惑星脱出艦テアノンが去り、落ち着きを取り戻した内廷。その一角にある部屋で、パレスナ王妃主催のお茶会が開かれていた。 季節は夏まっただ中。いつもの植物園でお茶会を開くには少々陽射しがきついため、今回は屋内での開催だ。 参加メンバーは、かつての後宮に王妃候補者として入っていた令嬢達。まあ、いつもの面子だな。ただし、ハルエーナ王女は急ぎの用事で国元に帰っているので不在だ。 令嬢達は各々近況を報告し合うことになり、談笑しながら菓子職人であるトリール嬢の作った菓子と一緒に、お茶を楽しんでいる。 ちょうど今、ファミー嬢が来年の春に結婚式を行うと宣言したところだ。以前、恋人と一緒に、ファミー嬢の実家へ送り届けた時に決まった話だが、ようやく皆に報告できたというわけだ。皆から祝福されて、ファミー嬢も嬉しそうだ。 そして、次に近況を話すのはミミヤ嬢だ。「そろそろ本格的に王妃教育を開始しようと思いまして」 ミミヤ嬢は王国の中でも古い家柄出身の令嬢で、貴族のマナーに詳しい。 その経歴から、王妃の作法を教える教育係を担当していて、後宮出身者の中ではトリール嬢の次に、パレスナ王妃と交流が今も続いている人物だ。 しかし、王妃教育は、はかどっていない。惑星旅行だの併合式典だのテアノンの歓迎だの、長期にわたってパレスナ王妃の予定が空いていないことが重なり、教育計画に多大な遅れが出ているのだ。 だが、これからしばらく王妃の予定は空いている。次の大きなイベントは、七月の大収穫祭まで特に何もない。まあ、一日二日潰れるような公務は、ちょこちょこと存在しているのだが。「お手柔らかにね。お作法以外にも、語学や農学も学ばなければいけないのだから」 パレスナ王妃が苦笑しながら言うが、ミミヤ嬢は聞く耳を持たない。「でしたら、絵画にかまける時間を減らしませんと」「うっ! 確かに王妃としての仕事をおろそかにしていたら、趣味にかまけるのはいけないでしょうけど、私それなりに立派な王妃をできていると思うのよね」「私から見るとまだまだですわ」「厳しい先生ねぇ」 そんな感じでミミヤ嬢の近況報告は終わり、次はパレスナ王妃の叔母であるモルスナ嬢に話題が移る。「私は……ちょっと困ったことになっているの」「お仕事で何か……?」 パレスナ王妃が心配そうに言う。モルスナ嬢は領地を持たず王都で官僚をしている、いわゆる法服貴族だ。その仕事先で何か問題があったのだろうか。 周りの令嬢達も心配そうに見つめる。 だが、モルスナ嬢は首を振ってそれを否定した。「そういうのじゃないわ。マンガの方でちょっとね」「ああ、そっちね。『令嬢恋物語』に何か問題でもあったの?」『令嬢恋物語』とは、モルスナ嬢が描いている漫画本のタイトルだ。タイトルからも解る通り、バリバリの恋愛漫画である。「そちらは順調。それではなくて、新しい漫画を描かないかって打診が、ティニク商会から来ているの」「あら、すごいじゃない。ああ……忙しくて打診を受け入れられないという話?」 モルスナ嬢の言葉を受けて、パレスナ王妃がそう尋ねる。 だが、それもまた違ったようだ。「余暇は十分にあるわ。そうではなくて……打診されたタイトルにちょっと問題があるの」 そこまで言って、モルスナ嬢は一口お茶を飲み、喉を潤した。そして、話を再開する。「『名探偵ホルムス』のマンガ化をしてほしいのですって」「ええー!」 と、突然叫び声を上げたのは、普段は大人しいファミー嬢だった。「本当ですか!? 推理小説というジャンルを切り開き、この王国どころか翻訳されぬまま隣の大陸まで広まって、一世を風靡したあの『名探偵ホルムス』ですか!? マンガ化を皆に待望されていたものの、相応しい描き手が育っていないということで、未だ大衆向けのマンガになっていない、あの!?」