舞-乙HiME×舞-乙HiME(漫画)のクロスものです。「……本日、ヴィントブルームでは、ヴィントブルーム女王マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム様に、アルタイ大公アラシ・アルタイの会談が行われています。会談内容は、新しい同盟条約の締結にあるとされ、カルデア帝国との国境境界線上での軍事衝突での、戦力増強を図るためとされており、カルデア帝国のタクミ十三世は声明を発表し、今回の同盟条約を締結すれば、それは、ヴィントブルームと我が国のこれまでの関係を悪化させるもになるだろうと声明を発表しています。マシロ女王側からの声明はなく、今回の会議での内容自体では、再び、カルデアとアルタイとの軍事衝突が懸念されています……」ヴィントブルーム風華宮「……というわけで、以上が私からの条件内容だ。マシロ女王」 アラシ・アルタイ大公。 故ナギ・ダイ・アルタイ大公の双子であり、その容姿は、ナギに瓜二つである。彼女は、ナギ・ダイ・アルタイを愛し、彼の帝王学を同じように学びながら、一時期は、合法的にガルデローベ買収を行うほどの手腕を持っている。白髪に小顔の美しい容姿を持ち合わせたアラシは、ナギが行っていた軍事拡張路線を貫きながら、ヴィントブルームに協力を仰ぎ、背後を固めつつ、優先的に優れたオトメを手に入れようというアルタイ公国政府の意見もあった。そんなアラシ大公だが、『彼』はある秘密を持っていた。「あ、あの……アラシちゃん?この婚約っていうのは何かな?」「ん?マシロ女王は、婚約と言う意味を知らないのか?好きな者同士が、法律的に夫婦として結ばれることであり……」「いやいやいや、意味は知っているけど、その、なんていうか……こういうのは、愛し合う者同士が、行うものであって」 其の1 アラシ・アルタイは、ナギ・ダイ・アルタイの双子の女の子である。 白いコートを身に纏い、白髪の髪を靡かせるアラシは、少し顔を背けて小さく息を吐きながら、マシロを見つめる。「……お前が、なかなかに決めかねないから、先手を打たせてもらっただけだ」「で、でも、僕はまだ、そういったことはあまり考えていないと言うか……」「だいたい!!」 二人の間にあるテーブルに音を立てて、手を叩くアラシ。その勢いに、マシロは、イスに上から落ちそうになりながら、アラシを見る。アラシは、マシロを見ながら、改めてイスにと座る。「お前が、自分の気持ちをはっきりさせないから、こういったことになったんだ!」「うっ……」「私は漫画を見直したが、なんだ!?このオトメキラーは!何人ものオトメを虜にしておいて、本命を明かさず、オトメ同士を争わせる!こんなことをしているお前は、人気投票でもそれはまあ、最下位に近い、周りからは肉食獣と言われているんだぞ!!」「あっ、ううっ……い、言い返せない」「まったく」 腕を組みアラシは座りながら「いまだに、このバカな国民共は、お前の正体に気がついてはいないようだがな」「アハハ……」「だからこそ、バレる前に、私と結婚をするんだ!!」「ええ~~~!!!?だ、だから……そ、そういうのは愛し合っているものが」 縮こまりながらつぶやくマシロの目の前でコートを脱ぐアラシ。その突然の行動にマシロは、思わず、驚き目を見開く。アラシは、コートを脱ぎ捨てると、その白いワイシャツの奥に、黒いブラと、ワイシャツのボタンが外れているその隙間からは、まだ発展途中であろう、胸がかすかに見える。アラシは、そのままマシロにと近づき「お前は、私のことが好きではないのか?」「い、いや、そんなことない……よ、で、でも……」「もうそんな言葉は聞きたくない!力づくでも、今日はお前を持って帰る」「ぼ、僕はモノじゃないから!!」 手を前にだして横に振りながら、顔を真っ赤にしているマシロ。アラシは、立ち上がり、マシロの前にたったまま、マシロを見下ろし「……私は、お前のためなら如何なることでもするつもりだぞ。責めも受けも、縄も、触手も……お前のためなら」「うわああああああ!!!ああああ!!な、なにいってんの!?あ、アラシちゃん!!」 アラシの突然の言葉に、大声を上げるマシロ。 そんな声に、扉を開けて現れるものたち。