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No.35842の一覧
[0] 【習作】もしドラ(もし光の国の新人恒点観測員がスペースペンドラゴン2世号のクルーに出逢ったら)[ヒラヤマト](2012/11/16 15:10)
[1] 第2話 メテオール[ヒラヤマト](2012/11/18 20:24)
[2] 第3話 ウルフアタッカー[ヒラヤマト](2012/11/20 02:01)
[3] 第4話 遠い星からの贈り物[ヒラヤマト](2012/11/22 00:59)
[4] 第5話 オーパーツ[ヒラヤマト](2012/12/15 10:35)
[5] 第6話 クライシス[ヒラヤマト](2012/11/27 10:36)
[6] 第7話 フュージョン[ヒラヤマト](2012/12/15 09:29)
[7] 幕間その1 暗黒の継承者[ヒラヤマト](2012/11/28 12:21)
[8] 第8話 出会い、そして新たな凶兆[ヒラヤマト](2012/11/30 01:40)
[9] 幕間その2 ウルティメイトフォースゼロ[ヒラヤマト](2012/12/02 22:29)
[10] 第9話 ハイパーエージェント[ヒラヤマト](2012/12/03 13:02)
[11] 第10話 コンピュータワールド[ヒラヤマト](2012/12/05 00:48)
[12] 第11話 ペンドラゴンⅡ絶体絶命[ヒラヤマト](2012/12/07 00:36)
[13] 第12話 カノン[ヒラヤマト](2012/12/09 04:52)
[14] 第13話 クロスファイト[ヒラヤマト](2012/12/11 09:41)
[15] 第14話 コンフュージョン[ヒラヤマト](2012/12/13 12:38)
[16] 第15話 新たなる戦場[ヒラヤマト](2012/12/16 03:16)
[17] 第16話 起動AIZENボーグ[ヒラヤマト](2012/12/23 18:41)
[18] 第17話 激闘の行方[ヒラヤマト](2012/12/23 18:40)
[19] 第18話 地獄門[ヒラヤマト](2012/12/27 12:59)
[20] 第19話 レイオニクスの血[ヒラヤマト](2013/01/04 19:35)
[21] 第20話 死闘 イデア対カノン[ヒラヤマト](2013/01/19 09:50)
[22] 第21話 黒よりも昏き闇[ヒラヤマト](2013/02/21 13:01)
[23] 第22話 カノンよ、還れ[ヒラヤマト](2013/03/09 09:57)
[24] 第23話 集うヒーロー[ヒラヤマト](2013/03/28 19:46)
[25] 第24話 新たな仲間[ヒラヤマト](2013/04/15 01:56)
[26] 第25話 伝説を超える英雄譚[ヒラヤマト](2013/06/17 00:33)
[27] 第26話 反撃の嚆矢[ヒラヤマトMK2](2014/01/01 09:53)
[28] 第27話 力の意味[ヒラヤマトMK2](2014/10/19 03:08)
[30] 第28話 重力の決死圏[ヒラヤマトMK2](2015/09/14 05:50)
[31] 【期間限定】 ウルトラマンメビウス外伝 破滅の花(前篇)[ヒラヤマトMK2](2015/09/14 04:59)
[32] 【期間限定】 ウルトラマンメビウス外伝 破滅の花(後編)[ヒラヤマトMK2](2015/11/07 01:18)
[33] 【期間限定】 ウルトラマンメビウス外伝 奇跡の星[ヒラヤマトMK2](2015/11/07 01:19)
[35] ウルトラマンオーブ外伝ホーリーグレイルウォーズ(その1)「夢野ナオミの受難」[ヒラヤマトMK2](2017/05/07 22:37)
[36] ウルトラマンオーブ外伝ホーリーグレイルウォーズ(その2)「暁のジャイアント作戦」[ヒラヤマトMK2](2017/06/10 05:45)
[37] ウルトラマンオーブ外伝ホーリーグレイルウォーズ(その3)「禁断の出会い」 [ヒラヤマトMK2](2017/08/02 13:35)
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[35842] 【習作】もしドラ(もし光の国の新人恒点観測員がスペースペンドラゴン2世号のクルーに出逢ったら)
Name: ヒラヤマト◆862efc46 ID:8634cc6d 次を表示する
Date: 2012/11/16 15:10
にじファンに掲載していた作品ですが消滅してしまい、しばらく放置してました。
タイトルはアレなんですが、お題はウルトラマンです。

