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No.36036の一覧
[0] ヘロヘロさんがINしたようです(オーバーロード二次創作)[えいぼん](2012/12/03 23:34)
[1] 第01話[えいぼん](2012/12/23 01:17)
[2] 第02話[えいぼん](2013/01/03 13:09)
[3] 第03話[えいぼん](2012/12/20 20:56)
[4] 閑話1[えいぼん](2012/12/07 23:40)
[5] 第04話[えいぼん](2012/12/23 01:15)
[6] 第05話[えいぼん](2012/12/09 07:35)
[7] 第06話[えいぼん](2012/12/10 23:36)
[8] 第07話[えいぼん](2012/12/23 01:41)
[9] 閑話2[えいぼん](2012/12/14 22:20)
[10] 第08話[えいぼん](2012/12/23 02:00)
[11] 第09話[えいぼん](2012/12/23 02:08)
[12] 第10話[えいぼん](2012/12/24 17:38)
[13] 閑話3[えいぼん](2012/12/24 19:00)
[14] 第11話[えいぼん](2012/12/26 21:35)
[15] 第12話[えいぼん](2012/12/28 21:34)
[16] 閑話4[えいぼん](2012/12/28 21:42)
[17] 第13話[えいぼん](2012/12/31 19:58)
[18] 第14話[えいぼん](2013/01/03 21:01)
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[36036] 第12話
Name: えいぼん◆d3fec379 ID:b1fb4ca7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/28 21:34
俺がゲートを抜けると、モモンガさんがこちらを待ちかねたようにソワソワと寄ってきた。

「モモンガさん、ンフィーレア君は馬車があるそうですよ」
「アレの恰好を見ればそんなこと誰だって分かりますよ。薬草採取に手ぶらで行く人なんているわけがないでしょう」
「それを承知の上で、なんでわざわざゲートを使ってみせたんですか?」
「……すっとぼけるのはそろそろ終わりにしましょうよ、ヘロヘロさん。それでアレはどうでしたか?」

モモンガさんに昨日の悪ノリモードの影は既にない。
だから俺も意識を切り替えて、真剣にモモンガさんの問いに答える。

「周囲の話によるとンフィーレア君は有名なタレントとかいう恩寵を持っているおかげで、エ・ランテルでも有数の名士みたいですよ」
「その人となりは?」
「さっき睨みつけた時も素直に反応してましたし、腹芸の出来ないタイプかと」
「ふむ、私もヘロヘロさんに同意です。となると、例の作戦はアレが対象で問題ないですね」
「ええ」

昨日は街であれだけ素っ頓狂な真似をしてみせたのだ。
ンフィーレア君くらいの著名人が引っかかってくれなければ、こちらも遣り甲斐がない。

「昨日の都市長にはどうしたものかと思いましたが、こうなってみると結果オーライでしたね」
「いえ、まだ油断は禁物ですよ、モモンガさん」
「そうですね。では怪しまれないうちに、さっさと戻りましょうか」

軽い打ち合わせを終えた俺達は、ゲートを潜り抜けてンフィーレア君が待つ冒険者組合へと戻った。






普通の冒険者としての経験を積みたいからと適当な言い訳をして、ンフィーレア君の馬車で森の周囲に沿ってカルネ村へ向かう。
一瞬で目的地に着く方法があるのだから、雇用者側から考えれば魔法を使わないのはありえない選択なように思える。
しかし昨日の俺達の無軌道ぶりを既に聞いていたのだろう、ンフィーレア君がこちらに無理強いすることはなかった。

これもモモンガさんの作戦の成果と言えなくもないだろう。
本来はナザリック内部に向けての対策というか気遣いだったわけだが、いくら冒険者をするからといって俺達が人間に軽々しく従う様をみせるわけにはいかない。
そこでモモンガさんが一計を案じた結果が、昨日の騒ぎの顛末である。

俺もモモンガさんも元社会人であったのだから、さすがにTPOくらい弁えている。
つまり昨日の傍若無人ぶりは、それ自体が演技――にしては若干はしゃぎ過ぎて反省したが、一応計算づくの行為だったのである。