それは、ガルデローベ学園の1年生であるコーラルオトメであるにして、マシロのオトメである『蒼天の青玉』アリカ・ユメミヤ、『黒焔の金緑石』ニナ・ウォン、『綵雲の薔薇輝石』エルスティン・ホー。の三人である。三人は、扉を開けて、マシロに迫るアラシを睨みつける。「だめ~~~!!マシロちゃんはみんなのものなんだから!」「そうです!それに、アラシ大公は、今日は会議と言うお話だったのに、これはどういうことですか!?」「そうです~~みんな、ここは仲良くしなくちゃいけないんです!」 アラシは、その三人の登場に、振り返った。「いつもなら、此処で黙ってしまう私だが、今日は違うぞ!まず、アリカ・ユメミヤ、お前は以前から成績不振という話だ。このまま落第すれば、オトメになど到底なれない。勿論、マシロ女王のオトメにも!」「え~~~~~!!!そ、そんなぁ~~」「次、エルスティン・ホー!お前は以前から街を騒がせている仮面のS女王の疑いがかけられている!この後、ヴィントブルーム警察に行き、ハルカ・アーミテージ警部補の厳しい、尋問に耐えることだ」「な、なんでぇ~~~~~~!!!」「最後、ニナ・ウォン」 アラシの言葉に頭を抱え、騒いでいるアリカとエルスたちを横目で見ながらニナは、アラシに対してにらみ返す。「私は、成績優秀、校内・校外でも普通の生活をしているわ!誰かに何かを言われることはない」「ああ、お前は優秀だ。だからこそ、此処で改めて……ニナ・ウォン。君を私のマイスターオトメとしよう」「!?」 アラシの言葉に、ニナは、言葉を失う。アラシは、笑みを浮かべてニナにと近づく。「拒否はできないだろう。お前は元々、私の兄上がスラム街からわざわざ拾ってきたんだ。そんな兄上や、その国を見捨てることはお前にはできないだろう?」「……」 何も言えなくなったニナを見てアラシは、振り返る。「さあ!邪魔ものはいなくなった。改めて、マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム。私と結婚を……」「ダメだ!!」 マシロはその部屋いっぱいに響き渡る大きな声で、告げる。その言葉に呆然とするアラシ。そして騒いでいたアリカ、エルス、沈黙していたニナが、マシロを見る。「アラシちゃん、君のやり方はずるいよ。僕は、みんなを愛している……誰かを蹴落として、手に入れるのは、よくない……」「マシロちゃん……」「女王様……」「マシロ女王……」 マシロの言葉に、アリカ、エルス、ニナが、声を漏らす。アラシは拳を握りしめ、震わせながら顔を上げる。「もういい……このバカマシロっ!!!お前と付き合えないなら死んでやる!」 そう叫んで、アラシは、部屋を走って出ていく。出て行ったアラシを4人はしばらく見つめていたが、そこで、アラシの言葉の意味を理解し、ようやく状況がつかめてくる。一国の王が、部屋から飛び出してしまったこと、なにかあれば、軍事大国アルタイとの戦争になる。「わ、わあ!!あ、アラシちゃん!!?」 慌てて追いかけるマシロ、そして追いかけるアリカ、ニナ、エルスの三人。広い城内を、4人は必死になってアラシを捜し始めた。アリカは、壺の中や、絵画の裏を調べながら、エルスは、胸が邪魔になり、花瓶などを倒してしまい、ずぶ濡れになりながら、ニナは、通りすがる警備兵たちを協力を仰ぎながら、アラシを捜索する。マシロは、走りまわりながら、一つ一つの部屋を開けていく。「どこにいったんだ!アラシちゃん!」 マシロはこの広い城内の部屋をひとつひとつ捜しながら、荒い息を吐く。そんな中、一つの扉をあけると、そこにはベランダがある部屋で、ベランダにと繋がる扉が開かれ、白いレースのカーテンが風に舞う中、アラシがベランダの手摺をつかんでいる姿がマシロの視界にと映る。「あ、アラシちゃん!!」 マシロは一気に部屋の中を駆けだして、ベランダの手摺をつかんでいるアラシの片手を捕まえると、自分の方にと抱き寄せる。アラシはその突然のことに、目をパチパチさせながら、マシロの顔を見上げる。マシロは、額の汗をぬぐいながら、アラシを見る。頬を赤く染めたアラシを見て、マシロは、自分が今なにをしているのかをわかってしまい、慌てて離れようとするが、その手をつかむアラシ。「どうせ、誰も見てはいない……、ここで子供を作ると言うのも悪くはないな」「どうしてそうなるのっ!?わっ!!」 