上条と元暗部の話。
オリキャラやオリ組織も出ます。
カップリングは上黒の予定です。
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1月27日。
元暗部である『グループ』の面々は大戦前、拠点としていた小汚い廃ホテルに集まっていた。
土御門元春、海原光貴(エツァリ)、結標淡希、一方通行。
10月始めの『暗部抗争』で一人の戦死者を出さずに勝利した、手練の集団だ。大戦後、一方通行の命令によって『暗部』を全て廃止となりその数日後にフレメア=セイヴェルンが狙った『新入生』の反乱があったワケだが。もう二度と会うことの無い四人。
集めたのは纏め役として機能していた土御門元春だ。
「お前達、『幻想殺し』を知っているか……って知らないワケないか」
「幻想殺し?ああ、風紀委員の空間移動と戦ったときに邪魔してくれたあのガキの事ね」
結標淡希は数ヶ月前の事件を思い出した。
「まぁその幻想殺し……上条当麻は『木原』にも存在を知られる学園都市でも重要な人物となった」
「『学園都市でも』?随分と含みのある言い方ね」
「まぁそれは後々話していく。それでだ。『アイテム』が上条当麻捕獲のために動き出した。その他にも『元暗部』も狙っていると見ていいだろう」
土御門はハァと深い嘆息をついた。
命を狙われているワケでは無く、今度は学園都市の一方通行に勝利し、反学園都市サイエンスガーディアンで『木原』と『グレムリン』の戦いにも介入したりしている上条当麻そのものを狙う輩が現れた事だ。
レベル5でも『木原』は強く恐ろしい。
一方通行でも『木原数多』に殺されかけたし、反学園都市での『木原病理』『木原乱数』『木原円周』『木原加群』の凄さも聞き入れている。
その木原が恐れた『上条』とはなんなのか。
じゃんけん的方式で『上条』>『木原』だとしてもだ。
「ったく。くだらねェ事に巻き込むンじゃねェよ。俺が三下の護衛をしろとでも言うンですかァ?バカバカしいにも程がある」
「残念だが、仕事だ。上条当麻を『暗部』を関わらせるワケにはいかないのでな」
そういう土御門も疑問に思っていた。ただ何かに強い上条当麻を『アイテム』なんて組織が欲しがるだろうか?そんな人材なら麦野自身が適任のハズなのだ。何かがある。
『上条当麻』は知らず知らずの内に暗部から狙われる理由を作ったのかもしれない。それにデルタフォースの一角である『青髪ピアス』も狙われている事も腑に落ちない。
「どうなっているんだにゃー」
土御門は一人、再びため息をついた。
*
一ヶ月と数日前の12月20日。
土御門元春が自分の愛する義妹。土御門舞夏と旅行に出かけている頃に起きた年末までの『大手貿易産業内乱事件』。
始まりは一つの手紙だった。
クリスマスの聖夜祭に必ず出なければならないシスターであるインデックスはどう見ても神父には見えないステイル=マグヌスと共にイギリスに行っていた。
そんな日に届いた一通の質素な手紙。
宛先は無く、どうやら手渡しで入れられたようだ。
「なになに?」
『今年ももうすぐ終わりを迎えます。
そうやって娘達は毎年毎年大きくなっていきます。
今年の気掛かりは我が可愛い三番目の娘の13歳の誕生日に立ち会えなかったことだ。ああ、来年こそは。
―前略
君はとある界隈でも有名な人物だ。
『幻想殺し』あるいは『奇才、刀夜の息子』
刀夜と言うのはご存知の通り上条刀夜。
君の父親だね。
まぁ刀夜君の話が置いておいて、上条当麻君には三つ程お願いがあるのだ。一つは今すぐ荷物を纏めて渋谷行きのバスがある17学区のターミナルで待っていてくれ。二つめは、そこに我が娘がいる。特徴はツインテールで常盤台の制服を着ているハズだ。その子と合流してくれ。三つ目は私と合流してから話そう。明日の早朝6時に17学区のターミナル前で待つように。報酬は上条君に好きなものを買ってやろう』
上条は土御門が何か厄介事に巻き込む手口に似ているな、とあらかじめ用意しておいたバッグを部屋のど真ん中に置いた。
まだ半日以上あるんだ、と上条はベッドに転がった。