感想ありがとうございます。最近ロリコンとミニコンの定義がわからなくなった獅子座です。というわけで四話です…… 朝の教導も終え、新人達は食堂で昼食を摂っていた。朝一の訓練がハードな上、異常な光景と異常な恐怖を植え付けられた彼女らの食は余り進まなかった。しかし、昼以降の訓練が有る為、無理にでも何か腹に入れておかないと無様な姿を晒す事になるだろう。というより、そんなことになればなのはさんに殺される……というティアナの提案を聞いて、青い顔をしながら無理やり胃に流しこむ4人。奇しくも、今朝の一件のおかげでコミュニケーションをとらずして、仲間としての連帯感を得た事となる。 その4人の傍らには、別のテーブルにてなのは、フェイト、シグナム、ヴィータが着席をしていた。「……不覚。あの変態に遅れをとるとは……」「シグナム、元気出して。あれは仕方ないよ」「あ、あはは……」「ま、無様だったな」 盛大に落ち込んでいるシグナムに対して、慰めるフェイト、乾いた笑いを浮かべるなのは、どうでもいいって感じのヴィータ「まあ、あの後なのはに盛大にぶっ飛ばされてたけどな。あいつ」「あ、あはは、つい、ね」「そのおかげで、新人にはいい刺激になったみたいだな」 チラリと新人達の席を見ると、必死になって昼食を胃に流しこむ姿が見える。それを見たなのはが盛大に凹んでいた「なのは?」「フェイトちゃん……私、多分怖がられてるよね?」「多分じゃなくて、絶対だな。なんせ、あたしですら最初に会った時を思い出したくらいだったからな」 ヴィータの一言に、更に凹みまくるなのは。制限がかかっているとはいえ、至近距離からのあの一撃はまさに冥王と呼ばれるにふさわしい姿であった「まあ、気にすんな。それになのはは『管理局の白い悪魔』『トリガーハッピー』『冥王』て呼ばれてるんだろ?今更いいんじゃないか」 机につっぷする彼女に向かい、苦笑しながらとんでもない単語を連発するヴィータ「ちょっと待って!誰がそんなこと言ってるの?」「ん?ああ、あいつが言ってた。なのはらしい2つ名じゃねえか」「へえ……今、彼はどこにいるのかな?」 すごい表情で、食堂内を見回すなのは、それを見た新人たちはビクっと動きが止まる。それを見たフェイトは「……なのは、多分そういう顔するからじゃないかな?」「!?違うよ?フェイトちゃん、ちょ~とお話するだけだし」「なのは……」 友人がどんどん黒い方へと向かっていく事に不安を感じるフェイトがため息をつく「フェイトも他人ごとじゃねえぞ」「え?」 安全圏にいたフェイトに、ニヤニヤしながら「確か……『黒い死神』『脱ぎ魔』『閃光のエアロビ』だっけか?」「……なのは、そのお話、私も参加していいかな?」「うん、フェイトちゃん二人で千早君とOHANASHIしよっか?」「そうだね。ちょっと私カートリッジ補給してから行くから……」 二人黒い笑みで笑い合う。それを見ていたシグナムはため息をつきながら「二人共……気持ちは解るが……周りを見てみろ」 ハッとなって周りを見回すと、食事に来ていた職員全員が盛大に引いていた。さらに隣の席では言わずもがな新人達は……この後の訓練を想像し、皆お通夜みたいな表情をしていた…… それを見たなのはは頭を抱えながら「もう!全部千早君のせいなんだからねぇぇえ!!」 彼女の大きな叫び声が食堂内に響いた…… …… …………「いぇえっくしょん!!」「どうしたの?千早君」「いや、なんだろうか。すごい悪寒がしたんだが……具体的にいえば桃色の砲撃を食らった後に金色の電撃に撃ち抜かれるような感じの……」「ん~誰に狙われているのか想像できるのでやめときますね……はあ」 どこか、遠くを見つめている変態の前にため息をつきながらごちるシャマル。現在彼がいる場所は六課の医務室であり、彼は今、先ほどの模擬戦での治療を受けている。「しかし、非殺傷設定とはいえ、あれは恐怖を感じたな。流石に一日に二度受けると身体どころか精神まで病んでしまう」「貴方は既に精神は病んでると思うのですけど……」 医務室で二人きり、それも年頃の年代の男の子というありがちなシチュエーションなはずなのにまったく不安を感じる事が無い。