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No.36036の一覧
[0] ヘロヘロさんがINしたようです(オーバーロード二次創作)[えいぼん](2012/12/03 23:34)
[1] 第01話[えいぼん](2012/12/23 01:17)
[2] 第02話[えいぼん](2013/01/03 13:09)
[3] 第03話[えいぼん](2012/12/20 20:56)
[4] 閑話1[えいぼん](2012/12/07 23:40)
[5] 第04話[えいぼん](2012/12/23 01:15)
[6] 第05話[えいぼん](2012/12/09 07:35)
[7] 第06話[えいぼん](2012/12/10 23:36)
[8] 第07話[えいぼん](2012/12/23 01:41)
[9] 閑話2[えいぼん](2012/12/14 22:20)
[10] 第08話[えいぼん](2012/12/23 02:00)
[11] 第09話[えいぼん](2012/12/23 02:08)
[12] 第10話[えいぼん](2012/12/24 17:38)
[13] 閑話3[えいぼん](2012/12/24 19:00)
[14] 第11話[えいぼん](2012/12/26 21:35)
[15] 第12話[えいぼん](2012/12/28 21:34)
[16] 閑話4[えいぼん](2012/12/28 21:42)
[17] 第13話[えいぼん](2012/12/31 19:58)
[18] 第14話[えいぼん](2013/01/03 21:01)
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[36036] 第04話
Name: えいぼん◆d3fec379 ID:b1fb4ca7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/23 01:15
ON/OFFを切り替えるように目を覚ました俺は、異様なほどのすっきり感に首を捻りながら自室のドアを開ける。
するとそこには人外の美貌を持った戦闘メイド達が控えており、昨日の出来事が夢オチではなかったことを証明してくれた。

「おはようございます、ヘロヘロ様」
「おはよう、ソリュシャン」

古今東西のあらゆるアニメからパーツを拾い、1週間も掛けて組み上げたスライムのソリュシャンがリアルに動いている。
初見の昨日も感動したが、何度見てもいいものだ。

「おはよう、マスター」
「ロボ子もおはよう」

そしてオートマトンのシズのメイドロボ姿も、ロマンを加点と見做せばソリュシャンに匹敵する感動を俺に与えてくれる。
ちなみにロボ子というのは俺が勝手に決めたTACネームであり、自身のTACネームはマスターという脳内設定だったので当然無許可だ。
だからシズに俺をそう呼ばせるようこっそりプログラムしたのがバレた時には、それを消さずに残して貰うための貢物で大変だった。
所持していたゲーム内通貨の半分以上が消えたのも懐かしい思い出である。

そういえばAIプログラムの際、この2人には特にサービスをてんこ盛りした覚えがあるのだけど、他にどんなのを入れたっけな……。
なんにしろプレアデスの設定なら熟知しているだけに守護者よりも安心感があり、自然と口調も砕けたものになっていく。

「俺が寝てる間に、なんかあった?」
「モモンガ様がいらっしゃいました。無理に起こすなとのことで、事後報告となってしまい申し訳ありません」
「あー、起こしても良かったのに。モモンガさんはいつ頃来たの?」
「最新が22分前、次が1時間8分前、次が1時間41分前、次が2時間36分前、次が――」
「何回来てんだよっ!」

朝っぱらからエアツッコミ。
うちの天然骸骨はお茶目過ぎて困る。
おそらく緊急ではないのだろうが、万が一を考えて消費アイテムのスクロールを使いメッセージを飛ばす。

「おはようございます、モモンガさん。今さっき起きましたが、そちらは話せますか?」
『おはようございます、ヘロヘロさん。こちらも大丈夫ですよ』
「すみません、何度も部屋に来てもらったようで。どうも寝過ぎたみたいです」
『ゆっくり休まれたようで良かったです。では1時間後くらいに円卓でお会い出来ますか?』
「オッケーです。それではまた後で」
『はい、またのちほど』