当然だが、冒険者組合内や街中での会話は周囲に聞かせる用のものだ。
わざわざ銅プレートから始めたのもロマンなどは関係ない。
低ランクの依頼の方が短期間で結果を出せるため、騒ぎを起こしやすいと考えてのことだ。

そして本作戦の最大の狙いが、今まさに御者台で行われようとしていた。
隣に座っているモモンガさんに、ンフィーレア君が話しかけた。

「あの、ナザリック大公様は、なぜ冒険者になりたいのですか?」
「私は元々、違う世界でも秘宝や未知を求めて冒険をしていたのだよ。ユグドラシルという9つの世界を内包する場所だったのだが、知っているかね?」
「残念ながら、僕には分かりません。しかし、異世界……ですか」
「龍が飛び交い巨人が跋扈し、毎日がスリルに満ち溢れていた。私達アインズ・ウール・ゴウンは次々と偉業を成し遂げ、遂にはナザリック地下大墳墓を支配するに至ったのだ」

そう、これが俺達の待ち望んでいた、自分語りのチャンスなのである。
会談で姿を曝け出した対応からも明らかなように、俺達はこちら側の情報をある程度公開する方針を固めている。
種としての強さが格段に違うのだから、情報戦で負けていても問題にならない。
いや、むしろ勝ってしまうデメリットの方が大きいのだ。

仮に俺達が慎重に行動して、自らの情報の秘匿に成功したとしよう。
しかし俺達は異形種なのである。
やがては「あいつらは何を考えているのかわからない。いつか悪いことをするだろうから、今のうちに退治しよう」という考えになるだろう。
そうなっても別に困らないが、一方的に負の感情を向けられるのも気分が悪い。
アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説にするのも大事だが、ギルド規則その41に定められた通り、その過程には楽しむ要素が不可欠なのである。
だから相手が共存を選んでくれれば、それに越したことはないのだ。

『ぷるぷる、ぼくはわるいスライムじゃないよ!』作戦の趣旨から言えば、もう少し平和的な対処も選べただろう。
しかし見えている勢力の中で戦力的に俺達が最も警戒しなくてはならないのは、ナザリック内部である。
下手に人間側へ迎合するような態度は取れないし、必要以上に彼等へ合わせる理由もない。
むしろ俺達の方へ人間側を歩み寄らせるための情報公開であると言えよう。
そこで今回は街でわざと悪目立ちをして、こちらに接触しようとする人物に対しての情報操作を考えたのだ。

「でも街中で行動をする時には、もう少し常識的な……」
「ふむ、ユグドラシルではあれが標準なのだが。それに、どうも力のスケールが違い過ぎてな。そちらに合わせるのも面倒だし、その意義が感じられないのだよ」
「しかしナザリック大公様のお力を無造作に振るわれてしまうと、そのうち街の人達に死者が出るのではないかと不安に思ってしまうのですが」
「その辺は留意しているとも。無為な死は私の最も嫌う所だからな」

本来であれば、その役目は昨日来た都市長のはずだった。
しかし鼻をプヒープヒー鳴らして泣き喚く都市長は、どうにも小物臭くて微妙に思えたのだ。
曲がりなりにも都市長なのだからとも思ったが、あれだけ醜態を晒されるとこちらも毒気を抜かれたというかなんというか……。
まぁ代わりにンフィーレア君が来てくれたので、モモンガさんも言っていたが結果オーライである。

「気を使うなどというのは、所詮強者に対する阿りであろう。私がそのような好意を示す対象は、アインズ・ウール・ゴウンの仲間に対してだけであることを知るがよい。
いいかね、君に自らの情報を明かしているのは、はっきり言えばそのことに私がなんら関心を持たないからなのだよ」
「そ、それはいくらなんでも驕りが過ぎるお考えなのではないでしょうか。弱者は強者の足をすくうような戦い方をしますよ」
「ふむ、そのような忠告までしてくれるとは、君は実に誠実だな。しかし私の慢心を利用出来ると思うならば試してみるがよい。私を軽んじた対価を支払う覚悟が必要だがな」

