「―――ですから―――――」
「それは――――だろう!―――」
二つの、二人の声が聞こえる。
怒鳴る様な男の声と、それをなだめるような男の声。
なんだか懐かしいような、声。
何が懐かしいんだろう。
駄目だ、全然思い出せない。
思い出せない?
何を?
見えない。
まるで霧がかかったみたいで、二つの影くらいしか見えない。
ここに聞こえるのもノイズのかかった雑音のような声。
うるさい。
ウルサイ。
キキタクナイ。
「―――――」
「アヤ!島だ!島が見えたぞ!」
「…んゆ~?」
うるさいなぁ、人が折角気持ちよく眠ってるって言うのに。
ていうか船長肩もって揺するのやめてくだしあ、流行ってんのそれ?
変な流行に流されちゃいけませんってテレビで習わなかったか。
あ、この世界にテレビ無いや。
ていうか太陽の進み具合的に昼寝してから一時間も立ってないよね。
やっぱ神様は俺のこと嫌いらしい、何度も言うが俺も嫌いじゃい畜生め。
おかげで変な夢見るし、全然覚えてないけど。
まぁ夢ってそんなもんだよね。
「島、ですか?」
「ああ、島だ」
…んー確かに見えるけど、どう見てもこじんまりした無人島じゃん。
あれ上陸するの?俺の記憶だと次って確かウソップの島じゃなかったっけ?
あんな場所あったっけな?全然覚えてない。
くそぅ、今更になって原作読みたいけどあるわけないし。
あったら未来書になるけどね。
「上陸するんですか?」
「するぞ」
「あんな島に?」
「島があったら上陸して探検するのが海賊だろ!」
そんな自信満々にいわれましても、それどっちかというと冒険家だよね。
島の人からすれば海賊なんて大部分が害悪でしかないし、あと酒場のカモ。
気乗りしないなぁ、寝たい。
船の上で寝ると揺れがいい感じで気持ちいいんだよね、ちょっと体痛いけど。
まぁいいや。
「ゾロさん、起きてくださ~い」
とりあえず腹部に一蹴り、軽めだったつもりだけどグホッ見たいな声でたね。
まぁ気にしない気にしない、こっちが嫌な気分で起きたのに目の前にぐーすかイビキかいてる奴がいたら誰だってそーする、俺だってそーする。
「ちったぁマシに起こせ…」
おやおや腹を押さえてどうしたんです?昼寝のし過ぎでお腹でも冷やしました?
こっちはルフィの麦藁帽子直してお前らが飯を食わないようナミが宝を盗らないよう後ろに荷物を置いて守護獣のように寝てたんだよ。
昼寝するのにもマジ寝するのにも安息なんてないんだよコラ。
ナミさんはバギーの所から奪った船に乗ってるから乗り移って来たら警戒できるけどお前らそうはいかんだろうが。
海の上では酒は一日一本、肉も一日三食、これ以上は認めません。
あれ?すでに家計スキルが急激にアッポしてきているんですがねぇ?
