誰も彼も、本質を何も理解していない。
そう、何も。
普段あれだけ耳にしているのに。
普段あれだけ目にしているのに。
普段あれかけ口にしているのに。
そう、「ただし、イケメンに限る」と。
踏み台こそが、人生勝ち組への道だと!
『せっかくだから、俺は踏み台を選ぶぜ!!』
『フォフォフォフォフォ、いいじゃろう!その欲望、叶えた!!』
そう思っていた時期が、俺にもありました。
いや、イケメンにはなったけどね。
なんでよりにもよって出産祝いで酒控えてて潰れなかった産後太りを気にするエイミィさんに『じゃあ俺で踏み台昇降運動しろよ!』とか言っちゃったんだろう。
きっとユーノ君が持ち込んだあの怪しげな地酒のせいだ。
去勢されろ、草食小動物。
次の日お腹が少しすっきりしたエイミィさんに踏まれるわその後エイミィさんの劇痩せぶりを見たリンディさんに踏まれるわ……
その後なんて最悪だ。
どこで情報が回ったのか高町さんちのお袋さんにまで踏まれたんだ。
しかも親父さんの監視付きで。
俺を踏み台にしたとか言う暇もなかった。
高町道場の真ん中で踏みつけられる俺、それを厳しい目で見る親父さん、そして何故か最終的に(はやてのせいで)話が回って月村家に呼び出される俺、待ち構える月村姉妹とバニングス。
はやてだけじゃねぇ……情報源はあのイケメンの高町の兄貴か、死ねばいいのに。
や、やめろ!
俺にそんな趣味は!!
ふざけんな何頭踏んでんだ金髪!ご褒美じゃねーよコラパンツ覗くぞ!!
おぃぃぃいいい月村テメー何カメラ構えてんだふざけ……おい執事なんだそのロープと目隠しはやm………
「大丈夫だ、私はお前を踏み台になどはしない。決して」
「シグナム……」
「守護騎士は太らないからな」
「台無しだよ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「しかしアレやな、なんか肌を重ねない理由とかあるん?」
「もちろんです、主はやて。未だこの身、恋を知らぬ故」
「え………恋?」
「確かに春原の事は好ましく思っていますが……恋を知るために付き合い始めたのであって、私は未だその境地に到達していません。いつか恋を理解したら、春原には改めて私はお前に恋していると、抱いて欲しいと伝えるつもりです」
「漢前すぎるやろ」
はやてはあたまをかかえている!!
「じゃあお前ら普段デートとか何してんだよ。やっぱハーゲンダッツ食べてんのか?」
「ヴィータはちょっと黙ろうな」
「バカを言うな、私だってクレープを食べさせあったりソファーで手をつないでTUTAYAで借りてきた恋愛ドラマを見たりくらいする」
「普通やな」
「普通ですねぇ」
「しかしなんやろ……こう、胸の辺りがキリキリ傷むのは……嫉妬か?嫉妬しとるんか?ウチは……」
「なんだよはやてもやっぱりハーゲンダッツ食べたいんじゃん」
「ヴィータはそろそろ本当に黙ろうな」
「あ、はい。すいません」
いつの間にか完全武装した八神はやて(ユニゾン済み)がそこに居た。
今まで一度も発言が無かったが、リィンも居たのだ。
そう、作者が忘れていたのではなく……はふはふと鯛の炊き込みご飯を食べるのに忙しかったんだよ!!
「嫉妬……?まさか、主はやて……春原に?」
「いやそれはない」
脊髄反射の如くピシャリと返した今のはやての言葉を聞けば、たとえその気が無くとも圭一はヘコむだろう。
それくらいボールが壁に跳ね返るかの如くだった。
「なんやろ。こうなぁ、うちらクロノ君とエイミィちゃん以外彼氏彼女おらんかったやん。なんかこう彼氏ほしーとか言いながらずっと誰も彼氏とかできないんやろうなぁ……とか思っていた矢先にやな」
「置いてかれた感がして寂しいんですねはやてちゃん!」
「初セリフやけどもう黙ろうなリィン」
「でもまだ仲間はいっぱいいるですよ?」
「シャマル、ちょっとリィンの様子がおかしいんや。フルメンテナンスだしてきて。この時間ならゆうパックとかあるやろ」
「すいませんフルメンテだけはカンベンしてくださいです」
「はぁ……しっかし恋愛ドラマを見るシグナムも想像できひんな……どんな格好していくん?」
「そうですね……先月はジーンズに上はタートルネックの白いセーターでした」
「んん?そんな服持ってたっけ?」
「デート用ですから。春原が似合うからって買ってくれた物ですし」
「なんやろう今急に殺意の波動に目覚めそうなんやけど……ちょっと着てきてもらってええ?」
「いいですが……すこしお待ちください」
「はいCMはいりまーす」
~~~~~~~
ヴィータ「だからアタシは言ってやったのさ、『毎日ハーゲンダッツ食いに来ていい?』ってな
そうしたらアイツ………何て言ったと思う?
