「さて、今日の朝練の前に一つ連絡事項です。陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹が、今日からしばらく六課へ出向となります」「108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」 なのはに紹介され、挨拶するギンガ「よろしくお願いします」「それからもう一人」「ど~も」「10年前からうちの隊長陣のデバイスの調子を見ていてくださっている。本局技術部の精密技術官」「マリエル・アテンザです」「地上でのご用事があるとのことで、しばらく六課に滞在してだくこととなった」「デバイス整備を見てくださったりしてくださるそうですので」「気軽に声をかけてね」「はい」「おっし、じゃあ、紹介が済んだところで、早速今日も朝練いっとくか?」 話を終えた頃合に皆を見回しながらヴィータが声をかける「はい」「ライトニング集まって」 それを合図に、キャロとエリオを集合させるフェイト「ティアナは今日もあたしとやるぞ」「はい」 ティアナに声をかけるヴィータ「突撃型の捌き方第六章」「お願いします」「ギンガ?」「はい?」「ちょっとスバルの出来を見てもらってもいいかな?」「はい」 最後になのはがギンガに声をかけると、スバルと模擬戦するように提案する「え?」「一体一で軽く模擬戦、スバルの成長確かめてみて?」「はい」 その様子を黙って見守る手持ち無沙汰の者が二人いた「ふむ、若者は元気があって良い」「そうだな」 千早とシグナムである。教えることが苦手なシグナムと、教える前に正さなければいけない千早。「さて、朝練の邪魔をしても悪いので」「まあ、待て」 することも無いので爽やかな笑顔と共に立ち去ろうとする千早をシグナムが止める。「……いつも思うのだが、何故一々首根っこを掴むんだ?」「逃げられぬようにな」「逃げるとは心外だな。俺は仕事をしようとだな」「貴様の今日の仕事はこいつらと同じだ」「ん?朝練か?」「そうだ」 首を摩りながら周りを見回す。そうして、ティアナと話をしているヴィータの方へと行き笑顔で「ふむ、別に構わないが、そうだなヴィータちゃん」「ああ、悪いあたしはティアナを指導だ。てかさっき言ってたろ?ほんっと他人の話聞かねえやつだな」「ん、そういえばティアナにさばき方を教えるとかどうとか、ふむ、なら俺に突撃ラブハートで」「……いっとくが突っ込まねえからな」 アイゼンを鼻先に突きつけられながら言われる千早「そうか残念だ。相手がいないのなら仕方が無い、俺は大人しく事務処理でもすることに……」「ちょっと待て」「だからお前は何度も……」「相手ならいるぞ」「どこに?」「ここに」「はあ……前から思っていたのだがお前はライトニングだろ?ならフェイトがいるだろうに」「テスタロッサはエリオ達新人の教導で忙しいのでな」「いや、ならお前が教導してやればいいではないか」「私は古いタイプの騎士故、教導には向かない」「古い事は理解している。だからなんで俺が……」「問答無用」「はあ、お前たちの仲が良いのはいいけどな。フェイトが思いっきり睨んでるぞ?」 いつも通りの会話を繰り広げている二人に対し、少し真顔で声をかけるヴィータ。心なしか少し怯えているようにも見える。その様子を怪訝に思いながら、彼女が指差す方向へと視線を向けると凍りつくシグナム。 シグナムの眼前に千早の顔があり、その後方に金色夜叉がこちらをものすごく笑顔で睨んでいた。そう口は笑っているのに目が殺意の波動に満ちている。その姿をキャロやエリオには見せないように、うまいこと二人の意識を逸らしての行動に苦笑せざるを得ないなのは、その傍で固まるスバルとギンガ。「なんだ?急に顔色が悪いぞ?あれか?せ……」「はーい、ストップ。千早君はいい加減、デリカシーを覚えてくれるかな?」 このままでは親友が親友の友人を殺しかねないので、仲裁に入るなのは。それでも少し収まらないのか殺意の波動を未だ向けるフェイト。その殺気を背中に感じながら「シグナム副隊長も、いい加減学習してください」「む、すまん」「よくわからんが、デバイスで物理的に殴るのはどうかと思うぞ?なのは」「千早君は言ってもわからないので、殴ってからお話しようと思います」 ため息を吐きながら窘めるなのは。このままでは訓練をする前に疲れてしまうと判断したなのはは、そのまま訓練所へと進むのであった…… 芝生の上で対峙するシグナムと千早。既にスバルとギンガの模擬戦は終了しており、今は休憩がてら身体を解している。