大怪獣バトルやウルティメイトフォースゼロ、ウルトラマンサーガなど毎年順調に世界観を拡げつつある
ウルトラシリーズですが、仮面ライダーフォーゼのユウキさんではありませんがもっと流行れーとか思っちゃいますよね。

平成ウルトラマン、平行世界のウルトラ世界、埋もれた過去円谷作品も出来るだけ網羅しようと思ってますが
若い読者さんにはグリッドマンやスターウルフとか生物彗星WOOとか、ほとんど馴染みがないと思います。
(まあ、それでもやるんですがw)

それではお暇でしたら、よろしく御付合い願います。


*************************************

「これがっ、オレたちの光だああぁーーっ!!」

「ゼェエロオオオオオオーーーッツ!!」


超銀河大帝にして巨獣アークベリアルの断末魔が虚空に響く。

かくして、無類の勇者達=ウルティメイトフォースゼロの活躍により、別宇宙からの侵略戦争は終わりを告げた。







今日も我々の宇宙は平和である…、私は数多の星の輝きを仰ぎ見ながら、過ぎし日の戦いに思いを馳せた。

かって、多次元宇宙の平和を脅かした銀河帝国軍の首魁…、光の国史上唯一の重犯罪者ウルトラマンベリアル。
二度目の反乱で敗死したはずだが、如何なる手段で蘇り、別宇宙に渡ったのか…、今となっては知る由もない。


…そして、侵略戦争とは言え、その実態は光の国の内乱が、別宇宙に飛び火したようなものだった。

ベリアルは、事もあろうに別宇宙の惑星群を支配して略奪や搾取を続け、光の国を攻め落とすための戦闘ロボットを量産していた。
そして、空前の侵略作戦が展開されたが、ウルトラ兄弟を始めとする勇士たちの奮戦で、辛うじて阻止することができたのである。

被害を受けた惑星や文明圏は、我らが敬愛するウルトラの母が率いる銀十字団の尽力で、なんとか復興の目途が立ち
私達、恒点観測員の宇宙派遣も再開された。

特に新人の私にとっては念願の宇宙だったが、戦場となって荒廃した星を目にするたびに胸が痛んだ。
この宇宙のいかなる星も、例外無くベリアル銀河帝国の攻撃対象にされたのである。

それはペダン星やテンペラー星など強大な軍事力を誇る惑星国家も例外ではなく、彼らも自分の身を守るために戦わないわけには
いかなかった(…中でもサロメ星は、私達ウルトラ戦士のレプリカロボットを量産し、秘匿していた事が発覚し大問題となった)

キングジョーやSRウルトラ戦士などの侵略超兵器と帝国機兵レギオノイド、および帝国猟兵ダークロプスの壮絶な戦闘が
宇宙の各所で繰り広げられ、各惑星の軍事国家は力を大きく削がれることとなった。

やがて、様々な文明圏で復興のための協力体制が自然と生じ、多くの連合国家が発足していった。
皮肉なことではあるが、私達のこの宇宙が、より平和的な方向に向かっていることは喜ばしいことであろう。


…今日も銀河中で、資源回収用の宇宙船やロボットが飛び回っている。

特に慢性金属不足であるバンダ星の、見た目超アナクロの古びたロボットが、新型の戦闘ロボットの残骸をモリモリ食べている
光景はかなりシュールすぎる(…余談だが、クレージーゴンなどという困ったネーミングは、いったいどこから来たのだろう?)

