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No.36036の一覧
[0] ヘロヘロさんがINしたようです(オーバーロード二次創作)[えいぼん](2012/12/03 23:34)
[1] 第01話[えいぼん](2012/12/23 01:17)
[2] 第02話[えいぼん](2013/01/03 13:09)
[3] 第03話[えいぼん](2012/12/20 20:56)
[4] 閑話1[えいぼん](2012/12/07 23:40)
[5] 第04話[えいぼん](2012/12/23 01:15)
[6] 第05話[えいぼん](2012/12/09 07:35)
[7] 第06話[えいぼん](2012/12/10 23:36)
[8] 第07話[えいぼん](2012/12/23 01:41)
[9] 閑話2[えいぼん](2012/12/14 22:20)
[10] 第08話[えいぼん](2012/12/23 02:00)
[11] 第09話[えいぼん](2012/12/23 02:08)
[12] 第10話[えいぼん](2012/12/24 17:38)
[13] 閑話3[えいぼん](2012/12/24 19:00)
[14] 第11話[えいぼん](2012/12/26 21:35)
[15] 第12話[えいぼん](2012/12/28 21:34)
[16] 閑話4[えいぼん](2012/12/28 21:42)
[17] 第13話[えいぼん](2012/12/31 19:58)
[18] 第14話[えいぼん](2013/01/03 21:01)
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[36036] 第09話
Name: えいぼん◆d3fec379 ID:b1fb4ca7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/23 02:08
「名前と職業、アーウィンタールに来た目的は?」
「俺はヘロヘロ、流れの傭兵だ。目的はフェメール伯爵からの依頼だ」
「ヘロヘロ様の従者でシズ」

盗賊から奪ったフェメール伯爵の家紋が入った鑑札(贋物)を見せて通行料を多めに渡すと、検問所の兵士は俺達の人相を一瞥してすぐに通行許可を出した。
アンダーグラウンドな知識をそこそこ持っていた盗賊のおかげで何の問題もなく城門を通過した俺達は、こうして帝都アーウィンタールに足を踏み入れたのだった。

「凄いな、石畳だ」
「そう?」
「途中に立ち寄った村々の様子から考えればな」
「そう」

この石畳1つをとっても帝国の繁栄ぶりが伺える。
帝都のわりにおざなりな検問所の対応は、大量の物資と人材が流入していることが最も大きな要因といえるだろう。
流通と発展は双子の兄弟のようなものだ。
検問を厳しくすれば流通を阻害し、それは発展の妨げになる。

だから帝都に入るのはそれほど難しいことではない。
しかし就職して帝都に定住するとなれば話はまったく異なる。
厳しい審査を経て市民証を取得しなければ、帝都内では表の職業にありつくことが出来ないからだ。

では流民などへの対応はどうしているのかというと、検問所から移民登録所へ送られるのだそうだ。
そこで各人の経歴と技能と調べられて、各地の農村や都市に再配置されるらしい。
冒険者ギルドですら数年前から流れ者などの身元不明者は登録出来ない仕組みになったという。
これは冒険者など必要としないほど帝国正規軍が充実している証拠だろう。

しかし光があれば必ず闇が生まれるように、非合法な仕事というのは絶対に無くならない。
伯爵からの依頼という言葉と鑑札だけで城門を通ることが出来たのは、流入量の問題だけではなく実際にそういうアンダーグラウンドな仕事の需要が帝都にもあるからだ。
もし正規の仕事であれば依頼内容まで説明する必要があったし、逆に検問の兵士が詳しく尋ねて来ることもなかった。
身元を伯爵に確認することなく通行許可が出たのも、つまりはそういうことなのだ。

「どうする?」
「盗賊から得た情報によると、冒険者のドロップアウト組が集まる酒場があるらしい」
「依頼を受ける?」
「ああ。旅をするにも軍資金がいる」

盗賊が持っていた金もそろそろ底をつく。
手持ちのアイテム類を売れば資金には困らないが、こちらの世界で働くのも経験だ。
頭の中で地図を描きながら石畳の中央道路を折れてしばらく進むと、やがて猥雑な雰囲気の中に建つ一軒の酒場に辿り着いた。

