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No.36036の一覧
[0] ヘロヘロさんがINしたようです(オーバーロード二次創作)[えいぼん](2012/12/03 23:34)
[1] 第01話[えいぼん](2012/12/23 01:17)
[2] 第02話[えいぼん](2013/01/03 13:09)
[3] 第03話[えいぼん](2012/12/20 20:56)
[4] 閑話1[えいぼん](2012/12/07 23:40)
[5] 第04話[えいぼん](2012/12/23 01:15)
[6] 第05話[えいぼん](2012/12/09 07:35)
[7] 第06話[えいぼん](2012/12/10 23:36)
[8] 第07話[えいぼん](2012/12/23 01:41)
[9] 閑話2[えいぼん](2012/12/14 22:20)
[10] 第08話[えいぼん](2012/12/23 02:00)
[11] 第09話[えいぼん](2012/12/23 02:08)
[12] 第10話[えいぼん](2012/12/24 17:38)
[13] 閑話3[えいぼん](2012/12/24 19:00)
[14] 第11話[えいぼん](2012/12/26 21:35)
[15] 第12話[えいぼん](2012/12/28 21:34)
[16] 閑話4[えいぼん](2012/12/28 21:42)
[17] 第13話[えいぼん](2012/12/31 19:58)
[18] 第14話[えいぼん](2013/01/03 21:01)
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[36036] 第13話
Name: えいぼん◆d3fec379 ID:b1fb4ca7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/31 19:58
ンフィーレア君を連れて、薬草採取のために大森林へ出掛けた俺達。
彼に道中で聞いていた森の賢王とやらを利用して名声を高めようと企てていたモモンガさんは、森に入るなり単独行動を開始した。
俺をンフィーレア君の護衛に残し、アウラに仕込みをさせるべく出掛けて行ったのだ。

しかしモモンガさんは、残念ながら何の収穫もなく戻ってきた。
聞くところによると、なんでも既にアウラが森の賢王をぶっ飛ばしていたそうだ。
森の賢王の怪我を治してから芝居をさせても良かったのだが、どうしても不自然になるしそこまで重要な案件ではない。

「まぁ、私達の英雄譚の仕込みは済んでいますからね。ここで下手な手を打って疑われるのもバカバカしいですし」
「そうですね。例の計画を開始するまで1ヶ月というところですか?」
「ふっふっふ……そのくらいを見込んでいます。その時には申し訳ないですが、また協力をお願いしますね」
「くっくっく……了解です、モモンガさん」

ンフィーレア君に聞こえないよう、こっそりと話し合う。
これから作戦実施までの間、モモンガさんはエ・ランテルでの認知度を高めるべく活動をする予定だ。
モモンガさんと接する人数は、出来るだけ多い方がいい。
その偉業を引き立たせるためにも、実物大の姿は晒しておくべきだからである。

ンフィーレア君が満足するまで薬草採取に付き合い、夜はカルネ村の広場で村民達から歓待を受けた。
復興して間もない村なのだからと気を利かせ、料理の大半はナザリックからゲートを使って持ち運んでいる。
もちろん純粋な厚意もあるが、主にナザリック大公としての寛容さを見せつけるためだ。

「うま!」 

村人達が感嘆の声を上げながら、夢中になって料理を貪っている。
日本での食事に舌が慣れている俺でも仰天するくらいの味わいなのだ。
おそらくコンビニ弁当すらご馳走に違いないであろう村人達にとっては、まさに天上の食べ物となり得る。

「あ、あの、モモンガ様。こんなに立派な料理まで用意して頂いて、本当にありがとうございます」
「うむ、気にすることはない。私達の財力からすれば、これらは塵のようなものだからな」

しかし皆が一心不乱に食べまくっているに中で、エンリ嬢だけはモモンガさんの方が気になるようだ。
先ほどからチャンスを伺いつつ、モモンガさんにアプローチを仕掛けている。

