午後のお茶休憩の時間。今日もトリール嬢の美味しいお菓子に舌鼓を打っていると、国王が私に話しかけてきた。「キリリン、ちょっと仕事をお願いしたいんだけど……」「仕事ですか?」 国王が私にわざわざ仕事を頼むとは、どういうことだろうか。 私は侍女だが、国王にも当然専属の侍女がいる。私に頼む必要などないだろう。「ちょっと近衛騎士を鍛えてあげてほしいんだけど」「ああ、またそういうのですか」 国王の思わぬ頼みに、私は思わず苦笑を漏らしてしまう。 私は侍女なので、荒事や肉体労働などとは縁がないはずだ。だが、私はこうしてたまに騎士の訓練相手を任される。 以前、国王が適当に任命した戦闘侍女という肩書きが、今もなお有効なのだろう。「まあ、戦闘侍女ですし、仕方ないので受けますよ」「あはは、戦闘侍女って何それー」「いや、それ言いだしたのは国王陛下ですよ!?」 笑う国王に、ツッコミを返す私。こんにゃろう。忘れていたな。 それでもなお国王は笑いながら、私に向けて言う。「まあ、頑張ってよ。すごくみんなやる気だから」「はあ。担当はまた第三隊ですか?」 第三隊は女性騎士の集まりだ。闘気の扱い方を何度か教導したことがある。「いや、第一隊だよ」「あいつらですか。今更、私の教えなど必要ないと思いますが……」「そうでもないんだよ。彼ら、この前、超能力とかいうのに触れたでしょ? それで、超能力との戦いは魔法戦闘にも通じるとか言いだして、魔法使いと戦闘訓練を積みたがっているようだよ」「魔法使いですか……私ではなく、暇な宮廷魔法師にでも頼めばいいのでは?」「頼んだんだけどね。実は、騎士達がコテンパンにのされちゃって」「第一隊が……」 宮廷魔法師、すごいな。さすが国のエリートなだけある。「この前うちに来てもらったセリノチッタに頼んだんだけど、一人で騎士全員やっつけちゃったみたいで」「あー、師匠ですか……そりゃあそうなりますね」 師匠相手とか、全力の私でも勝てるか怪しいぞ。しかも今は、魔法だけでなく超能力まで使えるのだ。 国王も苦笑いして、言う。「せっかくテアノンの人達と訓練してついた彼らの自信が、見事に折れちゃったみたいでね。キリリンに鍛え直してもらおうかと」「私も本格的な戦いは、ブランクが長いのでどこまでやれるか。まあやりますけれど」「ありがとう! 頼むね!」 そういうわけで、話は無事にまとまったのだった。「戦闘訓練かー。面白そうだから私もついていくね」 そんなことを唐突に言い出したのは、テーブルの上でトリール嬢に餌付けをされていた毛玉。キリンゼラーの使い魔だ。「来てもいいが、邪魔するなよ」 私は毛玉に向けてそう言ったのだが、毛玉はぴょんとその場で跳ねて言葉を返してきた。「大丈夫! 訓練手伝うよー」「その使い魔、戦えるのか?」 元気に飛び跳ねる使い魔にそう尋ねる私。魔力の経路は彼女の本体がいる惑星とつながっているので、魔力切れで消滅とかはしないと思うが。「ここは世界樹がたんまり魔力を融通してくれているから余裕! 私、魔法も得意だよー」 惑星が混沌に包まれていた神代から生きる、神獣の魔法かぁ。凶悪そうだ。「怪我はできるだけさせないように頼むね、キリリン。塩の国への出立も近いんだし」 国王にそう釘を刺されるが、私に言われてもキリンゼラーが手加減してくれるかは保証できないぞ。◆◇◆◇◆ 翌日。私は私服に着替え、近衛騎士の宿舎である白の塔まで来ていた。「あら、キリンお姉様。どなたかにご用ですか?」 そんな私を迎えてくれたのは、近衛宿舎付きの侍女であるククルだ。今朝、侍女宿舎で会ったばかりなので朝の挨拶は特にしない。 