「よう、らっしゃい」
「オーダーを寄越せ」
「おいおい旦那、まずは自己紹介くらいしたらどうなんだい」
「ヘロヘロ、流れの傭兵だ」
「従者のシズ」

言えるチャンスになると、反射的にロールのセリフが出てしまっていけない。
だが若そうな店主は、そんな俺に気を悪くした風でもなく言葉を続ける。

「まぁ依頼は山ほどあるがね。しかし旦那、腕の方は?」
「エキスパート」
「へぇ、随分と自信あり気だね。おいっ」
「ロボ子、控えていろ」

奥のテーブルから筋骨隆々の男が店主に促されてこちらに近づき、そのまま無言で俺の顔面を思い切り殴りつけた。
非力なモモンガさんが力を入れただけでも崩れてしまうほどの脆いアバターだが、さすがに撫でられた程度でしかなかった男のパンチくらいではびくともしない。
もっとも仮に強い力が篭められていたら今頃は男の手首から先が無くなっていたはずなので、威力が全然なかったのはお互いにとって幸運な結果だったといえる。

さてどうしようかと、この後の対応を考える。
ふと横を見れば待機しているはずのシズが、男の暴力に反応して両腕を掲げようとしていた。

「待て、殺すな」
「なぜ?」
「言葉には言葉、拳には拳、命には命だ」

ハンムラビ法典のようなことを言ってシズを宥め、まったくダメージを見せない俺に唖然としていた男の肩を掴んだ。
そのまま手加減したグーを相手の顔面に入れようとしたのだが、なぜか既に男が絶叫している。

「か、か、肩があああぁ!」
「……力加減を間違えた」

今までの人生で暴力に晒されたことなどほとんど無かったため、どうやら手に必要以上の力が入ってしまったらしい。
俺が骨の砕けた肩から手を離すと、男はほうほうの体で酒場から飛び出していった。

「後は奴を唆した店主への罰だな」
「わわ、悪かったよ! 旦那の力はわかった! 割のいい仕事を紹介するから、許してくれ!」
「あの男への見舞金も出してやれ」
「もちろんだとも! だから勘弁してくれ!」

あの男の怪我が十分な脅しになったようだし、これ以上店主を追い詰めても仕方がない。
気を取り直して、店主が持ってきた依頼書の束を確認していく。
こうして字が読めるのも盗賊のおかげであり、彼が脳の養分になってくれたことに感謝しつつ俺はその中から1枚の羊皮紙を抜き取った。

「これにしよう」
「旦那、確かにこいつは割のいい話なんだが……」

俺が選んだのは、王国との境界にある山脈に住むストーンゴーレムの魔石集め。
盗賊から奪った鑑札に書かれていたフェメール伯爵の依頼だったので何となくこれにしたのだが、店主が言うには初めての客に任せられる仕事ではないそうだ。
ストーンゴーレム自体が強敵であるのに加えて、場所がドワーフの王国との境目であることもやっかいな問題だと説明される。

だがそう言われれば行きたくなるのが人情である。
ドワーフの存在にもそこはかとなく興味があるし、そもそも受けさせたくないなら依頼書を混ぜるなという話だ。

「これに決めた」
「……わかったよ、旦那。粒の大きいのを最低でも5個以上は欲しいそうだから注意してくれ。期限まではかなりの猶予があるから、くれぐれも慎重に頼む」

そう言いながら、店主は依頼書とフェメール伯爵の家紋が入った鑑札(本物)を渡してくる。
後で盗賊の持っていた贋物と見比べてみようと思いながら、店主に宿のことを尋ねる。

「ここで宿も取れるのか?」
「悪いがやってない。適当に探してくれ」

そう店主に言われて頭を悩ます。
今まで色々と助けられてきた盗賊の知識には、残念ながら後ろ暗い宿しかインプットされていなかったのだ。
そこへ店内の客の1人が声を掛けてきた。

「よう旦那、俺はヘッケランってもんだ。よければ俺の定宿を紹介しようか? 安くはないが清潔で建物がしっかりしているし、なにより飯が美味い」
「ありがたいが、なぜだ?」
「旦那みたく強い奴とは知り合いになっておきたいし、さっきのアイツへの見舞金ってのが気に入った」

