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No.36157の一覧
[0] フラッシュキラー【読み切り短編 デスゲーム系VRMMO物 ダークヒーロー?風】[to](2012/12/16 08:17)
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[36157] フラッシュキラー【読み切り短編 デスゲーム系VRMMO物 ダークヒーロー?風】
Name: to◆d0876318 ID:9de7bfc3
Date: 2012/12/16 08:17
 考えていた設定を元に何となく書いてみようと思いついたものです。
18禁ほどではないですが、グロとかえげつない表現がありますのでご注意を。

 ・

 感想いただきました、ありがとうございます。
設定ばっかりではやはりダメですね……もっとキャラ性を考えないと。

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 「ポイズン・レイン」

 俺の詠唱の一言と共に、空から赤い雨が降る。
人の血のような色をした雨は、範囲内の目標全てに毒を与える。

 「補助の魔法屋ごときがよぉ、テメェ何俺らのHP減らしてんだコラ!
死ぬか?え?おい」

 『死ぬか』の一言に強いニュアンスを込める甲冑姿の重戦士は、
ここが何処で、自分の発言が何を意味するのかを知っている。

 ここは、本当に命を奪われるゲームの世界だ。
馬鹿馬鹿しいと思うかも知れない。有り得ないとも。

 だが実際に人は死ぬのだ。例えばそう、俺の友人のように。

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 ヘッドギアからのパルスによる電脳世界への没入は、
昔からデスゲーム、つまりゲーム内と現実の死とのリンクを
SFの世界でネタにされてきた。
だが実際には脳を煮立てたりするような出力があるものは
軍用、医療用、違法改造品のどれかでしか無い。

 しかしどこかの馬鹿野郎が、生理作用への影響による殺害を
微弱信号だけで出来るプログラムを思いつきやがった。
そして、それを実際にやる事も。

 ――結果、俺の友人が心臓麻痺で死んだ。
民生機で、普通のゲームをプレイ中に。

 死因は脳内物質の過剰放出による心臓麻痺。
つまりはギャンブルでとんでもない大当たりをしたせいで、
そのまま棺桶を金のプールにするハメになった博打狂いと同じだ。

 俺はいつでも冷静にプレイをしていて、
高ランクのレア装備が偶然ドロップしようが気にも留めず、
クラスが合えば俺に分けてくれるような友人が、
そんな死に方をすると思えなかった。

 絶対におかしい。
世間がどう叩こうが、ゲーム脳がどうこうとほざこうが、
俺は信じず、ヘッドギアと脳活動の関係を調べていた。
中坊の身で医学書を読み解こうとした事もあれば、
ネットの噂話に飛びついたことも。

 そして、見つけたのだ。このデスゲームを。

 物理的な生産や配送や法規制(軍用は当然機密も多い)が
あるせいで足のつきやすい特別仕様ではなく、
そこいらの店で買えるVR機で行われる、命のやりとりをするゲーム。

 主催者のクソ野郎は、そんな楽しい世界を提供するために
『実験』をしていたと自慢げに語っていた。
このゲームは金持ちのギャンブル対象としても提供されるから、そのための臨床だったと。

 クソが。クソが!クソクソクソ!クソ野郎が!

 俺はこのゲームも、主催者も、ここで命のやりとりだのを
楽しんでる、つまりはこんなものを生み出す原因になった
需要層どもにも心からムカついた。

 てめえらの心臓も止めてやる。
胸を押さえてのたうち回って、泡吹いて死ぬ辛さを味わわせてやる。
あいつの顔に浮かんだ苦しみを、お前らのものにしてやる。

 だが俺はソロだった。どこまでもだ。
こんなゲームでパーティが組めるか。
どこの馬鹿どもと仲間になれるか。
勝ったら人が死ぬって事がどういうことか、分かりもしねえ奴と。

 だから俺は、ソロでもこいつらを殺せる手を考えた。

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 相手は六人、重戦士二人に魔法剣士二人と回復術師に攻撃魔法師。
標準的なパーティと言っていいだろう。
こっちは黒いローブ、つまり呪術師が一人。

 なぶり殺しを楽しめると見たのか、全員ゲスな笑い声を上げる。
それとも殺さない代わりに装備を全部置いて詫びろとでも言うか。
こういう連中の行動パターンは基本同じだ。

 「死ぬのはてめえらだよ」
 「あぁ!?んだコラ、てめーのHPなんてなあ、俺サマの剣なら一瞬で……」
 「なら早く来いよ、犬の遠吠えか?チンピラ」

 ちょっと煽ってやればすぐ飛びついてくる。
こっちのクラスも忘れた状態で。

 重戦士が現実では有り得ないくらい素早く踏み込んできたが、
足元からの黒い霧に包まれて足を止める。
カース・ミスト。行動の強制キャンセルと一定時間の方向混乱の
付与がある罠魔法だ。
ソロで来て何の対策もない訳がないだろう、殺ししか頭にないアホめ。

 流石にこいつよりは冷静だったか、他の連中はこっちを回りこんで取り囲みにかかる。
だが今度は本来の麻痺属性魔法をぶちまけてやる。

 「パラライズブレス」

 俺の周囲に現れた悪魔が息を吐き、重戦士の二人目も
一定時間のスタン状態になる。
一人だと見れば耐性魔法を事前に振るような慎重さは、こういう連中にはない。
だが元からの魔法耐性の高さのせいか、マジックユーザー二人と
魔法剣士は突破してきた。

