はじめに
まず、閲覧有難うございます。
ウルキオラ召喚です。
その他のキャラも出そうと思っています。いつか。
たとえどんなに酷くともなんとか終わらせます。
それではよろしくお願いします。
12/2 被っていたようなのでタイトル変更。あんまり変わってませんが。
光の差し込まぬ穴の底。
ただただ歩き続け、たどり着いた森の中。
身を沈めれば自我さえも消えていく。
それを「幸福」と感じていた。
今はどうだろうか?
最後まで思い通りにならない人間。
どれだけ力の差を見せつけても挑んできた人間。
終には虚無を司る自分を倒すほど圧倒的な強さを見せた人間。
なぜだ?
奴が持つ心など虚となった時に捨てたものだ。
いや、だからか。
「恐いか?」
問いかける。
「恐くないよ」
みんなが助けに来てくれたから。自分の心はみんなと同じところにあるから、そう答えて女は微笑んだ。
「俺が怖いか? 女」
再び問いかける。
「恐くないよ」
同じ言葉が返ってくる。
「そうか」
灰と化していく身体、それでも手を伸ばす。
女が手を掴もうと手を伸ばす。
触れかけた指先から灰となって崩れていく。
その時に感じた、空いた筈の胸に生まれた感情。
伸ばした手の先にあったもの。
そうか……この掌にあるものが、……心か。
ウルキオラの視界が闇に鎖される。
自我が消えていく、それはやはり心地よい感覚だった。
人に興味を持ち、心を感じたとはいえ、どうやら自分の根本が変わったわけではないらしい。
そんな閉ざされた闇の中に鏡が現れる。
「強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
声が聞こえる。
その声に導かれるように鏡に呑まれると自我が戻り、鎖されていた視界が開き始める。
灰と化したはずの自分の肉体を感じた。
煙が晴れると目の前に桃色の髪をした女が見える。
さらに視線だけを動かして周りを見れば、似たような背格好の人間が大勢いた。
そして、全員が一様に自分に怯えているようだった。
無理もない。むしろ解放状態の自分を前にしてよく魂が潰れないものだとウルキオラは感心する。
「ミス・ヴァリエール! 下がりなさい!」
杖を持った中年の男が目の前にいる女の前に出ようと足を上げようとするが霊圧にあてられ上手く動けないようだった。
ウルキオラはそこそこの力はあるようだと思いながらもまるで気に留めない。
それほど実力の差は歴然としていた。
それにしても妙だ。この場にいる人間の霊力、いやそもそも大気中を漂う霊子の質が違う。
ここはどこだ? 自分は一体どうなった?
ウルキオラが考えていると、女の声が聞こえた。
「あ、あんた誰? 一体なんなの?」
冷や汗を流し、声を震わせながらも女は言った。
そして、足を前に踏み出す。
たいした精神力だとウルキオラは女に目を向ける。実力が違い過ぎて何も感じないのか、いやそれはないだろう。
女の目には自分が写っているようだ。悪魔のような自分の姿が。
「俺が恐いか?」
あの時と同じ問いを口にして、手を伸ばした。それがなぜかは彼にも分からない。
「自分の使い魔を恐がるわけないでしょ!」
女は迷いなくその手を掴んだ。
ウルキオラもその手を掴んだ。
あの時、掴むことが出来なかった人の手を。
手を離すとウルキオラは刀剣解放を解いた。
腰から生えた翼が消え、代わりに刀が現れる。
それを腰に差して目の前にいる女に目を向ける。
「ミス・ヴァリエール早く契約を!」
ウルキオラの敵意がなくなったと判断したのか男が叫んだ。
「分かってるわよ」
そう言って、女はウルキオラに近づき、その顔を見上げた。
手を伸ばし、ウルキオラの襟を掴んでつま先立ちになる。
そのままたっぷり十秒間、二人は停止していた。ウルキオラに至っては眉ひとつ動かさない。
「と、届かない」
彼女の言葉で戦慄していた空気が一気に緩んだ。