アイツも悪い奴じゃないんだ、と言いながら笑いかけてくるヘッケラン。
十人並みの容姿だが、自信に満ち溢れている雰囲気のせいで人を引き付ける魅力を感じる。

こういう繋がりも必要だろうとヘッケランの誘いに乗り、歌う林檎亭という彼の定宿へ連れて行ってもらった。






こちらが一区切りついたので、宿にシズを残してポータル機能でナザリックに帰還した。
すると指定場所である円卓では、モモンガさんが1人で頭を抱えていた。

「どうしたんですか、モモンガさん」
「あれ、ヘロヘロさん。お帰りなさい」
「ただいまです。それより悩み事ですか?」
「ええ、それが王国から使者がありまして……」

なんでも勅使の先触れだそうで、到着は明日だという。
どんな内容かまではわからなかったそうだ。

「そういうのは連絡して下さいよ」
「しかしヘロヘロさんのご迷惑になるかと思いまして」
「俺に出来ることは多くないですけど、モモンガさんのご相談に乗るくらいならお安い御用ですから」
「……すみません、では明日は一緒に立ち会って貰えますか?」

モモンガさんからのお願いに快諾して、さっそく協議を始める。
問題は会談の内容である。

「やっぱりモモンガさんも、宣戦布告だと思いますか?」
「私もその可能性が高いと思います」
「向こうが攻めて来るなら倒すしかないとは思いますが……、やっぱり不可避ですかね?」
「ふむ、そんなにヘロヘロさんの気が進まないのであれば、デミウルゴス案を採り入れれば――」

モモンガさんは使者を帰した後にアルベド、デミウルゴス、セバスと4人で会議をしたそうだ。
その中で不採用としたデミウルゴス案とは、文武百官を並べた玉座の間での謁見であった。
つまり勅使を完全に下とすることでナザリックの存在感をアピールする作戦だったが、大げさ過ぎるし恥ずかしいからと却下したらしい。
しかしこの案で王国を威圧した後に譲歩を加えることで、戦争を回避出来るのではないかとモモンガさんは言う。

「別に我々は地位も領土も欲していませんし、ナザリックの自治権さえ認めて貰えれば王国の風下に立っても構わないですしね」
「モモンガさん……」

デミウルゴス曰く世界征服が真の目標だったはずのモモンガさんがこんなことを言い出したのは、間違いなく腰の定まらない俺のためだろう。
しかし俺は果たしてこの厚意を受けていいものだろうか。
もしこの気の優しい死の支配者が、俺のせいで王国に便利使いされるようなことになったら……。

「お気持ちは嬉しいですが、そこまで妥協するのは止めましょう。もし王国が我々の主人面をするようなことがあれば、その時は戦争です!」
「よろしいのですか?」
「はい、覚悟を決めました。それにモモンガさんが王国に媚びへつらうなんて守護者やメイド達が悲しみますし。……俺もそんなのを見るのは嫌ですから」
「わかりました。ではアインズ・ウール・ゴウンの皆に恥じない態度で、堂々といきましょう!」

とは言え俺達は全面戦争を望んでいるわけではない。
どこまでがアインズ・ウール・ゴウンの誇りを傷つけずに妥協できる範囲か、その線引きを決めるために俺とモモンガさんは夜遅くまで話し合った。






「リ・エスティーゼ王国の勅使、ラナー・ティエール・シャルドロン・ランツ・ヴァイセルフ王女がお目通りをしたいとのことです」

デミウルゴスの言葉に内心で驚く。
そういえば昨夜は勅使の身分を聞き忘れていたが、まさか王族が直接来るとは思わなかった。
これはもしかしたら、宣戦布告ではないのかもしれない。

「よくぞ来られた、ラナー王女。私がナザリック地下大墳墓の支配者、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長モモンガだ」
「歓迎を心から感謝致します、モモンガ様」

自然と玉座の下に跪いたラナー王女の口から、滑らかに言葉が紡がれる。
今この場には骸骨姿を曝け出しているモモンガさんを始め、悪魔や昆虫などの異形が勢揃いしているというのに随分と図太い神経の持ち主である。
尤も肝が据わっているのはラナー王女のみで、護衛として付いてきた者達などは玉座の間に入ることすら出来ていなかった。
さんざん時間を掛けた挙句に護衛対象から待機を命じられてしまうなんて、近衛騎士としてどうなのよと思わざるを得ない。
そうこう考えているうちに、ラナー王女が再び口を開いた。

