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No.36258の一覧
[0] 【恋姫†無双】恋姫†演義【更新停止】[おまる](2013/01/09 22:07)
[1] 第一回 「亂世之英雄訪れ一刀立つ」-1[おまる](2013/01/09 05:12)
[2] 第一回 「亂世之英雄訪れ一刀立つ」-2[おまる](2012/12/24 22:28)
[3] 第一回 「亂世之英雄訪れ一刀立つ」-3[おまる](2012/12/25 07:58)
[4] 第二回 「王佐の才と黄巾の乱」-1[おまる](2012/12/26 23:40)
[5] 第二回 「王佐の才と黄巾の乱」-2[おまる](2012/12/27 10:24)
[6] 第二回 「王佐の才と黄巾の乱」-3[おまる](2013/01/09 05:10)
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[36258] 第一回 「亂世之英雄訪れ一刀立つ」-1
Name: おまる◆ad66ea75 ID:56f339a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/09 05:12
漢朝は高祖が白蛇を斬って義兵を興し、もって天下統一をした事に始まる。
後に光武帝の中興があって、以来献帝まで伝わったが、ついに三国に分かれた。
その乱の源は桓帝と霊帝、二君の政策にあるといって相違あるまい。

桓帝は正義の士を弾圧し宦官を重用した。
宦官は、異民族の捕虜や献上奴隷、あるいは囚人が去勢され、皇帝や後宮に仕えるようになったのが始まりである。
しかし、宦官の特徴——性器を失い子を成すことが出来ず、ひいては権力を世襲できない、そのことが彼らの存在価値を高めた。
常に皇帝と密着した存在であり、皇帝と離れては存在できなかったことから、皇帝が権力を託すための存在として必要不可欠であったのである。
故に、宦官の中には皇帝やその寵妃等に重用され、権勢を誇る者も出て来るようになる。
そうなると自主的に去勢して宦官を志願する事例も出てくるようになった。
漢朝において官僚は特権階級となった。
庶民階級の者が文武問わず正規の官僚として高位へ登る道は、科挙を除くと事実上ないに等しい。
そのため宦官を志願する者は後を絶たなかった。

そうして宦官が権勢を深めていく中、桓帝が崩じた。
桓帝の後に即位した霊帝も、宦官を引き続き重用した。
この状況を危惧した大将軍陳武を始めとした志士達が、宦官達の排斥を謀ったが、これを看破され、逆に殺害された。
宦官の専横はここに極まった。

宦官の権力欲は、去勢されていない者に比べ遥かに強い。
性欲を捨て、一族を成すことすら捨てた彼らに残されたものは、現世での成功、それのみである。
次代に託すという考えのない彼らにとって、国の安定は重視するものの内には入っていなかった。
如何に競争に打ち勝つか。如何に権勢を誇るか。如何に自分の身を守るか。
それを優先事項として行動する彼らが中心となった政治が、腐敗していくのは自明の理であった。
雷雨や地震、津波といった天変地異がたて続けに起こり、民衆達は口々に噂した。

これは、宦官達が政に関わっている為だと。
徳のない彼らを天は許しはしないのだと。

そしてここに、高名な占い師管輅の予言が加わる。

「天より使わされし御使いが流星とともに地に降り立ち、乱れる世を太平へと導くだろう」

腐敗した政治に日々を侵され、救いを求める民衆達はこぞって予言を広めていった。















第一回 「亂世之英雄訪れ一刀立つ」















「そこに座れ。一刀」

「はい」


許しを得て、寂然と危座する一刀。
彼が静かに見据える先には、一人の壮年の男があった。
彼の名は司馬防建公。
北郷一刀——今は司馬懿仲達と呼ばれる——彼の、父であった。
父は彼をじっと見つめている。
質実剛健、威厳の固まりでできたような父である。
その視線に晒され、居心地の悪さを感じるのは彼の心胆の弱さの故というのは酷であろう。
自室で寛いでいる時でさえその姿勢を崩さない父は、その厳格さを彼の息子達にも適用する。
雷鳴の如き怒鳴り声を浴びたこともあれば、その鍛え抜かれた拳で打ち付けられたこともある。
今年数えで18になる一刀であったが、父は未だ頭が上がらない存在であった。

その父の言葉を待つ。
父の許しなく先に口を開くことは許されれいない。


「明日、曹孟徳殿がいらっしゃる。用件はわかっていような?」

「——はい。出仕の件でございますね。」

「無論。度重なる出仕の要請、悉く断ってきたが…痺れを切らしたか、とうとう本人の出陣と相成った」


その言葉に頷きながら、一刀は思考を走らせずにはいられなかった。
——曹操孟徳。
"三国志"の並み居る英傑の中でも、最も才に溢れた存在だ。
そして、一刀の知る"歴史"であれば、司馬懿仲達の主君である。
人並みの名誉欲を有する一刀であるから、歴史に名を残す機会があるならばそれを掴みたいと思っている。
故に、"歴史"のように曹操に仕えることに異議はない。
"前世"においてはあくまで読書と剣道好きの一般人でしかなかった彼。
しかしその知識を持ったままこの世界に生まれたことで、彼は自身の知が"歴史"における司馬懿に勝るとも劣らないものになっていると自負している。
"前世"と比べると娯楽が遥かに少ないこの時代である。
自然と一刀の生活は読書と剣術が中心となった。
膨大な書を読み尽くし、今世の父である司馬防の厳しい指導を受け、更には遥か未来の知識をも有する一刀の知。
それは少なくとも周囲——無論姉の司馬朗伯達を始めとした姉弟達も含む——に比肩する者がいない程度にはなっていた。
もし"歴史"と同じように曹操に仕えれば、その重鎮となり、後に天下を統一する晋の礎を築く迄、その英知を知らしめることができよう。