気にしたら負け…だよね。
「ナミさーん、上陸するらしいですよー」
隣を航海中のナミにそう呼びかける、本当に近いから軽く呼びかけるだけで聞こえる…はず。
なんせ向こうの船には一室寝室みたいな部屋があるからね、こっちは何もないからね。
テラウラヤマシス、メリー号はやくきてーはやくきてー。
「お待たせ、っていうかあれどう見ても無人島よ?猛獣とかいるかもしれないし…」
「うちの船長が行くって聞かないんで、まぁ猛獣に食われたら笑ってあげてください」
もうどうにでもな~れ。
てか一度猛獣の腹の中に入ってもらったほうが反省してくれるんじゃないかな。
あ、でも大蛇の中には入るね。
鴉は海に夢を馳せる
第八話 さくせん>気楽に行こうぜ
んで到着しました無人島。
辺りを見れば木と木と木と木、いいね資源満載だね。
フルーツでもなってれば最高だったけど、このあたりには見えない。
「という訳で、食料および…期待はしていませんが宝などの探索をお願いします」
「おう!任せろ!」
素直でよろしい、というか食料は君の分だからねルフィ君。
時分の食う分は自分でとってきてくれ、いい加減忍び込んで盗ってくるの嫌になってきたんだZE。
「食料なら十二分にあるだろ?」
「十八分食べる人がいるんですよ」
まぁゾロは保険で、食料はたくさんあって困るもんじゃないしね。
腐らせなければという前提は残念ながらこの一味にはありません、いい事なのか悪いことなのか。
まぁ酒の分文句言わずにいって来い腹巻。
「こんなところにお宝があるなんて思えないけど…」
「万が一、ってこともありますしね」
まぁないだろうけど、人生かもしれない運転で行けってね。
注意するにしても楽しむにしても可能性を考えるのは大事です。
「という訳でがんばってください」
「アヤは行かねェのか?」
「がんばろうと思ったのですが、やっぱり無理なようです」
眠い、超眠い。
ゆっくり眠るチャンスだ、絶対に逃さないぜ。
もう警戒しながら浅眠りをするのにも限度があるんだよ、お願い寝かせてください。
「ん、そっか。んじゃ行ってくる」
「安静にしとけよ」
「え~と、お大事に?」
うるさい原因三人集。
誰の所為だと思っているんだよこのやろう。
あ、駄目だわ眠いわもう寝ます。
ふらふらっと船に乗り込むと、やはり波の揺れがいい感じ。
ゆっくり…眠れ…そう、だ。
「容態――――――は規則上―――」
「―――――!俺は―――――――!!」
うるさい、うるさい。
なんなんだよ、なんなんだよ。
聞きたくない。
話しかけるな!
黙れ。
黙れ!
ダマレ!
白い。
白い霧。
白い場所。
上も見ても下を見ても横を見ても前も後ろも白白白白白シロシロシロシロシロ。
見たくない、見たくない!
目を目をつぶらないと。
目が目が目の前がメノマエガ真っ白にマッシロニ。
白白白白白白シロシロシロシロシロシロシロシロシロシロシロ。
嫌だいやだイヤダ!
誰か――誰か!
船長!
…頭が痛い、ボーっとする。
今何時…って結構夜だな、月が見えるってことは。
ん?あれそういや無人島にいたんじゃなかったっけ?んー。
あ、もう探索して出てきたっぽいね、船の上に結構な量のフルーツが置いてあるし。
どうやら今回はミッションを無事コンプリートできたようだな、関心関心。
…てか結構無防備に寝てたんだな、ここまで起きないとは。
まぁ見たところ食料にも財宝にも手を出されていないっぽいし、いいか。
月が綺麗だなー、なんだか右手を振りたくなるね。
一人でやってもむなしいだけだけど。
うんナミさんは個室で寝てるから分かんないけど、男二人は寝てるから俺一人か。
ツマンネ、寝ようかな。
でも昼寝したから眠れないな、ゾロでも起こそうか。
…いや、今回はゾロも探索に同行したし勘弁しておいてやろうか。
てか迷子にならなかっただろうなこいつ、なっただろうな。
気にしない気にしない、『俺は悪くない』っと。
さて暇だし月も出てるし一人酒としゃれ込みますかね。
そういやこの世界に来てからは一回も酒飲んでないな。
お酒はいい、リリンが生み出したストレス発散の極みだよ。
飲んだら寝れるかもしれないしね。
「…アヤ?」
「へ?」
一度寝たら腹にナイフ当てられてても起きないルフィが起きるとは珍しい。
しかもこんな真夜中に、腹でも減ったのか?
「どうかなさいました?」
「…んー、なんか呼ばれた気がした」
テレパシーにでも目覚めたのか?