とは言ったものの、視界に表示されていた時計がなくなっているので1時間後がわからない。
腕時計もお洒落アイテムとして存在していたはずだが、俺は装備出来ないので持っていない。
俺の所持品は極僅かな劇酸無効の装備アイテムと、各種スクロールのような消費アイテムくらいである。
仕方がないので、正確に時間が計れそうなシズを頼ることにした。

「ロボ子、悪いけど50分経ったら教えてくれ」
「サーイエッサー、マスター」
「ヘロヘロ様、朝食はいかがなさいますか?」
「食べようかな。食堂どこだっけ?」
「案内する」「案内致します」

シズが俺の右手に指を絡ませて先導する。
ソリュシャンが俺の左腕に抱きつく。
シズが椅子を引いて俺を座らせる。
ソリュシャンがナプキンを俺の膝に掛ける。
シズが俺の口にサラダを運ぶ。
ソリュシャンが果物の皮を剥く。

シズが、ソリュシャンが、シズが、ソリュシャンが――






「モモンガさん、ココめっちゃサイコーです!」

円卓に着いて開口一番の言葉と俺のサムズアップに、なぜか戸惑い顔のモモンガさん。
かまわず俺は今朝起きてからのことを報告しながら、己のリアルスペックを振り返る。

転職してからの2年間、体重の記録更新を続けてきた事実は間違いない。
だからといって昔は痩せていたわけでもなく、むしろ学生の頃からメタボバディ。
しかも懐古趣味のアニヲタであり、ブラッド・オブ・ヨルムンガンドを飲んでのギルド戦では「豚サーン豚サーン、ブッヒッ」と自虐ソングを口ずさみながら、
世間の荒波により鍛え抜かれた勘でリア充っぽい奴を見破り、優先的に装備を腐食させていくようなDQNだった。
そんな俺にまさかモテ期が到来するとは、人生なにが起こるかわからない。

「――というわけで、ココは正に理想郷ですよ、モモンガさん」
「……1つ教えて欲しいのですが、ヘロヘロさんはそれでムラムラしましたか?」
「随分と直球ですね。さすがに朝っぱらですから、ちょっとだけですよ」
「朝食も食べたのですよね。食欲は普通に感じるのですか?」
「え? あ、もしかしてモモンガさん、アンデッドだから――」

モモンガさんに話を詳しく聞くと、食欲や睡眠欲は完全に無くなり性欲も微妙らしい。
確かアンデッドの基本スペックは飲食不要で睡眠無効、それに精神作用無効あたりも持っていたはずだ。
スライムはというと、飲食不要もないし状態異常系は耐性があるだけで無効ではない。

「それになんだか、感情の起伏も少なくなってきているような気がして……。このまま私は、人間をやめていくのですかね」
「いやいや、俺からみたら昨日のモモンガさんも十分はっちゃけてましたから。人間の心を持ち続けるアンデッドとか、ドラマチックでいい感じですよ」
「あはは。ヘロヘロさんが傍にいてくれるなら、映画のアンデッドみたいに平坦な精神に変化する恐れはなさそうですね」
「それにデメリットばかりじゃないですよ。今朝はもの凄く目覚めが良かったのですが、それも睡眠耐性のせいだったのかもしれません」
「そうですね。私もこんな事態のわりに動揺が少ないのは、やはりありがたいですし」

どちらにしても、まだ異世界2日目であり検証材料も少ない。
睡眠や食事がないとストレスが肥大する一方なので、モモンガさんにとって切実な問題だとは思うが、とりあえず一時棚上げにして話を進める。

「それで俺が部屋に戻ってからは、どういう話になったんですか?」
「ナザリック内部は警備レベルを上げさせました。後は周囲の把握や索敵ですね」
「昨日モモンガさんがおっしゃっていた、ナザリック自体の隠蔽は?」
「保留にしています。アインズ・ウール・ゴウンの根幹に関わる問題を、私1人の意思で変更するわけにはいかないですからね」

