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No.35990の一覧
[0] 【一発ネタ】勇者「俺、この戦いが終わったらDT捨てるんだ」[ぽっぽ](2012/11/29 21:14)
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[35990] 【一発ネタ】勇者「俺、この戦いが終わったらDT捨てるんだ」
Name: ぽっぽ◆38f73891 ID:6d963a60
Date: 2012/11/29 21:14
 突然だけど、俺の夢を一言で語らせてくれ。

 脱 童 貞。

 ちなみに相手は優しくて巨乳な年上のお姉さんがいい。年上の妖艶なミリキ(魅力)に翻弄されたい。
 と、そんな具合にちょっと異性に夢見がちな高校生の俺の名前は英雄。えいゆうではない。某携帯会社でもない。英雄と書いてひでおと読む。
 DQNネームから一気に凡人ぽくなったとかは言ってはいけない。
 本当に凡人だから。言われなくても一般人だから。十代の繊細な心にヒビ入るから。切なくなっちゃう。だって男の子だもん。
「――勇者様? 大丈夫ですか……?」
「え? あ、ああ、うん。ちょっと考え事してた」
 現実逃避まがいな物思いに耽っていた俺は、背後に控えていた少女に声をかけられ、現実に引き戻された。
 お前の名前、英雄じゃん。勇者じゃないじゃん。と思うかもしれないが、俺は確かに勇者である。名前じゃなくて職業的な意味で。
 リアルで「俺、勇者なんだ」とか言ってる人がいたらドン引きだが、可愛い女の子に言われてみるとちょっと良い響き。
「やっぱり、その……緊張してますか?」
 おずおずと大きな青い目を上目遣いにして尋ねてくる。可愛い。
「そりゃ、まあ。本当に俺なんかに出来るかどうか……」
 童貞捨てるなら巨乳で年上のお姉さんがいいと言ったが、彼女のような金髪碧眼の清楚な美少女もいいと思う。むしろ土下座してお願いしたいレベル。
 まあ土下座するのも、この用事が終わったらにしよう……と、俺は目の前にドーンと構えた城門を見上げる。
 長かった俺の旅もここで終わりだと思うと感慨深いものがあるな。
 いや、長かったといっても、ことの始まりは、ほんの数日前だけど。

 あらすじ。
 ――ひょんなことから空想上のお話ではよくある異世界召喚の当事者になってしまった俺は、呼び出されるなり「頼む、ちょっと勇者になって魔王を殺ってきてくれ」と立派なお髭の王様に土下座する勢いでお願いされ、「そこまで言われたら仕方ない、この俺が勇者になって魔王を殺ってやるぜ」と親切な俺は二つ返事で承ったのである、まる。

