という訳で9話目です「どうかな?結構いい感じに仕上がったと思うんだけど?」「ほう、これが私のデバイスか」 私を手にとりながら眺める男性が、まるで品定めをするような様子で語りかける。「君の特殊な性……能力に合わせてみたんだけど、かなり苦労したわよ♪」「そうか、それは何より。それから語尾に♪が似合うのは10歳までだ。自重し……いやなんでもない」 私を手にとった男性に向かい、ものすごいオーラで睨んでいる女史が私の製作者であるシャリオ・フィニーノ。そうして、私を彼から取り上げると説明をする。 私の名前はGungnir(グングニル)、使用者である最上千早の為に作られたデバイス。私の存在意義は彼を守るためにある<私は貴方を守る為に作られました>「つまらん、それではまったくつまらんぞ。ガングニール」 そんな私にため息をつく、何がいけないのだろうか意味がまったく理解できない。後、私はグングニルです「いいかね?人工AIとはいえ意思があるのだろう?ならそこに個性を追求すべきだと私は思うのだが?ガングニール」 この使用者は何を言っている?個性を追求?私は使用者の補助を目的として作られた、いわば道具に過ぎないというのに、まったく理解ができない。だから私はグングニルです。<理解不能>「生まれたばかりでは流石に無理ということか。ふむ、ではここに資料があるから今日から色々と学んでいこうか。ガングニール」 それから色々と学んでいった……幼女とは何か?少女とは何か?少年とは何か?彼女らが戯れる映像を見ていき、聞いていく内に私の中で何かが生まれた。ああ、それからもうガングニールでいいです。<幼い者は素晴らしい> そう、幼い者は素晴らしい。小さい者は至高であると。それを理解した時に改めて私は使用者とデバイスといった垣根を無くし、絆とも呼べる関係を築き上げたのである。<私はこの子には麦わら帽子だと思うのですが?>「なるほど、確かにそうかも知れない。だが、間違っている。この子にはベレー帽だ」 黒髪の幼女には何が似合うのか討論したり、八重歯にはツインテールが似合うのかそれともショートが似合うのか語りあったり……<いくらマスターでもこれだけは譲れません。この子にはブリーフです>「解った。私の負けだ認めよう……フフフ」 いくらマスターであっても許せません。全裸だなんて、でも今思えば私は試されていたかも知れません。ああ、でも全裸で水浴びする少年もいい…… そうして切磋琢磨していく日々、私はこの人のデバイスで良かったと心から思う。「いいかね?普段は無機質な対応しかできないが、主がピンチの際や見せ場で意思を魅せる展開も良いが、私としてはその逆、ここぞという時に感情を殺した無機質な方が萌えると思っている」<Yes Master Annihilate the Enemy's ……こんな感じで良いですか?>「そうだ。それだ」 なるほど、普段とのギャップ萌というものですか。余り喋りすぎると萎えると思ったのですが、それはそれで個性であるという事ですね「実は君を初めて見た時は妹キャラにしようと思っていたのだよ?」<つまり、妹萌ということですね。お兄ちゃんはあたしが守ります。どいてお兄ちゃんあいつを倒せない……ですね。解ります>「ふむ、立派に成長したなガングニール」<マスターのおかげです> 私はマスターに出会えて良かったと思っています。世界はこんなに楽しいことが溢れているのですから。ああ、戯れる少年たち……最高で……痛い痛い、レイハさん何するんですか、バルさんも今はメンテナンス中ですから大人しく……いや、別に二人が主が寝ているのをいい事に夜な夜な乳……いえ、なんでもないです……「さて、なんで私はここで正座させられているんだ?」 おかしい、レリックの回収も無事終わり隊舎まで帰還したまでは良かった。しかし、自室から出た途端にフェイトとなのはに両腕を拘束される。そのまま、ズルズルと引っ張られると、はやての執務室まで連れてこられた。それからは覚えていない……「ええから、大人しくしとき。ええか、自分の立場わかっとる?」 