――悪の親玉らしく、勇者様は堂々と待ちかまえるべし。

ナザリック随一の厨二病患者、ウルベルト・アレイン・オードルさんの意見であり、多数決の結果を以って採用されたアインズ・ウール・ゴウンの理念だ。
非常事態でも皆で決めたことは重んじるあたり、モモンガさんらしいと思わず苦笑した。

「モモンガさんが決めたことに反対する気はないですよ? 2人で多数決も不毛ですし」
「最終的な判断は私がするにしても、ヘロヘロさんの意見も聞かせて頂きたいのです。ただ1人の同胞なのですから」

モモンガさんに促されて、改めて考え込む。
昨日の時点でモモンガさんの素案は、この世界の住人が強者ばかりであることを前提とした消極的な対処だった。
しかしただでさえ人間をやめた上に外圧を気にしながら過ごすことで、俺達がストレスを発散出来ずに溜め続けてしまう方が危険な気もする。
また現実的に考えて、俺達が安全策なんて方針を取れるのかも疑問が残る。

「モモンガさんのご意見は、ナザリック周辺の勢力と敵対をしない、出来ればどこかの国に所属したい、でしたよね?」
「ええ。私達以外にもプレイヤーが存在するかもしれませんし、これはゲームじゃないのですから、協調路線でいきたいと考えてます」
「しかし俺達は異形種です。ゲームの中でさえ迫害され身を寄せ合わなければ生き残れなかったのに、果たして大丈夫なのでしょうか?」

アインズ・ウール・ゴウンは悪のロールプレイを是としたギルドだった。
しかしそこには、そうせざるを得なかったという理由もあるのだ。

悪とされた要因の1つであるPK行為にしても、ギルド戦以外では異形種狩りに対するPKKやナザリックへの侵略者に限るというギルド規則がきちんとあり、
初心者や弱小ギルドを狙って虐殺をするようなことは決してなかった。
にもかかわらず僅か41人のギルドに対し、1500人もの敵対者が生まれてしまったのだ。
周囲との摩擦を避けるためには、ナザリックを放棄してしもべ達も見捨てて、獣と同じように山野で暮らすしかないと思う。

「……確かに、大丈夫とは言い切れませんね」
「それに超位魔法の連打でもない限り確実に生き残れる俺達が、こそこそするのもみっともないような気がしますし」
「しかしヘロヘロさんのおっしゃるように超位魔法を連打されれば、いくら私達でも生き残れませんよ? 向こうの世界みたいに核兵器などもあるかもしれません」
「……化け物を倒すのはいつだって人間だ。このアバターのアニメキャラのセリフなんですけどね。
現実に異形種となってしまった俺達は、寿命だって想像もつかないです。ならばその時には、胸を張って倒されましょうよ」

異形種差別をうけて、リアルで就職したブラック企業みたいに奴隷化されてまで生き残りたくは無い。
いつか強者に敗れるのであれば、その時こそ寿命なのだと思う。

「うーん、使う使わないは別として、最低限ナザリックの外に逃げ場所くらいは作っておいたほうが……」
「いいんじゃないですかね。思慮深さではモモンガさんには適いませんし、基本的に俺の意見は思いつきですから」

ギルド長をやっていただけあって、モモンガさんは把握とフォローに優れている。
無茶な作戦を臨機応変に支え、完璧な作戦を随時的確に支える実施力もある。
だから俺も安心して自分の意見を言えるのだ。

「ではヘロヘロさんは、あくまでアインズ・ウール・ゴウンの基本方針を貫くべきだとのお考えでよろしいですね?」
「死に敬意を表すならば存在を許す、でしたっけ。いいじゃないですか、偉そうな感じが格好いいし。なにしろうちはギルド長がオーバーロード――死の支配者なんですから」
「細かい所ではオタオタする癖に、ここ一番の時にはギルメンの誰よりも肝が据わる。実にヘロヘロさんらしいご意見です。本当に昔と変わってませんね……」
「いやいや、昨日もセバスの報告に醜態を晒したばっかりじゃないですか。持ち上げすぎですって」