 と、まあ、そんな感じ。
 ここまではよくあるパターンなんだが、魔王倒さないとおうち帰れないと、これまたよくあるパターンに陥ったので、後にも引けず、よーし、やってやるでーと魔王退治へと乗り出したわけだ。
 そうして現在俺がいる場所は、RPGで言うラスダンである魔王城の目の前なのだ。
 おいおい、ことの始まりは数日前とか言ったくせに、何でもうラスダン前にいるの? チートなの? 馬鹿なの死ぬの? と普通は思うだろうが、仕方ないだろう。「それじゃ旅立ってら~」って転移魔法陣で送り出された場所がこの城の目の前だったんだから。
 じゃあ長かった俺の旅ってどういうことかというと、"送り出されるまでが"長かった俺の旅である。何しろ召喚されたその日に勇者の儀式を受けて、その後は今日の朝まで贅沢を尽くした接待が行われていたのだった。
 ご飯は上手いし姉ちゃんは綺麗で、天国のような心地だったが、一気に地獄につき落とされた気分である。
 確かに魔王のことなら俺にまかせろ! と意気込んではいたものの、いきなりラスボスの本拠地に送り込むとか鬼やでぇ……。
 つい現実を儚んで、冒頭から夢について脳内で語り出しても仕方ないと思うんだ……。
「大丈夫です、勇者様ならきっとやり遂げられます」
 まさに天使の微笑みと形容すべき笑顔を浮かべて俺を励ます彼女は、お供としてつけられた神官のルミアだ。
 勇者パーティーって普通はもうちょっと人数いるもんなんじゃ、と思うんだが、俺につけられたお供は彼女だけ。
 たった2人でどうしろと。これではじまりの街とかに出発するんだったら、旅の途中で仲間を集めるのか、とかお約束的なことを考えるけど、いきなり2人で魔王城に送り込まれて、どうしろと。
「で、でもさ、俺、まだ何の力もないんだけど。訓練とかしてないし」
 旅の途中で聖剣とか手に入れたり、勇者の力に目覚めたりとかするもんじゃないのか。ぶっつけ本番にしてもこれは酷い。いくら俺でもこれにはキレるよ!
「自分の力を信じてください。絶対に大丈夫ですから」
 ぽっと顔を赤らめつつ、ルミアが断言する。
 可愛い女の子にそう言われると、本当に大丈夫な気がしてくる単純な俺。
 ていうか、これは間違いなく俺に気がある。何たってルミアは初対面の時から、俺と目が合う度に赤面してばかりだ。思い返せば、城にいた他の女の子たちも、おおむねそんな感じだったような……。
 もしかして、これが噂のニコポ能力……! 
 あ、なんか俺、魔王倒せる気がしてきた。きっと凄いチート能力が既に身についているに違いない。魔王を目の前にした瞬間なんか目覚めるに違いない。そうじゃなきゃ、こんな風に大丈夫だって断言出来ないだろうし、いきなりラスダンに送り込んだりしないだろう。
 よし、このままさっくり魔王を倒して、ルミアに童貞捨てさせてもらおう。きっとはにかみながらも了承してくれるに違いない。
「よーし、行くぞー! やってやるー!」
「はい、その意気です」
 延々と城門の前で足踏みしていたのが嘘のように、俄然やる気になった俺は、ついに魔王城に突撃することにしたのだった。

 フフッ。
 俺、この戦いが終わったら、童貞捨てるんだ……。



 魔王城には、すんなりと中に入れた。
 意外なことに、城内は良い意味で魔王城らしさがなかった。
 こう、陰鬱な雰囲気と魔物がうようよしてるのを想像してたんだが、そんなものはどこにも見当たらない。いたらいたで困るんだが、拍子抜けもいいところだ。
「さあ勇者様、こちらです」
 中に入るなり、にっこり余裕な態度でルミアが先導し始める。
「あ、はい……」
 どゆこと? と思いつつ、さっさと歩き始めた彼女の後を追う。
 広々とした城内を、ルミアはまるで勝手知ったる他人の家とばかりに、淀みない足取りで歩く。入口正面の階段を上り、赤い絨毯が敷き詰められた長い廊下を渡り、そうしてつきあたりにある部屋の扉の前で彼女は立ち止った。
「ここが魔王のいる部屋です」
「……え? こんなにあっさり辿り着いちゃっていいの? 本当に魔王がこの中にいるの?」
 四天王とか、五人衆とか、中ボス的なやつにすら一度も遭遇しなかったんだが。果たしてラスダンがここまで手抜きでいいのだろうか。
「はい、間違いなく魔王はこの部屋の中に。さあ、勇者様、どうぞ中へ」
 ルミアは扉の横に控えて、いってらっしゃーいとばかりにお見送り耐性に入る。
「えっ、俺一人なの?」
「はい。これは勇者様にしか出来ないことなので。私がいては邪魔になります」
 頬を赤らめつつ、ルミアが微笑む。
「お、おう……」
 何だか釈然としないが、眩い微笑みを前にどうでもよくなる。
 とりあえず魔王を倒せば俺の夢が叶うんだ……! ルミアに童貞捧げるんだ……! 
 本人の了承もまだなのに、俺の中ではすでに確定事項である。
「いってらっしゃい、勇者様……」
「ああ、行ってくるよ。君はここで、俺を信じて待っててくれ!」

