十話の続きは十一話です。
これは十一話に繋がらないifエンドです。
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気付いた時はもう神殿内じゃなかった。
「道場でもなさそうだけど?」
見覚えのない場所だった。うまくいったのかも。
「……まずは現状確認、だな」
能力に気付くまで混乱して何度も死んだ経験がやっと生きそう。
「……コミケ、行けるな」
日付を確認したら俺が恋姫世界へとばされた日だった。
慌てて他の荷物を確認。財布、デイバッグ、服装などスタート時の装備と一致していた。
唯一違うとすれば、左手薬指に輝く指輪。
「みんなを探さないと」
コミケは無理っぽい。
……いや、今日は無理でも本命の三日目なら行ける!
携帯のアンテナ立ってるってことは恋姫世界じゃなさそうだ。
元の世界でもないんだろうけど、きっとコミケぐらいあるさ。
「ああ居た。一体どこに消えたのかと思ったわ」
すぐに華琳ちゃんたちは見つかった。愛の力って凄いなぁ。
俺を見つけてくれたのが、春蘭たちの後だっていうのは気にしないでおこう。……ぐっすん。
「……ここがあなたの世界?」
「たぶん一刀君が作った新しい世界、かな? 詳しいことは一刀君を見つけないとわからないよ」
きっと貂蝉が解説してくれると思う。
二ヵ月後。
何度か殺されそうになったけど、いまだに生きのびているので俺の能力がどうなったかはわからない。
予想通り、ランドセルがばれた時は大変だった。
死ぬことこそなかったが、しばらく口もきいてもらえなかった。
あんまり辛いのでもう自分で死のうかとさえ思ったが、なんとか許してもらえた。
ランドセルよりももっとアレなものを装備させられたけど。……おっさんのオムツは勘弁して下さい。
「なあ一刀君」
「はい?」
「最近、女生徒が俺の眼鏡を外そうとするんだが」
おかげで現在避難中。サボりともいう。
「外せばいいんじゃない?」
嬉しそうな一刀君。やはり君の差し金か。
「断る」
「もったいない」
「銅鏡持った時、俺のことまで思い浮かべてくれたのには感謝してる」
「そりゃ皇一さんのこと忘れるわけないよ。あん時最後に見たの、眼鏡外したイケメンモードだったし」
華琳ちゃんたち魏のみんながこっちこれても、俺はこれないんじゃないかもと思っていた。だから、一刀君のおかげで制服華琳ちゃんたちを見ることができたのには感謝している。
感謝しているのだが。
「でも、なんで俺まで今更学生やってるのさ?」
そう。なぜか俺はこの世界ではフランチェスカの生徒ということになっていた。
「た、多分、皇一さんの制服姿が見たかったからじゃないかと」
「おっさんの制服見てどうするんだよ。ここは用務員だろ。教師でもいい」
「陵辱ポジション?」
いや、そんなのはできそうにない連中でしょ。
「あ、璃々ちゃんの先生でもいいな。だーい好きって言われるのはアリだね、うん」
「はあ」
「なのに学生。無理あるって」
「まあ、ここはきっとそんな外史なんだよ。みんな気にしてないし」
本当に気にしていない。クラスどころか学園におっさん生徒は俺だけなのに。……年上扱いもしてもらってない気がするけど。
「学生結婚な上に重婚でもな」
自分の左手の薬指を見る。
学生なのに、俺と華琳ちゃんたちは夫婦として認められていた。
「みたいですねえ」
一刀君も指輪を光らせる。
「あと同性婚もアリみたいです」
「周瑜たちのためか。まったく、どんな世界を考えたんだか」
孫策はいない。一刀君、いないのが当たり前だったみたい。どんな人か教えとけばよかったかな。道場で世話になっ……あんまり世話になった覚えないな。結局、道場ってなんだったんだろう?
ふと気付くとじっと一刀君がこっちを見つめてる。
……同性婚アリって周瑜たちのためだよね?
他に理由なんかないよね?
一刀君が口を開きかけた時、午前の授業の終わりを告げるチャイムが響く。
「午前、全部サボっちゃったな。じゃ俺、華琳ちゃんたちと昼飯食うから」
なんか「俺のために眼鏡外して下さい」とか言われかねない雰囲気から即座に脱出。
華琳ちゃんの作ってくれた弁当といっしょに、幸せを噛みしめる。
「なによ、ニヤニヤして。普段以上に気持ちワルイ」
桂花の罵倒も気にならないね。
「そういえば授業をサボったそうね」
ぎくっ。
「お仕置きが必要よね」
食後の運動程度にしてほしいなあ。
「空き教室は確保してあります」
なに言ってるのさ秋蘭。
「最近、女生徒に騒がれていい気になっておるのではないか?」
なに言ってるのさ春蘭。
「おっちゃん、誰といっしょにいたの?」
なに言ってるのさ季衣ちゃん。
もしかして浮気を疑われてる? 俺がそんなことは不可能だってわかってるでしょ。
「一刀君と駄弁ってただけだって」
「ふむ。愛紗を困らせたのに加担していた、と。罪状一つ追加ね」
げっ、やぶへび。なんですか、その首輪は?
一応これ言っておこう。
「我が策成れり!」
……成ったのかなあ?
首輪を引かれて空き教室へ連行中に悩むのだった。
END1 学園エンド