さて、今回も隊長同士の模擬戦を見せておこうと、なのは教導官のお達しでまたもやシグナムと対決させられる千早。「さて、数週間ぶりの元の姿だが調子はどうだい?ガングニール」<YES、マスター大分いいですよ?>「……疑問形なのが気になるが?」<ああ、違います、違います。気づいてますか?>「何がだ?」<今のマスターの魔法容量かなり余裕があります>「まあ、確かに」<やはり、ヴィヴィオちゃんが原因でしょうか?>「確かに、それもある。しかし、今の私は変身魔法のおかげで母性も父性も極めた……」<ああ、あの悪夢のような日々がマスターを成長させたのですね>「そうだ。今の私はロリコンを極めた。最早、私の前にロリコンは無し、私の後ろにもロリコンは無し。そう、それは……」<それは?>「流派幼想不敗」<流派幼想不敗……正に無限に広がる幼き者への想い……素晴らしいです!>「ああ、俺はまた一つ強くなった……」<ならば、今、目の前に立ちはだかる敵に鉄槌を>「敵か……否!あれは敵ではない……そうあれは可哀想な年増」<可哀想な年増?>「そうだ。残念だが、最早彼女には手の施しようがない。しかし、それは誰しもが通る道、人は皆幼女のままではいられないのだ・・・・・・だから全ての年増に救済を……」 静かに頷くと右手をかざす千早。その先には残念な年増、シグナムがものすごく渋い顔でレヴァ剣を抜いていた「……高町隊長、私は殺傷設定で斬り刻んでもいいんだろうか?」「シグナムさん……気持ちは良くわかるけど、みんなが見ているので駄目です」「そうか、残念だ……」 静かに物騒な事を宣うシグナムとなのはに、引きつった笑いしか浮かべることができない新人達。唯一フェイトだけが真顔だったのは気にしないでおこう「さて、何やら物騒な言葉が聞こえたが、始めようか年増よ」<ふふふ……何故か今なら目の前のおばさんに勝てる気がします>「ほざいたな。なら、全力で来い」「ああ、行こうかガングニールよ」<イエス・ユア・ハイネス>「右手は幼女のため、左手も幼女の為に……全ての小さき者に救済を」「気持ち悪さが格段にあがったな……」「違うな……私は元々気持ち悪いのだ」<自覚してたのっ!?> 遠くの方から驚いた声が響いたが気にしないでおこう。そうして模擬戦が開始される「はぁっ!」 先に動いたのはシグナムの方であった。レヴァンテンを腰に構えるとそのまま間合いを詰める「なっ!?あぶなっ!?」 そのまま距離を詰め、レヴァンテンを居合いの要領で抜き、横薙ぎに一閃する。それをギリギリの所で回避する千早「お前、まさか本当に…・・・」「なんのことだ?」「いや、まあいい。ならば、こちらも本気でいかせてもらおう」「わかっているが前のようなイカサマには、もうひっかからんぞ」 そう言うと静かに正眼に構えて微動だにしないシグナム。どうやら前回の兄ソードがかなり堪えたらしく警戒されている「ふむ・・・・・・」「どうした?どこからでもかかってくればいい。前のようにはいかんぞ」「なら遠慮なく・・・・・・」 そう答えると静かに腰を落とし構え、カートリッジをロードをすると突っ込んでいった「ほう、下手な小細工をせず突っ込んできたか。お前にしては思い切ったことをしたな」 にやりと笑みを浮かべると同じくカートリッジをロードするシグナム。恐らく回避するのではなく真正面から受け止めるつもりであろう「流派幼想不敗……奥義」 両腕を後ろへ引くとカートリッジを更にロードする「十二幼身体大輪写っ!」 拳を前面に突き出し大きく円を描きながら叫びをあげる千早、するとそこには、小さく幼い容姿をした千早が12人現れ、そのままシグナムへと突っ込んでいく「なっ!?面妖な!紫電・・・・・・くっ!」 紫電一閃を放とうとするシグナムであったが、幼い純粋な瞳をした小さな12の千早に見つめられ躊躇する「あ、あれは卑怯だよ・・・・・・」「そうですね。あれは流石に無理です」「私もそう思います」 模擬戦を見ていたなのはが言うと同意するスバルとギンガ「あーあ、また負けたな」「か、可愛い・・・・・・」 ため息を吐きながら言うヴィータに瞳を輝かせながら見守るティアナ「すごいね、エリオ君」「う、うんそうだね・・・・・・フェイトさん?」 同じく瞳を輝かせて袖をひっぱりながら興奮するキャロに対して苦笑するエリオ、ふと一緒に見ていたフェイトが静かなのが気になって見上げると「・・・・・・欲しい・・・・・・今光速で割り込んだらばれない、よね?」 