――自由待機(オフシフト) 24時間勤務である六課の部隊における休暇のようなものである。各々が好きなように休息と自由行動を行なっている。しかしながら制限も有り、隊舎から寮内、もしくは隊舎から1時間以内に戻ってこれるようにしなければいけない。つまり一応は外出も許可さえあればOKなのである。しかし、日々訓練や各種任務に追われるフォワード陣達はほぼこの時間は寮でぐったりと過ごしている。例え隊長であってもそれは平等に存在する。「私もそろそろ卍解とか虚化とかしたほうがいいのかしら?」 自由待機中、ふとガングニールに疑問を投げかける千早<マスター死ぬんですか?あれですか三番隊狙ってるんですか?共通しているのは髪の色だけですよ?まあちょっと『神鎗』には少し心惹かれるところがありますけど……>「何を言っているの?」<いえ、なんでもないです……>「まあ、いいわ。とにかく最近思うのよ。私には何かが足りないと……そう、それは」<それは?>「必殺技よ」<は?>「だから必殺技よ」<つまり、あれですか?『射殺せ』とか、『13㎞や』とか言いたいんですか?>「……なんで貴方、そんなに詳しいの?」<なんとなくです>「そう……」 そういえば、本名「グングニル」だっけ?槍どうし気になるのだろうか……ん?「確かあっちは脇差だったかしら?」<細かい事はどうでもいいのです。伸びる事が重要なんです>「あら、そう?まあ、長いにこしたことは無いわね」<そうです、お偉いさんにはわからないのですよ?>「自分で教えておいて反応に困るのだけれども、使い方若干間違ってない?」<良いのです。勢いは大事です>「そうね勢いは大事よね。だから必殺技よ」<だからの意味が理解出来ませんが?> お互い不毛な会話を続ける。どうやら今回は必殺技を覚えたいようである「他の隊長達は持っているじゃない?必殺技」<ええ、まあ、ありますね>「だから私もそういうの欲しいのよ」<いや、欲しいとか欲しくないとかで手に入れるものじゃ……> 子供か!?と突っ込みたくなるのを我慢しながら、答えるガングニールも大分耐性がついてきたということであろうか「なのはにはSBがあるじゃない?」<どこのカレーですか?SLBですSLB>「そのSSBよ」<……彼女は弾道ミサイル潜水艦ですか。否定しませんけど……>「ちなみに通常動力型の略称らしいわよ?どう考えても彼女なら核積んでそうよね?」<どうでもいい情報をドヤ顔で言われましても、そんな物騒なこと言って聞かれても知りませんよ?>「まあ、そんな事はどうでもいいの。必殺技よ」<そう言われましても、今すぐどうこうできる訳でも無いですし>「大丈夫よ、この世界には外界の一日で一年を過ごせる部屋があると……」<どこの精神と時の部屋ですか?それは引きこもった人がよく言う台詞ですよ?修行する気まったくないですよね?> ああ、つまりは待機任務が暇という事なんですね。と、理解するガングニールであった「……いちいちうるさいわね」<うるさくもなりますよ。とりあえず、それなら修行しましょう>「そうね。幸い今は自由待機だしね」 そう言うと、一人トレーニングルームへと向かう千早、今回は思いつきで必殺技を得ようという事である。 …… ……… …………「あれ?最上隊長?」 道すがらどういうのが良いのか考えながら歩いていると、早朝訓練あがりであろうか、ロッカー前でスバルに声をかけられる。「ん、ご苦労様」 ねぎらいの言葉をかける千早「最上隊長は、自由待機ですか?」「ええ、そうよ。それで、いい機会だからちょっと必殺技覚えようと思ってね」「必殺技ですか?」 いきなり突拍子のない事を言う千早に、なんでこの人はそういうことを唐突に思いつくんだろうかとスバルは思った。大体にして、この人は自分自身はおろか周りの人物がかなりの役職であるのに関わらず、堂々と悪びれる事なく、関係なく変態に興じる事を不思議に思ってしまう。普通、世間体というのを気にするだろう。否、世間体どころかロリコンであること自体が人間として駄目だろうと、スバルは思っていた。「んー、最上隊長って、なんで隊長なんてやってるんですか?」「……それはどういう意味?」 少しため息をつきながらジト目でスバルを見つめる千早、その表情を見て「え!?い、いや!そういう意味じゃなくてですね!なんて言ったらいいのか……ほ、ほら!最上隊長って結構顔が広いじゃないですか?色んな所で悪名を轟かせているっていうか!」