こうして侵略兵器の残骸が資源として再利用され、今後の復興や発展の役に立つとは、なんとも複雑な思いを抱かせる。

中でも特筆すべきはダークロプスや帝国戦列艦、巨大輸送艦の残骸の中に含まれている緑色の鉱石であり、
分析した結果、素晴らしいエネルギー資源として活用できることが判明した。

これをどのように復興に活かすか、それとも新たな闘争の火種になるか…、それは今後の私達の努力次第である。







新たに行動範囲を広げ、光の国の時間でちょうど一周期が過ぎた頃、私はようやく新しい星系に到着した。
ここは最近になって、どこかの文明圏の住人が入植を始めたと、通りすがりのファントン星のキャラバンから噂を聴いている。

3番目の惑星に降り立った私は、地平の向こうに何やら人工物らしきものを発見した。
どうやらドーム状の居住施設らしい…、形状やサイズからすると標準的なヒューマノイドタイプのものだろう。

私は注意深く接近してみることにしたが、不意に上空が曇り始め、見る見る真っ暗になっていく。
大気分析したところ水分が豊富にある惑星ではなく、雨雲の類では有り得ない…、何かの理由で異常発生した噴煙かガスだろうか?

やがて、その正体が判明した、響き渡る咆哮と共に姿を現す巨大生物、…いいや、あれは怪獣だ!!

装着したウルトラブレスレットからデータを検索できた…、宇宙大怪獣ムルロア、膨大な核エネルギーによって生じた突然変異体で
恐るべき災害生物でもある。…おそらくはベリアル銀河帝国の侵略戦争の影響で、新たに生まれ出たのであろう。

この巨大蛾のミュータント怪獣が全身から無尽蔵に分泌する暗黒ガスは、放置していれば星ひとつ丸ごと覆ってしまうだろう。
他の文明圏に移動すれば確実に大災害が発生する…、発見した以上は見過ごすわけにはいかなかった。

だが、私は一介の恒点観測員に過ぎず、自分の身を守るための最低限の訓練しか受けていない。
手持ちのカプセル怪獣やボール怪獣、そしてブレスレットで、どの程度戦えるのだろうか?


だが、逡巡している暇はない…、意を決し、ムルロアに立ち向かおうとした時、不意にヒューマノイドの姿を発見する。

…あれは、まさか地球人か!?

噂によれば非常に美しい惑星で、かっては何度も侵略の危機に晒されたそうだが、その度に我らが宇宙警備隊のエースオブエース
ウルトラ兄弟が退けて来たらしい(…私の敬愛するメビウス先輩も、そこで経験を積んだそうである)

その小柄な地球人(?)が、何やら小さな器械を宙に翳して叫んだ。

「…ジラさん、お願いします」

「Battlenizer、Mons-load!!」

鈴を鳴らすような美声と電子音声が響くと同時に、空中に輝くスクエア状の軌跡が現れ、そこから巨大な生物が出現した。


…えーと、私の記憶が確かなら、あれは襟巻き恐竜ジラース、怪獣の中でもかなりの珍種である。

だが、驚くべき点はさらに他にあった、あの地球人は特殊な機器を介して巨大なジラースを使役しているのだ。

もしかしてあれは、かって、光の国に侵略戦争を挑んだ究極生命体レイブラッド星人…、その遺伝情報を継承するレイオニクス?


召喚されたジラースが威嚇するように吠えながらムルロアに対峙するが、いかにも分が悪い…、何せ体格が違いすぎる。

あの襟巻きは、外敵に身体を大きく見せるためヒレか何かが進化したものだろうが、そんな小細工など通用しないほどに
ムルロアは巨大だった…、おそらく突然変異を起こすまでは、何処かで平和に過ごしていた小生物だったのだろうが…。

しかも、ムルロアに加勢するかのように、眷属のスペースモスの大群がどこからともなく現れ、ジラースにわらわらと襲い掛かる。
視界を封じられたジラースは、瞬く間に不利になり、ムルロアの口吻部から噴き出される溶解液をまともに受けてしまう。

ジラースの頭部や首を守るように覆ってた、立派な襟巻き状のヒレが付け根から溶けて、ばっさり落ちてしまった。

あー負けた、これは負けた、あっさり負けた…、これで、あの襟巻き恐竜はパワーが出なくなるはずである。
ところが追い込まれたはずのレイオニクス少女はまったく動じないどころか、薄っすらと笑みさえ浮かべていた。

「ふっ、何とオロカな…、あなた、ジラさんを怒らせましたね」


アオエエェェーーーーーン!!