腰に両腕を当てながら眉間に皺をを寄せるはやて「ふむ、私は管理局の局員で今は機動六課の分隊長で、ロリコンだ」 何を今更と言った感じでやれやれとため息をつく「ロリコンって……認めるんだ……」 静かに呟くなのは、隣ではフェイトが盛大に固まっていた「ふむ、あれから色々考えていた。そうだなきっかけはシグナムとの会話だな。私は小さい者を愛している。これは揺るがない事実だ。しかし、私の愛は少年より幼女への愛が大きい事に気づいた。なら、私はロリコンなんであろうという結論に至ったわけだ」 清々しい独白っぷりであった。「今更やけど……ほんま今更やけど……清々しいくらいに気持ち悪いわ」 頭が痛いのか、こめかみを抑えながらため息をつく「もうええわ。じゃあ、なんでここに呼ばれたかわかっとる?」「いや、心当たりが無いが?」「ほんなら、これは?」 そう言うと、机の上に並べられた物体を指さすはやて、隣に並ぶなのは、フェイトは盛大に引いている「ん?唯のスクール水着だが?何かおかしな所でもあるのか?」 さも当然だと言わんばかりに答える千早「おかしなところ?そんなもん全部や!なんでこんなところにスク水なんかあんねん!どこで手にいれたんや!なんでサイズ別にあんねん!それからなんでひらがなやねん!!」 怒鳴り声をあげながら、問い詰めるはやて。世界広しといえど、スク水を所持する局員がいる部隊など聞いた事がない。というかあってたまるか「ふむ、それは私のお手製でな。サイズなぞ一目見ただけでわかる。名札といえばひらがなが万国共通であろうが、これだから年増は」「誰が年増や!」「ぶげらっ!」 大きく回転すると、千早の顔面に蹴りを入れるはやて。所謂回し蹴りである。そのままふっ飛ばされる……なんだこれ?「む、痛いじゃないか?私は打たれて喜ぶ趣味は無いぞ?まあ、幼女なら寧ろWELCOME!だがな」 ゆっくりと立ち上がると、胸を張って宣言する さて、彼が連行された理由は、意気揚々とキャロ達とお風呂に入るのを楽しみにしていた千早だったが、新人たち主にティアナの報告により全力でこれを阻止。盛大に安堵した新人達がいた。そうしないと、嬉しそうにスク水片手にお風呂セットを用意したキャロを見たフェイトが卒倒しそうだったので……「とにかく、これは没収や!」「む、それは少し横暴ではないか?」 反論するも、ものすごい顔で睨まれたので諦めた。ブツブツと苛立ちながらスク水を仕舞うはやてを見て、苦笑するなのは。そうして、視線をチラリと横に向けるとものすごく青い顔をしているフェイトを見てさらに苦笑いを浮かべる。「ま、まあ、千早君も反省しているみたいだし。もういいんじゃないかな?」 苦笑したまま、どう見ても反省しているように見えない彼をフォローするも 当の本人は……「はやて……悪いがスク水が似合うのは12歳までだ……お前の分は作ってやれない……だから、そんなに怒っているのだろう……すまんな」 と真顔で彼女の肩に手を置き慰めるように言う。肩に手を置かれたはやては、静かに震えていた……「お、お、お、お……」 壊れたラジカセのように、連呼するはやてを見て『あっ』と思ったなのはであったが、「お、お前はいっぺん死んでこぃいいい!!!」「ぼげらっ!!!」 盛大に溜めた一撃が彼の丹田にヒットしそのままふっ飛ばされる。そうして、はあはあと息を荒げながら眉間に皺を寄せる友人を見て、大変だなとため息をつくなのは、一方フェイトさんはまったくついてこれずにずっと固まったままであった…… …… ……… ………… 翌日、シグナムが食堂を訪れると、そこには食事を摂る変態がいた「なんだ、こんなところにいたのかロリコン」「いつもそうだが、お前は俺になんか恨みでもあるのか?シグナム」 振り返りもせず声をかけてきた人物に、返事をする千早。「まあ、いいか。一緒にどうだ?」「……?失礼する」 いつもと変わらない口調の彼に対して、少し違和感を覚えるシグナム。普段であるならここで一悶着あるはずなのに何も無い。おかしい、こいつが普通に接している。