ランサーが戻ってきた。冬木市に。
衛宮邸を外から眺めている。
「そのおかずはわたしのなのにー」
藤ねえと桜。仲裁する士郎。
相変わらずの日常。平和な景色。
「変わってないな」
ランサーはここに来る前の場所はひどいものだった。
それから比べるとここはまだ、日常があった。
しかし全体的に幼くなっているように見える。
子供っぽくなったというか。
冬木の街を巡回してみる、相変わらず変わっていない。
夜になっていた。満月。そして黒い影が突然現れやってくる。
槍を瞬時にその来たものに投げる。それは地面に倒れ、動かなくなった。
よく見ると人とも動物ともとれないなにか。これは…。
遠くで声がする。瞬時に高速移動して現場に近づいてみると。
「そんな非力で討ち取るつもりとは馬鹿じゃないの」
巨大な男が前進する。その後ろに少女。バーサーカーとイリヤだ。
相手は、スーツの女と、妙な剣をつかう男。
押し捲るバーサーカー。ついに壁際に追い詰められる男女。
「不意打ちにしてはお粗末ね。もう十分楽しんだし、あとは殺っちゃって、バーサーカー」
「フラガラック」
黒い球ができたと思うとバーサーカーの胸に穴が開く。しかしたいしたダメージがないようだ。
「はははっ、11の命のある英霊にそんな攻撃は」
急にイリヤの体に拳が打ち込まれた。スーツの女がいつのまにかイリヤの後ろにいた。血を吐いて地べたに這うイリヤ。
「なぜ…」
「圧倒的な勝利の確信。それが隙を生んだ。力は上回っていても精神が未熟」
「あばよ、自称最強コンビさんよ」と男。
急速にバーサーカーは活力を失っていく。マスターがいない英霊の宿命。
「おい、お前パゼットだろ」
ランサーがはじめて声をかける。まぎれもなくパゼットだ。
「ランサー…、お前は関係ない」
そっけなく去ろうとする。
「待てよ。聖杯戦争は終わったんだろ。なぜ今頃」
「説明するつもりはない。全員のマスターとサーバントを絶対倒す。お前が邪魔するならランサー、お前も倒す」
「邪魔すんなよ」
二人は立ち去っていった。まるで二人だけ戦争状態といった気配。
「どうもおかしい。この冬木市は」
ランサーは郊外の木に寄りかかって考えていた。
そこに多くの光、あれは、目。そして先頭には女。
「ランサー、伝えたいことがあってきました」
「君は」
「私はカレン、獣を管理するもの」
独特の修道服をきた女がそこにいた。
「パゼットの変わりようについて考えていたでしょう」
「それもある。しかし冬木市全体が何か違う。出戻りの俺だからこう感じるだけかもしれないが」
「パゼットは、ループを終わらせるためには、全員のマスター、サーバントを倒すしかないとわかったのです。運命が味方をしています。誰も止められません」
「なぜだ」
「時が来たからです。パゼットが凍結されていたのは理由があります。終わりの日が近いからです。この前の日食。あれが合図です。もう道はわかれたのです」
「終わりの日?」
「あなたが討ち取った物。それは私の後ろにいるこの獣たちに似ていたでしょう」
「たしかに。しかしそれは」
「このものたちは元人間です」
「人間…」
「人から獣化した、とでも言えましょうか。この人から獣化したものをわたしは、時が来るまで管理しているのです。そしてその開放は近い」
「本当か」
「信じるかどうかは自由です。日食から半年でその結果がでます。もう後戻りできないのです」
「あなたにしてもらいたいのははぐれた獣を狩ってほしいということです」
それだけ言うとカレンは大勢の獣を連れて去っていった。
冬木に大きな変化が起ころうとしている。
行く先で大変なことが起こる運命なのだろうとランサーは思うのであった。
※ここでのランサーは英霊のふりをしている人間という設定です。