「ちょっと、ちょっと落ち着いて、ファミー」 興奮して早口になっているファミー嬢を隣に座っていたパレスナ王妃が、なんとかなだめる。 ファミー嬢は本好きの令嬢だ。本好きが極まりすぎて、王宮図書館の司書長補佐の仕事に就いたくらいである。「光栄なことですのに、何か問題があるのですか?」 パレスナ王妃の代わりに話を振ったのは、ミミヤ嬢だ。彼女も最近になって漫画文化に興味を持った人なので、この話題に食いついているのだろう。「だって、私が得意なのは恋愛物でしょう? でも、『名探偵ホルムス』は読んだことがないけれど、殺人事件が起きてそれを解決するという恋愛にかすりもしない内容らしいじゃない。私に打診が来たのは光栄だけれど、向いていないわ」「そうかしら。本当にモルスナ様が恋愛物しか描けないだなんて、誰が決めたのでしょう?」「むっ、私のことは私が一番理解しているわ」「いえいえ、『令嬢恋物語』は私も愛読していますが、恋愛以外の人間模様や事件などもしっかり描けていると思いますわ。新しいことに挑戦してみるのも一興ではないかしら」「むむむ……」 モルスナ嬢の漫画の絵柄は、前世で言う少女漫画風のタッチに似ている。そこから描かれる推理漫画か。うーん、未知数だ。 でも、モルスナ嬢の漫画の腕なら、タッチを少女向けからもっと万人向けに修正もできるのではないだろうか。 この国で漫画という文化が生まれてから、そう年月は経っていない。そんな発展途上な漫画文化だが、それでも数いる漫画家の中で、モルスナ嬢の画力は頭一つ飛び抜けている。 さすがは芸術家であるパレスナ王妃の叔母である。パレスナ王妃自身は、最近までその叔母が漫画を描いていることなど知らなかったようだが。「でも、先ほども言った通り、読んだこと無いのよね、ホルムス。演劇は楽しかったけれど」 そういえば、以前モルスナ嬢はパレスナ王妃と一緒に、王都の劇場へ『名探偵ホルムス』を観に行ったことがあったな。 あのときは、普通に演劇を満喫していたように思える。「私の持っている本を貸してあげるわよ? もちろん全巻」 未だ尻込みするモルスナ嬢に、パレスナ王妃がそう提案する。「……はあ、解ったわよ。一度読んでみて、それで受けるか決めるわ」 とうとう折れたモルスナ嬢に、周囲は皆にっこりだ。「そうですわ! モルスナ様が小説を読み終わったら、皆で王都にホルムスの演劇を観に行きませんこと?」 そんな提案をミミヤ嬢がして、一斉に皆が賛成をする。王都にお出かけか。そういえば、このメンバー全員で出かけたことはなかったな。ハルエーナ王女がこちらに帰還したら、話を振っておかないと。 そうして話はまとまり、モルスナ嬢は漫画化の話を前向きに検討することになった。 そして、次に話題は移り、最後に近況を聞かれたトリール嬢。「毎日お菓子作りをできて、本当に幸せですー」 彼女はお変わりないようであった。幸せそうで何よりです。◆◇◆◇◆ あのお茶会の日から十日経ち、皆で王都に出かける日となった。王城で用意された大型の馬車で劇場に向かい、予約していた貴族用のボックス席に入る。 高位の貴族令嬢がパレスナ王妃も含めて六人もいるため、本日は王妃付き侍女全員が付き従って彼女達のお世話をする。 とはいえ、劇場側も貴族のための使用人を多数用意しているので、そこまで付きっきりというわけではない。なので、私達侍女も演劇をある程度集中して見ることができる。護衛についてきている近衛騎士達は、ボックス席の入口を固めているので劇を観られないだろうが、まあ護衛が職務なのだし問題はないだろう。 