「まあ、知り合いは多いわよ?後、悪名って……私の事なんだと思ってるのよ?」「えと、ロリコンで変態の……モンスター?」「私が怒らないと思ったら大間違いよ?」「ああっ!すみません!すみません!」 頭を思い切り下げながら謝るスバル、まったくこの娘は面白いなと思いながら「もういいわよ。それで、そっちは早朝訓練かしら?」「はい、ヴィータ副隊長から個人訓練を受けていました」「いいわね。ヴィータちゃんとの個人訓練……楽しかった?」「え?えっと、どういう意味ですか?」「ん、一度ヴィータちゃんと訓練した事があるのよ。それはもう楽しくってはしゃいじゃったわ。そしたらちょっと訓練場を炎上させちゃったものだから、それから禁止にされちゃったのよ。それ以来、私との訓練はシグナムばっかり……酷いと思わない?」「えーと、正直聞きたく無いんですけど、一体何をしたら炎上なんかさせられるんでしょうか?」「坊やだからよ?」「意味がわかりません」「まあ、色々あるのよ」「そうですか……」 少し疲れた様子で顔をしかめるスバル。彼に出会って数ヶ月、最上千早という人物と生活をして、解った事がある。彼は常に思いつきで行動するんだということに。しかし、それが解ったからといって、彼のロリコンとしての在り方や、価値観を理解するのはまだまだ先になるんだろうと、否、もしくは一生理解できずに終わるのか、理解できる頃には自分もティアナやフェイト隊長のように染まってしまうのだろうかとスバルはぼんやりと考え後悔した。「さて、それじゃ着替えてくるわ」「あ、はい。では失礼します」 ぼーと考え込んでいたスバルに声をかけ、そのままロッカールームへと向かう千早。「……?」 黙って千早の後ろ姿を眺めていたスバルは、何か酷く違和感を感じていた。しかし、それに気づく頃には千早がピンク色の光に包まれていたので、うん、気のせいだったと考えるのを辞めた …… ……… …………「それで?説明してくれるかな?今私は疲れてるので、説明してから撃たれるのと、今撃たれるのとどっちがいいかな?」 穏やかで、それでいてひくついた満面の笑みで、見下ろすなのは「いや、もう既に一発見舞っておきながら、笑顔で止めをさそうとするのはいかがなものかと思うわよ?」「うん、我ながら酷いと思うよ?でも千早君だけは特別」「そんな特別はいらない。大体何をそんなに怒っているのよ?」「いきなり女子のロッカーに入ってきたら、普通怒るのっ!君は男の子なの!」「仕方無いじゃない、男性用が入室禁止になったのだから、それにキャロやヴィヴィオがいるならまだしも、貴方やスバル達なら問題無いじゃない?」「大有りなの!セクハラ飛び越えて痴漢だから!女性用も入室禁止!」 腰に手を当てながら説教をするなのはに、ため息をつきながら「もう、解ったわ。今後ロッカーは使用しないわよ」 降参といった感じで両手を挙げながら言う千早「本当に解ったの?」「ええ」「なら、私はもう行くからね。もう絶対こんな事しちゃ駄目だよ!」 まったくもってこの男にはいつもいつも困らさせられると、どうしようもない。疲れたようにため息をつきながら立ち去ろうとするなのはに対して「ええ、仕方ないのでそこら辺で着替えるわ。まあ、見られて困るものでも無いし、最初からそうすればよかったのよね」 とその場で脱ぎ始めるのであった。「てぇえ!!何をやってるの!?」 慌てて止めようとするなのは、それに対し冷静かつ迅速に無駄のない動きで全裸になる千早、彼女が叫んだせいで注目されてしまう「だからなんで全裸なの!」「私着替える時一回全部脱ぐ派なのよ?それから全裸じゃないわよ?パンツ履いてるし」「そんなこと聞いて無いの!?ほぼ全裸じゃない!場所を考えてぇえ!!」「いちいちうるさいわね?貴方がロッカー使用禁止にしたんじゃない」「だからって外で着替えるなぁあ!どういう神経してるの!」「別段気にしないわよ?男だし、それより返して貰えないかしら」 素っ裸で腰に手を当てながら、溜息と共に彼女が手に持っている物を指さす「それが無いと、私このまま全裸よ?それから、どうでもいいけど、傍から見たら貴方が私を裸にひん剥いたみたいで笑えるわね」 そう言われ自分が手にしているものを見てはっとするなのは。彼女の手には千早のブラが握られていた「う、うわぁぁぁぁ!?ち、違うの!?」 