ククルに向けて、私は言葉を返す。「今日は近衛騎士達と一緒に戦闘訓練だ」「あらあら。お姉様、侍女になったというのに荒事だなんて。カヤが嘆きそうですわ」「仕方ないさ。私は、国王直々に戦闘侍女を任命されているんだ」「戦闘侍女! なんですか、そのワクワクしてくる響きは」「ワクワクするのか……?」 そんな会話をククルと繰り広げている間に、宿舎のエントランスに鎧を着込んだ騎士達が集まってくる。 その中から、宿舎長兼副隊長のオルトが、前に出て私の方へと近づいてきた。「姫、今日はよろしく頼む」「ああ、場所はどこで?」「西の演習場をおさえてある。魔法を使うならば、広い方がよいだろう?」「私の魔法はそこまで派手じゃないが、まあ広いに越したことはないな」「では、早速向かっても大丈夫か?」「ああ」 私がそう短く返事を返すと、オルトは背後へと向き直り、「点呼!」と騎士達に声をかけた。 騎士達の背筋が伸び、メンバー確認を行なっていく。第一隊は近衛騎士団の中でも特にゆるい集団だが、締めるべき所ではしっかりと締める。 メンバー確認も終わり、私達は王城を出て郊外の演習場へ向かうことになった。「いってらっしゃいまし!」 ククルは近衛宿舎付きの侍女なので、ついてこない。だが、妙齢の侍女に見送られ、どこか近衛騎士達の頬が上気しているように見受けられた。 ククルが近衛宿舎付きになってからしばらく経つが、彼女からは浮いた話を聞いたことがない。 ククルには婚約者がいないので、彼女の父が手を回さない限り恋人は彼女自身で見つける必要がある。 もしククルが行き遅れなどと言われるようになったら、彼女を放っておいた近衛騎士達の責任だ。そのときは締める。そしてククルの恋人になるという奴がいたらそいつはそいつで締める。 そんなことを考えているうちに、演習場へ到着した。「さて、どうするか」 私は整列する近衛騎士達を見ながら、そう呟いた。 そして、並ぶ面々を見て、一つ気がついた。「騎士団長はいないのか?」 第一隊の隊長でもある騎士団長。そいつがいない。「団長は、王宮で事務仕事だ。出立が近いのでな」 そう、近衛騎士を代表してオルトが言ってくる。 そうか、事務仕事か。いつも大変だなぁ。騎士団長は実務をオルトに任せて、王宮に詰めている事が多い。 仕方ない、騎士団長抜きでやるか。「とりあえず、戦闘訓練だな。実戦稽古で」「いいのか? 姫の負担が大きそうだが」「そのときはそのときで、魔法回避訓練にでも切り替えるよ」「了解した。よし、では木剣用意!」 従騎士が木製の武器を用意し、騎士達がそれを手に取っていく。 私も、一応木剣を一つ手に取った。魔法で攻撃するつもりなので、これで攻撃することは少ないだろうが。「三人一組で、一組ずつ順番に稽古を行なう!」 オルトがそう号令をかけると、騎士達がすぐさま並び直し、スリーマンセルのまとまりを複数作った。 うーむ、よく訓練されているな。動きがスムーズだ。 そして、その中から一組が前に出てくる。「へへ、姫が相手とは久しぶりでたぎってくるぜ」 そんなことを言いながら、木斧を構えるのは正騎士のハネス。粗野な男だが、その怪力はなかなか油断がならない。闘気の使い方も一流だ。 他の二人も、昔、私と国王が直々に鍛えた強者だ。全力で事に当たるとしよう。「準備はいいな? 始め!」 号令と共に、私は妖精言語を使い妖精を複数召喚した。ついでに火炎弾を作りだして、突っ込んでこようとするハネスを牽制する。 ハネスは舌打ちしながら木斧で火炎弾を弾いた。その間に妖精召喚。 おっと、闘気を足に込めて一気に走り寄ってきた騎士が一人。