「先ほどから何も食べていませんけど、良かったらお取りしましょうか?」
「残念だが仮面を取るわけにはいかないのでな。気持ちだけ貰っておこう」

厳密には仮面を取るだけなら問題はないはずだ。
ローブがヒラヒラして中身の肋骨が見えたら周囲に引かれるだろうと、変装時のモモンガさんは基本的に幻術を纏っているからである。
しかし食事が出来ないことに変わりはないので、モモンガさんは多分理由付けのために嫉妬マスクを脱がないのだと思う。

「そうなんですか。不躾なことを言っちゃって、すみませんでした……」
「気にすることはない。死の絶望に瀕したお前達が、それでも一生懸命に毎日を生きている。そして食事を楽しみ、生を楽しむ今の姿こそが、私にとってなによりの馳走なのだ」

しょんぼりしたエンリ嬢を慰めようとしたのか、モモンガさんが恰好良いことを言おうとして微妙に滑っている感のあるセリフを吐いた。
飲み物を噴き出しそうになった俺とは裏腹に、なぜかエンリ嬢は目をキラキラとさせている。
やはり恋する乙女は盲目なのだろうか。

いや、エンリ嬢だけではない。
モモンガさん達のやり取りに聞き耳を立てていたンフィーレア君や傍に居た村人達も、やたらと感動して瞳を潤ませている。
やがてモモンガさんを中心に、どんどん歓声が広がっていった。

「村を救ってくれた英雄、モモンガ様に乾杯!」
「ナザリック大公万歳!」

次々と手の中の杯が空けられ、村の広場はますます熱を帯びる。
村人達に両手を挙げて答え、キメ顔で演説し始めるモモンガさん。

「毎日を全力で過ごした者だけが安らかな死を迎えられる。それこそが死に敬意を払う行為なのだ。だからお前達も今を精一杯に生きるがよい」
「モモンガ様の言う通りだ! あんな騎士共なんかに負けてたまるかよっ!」
「うおおっ、やるぜ! 奴らに荒らされた村の畑は、俺が全部耕してやるぜ!」
「待ってよ、お父さん。私とネムも手伝うし、ゴブリンさん達だって協力してくれるんだから」

その場は熱狂の渦に巻き込まれ、村人達が気勢を上げて吼えまくる。
なんだか俺だけがすっかり取り残されてしまった。
きっと厨二病を卒業したせいだろう。
それに引き換えモモンガはまさに絶頂期、リア充もいいところである。

骸骨爆発しろ、と思いながら俺は不貞寝をするのであった。






翌朝の早いうちに俺達はカルネ村を出発したおかげで、エ・ランテルまで残り僅かという所まで来ることが出来た。
日が沈む前には戻れそうだと思いながら、俺はぼんやりと夕日を眺める。

夕焼けの優しい光に照らされているカッツェ山。
悲鳴を上げながら街の方へ逃げている冒険者達。
それを嬉しそうに追いかけているデモンズドラゴン。

「って、なんであいつらが竜を引っ張って来てるんだよ!」
「ヘロヘロさん、どうしました?」
「あれを見て下さい!」
「む、まさかカッツェ山のボスユニット……」
「なんでこんなところにドラゴンなんているんだ! おばあちゃんや街の人がっ!」

そう、あれこそモモンガさんが仕込んだ英雄譚、1ヶ月後くらいに倒そうと思っていたデモンズドラゴンだった。
天地創造の際にはその地形に応じてボスモンスターがポップする仕様なのだが、中でも山と海はその強さが群を抜いている。
奴はレベル100の複数パーティで挑む大物レイドボスにして、かつてのギルド戦で最も多く2ch連合プレイヤーを死に追いやったMVPなのである。

「絡まれたらその場で死ぬのがマナーなのに、わざわざエ・ランテルに引っ張るなんて許せませんね、モモンガさん」
「いやいや、ゲームとは違いますから。それよりも何故あんな雑魚っぽい冒険者が生き延びていられるのでしょうか」
「もしゲーム設定のままだったら、おそらく遊んでいるんじゃないですかね」

デモンズドラゴンのAIは悪魔族を基準としているため、とても底意地が悪い。
そして冒険者組合にはカッツェ山の調査があった。
仮にその依頼を受けた冒険者が竜にタゲられた場合、その実力差から生かさず殺さず追い掛け回される可能性は十分に考えられる。
本当は冒険者達が竜を発見して無事に帰って来るのが理想だった。
邪竜を倒すべく立ち上がったモモンガさんを歓声で見送るエ・ランテルの人々、みたいな演出を望んでいたからだ。
しかしナザリック大公として街の安全を請け負っているのだから、こうなってはもう仕方がない。