「リ・エスティーゼ王国の国王ランポッサⅢ世陛下は、死の支配者であるモモンガ様とナザリック地下大墳墓に敬意を表し、この地の領有を正式に認める用意があります」
「ふむ、なかなかに話のわかる国王ではないか」
「相互不可侵の約定の証として、ナザリック大公の称号をアインズ・ウール・ゴウンのギルド長であるモモンガ様に贈らせて頂きます。これは無論、王国の役職名ではありません」
「うむ、では今後はそう名乗らせて貰おう」

なるほど、ここでミソなのは相互不可侵という言葉なのか。
つまり王国がナザリックを攻めない約束と見せかけて、俺達が王国へ侵攻することを言葉だけで防ぐつもりのようだ。
どちらにせよ俺達に侵略の意図はないのだし、むしろ好都合であるといえよう。

「しかし国の恥を晒すようで恐縮なのですが、モモンガ様に大公位を贈らせて頂くに当たり反発する貴族達がおりまして、我が国では内乱の危機が高まると予想されます」
「つまり大公の位を授けてやったのだから、我々ナザリックの力を国王側に貸せと?」
「いいえ、とんでもありません。私達が懸念しているのは、反乱した貴族達がナザリック地下大墳墓やこの近隣の村を襲うことでございます」
「お前達が身の程を弁えているようでなによりだ。よし、確か城塞都市エ・ランテルは王領だったな。ならばその辺りまでは私が守ってやろうではないか」

この付近で死が軽々しく撒き散らされるのは不快だからな、とモモンガさんが嘯く。
思いのほか都合の良い方向に話が進んだので、ついリップサービスをしてしまったのだろう。
そんなモモンガさんの言葉に、ラナー王女がびっくりするほど喰いついた。

「ほ、本当によろしいのですか? エ・ランテルは毎年のように帝国からの侵略を受けている都市なのですが」
「……うむ、任せておくが良い。このナザリック大公、一度口に出したことを翻しはせぬ」
「ありがとうございます! 彼の地の領民に成り代わりまして、大公に御礼を申し上げます」

モモンガさんがしまったと言いたげにこちらをチラ見するが、今更どうしようもない。
会談を終えた後は一行をゲストルームで歓待したのだが、定期的な情報交換や人材交流、国交等の話を煮詰めようとするラナー王女に防戦一方の俺達。
内乱の話もあるのだからこちらはゆっくり進めようという方向でなんとか落ち着いたが、ラナー王女の頭のキレには脱帽だった。

またスレイン法国の暗躍についても忠告された。
彼等がナザリック勢を魔神と認定した場合、王国以外の周辺国が一斉に攻めてくる可能性があるのだという。
そんなモモンガさんに大公の称号を贈ったりして大丈夫なのかと思うのだが、王国の傘下に入るわけじゃないのでまだしも言い訳が立つのかもしれない。
それとも俺達と一蓮托生くらいの気持ちでやっていきたいというニュアンスを匂わせていたラナー王女を、その言葉通りに信じてもいいのだろうか。
うーん、ここは水面下でのアプローチが出来ないほど王国の内情はよくないと考えるべきかな……。

こうして後々の波乱を含みつつも、王国との会談は無事に終了した。






会談とその後の歓待で、時刻はすっかり夜である。
ラナー王女達はナザリックに宿泊し、明日は近郊の城塞都市エ・ランテルに立ち寄るそうだ。
今後の話はまた次の機会にということで、俺はモモンガさんにシズの元へ飛ばしてもらったのだが。

「マスター、ヒック、全然、帰って来ないし、グスッ、連絡も、ウアアアァァァン!」
「うわ、待て待て、隣の部屋とかに聞こえるから! 悪かった、俺が悪かったから!」
「ウゥッ、もう1人ぼっちにしない?」
「いやいや、お前ポータルだろう! 役割放棄すんなや!」

その日、帝都では一晩中女の子の泣き声が響き渡っていたそうである。


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