土魔法で壁を作り、そこに激突してもらう。その間に妖精召喚。「姫の魔法は全て無詠唱だ! 安易な隙はないと思え!」 そんな騎士の声が周囲に響きわたる。その間に妖精召喚。 無詠唱というか、詠唱ができないだけなんだけどな……。その間に妖精召喚。「って、どれだけ呼び出すんだ姫!?」 はい、準備完了。【領域】魔法発動。妖精郷、光の園。 土で覆われていた演習場が、花畑に変わる。その花畑には、ところどころ光り輝く結晶体が生えていた。 ここは今、妖精が支配する異界と化している。「なんだ!?」「頑張ってかわせよー。光魔法の大バーゲンだ」 私はそう言うと、妖精言語で妖精達に指示を出す。光で攻撃いっぱい、怪我しない感じで、容赦なく、殺しちゃ駄目。 魔力を私から受け取った妖精達は、笑顔で周囲に散らばり、光線を大量にばらまき始めた。その数は、膨大。 光の速さで飛び交う妖精の攻撃が、三人の騎士を蹂躙する。 騎士達はその攻撃を全身で受け、吹き飛ぶ。唯一、ハネスが闘気を全身に巡らし耐えきり、妖精を木斧で叩いた。しかし、木斧は妖精をすり抜け、妖精は笑ってハネスの顔面に大量の光線を浴びせかけた。「ぐあああ!」 たまらずよろけたところに、妖精達の光線による集中砲火がハネスを襲った。 これにより、ハネスはダウン。残り二人の騎士も、すでに倒れていた。「そこまで!」 私は、オルトの終了を知らせる声を聞き、領域魔法を中断。すると、異界となっていた周辺が、現実世界へと戻っていく。 倒れ伏している騎士達に、従騎士が駆け寄って手当を開始した。「姫、無事なのか、あれは」 オルトが心配そうに聞いてくるが、私は問題ないと軽く返した。「物理的な衝撃はほとんどないぞ。精神ダメージで気絶しただけだ」「そうか」 だが、気絶させたままなのは悪いと思い、私は妖精を呼び出し三人につけてやる。すると、彼らは、はっと目を覚ました。「よし、軽く戦いを振り返るぞー」 私は三人を集め、戦いの感想を述べる。「今回、私は妖精を段階的に呼び出して、大魔法を使った。これは、魔法使いが通常使う、詠唱魔法を再現してのことだ」「つまり、呼び出している間に被弾を恐れず真っ直ぐいって、一撃入れていればよかったってことか」 私の説明に、ハネスがそうコメントする。「そうだな。ただ、私の場合は詠唱と違って、召喚が中断されても最初から召喚をやり直しとはならないが」「なにそれずりい」 そうは言うが、詠唱できないってかなり不利なことなんだぞ。「で、魔法が発動した後の対処だが……」「ありゃどうしようもねえだろ。妖精は殴ってもすり抜けやがるし」 ハネスはお手上げ、といった感じで手の平を身体の前で広げながら言った。 妖精は物質ではない。アストラル界的な世界に住む、異次元生物である。 その成り立ちは、惑星フィーナの神代までさかのぼることができる。凶悪な神獣が闊歩する混沌の世界を無事に生き延びるために、精神生物となって物理干渉を受けないよう進化した生物であるらしい。 私はさらに説明を三人に続ける。「妖精は触れず、死なず、それでいてこちらの世界に魔法的干渉を行なえる生物だ。対処するには、魔法を使うか闘気を精神の領域まで届かせる必要がある」「つまり、闘気の扱い方をもっと学べってことか?」「いや、そこまでやる必要は無い。今回は、大魔法が発動されたとき用に咄嗟の対処を覚えていけばいい」「つっても、あんなのどうしろっていうんだ……」 騎士達三人が顔を見合わせ、困ったように眉をひそめる。 私はそんな彼らに向けて言葉を続けた。「攻撃魔法は術者にとっても危険な代物だ。