…あ、あれ、なんだか鳴き声変わってるんですけど。

全身を震わせて咆哮するジラース、背中に並ぶサボテンのような奇怪なヒレから放たれるのは、もしや核エネルギーの!?
畏れを知る知能が無いのか、スペースモスが相手の変化も意に介さず、変わらずまとわりつこうとするが…。

「飛んで火にいる夏の虫とは正にこのこと、ジラさん、全身放射!!」

ジラースの口腔から眩い光が放たれたかと思うと吸い込まれるように消えていく、そして、今度は巨体が輝き、凄まじい光と熱が
全身から放たれた…、スペースモスたちはたまち灰になって死骸が雪のように周囲に振り撒かれていく。


ち、違うっ!!…、これが私の知っているジラースのわけがなかった、…どう見てもこれはアレだ。
宇宙でも1、2を争うほど危険な生物の、”アレ(自主規制)”だ!!

「いきますよー、ジラさん、おしりパンチ!!」

ちょっと耳を疑うほどやる気の無いネーミングとは裏腹に、ジラースは四肢よりもはるかに発達した尾を巨大なムチのように
ムルロアに叩き込んだ。

まともに受けた巨大蛾怪獣は、鳥の様な口吻から異様な色の体液を噴出しながら、全身をくの字に折り曲げ大地に倒れ伏した。
そのまま圧し掛かるようにマウントポジションを取るゴジ…、もといジラース、…明らかに戦い慣れている。

もの凄い殴打の嵐に苦しげな悲鳴を上げるしかないムルロア…、体躯の差なぞものともしない、組討ちは完全にジラースが上だった。
更にダメ押しの尻尾の一撃にムルロアの巨体が大きく跳ね飛び、大地に叩き付けられた。

「止めです、バーンスパイラル熱線!!」

口から凄まじい勢いで螺旋状の青白い熱線が放たれ、直撃を受けたムルロアはそのまま爆散してしまった。

「ふう…、なんかジラさん、いつにも増してハッスルしてましたね、もしかして、蛾の怪獣がキライなんでしょうか」

何ということだろう…、宇宙でも名高い災害生物であるミュータント怪獣を、あの恐竜…、ああいや怪獣はあっさりと打ち破った。
(私が持てる力の全てを使っても、足止め出来るかさえ怪しかったのに…)

「諸行無常、是生滅法…、今度生まれ変わった時には、平和に暮らすんですよ」

晴れていく暗雲を仰ぎながら、両の掌を合わせた奇妙なポーズをとる少女。
私は、ようやく以前にメビウス先輩から聞いた地球人の風習を少しだけ思い出した。

やはり、この少女は地球から来た宇宙開拓民なのであろう…、しかし、同時に強力なレイオニクスバトラーでもある。
レイオニクスバトラーに纏わる噂は聞いている…、凶悪無比なレイブラッド復活の憑代となるべく生み出された怪獣使い。

しかし、二度目のベリアルの乱で、プラズマエネルギーを失った光の国が氷結して滅亡の危機に瀕した時、事態の解決に
尽力したのも地球のレイオニクスなのである(その時、私は他の皆と一緒に氷詰めの憂き目にあっていた)

地球人は私達に比べて、はるかに短命な種族らしい…、私達の中で半ば伝説となったあの青年は今も存命しているのであろうか。

私はあの少女に知られぬよう、密かに監視することを決心した…、これも私達、光の国の恒点観測員の任務のひとつだからだ。
もし、あの恐竜だか怪獣だかが、本当に、あの”危険な存在”であれば、到底見過ごせるものではない。

聞くところに拠れば、レイオニクスバトラーはその能力によって、使役する怪獣の能力も変化するそうである。

怪獣と言えど生物であり、その能力にも個体差がある…、その先天的優位性は訓練により更に強化され、同じ種であっても
戦闘力に圧倒的な差が出る。

もしかして、優れた資質の怪獣に秀でたレイオニクスの能力が加われば、あれほどの能力を発揮できるほど強化されるのかもしれない。
生物には時折、収斂進化という現象が見られ、違う種族でも同様の生態的地位が得られれば似通った形質や能力を獲得出来ると言う。

