プロローグ(これ)の書き直し、一話、二話の修正
世界観を指摘された通り示して少しはわかりやすくなったと思うのですが、どうでしょうか?
『ユグドラシル』、俺達が住んでいる巨大都市の名前だ。
この世界の魔術、機器、食物、流行、全ての発信地が此処であり、全ての最先端は此処だった。
治安もよく、表通りは賑わい、夜でも活気が耐えない、これだけ聞けば平和な理想郷にも聞こえるだろう。
――いや、訂正しよう。〝治安がよく見える〟だ。
そんな都市でも、路地裏では事件が起きるし、裏世界があって抗争がある。
違法の何かが取引され、裸同然の女が身を売っている。
そんな『ユグドラシル』の裏世界――俺もそこの住人だった。
***
とある建物の一室、俺はそこにいた。
何人もの男が倒れ、血を流して突っ伏している。皆命に別状はない、と思うが。
一人だけ、倒れずに俺に敵意を向ける奴がいる。ここのリーダー格の人間だ。
今回の依頼内容はとある薬の回収。俺は誘導のつもりだったのだが――相手が偉く弱い。
これ以上表現をしようがない程に弱い。相方が薬の回収に向かっているのだが、俺はいらなかったんじゃないだろうか。
「くそが……調子こいてんじゃねえぞ!」
目の前の男は声を吐き、それと同時に手から雷を出し、それを俺に向ける。
流石に雷の魔術なだけあって、速い。そこだけは評価できる。
しかし、それでも俺からすれば十分すぎる程の時間だった。
「〝止まれ〟」
俺がそう一言命じて手を前に突き出す。
魔法陣が現れて相手の雷を防ぎ、反射するように魔法陣の前で電撃が跳ねる。
その光景に目の前の男二人は目を大きく見開き、すぐさま苦虫をすりつぶしたような、苦悶の表情を浮かべる。忙しい男だ。
「なんなんだよ……なんなんだよてめえ!」
叫ぶように声を張り、声の合間に息を挟み、怒りに任せたように声を俺に投げてくる。
視線を少し動かすと、男は握り拳を作っていて、血管が浮き出ている。
「俺の魔術は生半可な障壁なんて貫通するんだぞ?
……なのにてめぇは、障壁すら貼らずに俺の魔術を防ぎやがって……馬鹿にしてんのか!」
「馬鹿になんかしてねえよ。
お前が弱すぎるだけだろうが」
「な――んだとおぉ――!」
魔力は練れそうもないのに、口から言葉はいくらでも練れるのか。
面白い奴だ。
「俺が名前もしらねえこんなクソガキに負けるなんてありえねえ……ありえねえ!
いいぜ、見せてやるよ、奥の手をよぉ……」
男は天へと手を伸ばし、魔法陣を形成する。
上級魔術……使えたのか。
「これで今度こそ、てめえも終わりだ!
その余裕面、今すぐ黒っこげにしてやっから――」
俺はその言葉を最後まで聞く事ができなかった。
何故かといえば、男との距離を詰めて、俺が右足で蹴りをかましたからだ。
男は吹っ飛び、壁に当たるとそのまま倒れ伏せる。
まあ、死んではいないだろう。
「……目の前で魔力を溜める奴があるか」
余程頭に血が昇っていたのか、それとも馬鹿なのか――
どっちにしろ大した奴ではなかったか。
「……どうなってんだよ、これ」
階段を昇り、新たにこの階に入ってくる人物がいた。
聞きなれた声、何処か気の抜けたような調子、俺の相方の光陰(こういん) 陽人(ようと)だ。
「そっちの要件は終わったのか?」
「ばっちり……薬はちゃんと回収してきたよ」
ほら、といって透明の袋を見せる。そこにはカプセルの形をした錠剤が何個か入っていた。
「……それだけか?」
「これだけ」
こういう物は何十個もストックしておくものなのではないのだろうか。
僕にも理由はさっぱり、と陽人は僅かに首をかしげてみせる。
「にしても、お前がこういう依頼を引き受けるのは珍しいな」
「小規模な物だったし……これだけ小さい組織なら後処理をしておけば何処かに潰された、って事になるでしょ」
陽人と俺は万屋をやっている。
その万屋は本当になんでもやる。殺しだってやる。
しかし、裏世界の事に関しては陽人は目立つのを酷く嫌がる。
そういう依頼をする時も、何かの魔術かはしらないが(陽人曰く、〝後処理〟)俺達がした事を認識できなくしている。
今回で言えば、この組織を潰したのが俺ら、という事が無かった事になる。
それ所か、定期的に別の魔術(魔術じゃないかもしれないが)を使用して俺達を有耶無耶な存在にしている。
まあ、つまり――人の記憶に明確に残らないようにしているのだ。
俺は別に構わないのだが、その理由を聞いても毎回教えてくれないか、適当にはぐらかされるだけだ。
「とりあえず一つは情報屋に渡すとするかな……夢人(むと)、先帰ってていいよ?」
陽人が俺の名前を呼び、建物内で〝後処理〟をはじめる。
見ても何をやっているかわからないし、言われた通り帰ろうとして――一つ疑問ができてそれを問う。
「陽人、お前が回収した薬ってどんな薬なんだ?」
「ああ、これ?」
〝後処理〟の途中のように見えるのだが、それでも陽人は構わず話を続ける。
「なんでも――結構やばい麻薬らしくてさ、名前は……〝ゴクヨク〟とかいったっけ」
――これは運命だったのかもしれない。
――ここで依頼を引き受けた事も、俺がその麻薬の名前を聞いた事も。
――その麻薬の出処も、この後に関わる羽目になるあいつとも――全てが全てが運命か、仕組まれていたのだろう。
俺の歯車はこの時明確に動き出した。
しかし、この時の俺はその殊に気づけなかった。
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