大陸には数百の国々があった。
国には属さぬ種族や、国を持たぬ国もあった。
戦乱だった。
剣と弓が交錯し、怨嗟と狂乱が心を蝕む。
慢性化した戦争はそれ自体が市場となり、新たな戦場を生み出だす負のサイクルは多くの血を欲した。
度々、戦争における利益と血は強大な軍事国家を育む土壌となる。
やがて『とある国』がその名を知られるようになった。
『帝国オーディン』
失われた神の名を持つその国は、瞬く間のその版図を広げていった。
攻め入る国に対し「戦うか、降伏するかを選べ。戦うならば王族将軍側近は皆殺し、降伏するならば条約を結べ」という選択肢を迫るその外交は帝国オーディンの精強なる軍隊の噂とともに各国に響き渡り、半数以上の国々が降伏を選択した。
オーディンの政治が圧政ならば、降伏した国々が供託し反乱を起こしていただろう。今まで大国とされてきた国々はそうして滅んだ歴史があるからだ。
しかしその政治は意外なほどに善政だった。各国に守備隊以上の武力は認めないと言うスタンスは取りつつも、実力のある文官、武官を要職に就けるその柔軟さは市民に高い評価を受けた。
戦争を選んだ国々はそのすべてが滅びを迎えた。
中には戦の直前に反乱によって滅びる国もあった。
戦闘は迅速且つ暴力的に行われ、抵抗と言う形の戦いしか起きなかった。近隣の国々が連合を組み、数の上では互角という戦いもいくつかあったが、オーディンの軍隊に一矢報いた軍は皆無だった。
帝国オーディンが国々を滅ぼし、平定し、属国としていき始めて百年が過ぎた頃、大陸の端で最後の戦いが終わろうとしていた。