 俺は魔法剣士の刺突を食らった。
流石にクリティカルポイントはシャレにならないので外しておく。
だが、こいつは俺の腕を突き刺した。

 俺の腕から流れ出る黒い血が、魔法剣士に高速で流れていく。
ブラッド・ソーン。相手を血の茨で縛って速度ステータスにマイナス効果を及ぼす。
血の茨に巻き付かれて、魔法剣士は一気に動きがのろくなった。

 耐性がいくら高いと言っても、一本伸ばしの呪い屋が
直接ダメージをトリガーに発動する魔法を使ったんだ。
今のレベル帯で完全耐性のある奴や装備は無いんだよ。
でなきゃてめえの汚い剣なんぞ食らう気はねえ。

 俺は縫い針を根元まで刺された程度だが、痛い熱さを感じながら
腕を引き抜く。
民生機プレイだから、信号伝達回路が弱くて強い痛みの信号を乗せるのは不可能だ。
通常のゲームよりは痛いが、死ななきゃこの程度だ。
のたうち回って死ぬような事はない。
この程度の痛みも耐えられないで、復讐も何も無いからな。

 俺は残りのマジックユーザーどもに向き直って、次の呪文を唱え始める。
 ヒーラーの方はディスペルを唱えるつもりらしいので、
全力で走っていって顔面を殴りつける。
大して痛くなくとも、詠唱データがリセットされるから時間稼ぎになる。
その間に攻撃屋の方がフレイムシュートを完成させていた。

 焼け火箸とでも言うんだろうか、そういうもので刺された痛み。
だが俺はそんな痛みくらい知ったことじゃない。
このゲームを否定するためだ。こいつらを否定するためだ。

 俺は二人目に対して、アイテムボックスから呼び出したビンの液体をかける。
効果は一定時間の目つぶし。

 そして時間が出来た俺は、ヒーラーを蹴りつけながら新しい呪文の詠唱にかかった。
今度の魔法はバーサーク・エナジー。相手に一定のパワーを与える代わりに動作を低下させる魔法だ。

  --------------------------------------------------

 数分後、効果の長いいくつかの魔法を重ねたが
全員が全く動かなくなるって事はない。
馬鹿どもは必死に『仲間』とやらと連絡を取ろうとしたり、
急所である喉やらを守って体を固めている。
(連絡手段を潰すアイテムは、事前に使っておいた)

 「てめぇ、舐めたマネしやがってよお……
呪い屋風情が俺らを殺せるとでも思ってんのか?!ああ!?」

 焦りよりは怒りが滲んだような声で重戦士が叫ぶ。
実際俺の能力では、スタンや動作遅延の効果が切れるまでに
固めた体をほどいて殺し切るのは無理だろう。

 普通なら、な。

 「痛みを与えてやれなくて残念だ」

 本当に心からそう思う。
こいつらに与えてやれるのは、ゲーム内での死から来る
現実でのデスペナルティのみ。
だが俺がソロでこいつらを潰す手段は、これしかない。

 俺は最後のアイテムを呼び出し、紫色の粉をぶちまける。
すると、全員のアバターから完全に力が抜けた。

 つまり喉笛を守る手も落ちているから、
俺の装備できる最低ランクのダガーでも即死させる事が出来る。

 こいつはこのゲームの仕様じゃあない。

 人間の脳の仕様だ。

   --------------------------------------------------

 VR空間内へのダイブは、脳とゲームのフィードバックループで成り立ってる。
ゲーム内の座標やら色彩のデータを脳が受け取って解釈し、
そいつを見て脳がゲームに命令を返すわけだ。

 このループには成立する限界時間がある。

 250ミリ秒。
これは現実で脳が動作をイメージして、手に伝わるまでの時間だ。
だからこの時間より少しでも遅延すると、アバターは動かなくなる。
脳と実際の手のループが途切れて麻痺するように。

 だから俺は、重ね掛け可能な状態異常を多数使える呪術師を選択した。
毒、遅延(これは信号遅延じゃなくて、抵抗値増加処理の類だ。見えない泥沼とでも言うか)
呪い、麻痺、視覚破壊。相手へのエンチャントを含む動作変化。

 この状態異常データも脳が処理する事になるから、
状態異常を山ほど重ねてやれば脳側の処理能力が遅くなる。
余りに複雑な映像の動きを頭が理解しきれなくなるように。

 種を明かせば何の事は無い処理落ち殺しなわけだが、
人間の脳の仕様だからパッチを当てて改善は絶対に出来ない。

 そしてこのゲームはギャンブルにもなっているから、
俺や誰かの死ぬタイミングで賭けてるクソが居る限りは
修正すれば叩かれるだろう。

 いつかは改善策が発見されるか、俺も殺されるかも知れない。
だがそれまでの間は、俺はチーターにでも見えるだろう。

 脳のシナプス発火ループを殺す、光の殺し屋。
俺の黒いローブと呪いの魔法からは、そんな理屈を思いつくプレイヤーはいないだろう。
血に飢えた獣どもには、自分たちの光を見失う末路が似合いだ。


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