あのジラースも、たまたま偶然、”アレ”に近い存在になったのかもしれないが、いずれにせよ、見極めは慎重に行わなければ…。

資質と言えば、私にも潜在的に優れた能力が眠っているそうである(…これはタロウ筆頭教導官やメビウス先輩の評価なのだが)
しかし、年若く経験の無い私には、どうにも実感が湧かないし、そんな自信も無い。


…これから先、私があのウルトラ兄弟や勇士司令部の精鋭たちのようになれる日が来るのだろうか。


「あのう…、そこのあなた?」


ぎっくうううぅ!!


いつの間にか自身の将来にまで思いを馳せていた私は、突然声をかけられ不覚にも仰天してしまった。
それにしても、何の気配も感じさせずにここまで近づいてくるなんて、この子はいったい?

「あなた、M78星雲の光の国の方ですよね…、お会いできて光栄です、ウルトラマン」


う、うわ、まっずーい!!


「い、いえ、わ、私は通りすがりのバルキー星人で…」

私たち光の国の住人は、このような虚偽を口にすることには、ひどく抵抗を感じる。
(無論、私自身もそうだが、恒点観測員という身分には一応守秘義務というものが存在している)

とは言え、咄嗟に口から出たのがよりによってあんなヤクザな宇宙海人(うみんちゅ)の名とは

…かなりの自己嫌悪である。


「あーそうなんですか、あそこのサメクジラは美味しいんですよねー」


ぶふおぉっ!!


あまりの突飛な会話の流れに思わず吹いた、へ…、食べられるの、アレ!?

あーいやいや、思わず素が出てしまった。
地球人のレイオニクス少女はいつの間に移動したのか、動揺している私のすぐ正面に立っていた。

「うふふ、冗談です…」

何とも楽しそうにくすくすと笑う少女…、えーということは…、もしかしてバレてる!?

「隠さなくてもいいですよ…、あたしの母星のライブラリに光の国の戦士の記録が残されてますから」

「は、はあ…、すみません、M78星雲の宇宙人です、より正確には恒点観測員8823号ですが…」

結局どこかで聞いたような、何とも珍妙な自己紹介になってしまった…。
これまた我ながらかなり情けない。

バツの悪い話だが、でも、これで不要なウソを吐かずに済むというものだ。

これが勇士司令部や宇宙保安庁の高度な特殊任務とかなら、記憶消去などの不穏かつ乱暴な手段も
在り得たが、基本的に友好的な種族を相手に、私たちから必要以上に距離の壁を築くことはないのだ。


「あ、でも…、ウルトラマンって?」

目の前の少女に問いかけはしたが、実は私はその言葉の意味をよく知っている。

地球には、かって怪獣頻発期と呼ばれる時期があり、無数の怪獣や侵略宇宙人が跳梁跋扈し、この子の
言葉通り私達の戦士が幾度か派遣された。

ウルトラマンとは、地球の言葉で超越者であり無類の英雄であると、セブン司令やタロウ筆頭教導官
80先生、そしてメビウス先輩から幾度も繰り返し、聞かされたものである。

問うまでもない…、おそらくこの少女は私が同じ光の国の者だからそう呼んでいるのだろう。


…だが、私は彼らの言うウルトラマンではない、それが英雄の名なら、私などまだその名に値しない。


「ウルトラマンは…、私達地球人の古い宇宙の友人であり、目標なんです」

「え…?」

返ってきた答えは、私の予想とは少し違っていた。

「いつか星の海を越え、光の国に辿り着き、地球の友人に再会する…、それが私達が宇宙を目指す時
胸に抱いた共通の思いなんです」

「……………」


何ということだ、地球人達はそこまで熱い思いを抱いて、この遥か外宇宙まで来てくれたというのか。

かっての私達は、地球人とそう変わらぬ姿をしていたという…。

それが、かって、太陽を失った時に開発された人工太陽プラズマスパーク。
そこから発せられるディファレイダー=レイを浴びて、現在の姿と力を手にしたのだと…。

私達が、偶然遭遇した地球人に只ならぬ感情を抱いたのも、やはりそのような理由があったのだろう。
宇宙警備隊のゾフィー隊長も言っていた…、地球人は、かって未熟な生物だった自分たちの似姿なのだと。