なにせ目の前にいる青年が幼女と少女以外に興味を持たないロリコンであるのだから、ともあれ彼と話をしているとものすごく疲れる。なにせ、シグナムと自分のことを『おっぱいの騎士』に『うっかりおっぱい』というすごく不名誉な2つ名が広まったのも彼が原因だし(ロリコンだけでも質が悪いのに、セクハラまで……大丈夫なのかしら?この人こんなので) 服を着替える青年を見ながら、これからの事に頭を悩ますシャマル「さて、思わぬ所で時間を食ってしまった。仕事に戻らないとな」 そんな彼女を気にせずそう言い、室内から退室しようとするが、「おお、いたいた」 ちょうど立ち上がろうとした時に医務室のドアが開き、外からヴィータが入室してきたのである「ん?ヴィータちゃん?どうした?俺に会いに来たのか?」 満面の笑顔で千早が言うが、心底どうでもいい表情で「莫迦は死んでから言え、そうじゃねえ。なのはとフェイトがお前に話があるから仕事終わったら来いって」「ん?話?特に俺は無いぞ?」「いいから、いっとけ。どちらにせよお前の為だ」「なにそれ?なんか知らんが行けばいいのか?」「じゃねえと新人達が怯えて仕方ないんだよ。なのはどころかフェイトまでああだから」「んーなんかよく解らないけど了解」 首を傾げながらも、了承すると部屋から出ていく千早、その後ろ姿を見ながら「まあ、なんだ……骨は拾っておいてやるから」 ものすごく優しい目で見られた……「んーなんだろうか、さっきの悪寒が現実になりそうな気がするのだが?」 疑問に思いつつも医務室を後にする彼を見ながら、残された二人は盛大に溜息をつくのであった……「大丈夫なんでしょうか?ヴィータちゃん」「ん?大丈夫なんじゃないか。大体あいつがボコボコにされるのはいつものことだし」 ため息をつきながら、言うシャマルに心配するなと諭すヴィータ「それに、あいつはそんなに悪い奴じゃないしな」「そこが不思議なんですよね」 そうなのである。普通あそこまで変態かつ異常な性格をしているのに対して、ここ六課で誰も彼のことを心底嫌う人間がいないこと。あの堅物なシグナムですらそうだし、それは自分にもいえることで、何よりあれだけあからさまなロリコンが、対象年令の子達がなんの疑いも無く受け入れている……寧ろ好感を持っている事自体不思議で仕方が無い様子のシャマル。まあ普通に気持ち悪いし、嫌悪感ばりばりであるが……「なんだかんだいって、ヴィータちゃんも彼のこと気にいっているようだし」 意地悪な笑顔で言うと「ばっ!んなわけねー。あんな変態」 必死になって否定するが、余り説得力が無い。大体ヴォルケンリッターの中でザフィーラと共に千早に懐いているのがヴィータである。本人は気づいていないようであるが、ちょくちょく二人で楽しく食事してたり、アイス奢ってもらったり、ゲートボールしたり、訓練したりしている所を見られている。「本当に不思議ですよねえ。どこの部署へ行っても、何故か小さい子からは好かれていたし」「だから、あたしはそんなんじゃねえって」 二人が談笑していると、不意にドアが開く「なんや、ヴィータもここにおったんか」「はやて?どうしたんだ?」「いや、千早がここにおるって聞いたから来たんやけど」 そう言いながら室内を見回す。何故か指をボキボキ鳴らしながら……「千早君ならさっき出て行きましたよ」「あちゃあ、入れ違いか。しゃあないまた今度でええか」 何故か、残念そうに拳を突き出しながら言う。俗にいうシャドーボクシングである「何か用事でもあったんですか?」「いや?まあ、とりあえずなのはちゃんから苦情きたんでな。ちょ~とお説教しようかと思て」 表情だけ見れば、やんちゃ坊主を叱るお姉さんって感じであるが、拳の速度だけ見ればおもいッきり殺る気である。その姿に呆気にとられているシャマルに苦笑しながら、椅子に腰掛けるはやて「まあ、ええわ。ところで何を話してたん?」「いえ、なんで彼はロリコンなのかなって……」 苦笑いを浮かべながら質問するシャマル、もっとも理由であるが「直球やね。