起は納まる。この原理は理解できた。しかし、人間が寝ている時、意識の無い状態では手の施しようがない。手を施さなくても、出るときは無意識に出てしまうからだ。
 一族再興のためにストイックに生きるサスケが、この問題に対していかなる手段を持って立ち向かっているのか。ナルトの疑問はそこであった。

「ああ、アレか」

 押し黙っていたサスケの口が開く。ナルトは軽い気持ちで尋ねた事であったが、聞いてみるとかえって気になってくる。耳を研ぎ澄まし、サスケの言葉を待った。

「…………ノーカン」
「えっ?」
「アレは、ノーカンだ」

 返ってきたサスケの言葉は、耳を疑いたくなるようなものであった。『ノーカン』つまり、無かった事にする。ナルトは思った。こんなに都合の良い言葉を聞いたのは、どれくらいぶりだったろうと。ましてやその言を発したのは、生理的な欲望と日々闘っているうちはサスケである。当の本人は、自身の言ったことは信じて疑わないという、強い意志を持った真顔だ。

「故意じゃないなら、罪には問えないだろ」
「……………………サスケが言うなら……間違いないんだってば」

 理解に苦しむサスケの発言に、ナルトはただ同調するしかなかった。急な頭痛を覚えたナルトは、言葉少なにサスケへと礼を述べると、ふらふらと帰宅の途についていくのであった。


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