大魔法っていうのは大抵、術者の傍を通過しないようになっている」「肉薄してやればいいってことか」「そうだな」「でもよう。姫に接近戦挑むのは結構勇気いるぜ」「そこは勇気を出せ。私ほどに剣が達者な魔法使いは、そうそういないだろう。いたときは……頑張れ」「丸投げかよ!」「剣でくらい魔法使いに勝てなくて、どうする」 私がそう言うと、三人は黙った。まあ、騎士が魔法使いに接近戦で負けましたなんて言った日には、末代までの恥だからな。 師匠だって動きはとろいし、魔法使いには積極的に接近戦を挑め、だ。ああいや、生まれ変わってからの師匠の強さは知らないが。 そういうわけで、戦いの振り返りは終わり、私は次の組と対戦していく。 接近戦を積極的に挑んできたので、地雷的な設置魔法を大量に仕掛け、罠にはめていく。 私の魔法は、その多様性が長所なのだ。魔女になるには全ての魔法に精通していなければならないと、師匠に散々詰め込み教育を受けたからな。 ゆえに、私はそれぞれの組ごとに異なる魔法を使う魔法使いを想定して、稽古をつけた。 さすが王国最強の騎士団ともあって、なかなか苦戦をすることもあった。 後半の組になるにつれ動きが洗練されていくのを見るに、見取り稽古としてもそれなりに成果があったのではないだろうか。「なんで姫に勝てねえんだ……昔はここまで強くなかったよな……」「そりゃあ、お前達をスカウトした頃から、何年経っていると思っている」「俺達だって、あの頃から成長したんだがなぁ」 そんな雑談を交わしつつ昼食を済ませて、しばらく訓練は続き……。私はとうとうバテてしまった。体力ではなく、魔力切れだ。 魔力とは、生物に宿る力、そして星の力だ。体内にある魔力を使って、外にある魔力を操る技術を魔法という。そして詠唱は、体内にある魔力を組み立てて、外にある魔力に働きかけやすいようにする技術である。 私は詠唱ができない分、魔法を使う際の体内魔力のロスが少しばかり大きかった。 声が出ないおかげで、言葉と一緒に漏れてしまう魔力が抑えられるため、魔力が溜まりやすい体質でもあるのだが。「はー、しんど……」「キリン、疲れた? 疲れた?」 演習場の端で稽古を見守っていたキリンゼラーの使い魔が、私に寄ってきた。「魔力切れだ」 私がそう言うと、使い魔はぴょんとその場で跳ねる。「じゃあ、私が代わりにやるよー」「ああ、頼む。おーい、次の組は、このキリンゼラーの使い魔が相手をするぞー」 私が騎士達に向けてそう叫ぶと、騎士達は揃って困惑した顔になる。「その……姫、その小動物がか?」「オルトも惑星フィーナで巨大なドラゴンを見ただろう。惑星の神代を生きた、偉大な神獣、その使い魔だぞ」 オルトの疑問に私がそう答える。すると、途端に騎士達は真面目な表情に変わった。 うんうん、見た目で侮るのをやめたようだな。よしよし。魔物の中には、小さくても強力な個体なんてものはざらにいるからな。その姿勢は大事だ。「では、次の組!」 オルトの号令で、三人が前に出てくる。「よーし、行くぞー」「怪我させないようになー。それと、殺すのは絶対駄目!」「それくらい解ってるよー」 私の頼み込む言葉に、キリンゼラーの使い魔は軽く返してくる。大丈夫かなぁ。「始め!」「【混沌よ】【広がり】【領域を】【支配しろ】」「詠唱だ!」「させるかよ!」「小さすぎて狙いにくい!」 開始と共に、使い魔は詠唱をし、騎士達は闘気を身体にみなぎらせ瞬時に肉薄した。 闘気の込められた木剣が使い魔を襲うが、無詠唱の魔法障壁がそれを防ぐ。 ふーむ、キリンゼラーの本体は私と同じように詠唱ができない喉のようだが、使い魔は詠唱ができるのか。