いや普通がそうであるが……何かがおかしい……なんだろうか、この違和感は……「えらく遅い朝食だな?」「ん?ああ、今日は非番なんでな。久しぶりにな」 やはり、おかしい……何かが物足りない……なんだ?何が足りない?「そういえば、貴様、主はやてにえらく叱られたようだが?」 昨夜、帰宅した主はかなり疲れた様子で床についた事を覚えていたシグナムが思い出したように投げかける「ん?まあ、色々あってな」 どうも発言にキレが無い。なんだろうか……ともあれ腑抜けた様子の彼を見て「お前、まさかと思うが体調でも悪いのか?」「ん?」 ふと、疑問に思った事を零すシグナム。その言葉に一瞬考えこむ千早だったが「いや?普通だと思うぞ?」「そうか?まあ、無理はするな」 何故か違和感が拭えないが、顔色を見る限り問題は無さそうだと判断したシグナム。ゆっくりとカップを手にとり口に含む「まあ、心遣いだけ頂いて置くとしよう。シグナムのような美人に心配されるなんて男冥利に尽きるからな」「ブッ!!ゴホッゴホッ!!」 思わぬ発言に口からコーヒを吹き出しそうになり、咽るシグナム「おいおい、大丈夫か?まったく綺麗な顔が台無しじゃないか?」「お、お、お前っ!な、何をっ!」 懐からハンカチを取り出すと、シグナムの頬を拭く千早。余りの事に立ち上がり後ずさる「貴様、新手の嫌がらせか?何を企んでいる?」 思わず、レヴァ剣を抜き構える「企む?なんのことだ?まあ、お前は美人だからなお近づきになりたいとか思ってたりするが」 悪びれることもなく笑顔を浮かべながら、背中が痒くなる事を言われ「き、き、き貴様!」 思わずそのままレヴァ剣を、彼に叩きこもうとするが<待ってください> 今まで黙っていた彼のデバイスであるガングニールがストップをかける「む、お前か……一体こいつに何があった?」<はい……実は……> そうしてガングニールより語られる真実は彼女を驚愕させた。彼は極度のロリコンであるが、数ヶ月に一度まともになる日があるのだ。しかし、彼の戦闘力の根幹であるソレが無くなるということは、完全に普通の人になるということで……「では、今のこいつはロリコンじゃないということになるのか?」<はい、ですのでシグナム女史の一撃を食らえば確実にマスターは死にます>「まともになったらなったで、迷惑な奴だな……」 ため息をつきながらごちるシグナム、そこには静かにカップを片手に静かに遠くを見つめる千早がいた。しかし、このままにしておくと色々な意味で危険なのは変わらない。今まではヴィータが被っていたが、今の彼の対象者は年上もしくは歳相応……つまり自分も入ってしまっている事にある意味恐怖を覚えるシグナム。烈火の騎士と呼ばれ、恐れる者など無いと自負していたプライドが目の前の男に崩された瞬間であった「ん?あれ?千早君にシグナム?」 どう対応しようか悩んでいるシグナムに救いの女神が現れたが「ああ、高町……」「ん?おお、なのはか」「え”なんだろう?なんか声掛けたこと後悔しそうなんだけど……」 眉間に皺を寄せるシグナムを見て、嫌な予感しかしないなのは、とりあえず二人の傍まで近づいて話をする「へえ、そんな日があるんだ。大変だね……」<そうなんです。大変なんです。朝エリオ君とキャロちゃん会ったというのに挨拶しかしないし、普通なら脱ぎながら全裸で踊り出すくらい喜ぶはずが……嘆かわしい>「う~ん。とりあえず、私ははやてちゃんみたいに突っ込めないかな?」「すまんが、私も古いタイプの騎士でな。そのあたりは余りうまくできん」<そんな……なんてことです。これではマスターの存在意義が……>「元々無いんじゃないかな?」「私もそう思うぞ?」<Ouch!> とりあえず、普通になったらなったでなんら変わりはないという結論に至った為、放置しようという……といより関わらないでおこうと思う二人であった。 ちなみに、翌日にはすっかり元通りになった彼を見て何故か全員安堵したことは言うまでもない……ロリコンで有ることの方が普通である彼は、最早終わっているかも知れない…… ロリコンがまともになると軟派になった……何故?