注意書き
作者は初めて投稿します。また初めての二次創作です。
ですので、失礼な投稿行為、表現方法があるかもしれません。
その点はご了承下さい。
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無機質な電子音が無駄な物が置いていない簡素な部屋に鳴り響く。
僕は手を伸ばして電子音を止めた——そこまでは良かったが、なにぶんその後の行動がしづらい。
「・・・寒い・・・」
その日は、僕にしては珍しくベッドの中で包まった時間を過ごした。
僕が海鳴に来てから、秋が終わり始め——もうすぐ初めての冬を迎えようとする。
ミッドチルダでも寒い時期はあるけど、いかんせん今年が初めて迎える日本の冬。どのくらい寒いのかはピンと来ない。
ここ地球では暖をとるにはストーブやエアコンと言った器具を使うそうだ。暖房器具を買っていなかったのが仇となったなと思った。別に、防寒対策を軽視していたわけではない。週末には、なのはとミナミ電機で暖房器具を買う予定を立てている。
ただ、冬の到来が予想より早かっただけで。
寒さに身震いしながら、朝の準備をする。
翠屋で買ったパンを焼き、コーヒーを入れる。翠屋の味に慣れてしまうとなかなかほかの店では買えなくなってしまう。
パンが焼ける間、携帯のメールを確認したりして時間をつぶす。
テレビをつけニュースを見ると『突然の寒波襲来』との字幕が目に入った。
・・・どうりで寒いんだな。
ここ海鳴の地はかつて真夏に雪が降ったこともあったらしい。
本当に摩訶不思議な土地だと思う・・・
そんなことを考えていると、部屋に良い香りが満ちる。
まずは、食べて温めよう。
「いただきます」
一口目のホットコーヒーが冷えた身体を刺激した。
海鳴駅に向かう方向の途中まで、僕の通っている高校、風芽丘はある。
サラリーマンが海鳴駅にいく中に混じって、僕は一人登校している。
今日は補習のために朝早く出ている。
理系の科目ならば補習のお世話にはなっていないけど・・・国語などの文系科目はもう少しお世話になりそう。
いつもは、なのはと一緒に学校に向かう。途中のバス停までなのはを見送ってから登校するのが日常だ。
だけどメールによると、今日のなのはは家業のお手伝いをしてから登校するらしい。なんでも急に人手が足りなくなったとかなんだかで。
つまり、簡単に言うと、補習と急用のせいで今日は僕の隣に彼女はいない。
さらに、今日の僕はホームルームなんだかで学校が長引く。
今日は寒いし彼女を待たせるわけにはいかない。
「今日は先に帰っていて」とメールを送っていたから、帰りに直接高町家に寄って晩ご飯をいただく形となる。
しかし、なのはと一緒に帰れない・・・結論は今日は会える時間が少ないかもしれない。急に寒くなるとネガティブな感情が湧きやすくなるのか・・・
「寒いな・・・」
いろんな意味で、寒い朝だった。
風芽丘は暖房設備はしっかりしている。
今日は寒いと知るや教師は部屋を暖かくして、補習を始める。
今日の補習は古典だ。
今のように文明も発達おらず社会で魔法も使えない昔の人は、火鉢などを使って暖をとっていたらしい。
火鉢・・・確か恭也さんの部屋にあったような気がする。
別に恭也さんは骨董家というわけでもないが、掛け軸やら日本的な物が部屋に目立つ。恭也さんが持っているところを見ると、あれも暖かいのだろうか?
買い物の候補に入れておこう。
そんなことを考えているうちに、授業は終わる。
放課後、運動している人が大半を占めているグラウンドを横切る形で下校していく。今日は寒さのためか、長袖長ズボンで運動している人が目立つ。心なしか風も強く感じる。
今日の晩ご飯は何だろう?そんなことを考えながら校門を出た直後、心地よい音色が耳に響く。
「クロノくーん」
そう言って、目の前に写ったのは、こちらへ小走りによっていく飴色の髪をした少女。他校生の彼女は注目の的だ。・・・恥ずかしくとも何ともないけど。
「ふぅー・・・」
少しだけ息を荒くしながらも僕を見上げる彼女は、どこか可愛くて・・・抱き締めたくなる衝動に駆られる。・・・が流石に下校中で人も多いし今はやめておこう。
「どうしたの、なのは?先に帰ってもいいって今朝メールしたはずだけど・・・」
なのはの通う聖祥は規則には厳しい。だから、学校がある間は連絡を取らないようにしている。
それを考えると彼女はどのくらい待ったのだろうか?5分や10分や分ならいいけど・・・いや、よくない。待っているのを知ったらこんなにゆっくりはしていない。
「メールはもらったんだけどね。実は、私も学校が終わるのは遅かったし・・・あっ、大丈夫だよ、そんなに待っていないよ。・・・今日はね、クロノくんと会っていなかったら、会いたくなって・・・」
そんな僕の気持ちを察したのか、彼女は微笑みながらそう言う。そう微笑みながら言われると何にも言い返せなくなる。
「帰ろう、家に」
なのははそう言って、僕の隣に並んだ。
校門を出てほんのわずかな時間をおいて、急に左手が温かくなった。
「えへへ・・・」
なのはが指を絡めて握っている。
まだ通学路の途中、それなりに学生は多い。そのためか普段は腕を絡めるが、今回のように時には手を握ってくることもある。
なのはの手はあたたかく、いつまでも手を握っていたくなる。寒いと思っていたことが嘘のようだ。今まで生きてきたなかで物理的な物で暖をとったことはあるし、魔法で暖をとったこともある。
だけど、なのははそれ以上のあたたかさをくれる。物理的にも、精神的にも。このあたたかさはなのは以外で味わったことはない。
「クロノくん、手が冷たいよ。風邪引かないでね」
「きっと大丈夫だよ、それくらいの自己管理はしているよ・・・」
「今度の土曜日、ミナミ電機でお買い物をするんだよね。どんな器具を買うつもり?」
「まぁ、器具は何にしたって、質実剛健が一番だよ」
「ふふ、だったら一番暖かくしてくれる物を買わないとね」
「・・・うーん、そうなるとそれは困ったな・・・」
「え、どうして?」
「僕はなのは以上に、あたたかくしてくれるものを知らないから・・・」
「・・・っ」
本当にそう思っただけ、思ったことを口にしただけ。
だけどそれが彼女を赤くさせたみたいで。
そんな彼女は顔を赤らめながらも僕にはにかんでくれている。
その笑顔がより一層心身をあたためてくれる。
うん——————やっぱり僕にとっては、君が一番の暖房器具だな。
僕もなのはも恋人繋ぎでは物足りなくなったのか、どちらからともなく腕を組んで帰っていった。
今年からの冬はあたたかい。
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あとがき
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