そうやなあ、そういやあ出会った頃からああやったし、あれは一種の個性みたいなもんちゃうかな?」「はやて、アレは個性で済ませれるもんじゃないと思う」 なんとも言えない表情で突っ込むヴィータ。彼女の表情に苦笑しながら「あはは、まあ、あっちでも相当やったみたいやし、そうそう、こんな噂があってな……」 はやてが、何かおもしろい物を話すように語りだす…… …… ………… それは彼が陸士時代の話である。 千早が訓練校を卒業した後、とある部隊へと配属された際起きた悲しいそれは悲しい事件であった……「駄目です。奴ら籠城を止める気はありません」「交渉はどうなっている?」「聞く耳持ちません」 ミッドチルダ郊外にある廃墟を取り囲む陸士部隊。廃墟内にはテロリストが立て篭もり籠城を続けている。「人質はどうなっている?」「今のところは無事だと思われますが……」 ただの籠城だけであるなら、屈強な部隊員達を突撃させれば済む話であるが、厄介な事に奴らは人質をとっていた。その人質というのが「おかあ、さん……怖いよ……」 まだ年端もいかぬ幼女であった。彼女は恐怖に震え泣くことしかできない。そんな少女に対し暴言を吐くテロリスト達、まさに外道である。しかし、人質がいるため何もできない彼らに非常な命令がくだされる「……」 虚ろな目で建物を見つめる者がいた。入隊してまだ間もない千早であった。彼の能力は公式では平凡、並以下、目立った成績も無いただの平隊員であるが……「ぼけっとしてないでこっちに来い!強行突入に入るぞ!」「しかし、それでは人質が」「知らん!上からの命令だ!」「……」 それは人質を無視するということである。その命令に女性隊員から非難の声があがるが、一喝する部隊長。その光景を静かに見ていた千早は「……許せないなあ、ああ、許せない……」 虚ろな目で虚空を見上げる「幼女とは愛でるものであって、摘んではならない……幼女を泣かす?幼女を見捨てる?」 彼の中のスイッチが入ったのか、その表情は暗く、そして恐ろしかった「母親から奪われた悲しみ、孤独に怯える悲しみ、愚かな者に捕まり拘束され、恐怖に打樋して枯れて泣きじゃくる幼女を見捨てる?この俺が?幼女を?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる?見捨てる……」 次の瞬間彼は消えた。それを見た女性隊員は後にこう語る「ありのまま起こった事を話すわ。彼が、急に壊れたオルゴールのように幼女幼女と呟いた瞬間、目の前から消えたの……それは早く動いたなんてもんじゃないわ。そう物理的に消えた。転移魔法かなにかと思ったけど、そうじゃない。詠唱も何もなかった……そう彼は一瞬で人質の所まで移動したのよ……そうして彼は人質の少女を救出するとそのままテロリスト達へと向かっていったわ。その光景を私達は黙って見ているしかなかった。あんな恐ろしいものを見ることになるとは……私達は心に深いキズと共に教訓を得たわ……ロリコンを怒らせてはいけないと」 彼が突入して数分、現場である廃墟内からは絶叫が木霊する「幼女の笑顔に祝福を……幼女を辱める者に死の鉄槌を、破滅を、殲滅を与えん」「ぎゃあああ!!化物ぉお!!」「貴様らは罪を犯した……」「来るな来るな来るな!!」「幼女とは愛でるもの、幼女とは至高なる天使、無垢なる涙は喜びの際に流すもの、禁忌を犯し幼女を恐怖に陥れた貴様らは……万死に値する」「ひぃいいい!!」「ロリコン怖いロリコン怖いロリコン怖い」「誰がロリコンだ……私は小さい者を愛する者だ……そう一緒に添い寝したいだけだ……貴様らと一緒にするな」「俺達はそういう意味で人質をとったわけじゃ……ひぃぃい!!」 阿鼻叫喚とはこういう事をいうのであろう。廃墟内では狂ったように髪を逆立て、口元を三日月に光らせる化物がテロリスト達を掴んでは、フルボッコにしていた。突入した部隊員達は皆唖然とその様子を黙って見つめるほかなかった…… 突入の指揮をとった隊員の一人が後にこう語る「あれは、人間じゃねえ、化物だ。なんせあいつは、奴らを素手で殴っていたんだ。ここミッドチルダで魔術を使わず戦闘する奴なんていねえ。