今日の演目は、『名探偵ホルムス 大河に消ゆ』だ。ホルムスの最新巻がもう演劇化されているのか。 近々ホルムスの新作が刊行されるという話だから、その宣伝にやっているのだろうか。「それで、ホルムスとワトー夫人の関係が最高に来ているのよ!」 開演前、ボックス席でモルスナ嬢が早口でホルムスの感想をまくしたてる。 どうやら彼女も昨今の流行に乗り、ホルムスにドハマリしたようだ。 パレスナ王妃も最初、『名探偵ホルムス』とそのスピンオフ『ぼくら少年探偵団』を読んだときは、寝食を忘れる勢いではまっていたな。このあたりは、二人が親族というのを実感できるところだ。「劇中でワトー夫人が作っていたお菓子、地方のマイナーなお菓子なんですけれど、あれって夫人の出身地を示唆しているのでしょうかねー」 と、どうやらトリール嬢もホルムスを読んできたらしい。お菓子作りにかまけすぎて周囲の話題に取り残されるような、残念な人柄ではないようだ。貴族令嬢は他の何よりも社交が重要なのだ。ま、浮かんでくる感想がお菓子に関してなのは、相変わらずだが。 他の令嬢達も口々にホルムスの感想を言い合う。全員既読者のようだ。 いやあ、ティニク商会のゼリンの奴も、私がちょっと推理物というジャンルについて話しただけで、ここまでの流行を作り出せるとは恐ろしいな。 私が前世の推理物について実際に知っていることなど、少年漫画雑誌で連載していた推理漫画と、ホルムスの名前の元ネタになった有名推理小説を原作にした、獣人アニメくらいだというのに。 やがて、演劇が開幕となり、劇場の使用人から渡されたオペラグラスを皆が使い、舞台を眺める。私は視力が良いのでオペラグラスいらずだが。 お、ホルムス役の役者、以前演劇を見に来たときと同じ人物だな。背の高い美形の男だ。声もよく通る美声で、観客席のご婦人方もこれにはメロメロであろう。 ホルムスの特徴的な髪型が王都で流行するのも、よく理解できる。役者がここまで格好良いと真似したくなるよな。前世でも、美形男性アイドルの髪型を皆が真似して、男の長髪ブームがあったような記憶がある。 そして舞台の上の物語は進み、途中で令嬢達のお茶とお茶菓子の世話をしつつも、私達一同は演劇を存分に楽しんだ。 閉幕と同時、観客席からは割れんばかりの拍手が鳴り響く。 令嬢達も大いに満足したのか、上品に拍手を舞台に向けて送った。「はあ、面白かった……!」 パレスナ王妃が頬をわずかに赤く染めながら感慨深くそう言った。「モルスナお姉様、どうだったかしら?」「……決めたわ」「え?」「決めた! 私、ホルムス描くわ!」 モルスナ嬢は勢いよく立ち上がると、拳を強く握ってそう宣言した。どうやら今の演劇で決心が固まったらしい。 以前演劇を見たときは、面白いわねー程度の感想だったというのに、原作を知ってから観るとそこまで心境に違いが出るのか。「そうと決まれば、早速ゼリンの所に行かなくちゃ! パレスナ、今日この後、予定はないわよね?」「えっ、特にはないけれど……」「それでは、ティニク商会に行くわよ!」 というわけで、私達は予定にないティニク商会訪問をすることになった。王妃がいて他国の王女もいるので、警備計画というものがあるのだが、この叔母はお構いなしだ。 そして私達は近衛騎士が守る馬車に乗り、ティニク商会の王都本店前に乗り付けた。「店員さん! ゼリンを呼んで! モルナが来たって!」 と、店に入るなりモルスナ嬢は店員を捕まえ、会長のゼリンを呼び出した。 近衛騎士達と一緒に入店したモルスナ嬢の姿に、店員は完全にびびっている。顔見知りの店員なので、少し助けてやることにしよう。