 この時の俺は、間違いなく漢の顔をしていたに違いない。



「――よく来たな、勇者よ」
 聞けばたちまち他者を跪かせるであろう、威厳のある低い声。
 鍛え上げられた筋肉という名の鎧を身にまとった、堂々たる体躯。
 まさに魔王。
 魔王という言葉が相応しい男が、天蓋つきのベットに横たわっていた――。
 魔王が、天蓋つきの、ベットに……。
「…………」
 ……えっ、普通玉座とかに堂々と座って待ち構えてるんじゃないの?
 何で魔王がベットに横たわってんだ。もしかしてあれか、実は魔王は病気を患っていて、弱っている今がチャンスだとどめさせってことか。そうなのか。
「待っていたぞ、勇者。さあ、ひと思いにやるがいい。俺の中に溜まった魔力が世界を崩壊させてしまう前に」
 しかも何故か本人もとどめさされる気満々という。実はいい奴なの魔王。どういうことなの魔王。教えてよ魔王。
「い、いや、ひと思いにって言われても……武器も何も持ってないんですけど」
 何せ城から手ぶらで送り出された。武器は何かくれないのって王様に聞いたら、分かってんだろ、言わせんなよってばかりに無言でにっこり笑われたし。
 後々聖剣的な何かが手に入るってことだろうって思ってたのに。あれか、拳が武器ってことか。俺のこの手が真っ赤に燃える的な。
「何を言う。立派な剣があるだろうに」
「は?」
 素手ですけど。剣なんてないんですけど。
 それとも今から俺の中から剣が生まれるとかか。ウテナ的な。もしかして覚醒フラグキタコレ。
「すっとぼけおって……言わせる気か?」
 何故顔を赤らめる魔王よ。いかつい顔した筋肉マッチョの赤面とか誰得だ。
「早く教えてくれ!」
 何でもいいから早く童貞捨てたい。潔く命を捨てる気になっている魔王を倒すのは正直気が引けるが、脱童貞のためなら仕方ない。
 俺のそんな熱意が伝わったのか、魔王は仕方ないなやれやれと首を振り、重い口を開いた。
「……ついているだろう、立派な聖剣が」
 魔王の太い指が、その聖剣をゆっくりと指し示す。その指先にあったのは――。
「ま、まさか……」
 俺のエクスカリバーン!
「さあ、ひと思いにズブリとやるがいい」
「」
「お前の聖剣で俺の増えすぎた魔力を浄化させ、世界を救え! このままでは俺の魔力に触発された凶暴な魔物が世界中に溢れるぞ!!」
 ドン、と勢いよくベットから降り立った魔王が、ずずいっと俺の方へと距離を詰める。
「ちょ、ちょっと待て! いや待ってくださいお願いします!」
 慌てて後ずさるが、壁に肩がぶつかる。これ以上後ろに下がれない。ボスケテ。
「ここまできて、往生際が悪いぞ、勇者。覚悟を決めろ」
 俺はもう、とうに覚悟を決めている――と、生ぬるくかつ遠い目をする魔王。
「いやそんなこと言われても! 立つものも立たないって!! 物理的に無理! 絶対無理!」
「大丈夫だ、勇者の儀式を受けたなら、どんな相手でもやろうと思えばたちまち……」
 勇者の儀式って俺の聖剣が勇者になる儀式かよ!
 そしてやたら城の人たちが優しかったのは同情か!
「うわあああぁぁぁ! 帰る! 俺は帰る!!」
「ちなみに神官の結界で扉の外に出れないので諦めるように」
「お前もかブルータス!!」
「さあ、世界を救おうか」
「うわあああぁぁぁ、アッー!!」

 童貞捨てる相手がガチムチ魔王だなんて、こんなの絶対におかしいよ!



「お父様、勇者様はきちんと役目を果たされたかしら……」
「娘よ、あの者は誰もが嫌がる勇者を快く引き受けてくれたのだ。心配はいらぬだろう」
「そうですね。勇者様はとても立派なお方ですわ」
「今は信じて、帰りを待つとしよう――」

 こうして世界は救われた。


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