特に重要なのは、この一言だ。
これはンフィーレア君ではなく、王国に対するメッセージである。
会談でこちらの政治的な能力などはバレただろうが、そんなものは力業で解決すればよい。
生まれついての王族などと同じ土俵でやりあおうというのが間違っているのだ。

一連の作戦はややもすると軽率の謗りを免れない行為だろう。
しかしナザリック勢も含めた強大な力を持つ俺達は、別に何度失敗しようと十分に立て直せる。
やってみて影響を確認してから考えても余裕で巻き返せる圧倒的な力があるのだから、悩むくらいなら実行すればよいのだ。
第一うじうじと考えているよりも、その方がよっぽど楽しい。

「さて、では君に私達の自信の所以を見せてあげよう。丁度良い具合に獲物が来てくれたからな。ヘロヘロさん、出番ですよ」
「ほいほい」

モモンガさんに言われる前からパッシブスキルの《ホークアイ/鷹の目》でオーガ達を捉えていた俺は、寝転がっていた荷台から半身を起こすと無造作に漆黒の銃を撃ち放った。
ようにンフィーレア君が見える体を装って、実はしっかり《ロックオン/照準》のスキルを使っている。
ただ1発の弾丸で、叫び声を上げる間もなく首から上を永遠に失ったオーガ達。
何が起こったのかわからず呆然とするゴブリン達が、やがて悲鳴を上げながら逃げていった。

「な、なんなんですか、今の!」
「雑魚を蹴散らしただけだが」
「だって、オーガだったんですよ? しかも1回の攻撃で全員を――」
「頭を吹き飛ばしちゃったから討伐証明部位の耳がとれませんよ、ヘロヘロさん」
「ああ、そういえば。でも雑魚ですし、耳なんていらんでしょう」
「オ、オーガだったのに……それを一瞬で……」

種明かしをすると、有象無象の区別なく俺の弾頭が許しはしないわけではない。
現にゴブリン達は逃してしまっているわけだし。
実は《マジック・ブレッド/魔弾》を使っただけなのだが、このスキルは1体に攻撃をすると同じダメージを同種族にのみ与える範囲攻撃なのだ。
ガンナーはダメージ貢献出来る職業ではないのでギルド戦では微妙だが、数を倒さなくてはいけないアイテムハントの際には大絶賛されるスキルである。

唖然としているツフィーレア君を放置して、ドロップアイテムがポップしていないか確認する。
これがユグドラシルであれば最低でも1つくらいはクリスタルを落とすはずなのだが、見当たらないところをみるとゲーム設定とは違っているらしい。

「ドロップは無さそうですよ、モモンガさん」
「やはりそこまでは設定を引き継いでいないということですか……。いや、まだ確定するには早いですかね。判断材料が少なすぎる」
「慌てることもないですよ。時間はいくらでもありますし」
「そうですね。今はこの馬車の旅をゆっくりと楽しみましょうか」

未だショックから立ち直れていないンフィーレア君を正気に戻し、俺達はカルネ村へと向かうのだった。






ロボである以上それが必然であるのだが、シズには万能属性が設定されている。
そんなシズに教わった技術を駆使して夜営を行い、翌日の昼前にようやくカルネ村が見えてきた。
しかし村を見たンフィーレア君の反応が、どうもおかしい。

「どうしたのかね?」
「あ、いえ。あんな頑丈そうな柵、前はなかったんですけど……」
「この村は先日バハルス帝国騎士を装ったスレイン法国の工作員に襲われたばかりだからな。それで警戒しているのだろう」
「え、そんな! エンリッ!」

ンフィーレア君が叫んだ固有名詞に僅かな引っ掛かりを感じた俺は、襲撃事件の記憶を探るが全く出て来ない。
逆にモモンガさんはその名前しっかりと覚えていたようで、ンフィーレア君を宥めながら言った。