アラシが体重をかけたため、足を滑らせたマシロは、アラシを抱きしめたまま、部屋にあった本棚にとぶつかる。すると、そのまま本棚はひっくりかえり、二人は明るい部屋から闇の中にと吸い込まれてしまった。「「きゃあああああ!!!!」」 アラシとマシロが悲鳴を上げて、その隠し通路の中を滑り落ちていく中、その部屋にと足を踏み入れるニナ。「さっき、マシロ様とアラシ様の声が聞こえた気がしたのだけれど?」 ヴィントブルーム 風華宮地下「……此処は、以前」「ええ、コスモビューティー(自称・宇宙をまたにかける女泥棒)に追われたときに通った地下通路だと思うんだけど、こんな道、通ったことないな」 瓦礫の多い道、それはまるでそこで戦争でもあったような、武器などが柱に突き刺さっているような、そんな場所となっていた。マシロは、率先して前にと出て、周りを見渡す。そんなマシロの腕にアラシは腕を巻きつけながら、縋るようにして、同じように歩いていく。周りは暗く、漏れてくる人工の切れかかった電灯だけを頼りにして先にと進む。すると、急に開けた道が大きなホールにとマシロたちは突きあたった。そこは1階から3階くらいまでを吹き抜けにした大きな場所となっており、その中央には、巨大な建築物がそこにはおかれていた。「行ってみよう」「うむ」 マシロの言葉に頷いたアラシ。 二人は、そのまま階段を下りて、その巨大な建築物の前にと吸い寄せられるように歩いていく。それはまるで心臓のような形をしている。マシロは、それが何かよく見ようと、足を踏み出した。すると、その巨大なものは、急に光を灯し、動き出す。機動音とともに、その巨大な物体は、ゆっくりとその姿を変えていく。そして、まるで扉のようなものが開かれると、そこにはオルガンが現れた。「これは一体」「見た目はただのオルガンのようだが……なんだか、禍々しいものだな」『これに触るもの、紡ぎ手、守り手、歌い手が必要だ』 急に聞こえてくるその声。 マシロと、アラシは周りを見渡す。だが、周りには誰もいない。「マシロ、あれは?」 それはオルガンに浮かび上がる黒い影。いつの間にか現れたそれは、マシロとアラシを見る。「これはなんだ?」『……紡ぎ手のようだが、守り手はいないのか?』 マシロの問いかけには答えようとせず、ただマシロのことを紡ぎ手と称す、黒い影。アラシは苛立ちながら、マシロの前にと立って「貴様!無礼であろう!私はアルタイ大公、ナギ・アルタイ!こっちはヴィントブルーム女王、マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームだぞ!」『守り手と歌い手がいなければ、このハルモニウム、動かすことはできない』「ハルモニウム?」 マシロは、その聞き覚えのない言葉に首をかしげる。「マシロちゃ~~~ん!!!」 次に飛び込んできたのは聞きなれた声だ。特徴的な、縛り方をした髪を靡かせて走ってくる、アリカ。彼女は、城の装飾品をあちこち触っていると、変なスイッチを押してしまい、この風華宮の裏側にとやってきたのだった。アリカは、マシロとアラシの元までかけより、アラシを見る。「アラシちゃんもマシロちゃんのことが好きなのはわかるけど、一人占めはよくないよ!」「ふん、お前たちはわからないのか?マシロ女王はいつか誰かを妃にしなくてはいけない。そのときなれるのはたった一人なんだぞ?いつまでそんなくだらない条約を続ける必要がある」「そ、それは……」 アラシに強く言われると声が出なくなってしまうアリカ。そんなアリカが、ハルモニウムにと足を踏み入れると、ハルモニウムが強く輝きだす。『守り手が現れたか……ならば、如何程のものか確かめてやろう』 そういうと影が、その手に剣を持ち、アリカに向かって襲い掛る。アリカは、咄嗟に避ける。影は、ハルモニウムの傍から離れると、その手に巨大な刀を握り、目を金色にと輝かせる。アリカは、身構えながら、相手の禍々しい力を感じ取る。「アリカちゃん……」「うん、お願い……」「……アリカ・ユメミヤ、蒼き石をもつ、我がオトメよ。汝の力を解放する」マシロは、そういってアリカの耳たぶについているGEMにと口づけする。するとGEMが反応、アリカの体を輝かせる。アリカは、目を開き、その視界に影を捉えた。「マテリアライズ!!」 その姿を光にと包み、アリカは、コーラルの制服から、マイスターローブにと姿を変える。