勉強になるな。「【顕現せよ】【古き世界】!」 使い魔の足元から、異界が広がっていく。これは、私も最初に使った領域魔法だ。 その異界は……なんというか、ぐちゃぐちゃだった。 黒いのだが、そこに様々な色が混ざっているのを感じる。これはもしや、混沌ってやつか。 異界となった地面は泥のようにぬかるみ、騎士達の足にまとわりつく。すると、騎士達はふらりとその場で身体をゆらし、そして地面に倒れ込んだ。「【魔法終了】!」 騎士達が倒れると同時に、使い魔のそんな声が聞こえ、異界が消え去る。「そこまで!」 オルトの終了の合図が響き、使い魔がこちらに向けてぴょんぴょんと飛び跳ねてやってきて、そして私の胸に飛び込んできた。「できたー。できたよー、キリン!」「お、おう。彼らは無事なのか?」「ちょっと混沌酔いしただけだよ」「混沌酔い」 何それ知らない。「キリンの真似して領域魔法使ってみたけど、どうだった?」「ああ、よかったんじゃないか。でも、お前の身体の位置低すぎて、ちょっと騎士達は不利だな」「それは仕方ないかなー」 と、そんなことを使い魔と話していたのだが……。『面白そうな――ことを――して――いますね――』 頭の中に、師匠の声が急に響いた。これは……テレパシーだ。『今から――そちらに――行きます――』 そう声が届くや否や、目の前に師匠が突如出現した。テレポーテーションか。「貴女を訪ねたら王宮にいなかったので、跳んできました。問題はありませんね」「いや、仕事中なんだが……」 超能力身につけた師匠、身軽だなぁ!「近衛騎士の調練でしょう。私に任された仕事のはずでしたが?」 師匠は私ではなく、オルトに向けてそう言った。「いや、セリノチッタ殿に任せると怪我人が出るので、この時期に行なうのは問題がありましてな……」「それは手加減をしろと言われていないからです。私も怪我人を出さずに相手を倒すことくらいはできますよ」 師匠にそう言われ、オルトは黙った。 そして、師匠はまたこちらに向き直る。「しかし、実戦形式で魔法を鍛えるのはよいことです。魔力が切れるまで、はげんだようですね。魔女に一歩近づきましたよ」「いや、魔女は正直どうでもいいというか……」「日頃の何気ない行動が、貴女を魔女に近づけていくのです。精進するように」 聞いちゃいねえ! そして師匠は、再び騎士達の方を向く。「弟子はこの通り魔力切れのようなので、私が相手をします。全員でかかってきなさい」「あ、ずるい! 私がやっていたのに」 師匠の言葉に抗議するように、キリンゼラーの使い魔がぴょんぴょんと飛び跳ねて言った。「おや、神獣様、それなら一緒にやりますか」「やるー!」 そうして師匠と使い魔は意気投合。まがまがしい魔力が周囲に放出された。「さあ、行きますよ」「行くぞー!」「くっ、総員、構え!」 そうして場は魔法と超能力と闘気が入り乱れる戦場へと変わり、場は混沌と化した。 魔力をチャージ中の私はどうすることもできず、騎士達が空を舞っていくのをただ見守るばかり……。いや、師匠が本当に手加減できるか怪しいので、それも駄目だな。 私は妖精言語で「魔力後払いでよろしく」と妖精を召喚し、騎士達に怪我がないように妖精の守りをつけた。 溜めたばかりの魔力が妖精に徴収されていき、私は気だるい身体を休めるように、地面に座り込んだ。魔力が回復するそばから奪われていく。この欲しがりさんどもめ。「ぐわー!」「固まるな! まとめてやられるぞ!」「防御が甘い」「闘気を燃やせー!」 私は一方的に蹂躙される近衛騎士達を見ながら、国王に今日の成果をどう報告したものかと頭を悩ませるのであった。