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No.35040の一覧
[0] 虚無を継ぐもの【別作品】[未禿](2012/09/09 20:32)
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[35040] 07
Name: 未禿◆9ec629f4 ID:254975be 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/30 20:25
 ショーン教授の思いがけない報告に、いったんはパニックに陥った科学者たちだったが、30分ほどの休憩で落ち着きを取り戻し、会議は継続される事になった。
 コールドウェルの一存で、マントについては更なる徹底した調査を行うと言うことにして、どうにか収拾をつけた。
 議長役の彼は、コーヒーをぐい! と飲み干すと言った。
「さて、今回の会議はルイズに関する情報を共有すると言う目的だけでなく、関係者一同の顔合わせの意味もあります。
 今日まだ発言されていない方も数名いらっしゃいますので、ご紹介もかねてご意見を頂きたいと思います」
 彼はちらちらとハントを見ながら喋っている。
 ハントは嫌な予感がしたが、とりあえず黙っていた。
「皆さんハント先生のことはご存知だと思います。トライマグニスコープは既に多くの成果を上げていますから、今さらご紹介するまでもありますまい。
 しかし先日、私はハント先生から興味深い情報を受け取りました。今日はそれを皆さんにご覧いただき、ご意見を賜りたいと思います」
 そしてコールドウェルは壁のスクリーンに例の手帳のカレンダーを映し出し、ハントに向かって「お願いします」と言ったのである。
 面食らったハントがちらりとガーランドに視線を移すと、彼女は嬉しそうにウインクを寄越した。
 図ったな?
 と思ったが、今さら逃げ出す訳にも行かない。ハントは立ち上がって説明を始めた。
「皆さん初めまして、トライマグニスコープの責任者のV・ハントです。
 私は今、手帳の分析を行っております。こちらは先日発見した、手帳の一部です。ご覧の通り何かの表のようです」
 スクリーンに投影された映像は、ローカルネットを通して会議の参加者の個人端末にも提供される。
 科学者たちはスクリーンを見たり自分の端末を見たりしつつ、ハントの声に耳を傾けている。
「何の表かはまだ不明ですが、一見して分かる特長として……」
 そこまで言ったところで、ハントの知らない誰かが驚きの声を上げた。
「印刷だ!」
「その通りです」
 ハントは頷いて言った。
「この表はルイズがあれこれ書き込んでいますが、元々は印刷された物です。つまりグーテンベルクより遥か以前に印刷技術が存在していた事になります」
 会議室は再びざわめきに包まれた。
 ハントがもたらした情報は、これだけでも超一級のスクープなのだが、ショーン教授の爆弾報告の後では大きなインパクトは無かった。
 ドン・マドスンという若い言語学者が尋ねた。
「これは何の表なんですか?」
「まだ不明です」
 ハントは短く答えたが、ガーランドが嬉しそうにこっちを見ているのに気付いて続けた。
「しかし、一つの仮説として、これがカレンダーではないかと考えています」
「カレンダーですか?」
 会議室内はまたしてもざわめきに包まれた。
「見たことも無いカレンダーだな」
「太陰暦ではないし、一年の長さから判断すると太陽暦でもない。本当にカレンダーなのか?」
「シュメール暦ともマヤ暦とも違う。カレンダーだとすれば、全く新しい物と考えるべきだろう」
 そこでダンチェッカーが発言を求めた。
「ハント先生、これがカレンダーであると証明できますか?」
「いいえ、証明は出来ません。あくまでも仮説です」―――そこでまたちらりとガーランドを見ると、彼女はこっそりVサインをハントに向けていた―――「しかし手帳にはカレンダーが付いているのが普通ですから、この表をカレンダーだと仮定するのは不自然ではないと思います」
 すると、先ほどの言語学者が声を上げた。
「いや、これが仮にカレンダーだとするとですよ? 年に相当する数字がどこかに印刷されている筈じゃありませんか。そう考えますと、この一番上の見出し部分のこの文字……」
 彼は急いで前に出てきて、スクリーンに映し出されたカレンダーのタイトル部分を示しながら続けた。
「……この4文字の単語がですね、ルイズの硬貨に刻まれている単語と一致しているんです」
 会議室はまたしてもざわめきに包まれた。
 マドスンはこの単語が硬貨の製造年だろうと推測しているのだ。
 彼はコンソールを操作して、スクリーン上のハントの表に重ねて、件の硬貨を映し出した。
「8枚の硬貨のうち、3枚に全く同じ文字が刻まれています。残りの4枚は末尾の1文字だけが違い、最後の1枚は末尾2文字が異なっています。
 これは、この4文字がルイズの国の年号を表していると考えれば辻褄が合います」
 会議室の喧騒はいっそう大きくなった。
「ルイズの時代に4桁の年号が使われていたって言うのか? そんな馬鹿な!」
「いや、最初の2文字ないし3文字が元号だと考えれば不自然ではないのでは?」
「これが必ず4文字と決めてかかるのは危険ですぞ。もしかしたら3文字以下や5文字以上も有り得るかもしれない」
「それを言うなら、これが年だと決めてかかる方が危険ではありませんか?」
 硬貨との一致によって、この表がカレンダーはである可能性は高まった。
 科学者たちの意見は混乱しつつも一定の方向に向かいつつあった。すなわちルイズの持っていた本と手帳を出来るだけ早く、詳細に分析すべきだ、という事だ。
 コールドウェルは手帳分析のための人員の補充と、スコープの作業環境の改善を約束し、この日の会議を終えた。
 だが、このカレンダーの分析は初っ端から大きく躓く事になる。


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