そう言って思いっきり千早のブラを投げるなのは、ふわふわと空中を浮遊する黒い物体、まるで蝶のように優雅に飛び立つその姿を追うなのは、その先にはものすごく難しい顔をしたはやてとシグナムの姿があった<千早が脱ぎだす少し前>「では査察を受け入れると?」「ん、そういう事になるね」 厳しい表情で語りあう二人、その様子はかなり不穏な空気を醸し出していた「しかし、少し強引では無いでしょうか?いくら主はやてや私達が余り良く思われていないとしても」「まあ、しゃーないよ。いつかはこういう日も来る思てたし。それが早まっただけや」「主はやてがそれで良いというのならいいのですが……」「査察はええとして、問題は……」「はい……」 そう言うと二人揃って大きなため息をつく、彼女達の頭痛の種となる人物は一人しかいない……「どうしたらええと思う?部屋に謹慎させたらええかな?それとも虚数空間に謹慎?ああ、アルハザードに謹慎って手もあんな」 瞳のハイライトが暗く染まりながらぶっそうな事を言うはやてに対して「主はやて……心中お察しします」 彼女の心労が結構限界にきていることを心配するシグナム「ま、まあ、それは冗談として、なんとか大人しくしてもらわんと、唯でさえ風紀が乱れまくっとるからなあ」 そう言いながら虚空を見上げるはやて、見上げたその先に黒い物体が彼女の顔面にヒットするまでそう時間はかからなかった<で、先ほどの時間に戻る>「あー最近はブラが空から落ちてくるから油断できへんね。ほんま風紀が乱れまくって困るわ」「あ、主はやて?」「はやてちゃん?」 くっくっくと笑いながら、ブラごと額に手のひらを当てながらそう言うはやて、若干狂気を感じ心配そうに声をかける二人「……ほんで、何しとんの?とりあえず殴ってええ?」「もう既に殴っておいて何を……まあ、いいわ。とりあえず自主訓練しようとしてただけよ?」「なんの自主訓練や!?往来で裸になる自主訓練なんか聞いたことあらへんわ!」「そんなの私も聞いたこと無いわよ?大丈夫?はやて、疲れてるの?」「私がおかしいみたいな態度やめんか!服を着ろ服を!」「はいはい、たく、私はただ着替えをしていただけなのに……」 ブツブツと文句を言いながらトレーニング用の服に着替える千早、着替えている間も二人からは文句を言われる。男性用も女性用も使用できないなら自室で着替えればいいだろうと、そう言われ『ああ、それもそうよね?なんで気づかなかったのかしら?』と悪びれることも無く納得する彼女に二人ため息をつく「はあ……頼むから少し大人しくしといてや。唯でさえ査察やらなんやらで頭痛いねんから」「あーやっぱり入るんだ。シグナムさん知ってました?」「ああ、私も先ほど主はやてより聞いた所だ」 頭を抱えるはやてを見て、なのはとシグナムが同情の視線を送る「ああ、なんだそんな事。なら問題無いわよ?」 そんな三人とは対照的に飄々とした表情で、事も無げに言う千早「問題の元凶が何を言ってんねん。ええ加減にせんとほんまに謹慎さすで?」「ま、まあまあ、はやてちゃん」 今にも飛びかかりそうなはやてを抑えながら、なだめるなのは「貴様もいい加減にしておけ千早。余り主はやてや高町を困らせるな」「んー別に困らせるつもりはさらさら無いのだけれども……そうね」 鼻息の荒いはやてを無視しながら、人差し指を顎の下に添えながら少し考えると「簡単に説明すると、今度査察に来るのって私の知り合いなのよ」 そう言いながら胸を張る千早、ちなみに彼女の変身後のバストサイズはシグナムと同じ90である(※あくまで作者の巨乳感覚での数字。公式は知らない)「とりあえず殴ってええよな?いや、殴る」「はやてちゃん……」 変態に嫉妬する親友に同情の視線を送るなのは、そんな二人におかまいなく着替えをすますと「ということなので、私は失礼するわね」 と、片手を挙げてフェードアウトしていく千早「ちょっと待ていっ!」「あいたっ!」 そのまま立ち去ろうとする千早の襟首を掴み、引っ張るはやて「痛いわね、何するのよ」「もうええ加減、その気持ち悪さに馴れたけど、今、さらっと何言いよった?」「?なんのこと?」「だから、今度査察に来るのがあんたの知り合いって」「ああ、そんなこと。そうよ、昔ちょっとあってね」「はあっ!?というかなんでそないな重要な事、今まで言わんかってん!」「だって、聞かれなかったじゃない?」「そんなもん、当たり前や!」「何をそんなに怒っているの?」「ああっ!もう!このアホはっ!」 興奮するはやてに対して、冷静に答える千早。