だが、俺は気づいた。奴は魔法を使わなかったわけじゃねえ。あれは使えなかったんだ。奴は言語機能までも戦闘能力へと変換してやがった。今でも耳に残っている……奴の言葉『YOUZYONAKASHITA』がな……あれ以来隊では奴のことを『ロリコン・オブ・ロリコン』と呼び、あの光景は部隊内の秘密として公表せず、奴の前で幼女を泣かさないよう心に誓ったもんだ」 そこには、尻にネギを突っ込まれた者、犬神家のように頭から地面にめり込んだ者、何故か?全裸で亀甲縛りされた者達が皆気絶しており、意識のある者はうわ言のように『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい』『ロリコン怖いロリコン怖いロリコン怖い』と死んだ目で繰り返す。テロリスト達の無残な姿が残されていた…… …… …………「てな感じで彼の事は一部で有名になったんやと」「はやてちゃん……それは本当ですか?」「知らへん。ナカジマ三佐から聞いただけやし」「ナカジマ三佐の言うことだろ?嘘だろ嘘」 ヴィータの言葉に、少し頷くと微妙な表情で「ん~私かてそう思て、その後あいつの部隊行って聞きまくったんやけど……」「それで?」「皆急に口が固くなるねん。まるで、緘口令がしかれたように……」 暗い表情で答えると「はやて、それって……」「はやてちゃん……」 二人は身震いをしてしまう。「なんでやろうな?しかも、何人かは歯をガタガタ鳴らしながら震え出すし」「は、はやて……もうやめよう。その話は」「私もそれがいいと思う」「あ、そう?ならやめとこか、でもけったいやな。それ以来ナカジマ三佐も何も教えてくれへんし」「はやてぇ」「ああ、ウソウソ。もう話さへんて、ほんなら見かけたら私んとこ来るように言うてね。しば……話があるって」 今、絶対しばくって言おうとしたようね?絶対話しだけで終わらないよね?そう思いながら手をふるシャマルとヴィータ、彼が明日の朝無事に起きられる事を祈りながら、しばらく談笑するのであった…… …… ………… その日の夜―――「千早君?少し、お話があるの?」「そうだね。私も一回ちゃんと話しとかないと……」「……君たちは、人と話をするときにデバイスを展開する癖があるのか?」 白と黒の悪魔に、首筋にバルディッシュ、後頭部にレイジングハートを突き付けられて確保される「ちなみに、それは肉体言語で語る話であろうか?」「うん。そうなるかも知れないよね。なんだろう?私ね、最近すごく怖がられてるんだよね?」「……いや、それは昔から……いやなんでもない」 すごい目で睨まれた……後頭部にゴリゴリと突き付けられる……「私も、聞きたい事があるの。ねえ、最近一部の職員の視線が痛いのは何故かな?」「いや?心当たりが無いが?」「そう……ところで私って脱げば脱ぐほど速くなるんだってね?」「ん?そうじゃないのか?『ソニックフォーム全裸ver』は光の速……いや、なんでもない」 更にすごい目で睨まれた、しかも何故か首筋にかかる圧力が増えたような……「どうした?二人共イライラして、更年期障害か?まったく、これだから年増は……」「「少し……頭冷やそうか……」」 そのまま両腕をガシッと掴まれて、暗闇へと連れて行かれる千早……<だからマスターは発言に……やはり一度、精密検査か何かを受けることを推奨します。脳の……> 暗闇から主を心配するデバイスの声が漏れる…… ちなみに、その様子をたまたま見かけた新人二人は……「……ね、ねえ。今、なにか恐ろしいものが見えたんだけど?ティア?」「見えない、見てない、聞こえない……さあ!明日も早いから、休むわよ?スバル」「う、うん!そうだね!休もう、それはもう一生懸命休もう!」 と、見なかった事にしようと申し合わせてそそくさと自室へと逃げて行った事は言うまでもない…… そうして、桃色と金色の閃光が夜の闇に輝き、爆音が木霊することとなるのだが、なるべくそのことには触れまいと六課では緘口令がしかれたそうな…… オリ主といえば過去の悲しい話がいると思い書いた。後悔はしていない。