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No.35223の一覧
[0] CRY -悲しみに咲く花-[Wa-yU](2012/09/20 20:18)
[1] [Wa-yU](2012/09/23 02:04)
[2] 第一章[Wa-yU](2012/09/28 23:19)
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[35223] CRY -悲しみに咲く花-
Name: Wa-yU◆06e098cf ID:9b246949 次を表示する
Date: 2012/09/20 20:18
きっと、気づいていたんだ。
このままでは、いられないことも
この先には、何もないことも

変わろうとしていたのだ。
俺も、君も
世界そのものも……。




CRY -悲しみに咲く花-






最初のきっかけはなんだろうか。
そうだ、多分あの時だ。




序章  桜模様



あっ――。
下駄箱の無機質な扉を開けた時、思わず俺は声を漏らした。
桜をモチーフにしたであろう、可愛らしい便箋が中に入っていた。
可愛らしいピンクの封筒を裏返すと、送り主が書かれていた。

『2年3組 佐倉咲姫』

さくらさき、さんだろうか。二年生ということは、俺と同じ学年だ。そしてこの、桜模様の便箋から推測するに、この中身は恋文に違いない。
俺はその時、便箋を開けるのを戸惑った。宛先がもし間違いだとしたら、彼女を傷つける事になる。
どうしようか、と悩んだ。そうだ、こうしよう、と決めた。決めたら、曲げない性分だった。
とはいっても、どこにいるかはわからない。俺は告白をしようとする人がどこへ向かうのかを分析する。……そうやって考えた結果、場所は一つに絞られた。

「……あなたは?」

案の定そうだったか、と。俺は手にした便箋を彼女に返した。「これ、間違えてたよ」
彼女に便箋を渡す。便箋が開けられていないことを確認してから、彼女は不思議そうに俺を見た。

「開けてもないのに?」

もっともな答えだ。これが仮にイタズラでないのなら、お前には魅力はない、と言っているのも同然だ。
そう気づいて、ああ失敗したなぁ、と思ったが、返すと言ってしまった手前、もう引き返せない、ということにも気づいて、お手軽な理由をつけた。

「多分、違う、って」当たり障りのない言葉を探す。「俺、佐倉さんのこと知らないし」
「そうだね」ふふ、と彼女は可笑しそうに笑った。「確かに、君のことは私も知らないや」

でも、と彼女は続けた。

「それはたまたまで、もしかしたら本当に君のことが好きだったかもよ?」

確かに、それもありだ。人は、人が思うよりも他人から関心を引いているものだし。無い話ではない。
しかし、と。俺は一つ嘘をついた。

「確かに、佐倉さんの事は知らないけど、君がバスケ部の練習を眺めていたのは知ってる」

根も葉もない嘘だったが、彼女は否定も肯定もせず、へぇ、と感心したようにつぶやいただけだった。
ふと、目が合った途端、目を覗き込まれる心地がした。ここで、彼女の目から、俺は気づいた。そして、彼女も気づいた。

「ラブレター、じゃないのか」
「どうでしょう。ま、確かに君宛ではないけどね」

それ以上は何も言わず、わざわざありがとう、と彼女は礼を言い、その場から消えようとした時、最後の疑問を投げた。

「もしかして、図星?」

どうでしょう、と悪魔のように、微笑まれた。






帰宅後、俺はこの事について自宅で考察会を開いた。

「佐倉さんて、あの佐倉さん?」

隣に座る、華奢で繊細な雰囲気を持った少女――雪は、俺の幼馴染である。毎日手料理を作ってくれる献身的な幼馴染……というわけではないから、世の中甘くない。彼女は確かに料理は上手だが、この家庭では料理人は間に合っていた。
さて本題だが、どうやら佐倉さんを知らないのは俺だけらしい。入学したばかりの妹でさえ常識を聞かれたかのような反応だ。雪は、言うまでもない。

「お兄ちゃん、優しい妹が生徒会長について説明してあげようか?」

妹の名は亜樹葉(あきは)と、なんとも自然豊かな名前であるが、彼女も雪と同様に華奢で小柄だ。ただ、彼女は病弱な雪と異なり活動家である。
頼む、とレクチャーを求める。雪は得意げに、講義を始めた。
いわく、佐倉咲姫こと現職の生徒会長は、同じ生徒会の書記を務める亜樹葉曰く、強いリーダーシップと行動力に長けた素晴らしい人らしい。
絵に描いた餅……のイメージを抱いてしまったのは失礼だろうか。

「ミスはしたことがあるか?」気がかりを解消すべく、問いかける。
「えっ」この問いかけに、亜樹葉は怪訝そうな顔をした。「多分無いと思うけど……」

そうか、と呟く。二人は不思議そうに俺を見ていたが、妹の言葉は俺の中で二つの疑問点を明確に示した。

彼女は何故俺を選んだのか。
彼女は何をしようとしていたのか。

明日聞いてみよう、と明日のスケジュールを一つ埋めた。

「……何かに首突っ込もうとしてる?」

雪が心配そうに俺を見た。大したことじゃない、と俺は笑って返す。
妹の方は、何かに気づいたらしく、「それだけのために呼んだの?」と尋ねられた。黙って笑顔を作る。
ほとほと呆れた、と言いたげなため息をつくと、彼女は立ち上がって、いそいそと洗濯物の片付けを始めた。
その姿を見て、それじゃあ帰るね、と雪は立ち上がる。その時、立ちくらみがしたのか、その場で倒れそうになったのを慌てて支えてやる。

「辛いのか?」
「ううん……」俺にかけた力は弱々しかったが、それでも彼女は立ち上がった。「大丈夫。ありがとう」

付き合わせて悪かったな。
ううん、大丈夫だよ――。
家まで送るよ、と俺は彼女の手を引いて、家を出た。送る、といっても彼女の家はすぐ近くだが。
初夏の夜風の中を歩く。気温は日に日に上がっていた。
わずかな道のりで、彼女の笑い話を聞いた。彼女の家の前まで来て、帰ろうと振り返った時だった。

「いつまでも、は無理だよね」

そんな悲しげな声が聞こえて振り返った。
扉が、閉まる音だけが響いた。




※注意
1.文章の修練に書き始めたので、時々書き方が変わる可能性があります。
2.更新速度がありえないほど遅いので注意。
3.感想は返信出来るか微妙です。目は、できるだけ通して行きたいと思います。
4.iPhoneからの投稿が多いと思います。


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