真顔でとんでもないことを呟いていたので取り合えず、暴走しないようにキャロと二人でフェイトの両手を封鎖することにした「幼いは正義」 きめ台詞を吐きながら突っ込んでいく12人のショタ。そのままなすすべも無く攻撃を受けそのまま倒れるシグナム「帰宅幼稚園」 静かに分身を帰還させる千早、結局模擬戦は千早の勝利に終わり。周りはなんとも言えない空気を持ちながら唖然としていたのであった 模擬線も終了し全員が訓練の内容を話し合う。いわゆる反省会みたいなものを行う。「またしても・・・・・・無念だ」「お前ここにきてから連敗だな?」「あ、あはは、仕方無いかな?あれは私でも躊躇するよ」「しかし、あいつの成長は恐ろしいものがあるな。魔力容量といい、あの分裂といい……段々人間をやめていってないか?」「そうだね。いくら空戦をせずに戦ったとはいえ、あんなに一方的にシグナムさんが負けるなんて」「あのつぶらな瞳で見つめられてはな・・・・・・私も精進が足りん」「まあ、なのはなら躊躇なく撃つんだろうな」「にゃっ!?そんなことは無い、かな?」「ああ、高町なら躊躇いは無い」「みんな何気に酷いよ・・・・・・まあ、撃つんだけど」 結局撃つのかと、皆一様になのはの方を見るもその瞳は笑っていなかった……「おつかれさま、千早」 なのは達より少し離れた場所で休憩する千早に声をかけてくるフェイト「うむ、久しぶりに男の身体で動いたので疲れた」「ん、でもまた強くなったよね?」 タオルを手渡しながら言う「んーどうやら女体化がいい感じで作用したようだ」「そうなの?」「ああ、あれは常に魔力を消費するのでな」「?」 千早の説明に首を傾げるフェイト「ああ、簡単に説明するとだな。常に年増と一緒に生活している状態ということだ」「??」 更に解らないって表情になる「んー。例えばだ。フェイト、君が今晩誰かと一緒に寝るとする」「う、うん」「その相手がヴィヴィオやキャロだったら?」「んー、そうだね。思わず抱きしめてしまうかも?」 人差し指を顎に当てながら首を傾げ答えるフェイト「そうだ。純真無垢な彼女達と添い寝……考えただけで……ああ、怖くて眠れなくて私の手をぎゅっと掴んで離さない……なんと可憐な……なんだと、一人でトイレが怖いだと?仕方が無いな。私が一緒に行ってあげよう……」「そうだよね。何故か、怖いお話見た後っておトイレ近くなっちゃうんだよね。昔キャロもね……」 くねくねと妄想する千早に、明後日の答えを出すフェイト、突っ込み不在である。「それで、私がキャロ達と寝るのと千早が強くなった事とどう関係があるの?」「ああ、脱線したな。ふむ、例えば今、言った相手が俺だったらどうする?」「え?」「だから、添い寝する相手が俺だったらどうする?」「……えええええ!!!!」 大きな声を出すフェイト、周りは何事かと注目する。そんな皆に『なんでもないよ』と言うが、「え?え?千早が私と?無理、いや、無理じゃないけど、でも、まだそんな早いっていうか。でもでも嫌じゃないんだよ?どうしよう?」「落ち着け、何をそんなに慌てている。例えばの話だ」 両頬に手をあてながら百面相を繰り返すフェイトをなだめる千早「そ、そうだよね。あ、あはは……ちょっとびっくりした」「つまり、そういうことだ」「どういうこと?」「何を聞いていたんだ?だから、私が強くなった理由」「え?あ、ああ、そうだったよね。それで私が千早とそ、添い寝することが?」「ああ、つまり女体化ってのは『君が毎日俺と添い寝する』状態と同じということだ」「……私、死んじゃうよ……」 頬を染めながら呟くフェイト「死ぬほど嫌とか、本人目の前にして中々Sだな」「ちっ違うよ!?嫌じゃないよ?」「ふむ、寧ろ良いと?」「~~///」 両手で顔を隠しながら走り去るフェイト。「まったく……一体何を考えているのだろうか」<マスター年頃の女性に対してあれはセクハラでは?> 今まで黙っていたガングニールがため息交じりに言う「何を言う。大体俺は年頃の女性に興味が無いぞ?」<それはそれで問題有りだと……>「なんだ、どっちだ?」<まあ、どっちにせよ。手を出すわけありませんよね。これだから童貞君は……>「俗物なデバイスだな。俺は童貞ではないぞ?」<え?>「ん?」<い、今、なんて……>「おっと、そろそろ次の仕事に行かねば、高町隊長、俺はもういいか?というか、仕事があるからもう無理だぞ?」 何事も無かったように、そのままなのはへ声をかけ仕事へと戻る千早。その日の最後のチーム戦で、フェイトの動きがおかしかったことは誰も知らない…… さて、これからどうしよう?