しかし、この時期に仕えるのは早い、と彼は思っていた。
この世界は、一刀の知る歴史とは相違がある。
"気"というものが存在し、故に一部の女性は男性を能力的に超える。
そのためか歴史上に名を残している多くの武勇は女性であったし、"三国志"の舞台となるこの時代の英傑達——曹操、劉備、孫権といった人物達も、また女性であった。
しかし、そういった決して小さいとは言えない相違があっても、大まかな歴史は一刀の知る"歴史"と同様である。
故に、一刀が司馬懿として名を残すには、なるべく彼の知る"歴史"に沿って行動するのが良い。
つまり、今の段階では曹操の誘いを断り、後に曹操が丞相の地位を手にし、改めて彼の出仕を求めた時に了承すれば良いのだ。
もし現段階で曹操に仕えることで歴史が変わり、命を落とすようなことがあってはやるせない。

以上のような理由で、この度の誘いも一刀は断るつもりだ。
しかし、曹操が直接訪れるとは意外であった。
"三国志演義"においてもそうであったか。
一刀の主観では20年以上前に読んだものなので、細かな描写は覚えていない。
しかし、そんな場面はなかったように思う。
劉備が諸葛亮に対して行った三顧の礼とは違う。
いや、もしかしたら書には描写されていなかっただけで、実際にはこのような事もあったのかもしれない。


「一刀よ。今回も断るのか?」

「はい、そのつもりです。」

「以前から言っているように、出仕に関しては私から口を出すことはするまい。
 お前がそれで良いというのであればその意思を尊重しよう。
 だが、これまでのような文や使いによる勧誘ではないのだ。断るにしても理由を述べなくてはならんだろう」

「はい、わかっております。……しかし、私が見るに、漢朝の命運は今にも尽きんとしているように映ります。
 朝廷の重臣たらんとしている曹氏に仕えることは、私自身にも、我が家門にとっても、分が悪いと言わざるを得ません。
 無論、音に聴く彼女の才です。あるいはこの荒海をも乗り越えるかもしれません。
ですがそれに賭けるには材料不足。今はまだ様子見を続けることが最良と見ています。」

「意見は変わらず——か。しかしそれをそのまま孟徳殿に伝えるわけにはいかん、それについてはどうなのだ」


当然だ。漢朝が滅びると見ているなどと公に口に出来る筈がない。
そのようなことを言えばその場で叩き斬られても文句は言えない。
一刀は考える必要があった。曹操を納得させ、かつ当たり障りのない返答を。
いくつかの案はあるが、後は本人の気性を見なければ決断はできない。
彼はこれから曹操が行うであろう施策や、後の世に伝わっている私事については知っているが、"彼女"の本当の性格や思想については何も知らないと言って良い。
直接見たことも、会話したこともないのだから。


「いくつか考えはありますが、やはり本人と相見えてから判断することにします。」

「……ふむ。まぁ、お前ならそう判断を誤ることもあるまい。一姫のように焦ることも、な。」


一姫というのは、一刀の姉である司馬朗伯達の真名である。
彼女は12歳で経典の暗記で見事に及第して、童子郎という官職を得ている。
一刀には余り名誉欲がないように見えた姉が、そのような行動に出た理由。
それが一刀という弟の存在からの焦り故、と父は見ていた。
そしてそれは一刀も同意である。
だが、一刀はそう悪いことにはならないと楽観している。
彼の知る"歴史"においても、司馬朗は同じ行動をとっている。
董卓の悪政に巻き込まれるが、結果的には脱出し、その後は曹操に仕え良き人生を歩む筈だ。
一刀の存在に精神的重圧を感じていたのをおくびにも出さず、可愛がってくれた姉のことは好いている。
彼女が不幸になるならば全力で引き止めていたであろうが、そうでないのだから良いのではないか。
離れて暮らすのは寂しいが。
しかしその程度に思っている一刀のようには、彼の父は思えないようである。
如何に厳格であろうと親である。
親が子を心配する種は尽きない。
たまにこのような様子を見せるから、傍目に見れば厳し過ぎる父のことを、一刀は慕っていた。


「まぁ今一姫のことは良い。お前がしっかりと考えているならばそれで良い。
 ……さて、後は儂の知る孟徳殿の直近の情報をお前に話しておこう」

「はい、宜しくお願いします」


一刀は曹操との面会を楽しみにしていた。
遥か未来までその名を轟かせる英傑、それは一体如何程の人物であろうか。
出仕を断るにしても、その人物と会い、言葉を交わすことができるというのは堪らなく魅力的であった。
だが、一刀は今は未だ知らない。
その邂逅が、彼の未来において大きな影響を及ぼすことを。
彼の道が完全に定まることを。
そしてそれが、後の世に伝わる司馬懿仲達、その英雄抄の始まりであることを。


「私が曹孟徳よ。貴方が司馬仲達?」





















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