「このまま街に行かれるとラナー王女との約束を破ることになりますし、狩っちゃってもいいですか?」
「……まぁ問題ないでしょう。ギャラリーが少なくて残念ですが、さっさと片付けてしまいましょうか、ヘロヘロさん」
「お2人共、ドラゴンなんですよ! なんでそんなに余裕なんですか!」

なぜ余裕があるのかと問われても、そんなことは決まっている。
このレイドボスを俺とモモンガさんの2人で倒す自信があるからだ。
あまりに当然すぎる答えは言うまでもないだろうと放置し、俺はモモンガさんとのやり取りを続ける。

「こっちは準備にしばらく掛かりますから、モモンガさんはこのままエ・ランテルで依頼を終わらせちゃって下さい」
「まぁ最初の数時間は、どうせ見ているだけですしね。その後で山頂にいつもの罠を張ってお待ちしていますから、仕上げはそこでお願いしますね」
「了解です。それじゃ行ってきます」
「お気をつけて、ヘロヘロさん」

モモンガさんは大して心配もせずに俺を送り出す。
アサシンにしてガンナーたる俺のアインズ・ウール・ゴウンでの役割は、まさにこのような対ボス戦における牽引係なのだから、それも当然である。
基本的にタイムストップ等の時間系魔法はPvP専用と表現しても過言ではなく、ボスを含めたほとんどのモンスターに効果がない。
つまりボス相手の小細工や時間稼ぎには、タゲを取ったプレイヤーが引っ張り続けるしかないのだ。

デモンズドラゴンを引っ張っては2ch連合を壊滅させ。
ガルムを引っ張ってはチクチク削ってソロ攻略を成し遂げ。
ワールドエネミーを引っ張っては立て直しの時間を稼ぎ。

そうした全ての場面において、このアバターは俺の期待を裏切らなかった。
しかも今回は、罠にハメて超位魔法を撃ち込むだけの簡単なお仕事である。

とはいえ、如何にギルド杖があっても流石に一撃では死なない。
従ってモモンガさんの攻撃後にタゲが移らないよう、最初に俺がある程度のダメージを与えておくのは必要不可欠な作業だ。
そのため現時点でモモンガさんやナザリック勢がいるのは、どちらかと言えば邪魔なのである。
モモンガさんもそれを理解しているから、ンフィーレア君を街まで送って来ることが出来るのだ。

もちろん能力やアイテムの出し惜しみをする余裕まではない。
アサシン的に最初の不意打ちはかなり重要なので、俺はいつもの銃ではなく短剣を取り出した。
血錆を纏った禍々しい短剣はそのまんまアサシンダガーという銘なのだが、平凡な名前と異なりその性能はゴッズでも上の下くらいの最高級品である。
防具を装備出来ない俺は基本的にクリスタルを使わないのでギルメン達に譲ったりする場合が多く、この短剣はそんな彼等からのお礼の品なのだ。

「《ファースト・ストライク/初撃強化》、《ライフ・コンバート/生命力転換》、《ラスト・オーダー/血錆の終焉》」

俺はアサシンダガーの能力を全て開放し、大きく深呼吸をした。
自分の命が掛かっていることに対する緊張などではなく、むしろゲーム感覚のまま平常心過ぎることへの注意だ。
ゲームと違うということをしっかり認識しないと、どこかに落とし穴が待っていそうな感覚とでも言えばいいのか、とにかく間をおいて冷静になるよう努める。

「《ナイト・ウォーク/闇の接近》」

不意打ちの成功率を上げ、かつ成功時に攻撃力が上がるスキルを使用したら、いよいよ攻撃である。
俺は冒険者達を嬲っているデモンズドラゴンに音も無く近寄ると、そのまま背後から強襲した。
狙うはただ1点、尾の付け根である。