いえいえご謙遜を、いやいや過大評価です、などと実に日本人らしい応酬を繰り返しながら会議は進み、暫定的な方針や今後の行動について打ち合わせていく。
序盤に出ていた慎重論などは話し合いが進むにつれ姿を消していき、一日が終わる頃には「本当にこれでいいの?」と素に戻ってしまうような案が出来上がっていた。


その1:アインズ・ウール・ゴウンのギルド名を不変の伝説とすること。
その2:ついでにモモンガさんと俺の名声も高めてみること。(変装はOK)
その3:異形種とバレても泣かないこと。(その際なんか格好良いことを言うのは必須)
その4:如何なる時にも死の支配者として振舞うこと。(敬語はお互いを除いて禁止)

(中略)

その40:いずれ世界中を冒険し、他プレイヤーやギルメンの情報を積極的に探すこと。
その41:万事を楽しむこと。


要するに、作戦名『がんがんいこうぜ』である。
敗因はアゲアゲの骸骨を止められなかったことだ。

――昨日で最終日だったユグドラシルの続きを、今日からまたプレイ出来ると思えばいいじゃないですか。

この何気ない一言がモモンガさんの琴線に触れてしまったらしく、お陰でごらんの有様だ。
俺もモモンガさんもミサイル程度なら弾き飛ばせるスペックを持っているのだし、そんなに酷いことにはならないと信じたい。

このファンタジー世界(とは確定していないが、少なくとも俺達がファンタジー)では実在していそうな神様に、真摯な祈りを捧げる俺だった。






プレアデスに囲まれてハーレム状態を満喫しながら夕食を取った後、部屋でアイテムボックスの中身を確認していると、モモンガさんが訪ねてきた。
一緒に夜空を見に行こうと言うので誘いに乗り、途中でなぜかデミウルゴスまでが加わって結局3人でナザリック地下大墳墓の霊廟を出たのだが、
そんな俺達を待ち受けていたのは、見渡す限りの星空だった。

星が降りそうな夜という表現は本当に見たままを言っただけなんだ、とわけのわからない感動を覚える。
精神作用無効のスキルを持ち、こちらに来てから物事に動じなくなったモモンガさんですら、感嘆の溜息を漏らして首を振っている。

「うわぁ、なんか凄いですね、モモンガさん」
「ええ……本当に素晴ら……いや、そんな陳腐な言葉には収まらない……」

呆然とした様子で魔法を発動させたらしいモモンガさんは、空へと浮かび上がっていく。
フライのスクロールを持っていない俺は、当然飛べないので置いてきぼりである。
困ったようにモモンガさんと俺を見比べるデミウルゴスを促して後を追わせ、そのまま地面に寝転んだ。

贅を凝らした玉座の間もリアルで見るとこの世のものとは思えない程に美しかったが、雄大さという点でこの光景には及ばない。
何も考えられずにしばらく夜空に見蕩れていると、モモンガさんから慌てふためいているようなメッセージが届いた。

『すみません、ヘロヘロさん! つい夢中になってしまって。今そっちに戻りますので!』
「いえ、こちらはこちらで楽しんでいますから、お戻りはゆっくりで大丈夫ですよ」
『そうもいきませんよ。すぐに戻りますから、もう少しお待ちを』
「生真面目なところはモモンガさんの長所ですが、今日作ったばかりのギルド規則に違反しちゃいますよ。ほら、万事を楽しむことってね」
『……それじゃお言葉に甘えて、もう少しだけ空中散歩をしてから戻りますね』
「堪能してきて下さい」

本物のアンデットになっても変わらないモモンガさんらしさに苦笑して、俺は再び夜空を見上げるのだった。


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