凶悪怪獣ベムラーを追い、過失で地球人を死なせ、贖罪のために地球に留まったM78星雲人が最初の
ウルトラマンと呼ばれた。

その後、地球に着いたセブン司令は、偶然目撃した地球人の勇気ある行動に惹かれ、やはり地球に留まり
彼らのために尽力した。

以降も何度か戦士が派遣され、皆、奇しくも一様にウルトラマンと呼ばれ、後に”兄弟(ブラザー)”と総称された。


「兄弟という言葉は地球の人たちにとって、もっと特別な意味を持つんだ、いつかキミにも判るといいね」

…メビウス先輩はそう言って、私に素敵に微笑んでくれた。



「ようこそ銀河へ…、と言うべきでしょうか、歓迎します、地球の少女よ」

「貴女も…、ウルトラマンにも女の人がいると聞いてはいましたが、こんなところで逢えるなんて」

ディファレーターレイで進化を遂げた肉体にとって、生物的な性差は、かってほど意味を持たなくなった。
だが、それはかって私達も一個のか弱い生物だった名残りで、この来訪者の少女との共通点なのである。


…胸の中に不思議な感動が生まれた。

遠く離れた場所に生を受けた私達にとって、この邂逅はこれから何を齎すのであろうか。
思いを巡らせていたちょうどその時、少女の装備から一際高い電子着信音が鳴り響いた。

「はい、カノンです…、問題の巨大生物は排除しましたが、引続きベース周辺の警戒を続行願います」

カノン…、おそらくこの子の名だろう、そして、少女の返答は、私にもうひとつの懸念を思い出させた。

「あなた…、あなたも、さっき怪獣を使役していたようだけど、もしかして…」

「カノンです…、ごめんなさい、自己紹介まだでした、ええ、あたし怪獣使いなんです、レイオニクスを
ご存じでしょうか?」

やはりそうか…、かって幾つかの惑星でレイブラッドの遺伝子情報を継承した能力者が生まれた。
多くの場合、彼らは戦士(バトラー)として、幾多の闘争を繰り返していた。

セブン司令や、光の国を救った地球人レイオニクスも関与していたという惑星(地球人はハマーと呼称した)
崩壊事件においてレイブラッド精神体は滅ぼされたと聞くが、その潜在因子は今もまだ残されていたという
ことなのだろう。

カノンは眼前に先程の器械を取り出して見せた、噂に聞くバトルナイザー…、本物を見るのは初めてだ。

一見何の変哲もない器械に見えるが、有機的な成分も混在しており、所持者の能力の向上によって形状が
変化するという。

カノンの所持しているものは、レイブラッド星人の頭部にどこか似ており、ネオバトルナイザーと呼ばれる
アッパーバージョンである、…これだけでもカノンの持つ資質が並々ならぬことが判る。

この子の使役する襟巻き恐竜ジラースが、あれほど強かったのも肯けるというものだ。

「ところで、あなたの使っていたあの珍しい怪獣のことですけど…」

「ああ、ジラさんですね…、そうですか、見てらしたんですか、あのコの活躍っぷり」

誇らしげに薄い胸を張るカノン…、自分の怪獣に対する愛着からか言葉使いがどこか子供じみてくる。

それにしても妙に可愛い感じの愛称だな、伝説の”アレ”と見紛うばかりの凄まじい力の持ち主なのに…。


「あんなに強い力を持っているなんて驚きました…、制御するのは大変じゃありませんか?」

「いえいえ、普段はマグロ丼ばっかり食べてるおとなしいコですよー」



………ウソだ、絶対にウソだ!!


「ちなみに私の大先輩が可愛がっていたゴモたんは、カツカレーが大好物でした」


………ライスは必須かい!!?


