プロローグ
厳正なる雰囲気の中に数十人の少年少女がいる。その部屋の中央にはひとつの水晶があった。その水晶に一人また一人と子供たちが触れる、するとその水晶は様々に色を変えていった。
これはある魔法学校の入学式の風景である。この国では10歳になった子供はみなこの学校に入り魔法を学ばなければならない。それはこの国、魔法国家ルルシエの創設に理由がある。
創設者ルルシエは偉大なる魔法使いであった。しかし、それゆえに時の大国ゴルドバにその力を利用されていた。周辺の国々との戦争に使われたのである。
戦いに疲れたルルシエは何万もの同士とともに未開の大陸へと移った、そしてその強大な魔力によって大陸ごとはるか上空へと浮かび上がらせたのだった、その命と引き換えに。
その後、ルルシエの弟子たちが魔法国家ルルシエの建国を宣言した。そしてすべての同士は国民となり大陸の開拓に力を尽くした。
そして数年がたちその大陸で新たに子供たちが生まれるころ、ルルシエの弟子たちは魔法学校の建設を発表したそして同時にすべての国民は魔法を学ぶべしと。
そのときにはすでに大陸の一部は開拓され国民もあちらこちらに移り住んでいた。
人々は困惑した、魔法は確かに重要ではあるが、いまだ全容を見せない大陸の調査や、組織としての仕組みづくりなどやるべきことは山のようにあったからだ。
その疑問に対して弟子たちはこの大陸は現在われわれ国民の魔力によって浮いている、魔法を学ぶことで魔力を増やしていかなければならないと答えた。またこの大陸には魔物が多数生息していることもわかっていた。魔物とはこの世界に存在する魔力によって形作られている存在で、その脅威と対するためにも魔法の力は必要だった。
そうして建設された魔法学校は、約千年のときを経た今でも存在している。この学校はそんなうちのひとつである。入学式では特殊な水晶を用いてその人間の魔法の属性を調べる。魔法の属性は火・水・風・土・光・闇がある。もっともこれは属性魔法と呼ばれる、魔法の形態のひとつでしかないのだが、教えていくのに便利なこともあり、生徒たちはまず自分の属性の魔法を習得することから始める。
今、一人の少年が水晶に触れる、すると透き通っていた水晶は暗く濁った澱んだ色へと変わった。
それは、その少年が闇の属性を持つ魔法使いであるということを示していた。