彼女が遊びに来る時があるからダメだってさ。
ハハ、アタシったらその頃にはハーゲンダッツ食いに三日に1度は通ってたのに、そんな事にも気付かなかった。
笑ってくれよ、このバカな女をさ」
アイゼン「m9」
~~~~~~~
「はいCMあけまーす!3,2,1……」
「その、このような感じなのですが……主はやて?」
「な、なんやそれ……シグナム」
「え、いや何と言われましても」
「シグナムが……シグナムが可愛いやて?!」
ガシャンと音がした、振り向いたらシャマルが食器を落として口に手を当てている。
「私の存在意義が!?」
「いやそれは……やめとこ。溺れる犬をあえて撃つ事もないやろ。しかし……ほんまかわいいなシグナム」
ピッチリとしたジーンズはシグナムの細く長い足をより長く見せ、白一色だが編みこみにより植物のツタがねじれるようなデザインが随所にされているセーターは、タートルネックが可愛さを、胸の膨らみが色気を演出している。
単純にして明快。
大人の色気と、女の可愛さを引き出す鉄板。
例えるなら、牛肉に塩と胡椒をかけるようなもの、その素材の持ち味を生かした魅力は、シンプルにして絶対!!
やや長めで指の付け根あたりまである袖がまたそそる!!
くそっ確かにいいセンスだ!!
また白地にピンクのポニーテールが映えるっ!!
こんなかわええシグナムが横で一緒に恋愛ドラマ見てたら、つい肩に手ぇまわしてまうやろ!
抱き寄せてしまうやろ!
それで頭をこっちにコテンとかしてきたら押し倒してまうやろ!!
……圭一くんよく我慢しとるなぁ。
「わ、私は可愛い服などは似合わないと思うのですが。春原がかわいいからと白ばかり寄越してくるので」
「そうかー、シグナムには白が……?白……ばかり……やて?」
「えぇ、クリスマスプレゼントは白い手触りのよいロングコートでした」
「ちょっと着てきて」
「え?」
「えぇから、なるべくその日の格好全部でな」
「あ、はい」
ガラガラガラ……ピシャン。
「はい八神家集合ー」
「あーい」
「アレもうダメやん。完全に恋する乙女だったで」
「あたし達も生まれてから長いからな」
「色『ボケ』もするっちゅーわけか、ってやかましいわ。まさか本人気付いてないパターン?」
「私が春原さんにモーションかければいいんですね?」
「ウチらまだ死にたくないからやるならシャマル1人でやってな」
「えぇ?はやてちゃんは興味ないんですか?」
「んー、圭一くんはなぁ……イケメンだけどそこまではタイプじゃないねん」
「はやて……タイプとかあったのか?」
「はっは……そろそろウチかてブチキレるで?」
「サーセン」
「そうやなぁ……ザフィーラみたいにかっこよくて、シグナムみたいにウチをまもってくれて、シャマルみたに優しくて、ヴィータみたいに一緒にいると楽しくて、そんでウチら全員より強いヒトとかタイプやな」
「無茶言うなよアタシら5人揃ったらそれこそなのはとフェイトがタッグ組んだって叶わないんだぜ?」
「それを如何にかしてこその愛やろ!!」
「シャマル、ザフィーラ……その時は……解ってるな?はやてを行き遅れにするようなマネしたらアタシがおまえらをペシャンコにしてやるからな」
「無論だ」
「心は一つよ、ヴィータちゃん」
「え、なにその団結力」
え?ウチ行き遅れの心配されてる?
そこで戦慄するはやての都合をまるで知らないシグナムが帰ってきた。
「戻りました……主はやて?」
「天使か!!」
白いロングコート、襟元と袖口は白いふわふわとしたファーで飾られ、その下には淡いピンクのワンピース。
胸元には金色のネックレスが。
けっしてゴテゴテしているわけではなく、周りと見事に調和が取れている。
ネックレスのアクセサリ部分は、長さ2cmほどの鍵の形をしており、とって部分に赤い宝石が添えられている。
うっわぁー!の鍵型メッチャいろんな意味がこめられてそー!!
鍵を掛ける、閉じ込める、この女は自分の物だ、誰にも渡さないというように。
いつか交わした言葉、シグナムが恋を理解するまでそばにいるという誓い。
どんなにシグナムを魅力的に飾り立てても、決して手を出さないという約束。
よく見ると、唇にはピンクのリップが……そんなの塗ってる所見たこと無い……えぇい!それも圭一くんの贈り物か!!
シグナムも嬉しそうにコートのあちこちをさわったりネックレスいじったりすんな!!
リア充爆発しろ!!っていうかもう結婚しろ!!
「もう……ウチには何も言えへんよ……幸せにな、シグナム」
「あぁうん。確かにスゲー説得力だ」
「これが……愛されオーラ……ねぇ!どうやって取得するの?!」
「わぁ、シグナムちゃんかわいいですー!」
「えぇ!いや……その……はい」
顔を真っ赤にしてうつむくシグナムは、アルカンシェル級に可愛かったという。
次回ヴィータ「でもアイツ昔はやての事が好きだったって行ってたぜ?」はやて「ガタッ」