あ…っといけない、どうにも調子が狂う、…良い子には違いないのだろうが、何やら理解しがたい
珍妙な感性も同時に持ち合わせてるようで、どこまでが冗談だか本気だか、どうにも読めない。

彼女のネオバトルナイザーを、改めて一仕切り見回すと小窓が3つほど付いていることに気が付く。
覗き込むと何やら蠢くものが見えた…、それらがカノンの飼っている怪獣で、例の襟巻き恐竜の様子も
確認できる。

驚くことにバトルナイザーの中であの襟巻きが復元しているようだ…、肉体構成が電子情報化されているのか
ある程度修復が利くようだ…、システム的に私達のカプセル怪獣とかなり似た部分があるのだろう。

「!?」


………何か信じられないモノいたーーーーっ!!!


「あの…、カノン、これは?」

「えへへー、宇宙でお腹を空かせて弱ってたときにお話ししたんです、そしたら仲良くなっちゃって…」

自慢するような口調で、カノンが零れるような笑顔を見せた…。
それが妙にまた可愛らしいのが逆に猛烈な不安をそそる。

「で、でも、これってエサとかどうしてるんです?、まさか、えーと、この子もおコメ………
食べませんよね?」

「あははー、当たり前じゃないですか、変わった事言う方ですねえ」


………何か思い切り胸に刺さった!!


だが、これは無視できない重大な事である。


「大丈夫ですよー、近隣にめぼしいエサ場がたくさんありますし、バトルナイザーの中にいる間は特に
お腹も空かないみたいだし」

確かに近場には巨大ガス状惑星が幾つかあり、彼らの言う地球型惑星にも天然ガスを豊富に埋蔵している
ものが多い。

「でも呼び出す時には、最低でも所属長のキャップ以上の承認が要るんですよねー、だから、なかなか
かまってあげられなくって」

少しだけ安心した…、少くとも彼らは、これがどういう種類の生物だか一応理解はしてくれているようだ。
(そうでなければ、”アレ”とか、先刻のムルロアのような災害生物に匹敵する存在を、敢えて使役しよう
など思うまい)

それにしても、よくもまあ、こんなモノを捕まえた上に、言うことを聞かせられるものである。

これに比べれば私のカプセル怪獣なんか、ただの愛玩用のペットのようなものだ。

何せ戦闘時にほとんど役に立った試しがない、唯一の例外はセブン司令より直々に手渡されたボール怪獣で
正直、私なんかよりはるかに強いのだが、たった一分間しか使えない。


それにしても、…やはり、この少女は見過ごすことが出来ない特異な存在のようである。


「…ところで、今、キャップと言ったようですが、お仲間が近くに?」

先程の通信が短距離用の指向性レーザー波であることは既に分析済み…、おそらく、さっき見た人工建造物からだ。
要は、この子の言動や周囲の状況に不審な点が無いか見定めることが重要なのだ。

「ええ、すぐ近くの惑星開拓用に建設したベースキャンプに、私達の船と一緒に…」

私の問いに、屈託のない笑みを浮かべながら応えるカノン。
(…やはり種族の違いからか、彼女には私の表層的な思考や感情を読み取ることはできないようだ)

さっき、私を”友人”と呼んでくれて嬉しかった、心からそう思う…。
だけど友諠のために自分に課せられた任務を忘れてはならない。

この地球の天才レイオニクス少女の一行が、宇宙にとってこれからどのような存在と成るのか。
ここは、はっきりと見定める必要があるのだ。

「少しの間、同行してよろしいでしょうか、あなたのお仲間にもぜひお会いしたいのですが」

「はい、では、私達のスペースペンドラゴン2世号にご案内します」

「スペース…、ペンドラゴン?」

その不思議な響きのする名前には聞き覚えがある…、もしや?

「ええ、かって様々な難事件を解決し、初めて光の国を訪れた武勲艦の名前を受け継ぎました。
私たちの家であり、大切な船です」

やはり…、かって、ベリアルの乱で、ギガバトルナイザーの制御を奪い、光の国の復興に貢献した
あの地球人の青年の乗った船の名だ。

「…イデア」

「はい?」

「イデア、…それが私の名です」

「うわぁ、ありがとうございます、歓迎します、ウルトラマンイデア」


…こうして、私と地球の友人たちの果てしない冒険の旅が始まった。


(続く)


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