「安心したまえ。エンリとネムの姉妹は私が助けたので無事だし、両親も生き残っていたはずだ」
「ナザリック大公様が? あ、ありがとうございます、本当にありがとうございます!」
「気にすることはないとも。死に敬意を払わぬ愚かな虐殺者共に罰を下しただけの話だからな」
「村の様子が気になりますし、少し急ぎましょう!」
「馬車を止めろ」

俺はンフィーレア君に声を掛けて、気もそぞろに手綱を扱こうとした彼を制止する。
完全に周囲へ溶け込んでいたゴブリンの、その茶色い肌を俺のホークアイが捉えたからだ。
体に麦を巻きつけての見事な隠形に、気づくのがかなり遅れてしまった。

「そこの麦畑にゴブリンが潜んでいる」
「え、本当ですかっ?」

茶色いゴブリンはユグドラシル基準では雑魚と相場が決まっているし、スキルを使うまでもないだろう。
ンフィーレア君の疑問に答えを示そうと、漆黒の銃を抜いて狙いを合わせる。
そして引き金に掛けた指を――。

「待った、ヘロヘロさん!」
「わっ、どうしたんですか?」
「そういえばあの姉妹には、ゴブリン将軍の角笛を渡していたのですよ」
「なんでそんなゴミアイテムを持っているんですか……」

ユグドラシル時代、モモンガさんは典型的な消費アイテムを使えないタイプの人であった。
きっとそれと同じように、なんとなく捨てるのが惜しかったのだろう。
俺はモモンガさんの物持ちの良さに呆れながら銃を降ろして叫んだ。

「村人に危害は加えない! 5つ数えるうちに出て来なければお前達は皆殺しだっ!」
「……その言葉に嘘はありやせんね、旦那」

彼我の実力差が分かっていたのだろう、ゴブリン達はカウントダウン前に手を挙げながらゾロゾロと姿を現した。
この反応から鑑みても、彼等がゴブリン将軍の角笛によって呼び出されたモンスターなのは間違いないだろう。
であれば村の守護を命じられているのも想像がつくし、僅か3人とはいえ常人とは思えない雰囲気の俺達を警戒していたのも納得出来る。
モモンガさんが代表して彼等の誤解を解くと、俺達はゴブリン・リーダーに案内されて村に足を踏み入れた。

別のゴブリンに守られながら、1人の少女が姿を現した。
それを見たンフィーレア君が、思わずといった感じで叫ぶ。

「エンリ!」
「モモンガ様!」

ンフィーレア君を無視してモモンガさんに走りよってくるエンリ嬢。
俺とモモンガさんの間に気まずい空気が流れる中、エンリ嬢は挨拶を続ける。

「ようこそいらっしゃいました、モモンガ様。お陰様で妹も村の人達もみんな元気です」
「……それはなによりだな。私も助けた甲斐があったというものだ」
「エ、エンリ、村が襲われたって聞いたけど、大丈夫だったの?」
「あれ、ンフィーレア。どうしてモモンガ様と一緒にいるの?」

なんというか、2人の温度差が酷い。
エンリ嬢がンフィーレア君を差し置いてモモンガさんに向ける熱い眼差しは、命を助けられた感謝だけとは到底思えない。
きっとモモンガさんはあの時、エンリ嬢に対してニコポなりナデポなりをやらかしたのであろう。
居た堪れなくなった俺は、諸悪の根源であるモモンガさんへ冷たい視線を送りながら言った。

「さすがモモンガさん、俺達に出来ないNTRを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ」
「めちゃくちゃ棒読みじゃないですか! それに私はそんなことを狙ったわけじゃありませんし、そもそも成熟した女性の方が好みです!」
「つまりモモンガさんにとっては、あれくらいの少女が成熟した女性にカテゴライズされている、と」
「違いますよっ!」

カルネ村の入り口では、混沌としたやりとりがいつまでも終わらないのであった。






――彼等にとって初めての試練が、もう間近まで迫っていた。


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