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No.34664の一覧
[0] …チューニングヲ開始シマス…[3254](2012/08/17 14:32)
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[34664] …チューニングヲ開始シマス…
Name: 3254◆cd33e9c0 ID:ce689015
Date: 2012/08/17 14:32
朝、目を覚ましたら横に俺が居た。
はっとしたが、すぐにこれは夢だと気づいた。
それはなぜか。
一つに自分自身を視覚的に認識できるということ、一つに前にも同じようなことがあったこと。このことからこれは夢だと判断した。
確か、明晰夢っていうやつだよなと思い出した頃、俺ではない俺が目を覚ました。
「おはよう、○○さん」
は?そう思った時、俺は俺という意識が消えた。
「おはよう、涼介」


いつからか俺の部屋に居るミヤさん。動揺しつつも、冷静に挨拶をこなす。
「あ、そっか、俺、昨日そのまま寝ちゃったのか。」
昨日は衝撃という言葉にぴったりとはまる一日だったといえる。まるで映画かと思えた。
「大丈夫だよ。今日は早速あなたに”ミッション”に参加してもらう予定なんだけどいいよね。」
ミヤさんはにっこりと笑った。可愛いし、綺麗だな。
そう思った時だった。
ミヤさんって誰だ。自分の意味がわからない問に意味がわからなくなった。
そう考え込んでいる間に、意識がなくなっていた。
そのような出来事が5000回程続いた、らしい。
これは意図的に行われたものだという。
俺の睡眠時間と引換に、時空の変化に対する耐性を得た。
意識が朦朧としているが、自分が置かれている状況をある程度把握した。
つまり、あと2週間後に世界が滅びる。そのタイムリミットを知るものは俺しかいない。滅亡は不可避である。
俺のミッションとは、ある人に”お葬式には出席しますか?”と伝えて欲しいということだけだ。
なぜ俺なのか、は教えてくれなかった。
「じゃあ、よろしくね。」
……
「ここはどこだろう」
無意識に俺は俺の中の疑問をいつもの呼吸のように、無意識に呟いていた。
街並みはヨーロッパ調で、洒落た景観が広がっている。
ふと、誰かが身を隠すように暗闇に潜んでいるのを発見した。時計を見ると時刻は22時40分。
”ミッション”によれば目の前にいる人物に一言声をかけるだけでいいという。感じたことのない雰囲気は、あまり居心地のいいものではなかった。
早く終わらせて帰りたい。よし。
「XXXXXXXXXXXX?」
「XXX?」
相手がいきなり拳銃を両手で構え、鼓膜を裂くような強烈な音を5回発した。胸、背中、腕に激痛が走る。声が出ない。意味がわからない。
むしろ俺は、最近は意味がわからないことが多いということを考えていた。
近くに人影が見えたため、撃たれたことを伝える。だが、声は出ていない。
そこへリムジンが到着した。そこで意識はなくなった。
……
今日は高校の入学式だ。バスに乗り込み、席に着く。
一つ駅が過ぎると同じクラスである、早坂舞が乗ってきた。
「涼介ーおはようー」
「おはよう」
軽い挨拶をいつものようにこなす。
……いつものようにとはどういうことだろう。
初めて会ったクラスメイト、なぜクラスメイトであることを知っているのかも理解できないが、それよりも既視感が急に頭の、まるで脳内を侵食しているかのように広がる。
「お、お、お、お、おまえはだれ」
周りからの視線が凄まじい。
「えっ……わ、わ、わ、わたしはだれ?」
早坂も戸惑いながら、俺に聞き返した。
すると、周りからの視線が逸らされた。
ただふざけているだけに見えたようだ。
小声で早坂が耳打ちする。
「ちょっと、いきなりやめてよね。あなたには訓練をつけたはずなんだけど、足りなかったみたい。それとも、最初の”ミッション”が重すぎたかな。」
”ミッション”その言葉を聞いた途端に空間がある一点から広がっていった。
色がないというより、認識できない広い空間である。
記憶が吹き溜まりから流れでてきたと思うと、激流にソレは変わる。
ああ、思い出した、これはミッションなのだ。
「撃たれたのは初めてだよね。ごめんね、言ったらあなたはやってくれないと思って、でもあなたがやってくれないと、もう後がないの。」
「いったいどういうことなんだよ。説明は全部曖昧だし、第一、殺されるなんて聞いてない!」