「《ダンシング・エッジ/蹂躙の刃》」

アサシンの不意打ちスキルによって攻撃力を上乗せして放たれた8方向から襲い掛かる刃、その全てが強化された初撃となってデモンズドラゴンに襲い掛かる。
更に俺の有り余るHPが攻撃力に変換され、これまでのモンスター撃破数を血錆として蓄積し続けた短剣自身の攻撃力を加えて、倍率ドン。

――ボトリッ

綺麗に空中へ跳ね上げられた尻尾が地面に落ちて音を立てるが、すぐに別の轟音にかき消される。
それは横たわって苦しんでいるデモンズドラゴンの悲鳴であった。






隙だらけのデモンズドラゴンを前に追撃をしようか少しだけ悩むが、アサシンダガーの血錆もスキル効果ですっかり取れてしまい攻撃力にあまり期待は持てない。
アサシンダガーはモンスターを倒すたびに血錆が増え、それが多ければ多いほど切れ味が高まる仕様であるからだ。

最高級品だけあってピカピカな今の状態でもゴッズ下位程度の威力は出るのだが、それもデモンズドラゴンが相手では所詮スズメの涙である。
この竜は基本的に2人で倒せるようなボスモンスターではないし、尻尾だって本来は一撃で部位破壊を出来るような代物ではないのだ。
以前それらの自慢をしたら、DQN掲示板で嘘つき呼ばわりされたことは記憶に新しい。

とにかく今は引っ張るのが先決だと、竜から距離を取ろうとしてふと切断した尻尾を見た。
この手のモンスターは尻尾がないとバランスを崩しやすいので、最初に尻尾を破壊するのは定石なのだが、普通はその時に切り離した尻尾は消滅する。
ユグドラシルは全年齢対応なので、モンスターの死体も消えるグロ禁止な仕様であるからだ。

しかし不思議なことに尻尾が落ちている。
もしかしてこの世界ではクリスタルの代わりに現物支給なのだろうか。

「これはひょっとして、生産組大勝利?」

そう呟きながら、とりあえず尻尾をアイテムボックスに収納する。
デモンズドラゴンが未だ悲鳴を上げていることで完全に油断していた俺は、その瞬間まさかの反撃を喰らってしまった。
横たわっていた竜が素早く身を起こすと同時に、鋭い鉤爪を俺の背中へ振り下ろしたのだ。

「うわっ、地味に痛い!」

感覚的に数パーセント程度のダメージである。
HP10倍効果のヨルムンガンドを飲んでいたからいいものの、そうでなければライフ・コンバートの影響と合わせて1撃死の可能性すらあった。
完全物理無効は相変わらず役に立たない。

そう、あえてずっと触れなかったのだが、実は完全物理無効とは見えている地雷と称される程の罠能力なのである。

ギルド戦においては、なんでもいいから属性効果を持った武器を使用すればダメージが通ってしまう。
モンスター戦では、1つも属性攻撃の手段を持っていない敵など見たことが無い。
ボス戦なんて、明確な属性攻撃を除く全ての攻撃が『ボス属性』として設定されているのだ。

運営はスライム種を舐めているとしか思えない。

一応補足を入れておくと、β時代なら完全物理無効の意味は大いにあったらしい。
しかし他ユーザーの抗議によるバージョンアップで、かなり初期の頃に弱体化したのだ。
当時のユグドラシル板では「スライムざまぁ」みたいなコメが溢れかえったという。
その頃の俺はグリーン・スライムだったので、完全物理無効の恩恵は一度も味わったことがないのに風評被害だけはあってうんざりしたものだ。

さて、気を取り直して今からが第二ラウンドの開始である。
俺は短剣を切り札の木製銃に持ち替え、全スライム種の憤りを銃身に込めながら言った。

「時間を稼ぐのはいいが――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「お、おう……」

幻聴だと思いたかった。
しかし振り向くと、そこにはデモンズドラゴンに襲われていた見ず知らずの冒険者がいた。
完全に独り言のつもりだったのに……。
こんなことならカルネ村でのモモンガさんを羨ましがったりせず、素直に厨二病を卒業したままでいれば良かった。

居ても立ってもいられなくなった俺は、デモンズドラゴンを引っ張って風のようにその場を逃げ出したのであった。


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