「大丈夫、ゼリンの奴と契約している漫画家が来ただけだ。お咎めがあるとか監査をするとかそういうのじゃないぞ」「あ、キリン様……」「ほら、モルナ先生が呼んでいると、ゼリンに言ってきな。ゼリンの奴はいるのだろう?」 モルナとは、モルスナ嬢の漫画家としてのペンネームである。「はい、会長ですね。今日はいます。……呼んできますね」 店員は小走りで店の奥に引っ込んでいった。 そして、私はモルスナ嬢の方へと振り返り、注意をしておく。「モルスナ様、先走りすぎです」「……そうね、申し訳ないわ。気がはやってしまって」 しょんぼりとするモルスナ嬢の後に続いて、令嬢達が次々と入店してくる。 護衛付きの貴族集団を見て、店内にいた一般客達がそっと距離を取る。この店では貴族の客は珍しくもないのだが、護衛の着ている鎧が明らかに立派なので、とても偉い貴族だと察したのだろう。まあ、近衛騎士だからな。周囲を威圧するのも仕事のうちだ。「あらあら、これまた団体さんねえ」 と、店の奥からオネエの商会長、ゼリンがやってきた。 十人を軽く超えている私達の姿を見て、彼はしばし何かを考えるように沈黙する。そして、ゆっくりと口を開いた。「応接室には入りきらないから、王妃様をお迎えするには相応しくない場所だけれど、会議室にお通しするわね」「構わないわ。今日は、漫画家モルナの親類、画家パレスとして来ているの」「近衛騎士同伴で何言っているのかしら」 呆れたようにゼリンが言うが、最早パレスナ王妃が近衛騎士を連れずに城下町へ繰り出すことはない。 つまり、画家パレスとして今後ティニク商会に訪れる時も、絶対に近衛騎士が同伴することになる。 近衛騎士の目がある以上、ゼリンも画家パレスを王妃として迎える必要がある。 会議室は王妃を迎える“格”が足りていない部屋なのだろうが……まあ今回は仕方ないか。大人数で来たからな。近衛騎士もその程度では怒らないだろう。王妃付き侍女の面々がもし怒るとしても、首席侍女の私が抑えるので問題ない。「ではご案内ー」 というわけで会議室に通される私達。令嬢達が着席すると、すぐさまお茶とお茶菓子が運ばれてくる。 そのお菓子を見たトリール嬢が、早速とばかりにお菓子を口にする。「むむ、食べたことのないお菓子ですー」「ああ、それ? ちょっと遠い大陸のお菓子を取り寄せてみたの」「レシピを教えてもらうことはー」「無理ねぇ。新しいカフェの目玉商品なの」「むむ……」「申し訳ないけど、こちらも商売なのよね。さて、今日はモルナ先生から何かあるということだけれど……」 ゼリンがモルスナ嬢に話を振ると、モルスナ嬢は口にしていたお茶のカップをテーブルの上に置き、話し始める。「以前打診された、『名探偵ホルムス』のマンガ化についてだけれど……受けようと思うの」「あら本当? ありがたいわ」 ゼリンは花が咲いたようにぱっと笑顔を浮かべた。うーん、ごつい中年男性の明るい笑顔とか、正直嬉しくないな。「となると、一つだけモルナ先生に言っておくことがあるの」「何かしら?」「今回の話は打診ではあるけど、懇願ではないの。モルナ先生がこの国で一番マンガが上手だから話を持っていったけれど、もしホルムスという一大作品に相応しいクオリティが確保できないと判った時には、担当を降りていただくこともあるわ」「……ええ、了解したわ」 一番上手、というところでニヤニヤしていたモルスナ嬢だったが、担当を降ろすというところで、真面目な顔に戻った。「とりあえず、今日はお客様が多いようだから詳しい打ち合わせは後日にしましょう。ところでモルナ先生、ホルムスの本は持っていらして?」