その二人の温度差がおかしいのか少し苦笑しながら「まあまあ、はやてちゃん落ち着いて、ね?」「……あかん。なのはちゃん私、もう泣きそうや……今日ほどこの変態を消したい思うたことないわ」「うん、その気持よくわかるから。私はいつもそうだよ?」「主はやて……というか高町、お前もお前で物騒だな」「大変ね、シグナム」「他人ごとみたいに言うな。全て貴様が原因だ」「あら、それは失礼」 まったく会話が前に進まない事にため息をつくシグナム、そうして暫くはやてが立ち直るまでなのはが慰める事になるのだが……<5分後>「……それで?あんたが顔が広い事は知ってたけど、今回来るんが知り合いってのはどういうことや?」「だから、私元々地上勤務じゃない?」「確かそこから、はやてちゃんが引き抜いたんだっけ?」「引き抜いたいうか、ババ掴まされたいうか……」「ババアは貴方達……なんでも無いわ」「それで、一体どういう知り合いなんだ?」「ああ、確か来るのはあの子よね?」「ん?確かそう聞いとる」「なら問題ないわよ?あの子私のこと崇拝しているから」 事も無げに言い放つ……「ふぁっ!?」「え、ええと……」「むぅ……」 その言葉に三人は渋い顔をする「何よ?」「こいつのどこをとったら尊敬する要素があんねん」「あ、あはは……さあ?」「主……尊敬どころか崇拝されているそうです……」「なお、たち悪いわ!」「酷い言われようね?少し長くなるけどいい?」 コホンと咳払いをしてから語りだす千早、今回査察に選ばれた人間は実は彼のファン……というよりはある会派の会員だというのである。そしてその組織は誰にも知られることも無くひっそりと会員を増やしているという「……で、その誰も知らないような組織のメンバーの事をなんであんたが知ってんのよ」「簡単なことよ、だって私が会長だから」 …… ……… …………「「「はぁあっ!!!!!!」」」 その言葉に三人同時に突っ込まれる「……大きな声出さないで頂戴」「はあっ!?えっ!?何!?てか、あんたが!?」「嘘……」「むぅ……」 思わぬ事に混乱する三人、その様子がおかしいのか苦笑しながら「あら?言ってなかったけ?私が創設した『小さき者を護る会』」「初耳や」「うん」「会の名だけ聞くと至極まっとうに聞こえるな」「当たり前よ。この会の掟は『 YES ロリータ NO タッチ』よ」「「「……」」」 その言葉を聞いてどういう組織なのか瞬時に理解した三人。それと同時に頭が痛くなってきた「そ、それで、会員は何人いるのかな?」 思い切り引きつった表情で質問するなのは、そんな彼女に笑みを浮かべながら「ざっと、こんなものよ?」「「「……」」」 またも無言になる三人、そこには桁違いの人数が示しだされていた「あかん……頭痛いわ……というか管理局にこんだけ変態がいたなんて……」「あ、あ、あはは……す、すごいね……ある意味脅威だよ……」「あ、ああ……」 完全にしんどくなってきたようで項垂れる三人。そんな彼女らに「もういいかしら?それじゃあ、訓練に行ってくるわね」 と片手をシュタッと挙げながら立ち去っていく千早。流石にもう引き止める気力が無くなったようでそのまま見送る三人「ああ、そうそう」 しばらく歩いて思い出したように振り向くと「だからといって甘い採点をしたりしないわよ?私情に囚われずちゃんと査察すると思うから気をつけてね」 と笑みを浮かべながら言う千早の姿を見て『お前が言うな』と突っ込みたかったが、もうそんな気力は無くなっていた……「さて、訓練っと」 楽しそうに走り去っていく千早。彼女らはその後姿を黙って見送るしか無かったのである「はやてちゃん……」「あ、ああっと……千早が野心家やのうてほんまよかったわ」「そ、そうですね……もし、あれが何か企むような事があれば……」「そうやな……うちらじゃ止められんやろうな……」「う、うん……私、今日ほど千早君が幼女にしか興味が無いことをよかったって思った事ないよ」「奇遇やな、私もそうや……」「今日の事は忘れたほうがいいかも知れません主はやて……」 シグナムの言葉に二人は頷き、今日のことは忘れようと固く誓うのであった。そうして千早が去った後を眺めながら、彼が野心家じゃなくてロリコンでよかったなと心底安堵するはやて達であった…… とりあえず投下、暫くグダグダが続きます。そしてどんどん増えていく千早のチート設定。盛りすぎてやばい……ま、どうせならとことんまでいこうと思いました。では……