俺はいきり立っていた。当然だ、ミヤとはつい昨日、知り合ったばかりだ。そんなやつに俺の人生が、精神が侵されていたことに対して怒っている。
……
ミヤとの出会いは、この世を疑うほどであった。
よく、動物が喋り出すということを聞くだろう。もちろんそれは小説やドラマでだが。
ある朝、この朝はかなり時間に余裕があった。目覚めも良くて、目玉焼きもキレイにできた。朝の占いも一位であった。
今日は良いことが起こりそうだと家を出た矢先、灰色の猫が俺を待っていたかのように佇んでいた。
小さい時、猫にひっかかれた思い出から今まで猫を避け続けているというのに。
今日は良い日ではなかったのか。
「あなたが涼介?今お時間いいかにゃ?」
周りを見渡すが、人一人いない。猫一匹居る。”にゃ”というのはきっと……
「すまんな、今更ファンタジーとかいいんだ」
関わりたくない半分、怖さ半分で俺はその場から逃げ出した。
会社に到着し、コーヒーを飲みながら皆の出社を待つ。非常に今日は優雅である。
そのあとは、いつもどおり営業に出かけ、山田いい加減仕事をしろよと部長からの叱咤のシャワーを浴びながら出発し、いつもどおり業務を終了する。
帰宅する際はノルマ表を手土産に部長から渡される。なんでも先月と代わり映えしないなあ、来月もこの調子だとすまんけど、手に負えなくなるからな、頑張れよとのことらしい。
家の前に到着すると、そんなことはどうでもよくなっていた。まだ、あの猫が居たのだ。可愛い顔でこちらを眺めている。帰ろう。あ、帰る所ここじゃん。
「おかえりー」
思考が停止している頭の中に、可愛らしい声が侵入してきた。不法侵入である。
「いや、侵入とかないから。ちょっと家の中で話そうよ、いやん、えっち。」
意識がない、つまり無意識のうちに猫と一緒に家の中へ入っていった。
「いきなり驚かせてごめんなさい。私は……わかりやすく言えば宇宙を観測している所の職員かな。下っ端のね。」
猫は目を細めて笑っているように思えた。あくまで、思えた。
「それでね、そんな私が何をしに来たかって言うと、もうすぐこの惑星は消滅するの。
私達と協定関係にあるこの惑星が消滅するのは見過ごすことができないし、させたくない。そのために職員が何人かこの惑星、”チキュウ”に派遣されています。」
次の瞬間、灰色猫は裸体を晒す女性に変化していた。これはもう色々ダメだ。
「私はそのひとり。だけど私にはあまり力がない。そこであなたに手伝ってもらおうと思って、やってくれる?」
「ア、ハイ」
情けない返事をしたそうだが、もう意識がない。
……
初めての任務が殺されることだとは、いや、生きているのだが、いい気分がする訳がない。
こんなこと、初めからやりたくないという旨を伝えたいのだが、なぜか言葉にすると、それはどんなクラスになるのか楽しみだ、友だちができるだろうか、など特に意味の持たない言葉に変換されている。
全く意味がわからない。
「もういい、わかった、終わらせよう。」
叫びたい衝動を抑えながら、呟いた途端、バスは目的地のバス停に到着した頃であった。
7月、夏休みに入る前に初めての定期試験がある。
既に一度高校生をやり終わっているのだ、簡単に点数は取れる。
……はずであったが、ミヤに言わせれば、できる限り跡を辿らないやり直しは意味を持たない、下手をするとやり直しらしい。
そんなものは知らんと、真面目にやったのだが、記憶違いだろうか、生前と変わらない点数にがっくりと肩を落とす。
夏休みに入る前にもう一つ、大きなイベントがある。学校祭である。
ここが今回の大事なポイントの一つらしい。
「あなたは買い出しに行った時、ガムを買いにいったの、その時○○にガムを渡して。いい?」
……
「あれ、このガム誰の?私グレープ味大好きなんだ!」
三好は宝物を見つけたかのような、無邪気な笑顔をこちらに向ける。
「あ、良かったら食べる?」
言われた通りに三好にガムを渡した。
学祭準備期間の下校時刻を回った頃、三好に呼び出され、告白された。
そこで意識は遠のく。
……
たまに、俺は二重人格ではないかと思う時がある。
記憶が二つ。
自分自身と、あたかももう一人の自分が居て、実際に体験してきたかのような記憶がもう一つ。それと、妙に猫を見ると胸がきゅんとする。猫可愛いなあ、猫!
……チューニングガ完了シマシタ……
「ミヤ、これで良かったのか?」
「はい、涼介さんはこれで幸せになれます。」
「そっか。まぁ、記憶改竄は重罪だけど、いっか。5分後には誰一人残らず滅亡するからな。」


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