「全巻読んだけれど、借りて読んだから手元にはないわね」「じゃあ、スピンオフも含めて全巻資料としてお譲りするから、しっかり読み込んでおいてちょうだい」「もちろんよ!」 というわけで、モルスナ嬢は無事、『名探偵ホルムス』コミカライズの仕事を受けることができたのだった。 王都の全市民に、モルナ先生の名が知れ渡る日も近いかもしれない。◆◇◆◇◆「パレスナー。キリンさーん。ちょっとチェック手伝ってー」 後日、ミミヤ嬢による王妃マナー講習を受けていたパレスナ王妃のもとに、くたびれた様子のモルスナ嬢が訪ねてきた。 彼女の手には、何やら紙袋が握られている。書類を入れる大判の封筒型の紙袋だ。「何かしら?」「駄目ですよ、パレスナ様。今はお勉強の時間です」 モルスナ嬢に対応しようとしたパレスナ王妃をミミヤ嬢が止める。モルスナ嬢がなんの用事で来たか察して、急ぎではないと判断したのだろう。「私が代わりに対応しますね」 私はそう言って、モルスナ嬢のもとへと向かう。「原稿でもできましたか?」「そこまではいっていないわ。一巻の登場キャラクターを一通り描いてみたのと、一話目のネームね」「作成中の資料ということですね。でも、それならわざわざここまで来なくても、直接ゼリンと打ち合わせすればよろしいのではないでしょうか。確か最初はゼリンが直接担当するのですよね?」 私がそう言うと、モルスナ嬢は首を振って否定した。「ゼリンって見る目が厳しいから、事前にできることはしておきたいのよ」「ああ、彼、商売に妥協はしませんからね」「なので、パレスナとキリンさんにチェックしてもらおうと思ったの」 ゼリンの所に行くよりも、この国の王妃に頼る方が気軽な様子なのは、さすがというかなんというか……。 私が呆れていると、モルスナ嬢は紙袋の中から絵の描かれた紙束を取り出した。 それを私は一枚一枚確認していく。「ゼリンは、今までのきらびやかな絵柄よりも、もっと大衆向けにしろと言っていたのだけれど……できているかしら」「確かに、少女漫画的なタッチからは変えられていますが……これ、ホルムスですよね?」 紙束の中の一枚を指さして、私は言った。「ええ、主人公ね」「あまりにも美形すぎません?」「美形で何か問題あった?」「原作に、ホルムスは美青年だとする記述は無かったはずなのですが……といいますかこれ、あの演劇でホルムスをやっていた役者の顔ですよね」「そうよ。良い出来じゃない?」「没ですね」「なんで!?」 いや、役者の顔を描くのは駄目だろうさ。「いいですか、モルスナ様。貴女が描くのは小説『名探偵ホルムス』の漫画です」「そうね」「演劇『名探偵ホルムス』の漫画ではありません。キャラクターデザインだけでなく、劇中のエピソードも演劇に引っ張られないよう気をつける必要がありますよ」「……なるほど?」「原作に従いつつ、モルスナ様にしか描けないホルムスを表現するのが理想です」「むむ、私だけのホルムス。理解したわ!」 納得したモルスナ嬢に安心した私は、引き続き紙束をめくり、一話目のネームをチェックする。 ふむ。ふむふむふむ……。「どうかしら?」「面白いですね。これならゼリンも納得するかと」「よし!」 ネームの出来はよく、さすがはゼリンにこの国一番の漫画家と言わせただけはあった。 そして、モルスナ嬢はパレスナ王妃にも絵とネームを確認してもらい、ちゃっかりネームを見たミミヤ嬢の感想も聞いて、満足して内廷を去っていった。「モルスナ様の漫画が、王国を席巻する日も近いかもしれませんね」 私がパレスナ王妃にそう言うと、彼女は笑って言葉を返してきた。「当然でしょう。だって、私のモルスナお姉様だもの」 この王妃様は一歳違いの叔母のことが大好きなのだと、改めて確認できたのだった。