てか呼ばれたって誰によ。
少なくとも俺は聞いてないし、俺でもないがね。
「まぁそれはさておき、今日の無人島はどうでした?」
「珍獣のおっさんがいた」
珍獣のおっさん?屁怒絽閣下にでもあったのか?
よく無事でいられたものだ、あの方は一睨みでワニを殺すというのに。
まぁ冗談はさておき誰だっけ、珍獣のおっさん…。
オカマ野郎?こんなところにいる訳無いしな。
でも他に検索候補が無い、忘れているのかね。
まぁいいや、俺が忘れているという事は物語にさして影響を与える存在ではあるまい。
んじゃ勤労結果も報告してもらおうか。
「このフルーツ誰が取ったんですか?」
「珍獣のおっさんがくれた、いいおっさんだったな~」
もらい物ですか、まぁ収穫があっただけ文句はいわないけど。
てか本気で誰だろ珍獣のおっさん、気になってきたけど聞いたら負けな気がする。
ああでも酒飲んでるとどうでもよくなってくるな。
「アヤはなにやってんだ?」
「一人酒です、一緒にどうです?」
「肉なら食う」
「…まぁ今宵くらいは許しましょう」
「ホントか!?」
なぜか今日の俺は紳士的…じゃなくて今の俺は寛大だ。
少しばかりの肉は許してやろう。
つまむ程度だからね?止めてくれよ許した途端食料が空っぽとか。
まぁ勝手に取りそうだったので適当な分袋から出して渡してやる…前に。
フルーツの中からメロンを取り出し、肉の中からハムを出して二つを風で薄く切ってハムをメロンの上に乗せてやる。
『生ハムメロン』の完成だ、これリアルに上手いんだよね。
最初聞いたときは頭おかしいんじゃねーのみたいに思ったけど。
「なんだそれ?うまいのか?」
「生ハムメロンです、味は食べてからのお楽しみってことで」
さぁ召し上がれ。
ちなみに俺はハムだけ食べる、甘みは酒には合わないしね。
合うものもあるけど、今飲んでいるのはビールなので塩味の聞いたハムが最高。
ジャーキーとかでもいいね。
「んめぇ~!」
「それはよかった、でも少し静かにしてくださいね?」
どうやらお気に召したようだ。
しかしメロンは厚めに切ったのだが、一口で食べるってどうよ?
小柄なメロンだったけどさ、それを差し置いてもしかも皮ごとだよ。
メロンの皮って食べられるの?食べたこと無いな。
まぁ切ったメロン分は作るつもりだったので、別にいいか。
「…うるせェな、なにやってんだ?」
「おおゾロさん、どうです?一緒に」
「酒飲めるんなら付き合うぜ」
「…あなた達が気が合う理由がわかる気がします」
どっちも単純なんだね、いや分かってたけどさ。
再確認できたようん、まぁ楽しい分にはいいか。
「面白そうなことしてるじゃない、手を組んだわたしはのけ者?」
「おやおやナミさんまで、てっきり熟睡しているものかと」
「あんだけ声出せば聞こえるわよ、私もいいかしら?」
「ええ、もうどうせ島も近いですしこの際全部消費してしまいましょう」
こうなりゃもう宴会だ宴会。
飲めや食えや歌えや踊れ。
金なら食糧買う分には使ってもいいし、盛大にやろうぜ!
「肉も食いきっていいのか!?」
「まぁ、もういいでしょう。あなたにしては持ったほうだと思います」
「酒も飲みきっちまっていいんだな?」
「女といえど二言はありません、なんなら飲み比べでもします」
「へぇ、上等だ」
「じゃあわたしも、いっとくけど負けないわよ?」
「ふふ、私も負ける気は毛頭ありませんのでご心配なく」
結局こうなるわけね、まったく俺の家計スキルもまだまだだ。
まぁいいよね、たまにはこういうのも。
なんたって、俺達ゃ海賊。
自由に行こうか。