蒼く輝く彼女の体。両端を刃にしたエレメントを握りながら、それを宙で、まるで自分の体のように自由に振り回しながら、それを影にと向ける。影が、笑みを浮かべると、アリカ目掛け接近する。その握っている剣を、振り回す。アリカはエレメントで、その剣を防ぎながら、力を強めエレメントでその影を押していく。『弱いな』「!?」 目を金色に輝かせた影は、さらに力を入れて、アリカを吹き飛ばす。アリカは、そのまま、壁に吹き飛ばされてしまった。「アリカちゃん!!」「ちっ、なにをしているんだ!?あいつは!」「はあ!!!」 壁から一気に、影に向かって、速度を上げるアリカ。その瞬間的にあげた速度は、マシロ、アラシの目に留まらなかった。いつの間にか、吹き飛ばされて空いた穴から、影の元まで突然現れたかのようだ。『早いっ!?』「私は、強くならなくちゃいけないんだ!マシロちゃんや……」 アリカは、エレメントを振り、一極端に責めるのではなく、左右、そして時には、膝を影にと叩きこみながら、敵の前面すべてに攻撃を叩き込む。「ニナちゃんや、エルスちゃん……、アラシちゃんや、ガルデローベのみんなのためにも!!」 アリカのGEMが、光にと包まれていく。それは、アリカのローブも輝きだし、まるで彼女の体が燃えるように赤く光輝いた。「だから!だからっ!!こんなところで、私は、負けられないんだっ!!!」 影は、アリカから距離を取ると、その巨大な剣を床にと突き刺す。『ミロクっ!!』 すると、影の足元から、巨大な剣が、幾本も床から突きでるように現れる。アリカは、その攻撃を見ながらも一歩も引かない。彼女の体は炎の光に包まれながら、その床から突きでる巨大な刃にと貫かれた。「あ、あいつ!」「大丈夫」 驚きを見せるアラシが隣を見るとマシロは気丈な表情で、アリカを見ていた。「アリカちゃんの想いは簡単に砕けない」 光が収束し、アリカのローブは深紅に染まる。それがアリカの真のローブ姿。背中にある翼がアリカの早い動きをさらにはやくしてくれる。そして、彼女の強い想いをこのローブは体現してくれる。アリカは、エレメントを握り、影を見た。『こいつ……』「!」 影は見えなかった。 突然消えた彼女を見つけ出したのは、アリカの声が後ろから聞こえたからである。「純真紅の血十字(クリムゾン・ブラッドクロス)」『見事だ。こちらの世界のお前は優秀なようだ。ならば使いこなせて見せろ。この世界を繋ぐ力を』 影はそれだけ告げると、光となって消えた。 アリカは小さく息を吐くと、ローブ姿から元にと戻る。駆けよるマシロ。「大丈夫だった?アリカちゃん?」「うん!大丈夫!それにしても……これなんだろう?」 アリカは、マシロの後ろにあるその巨大なオルガンを目にしながら、告げる。「ん~~、危なそうだから近づかない方がいいと思うんだけれど」 そういうマシロを余所に、アラシがオルガンを見つめながら、軽く鍵盤を押す。するとオルガン全体が輝き押した音が、反響をしながら、その場所に響かせる。それは巨大な力を持っていることを示していた。アリカは、そんなオルガンを見ながらゆっくりと足を進めて、オルガンの前の椅子にと座った。そのアリカの表情は、生気がなく、まるで人形のようで。「あ、アリカちゃん!?ちょっと!!」「いいじゃないか、マシロ女王。面白そうだ。どういった音を奏でるか、興味がある」「アラシちゃんも!これがどんなものかまだわから……」 ヴィントブルームから赤黒く輝く柱。 それはオルガンの音色とともにエアル中から垣間見えたという。「一体なにがあったんだ!?」 エルスにと連れてこられたのは、ガルデローベ学園長ナツキ・クルーガ、そして彼女の補佐であるシズル・ヴィオーラである。彼女たちは、先にやってきていたニナ・ウォンを見る。だが、ナツキはそれよりも、そのニナが見ているものを見て絶句する。それは、空間に罅が入り開けられた巨大な穴。その穴の向こうは光にと包まれている。「ニナ!?一体なにがあった!」 振り返ったニナは、身体を震わせながら「マシロ女王とアリカ、アラシ大公が……この中に」 その言葉を聞き、ナツキもまた言葉を失った。 ハルモニウムによって開かれた巨大な時空の穴。 その先にあるものは……。舞-乙HiME 乙wei第1話 時空を越えて~ハルモニウムの鼓動~