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No.34631の一覧
[0] リリカルなのは 恋愛比翼 AS編開始 (オリ主転生TS物) チラ裏から[みさりつ](2012/08/21 03:30)
[1] 2話[みさりつ](2012/08/21 02:38)
[2] 閑話とIFエンド【12禁】[みさりつ](2012/08/17 00:29)
[3] 閑話2 [みさりつ](2012/08/21 02:39)
[4] 閑話3 デバイスの設定[みさりつ](2012/08/19 05:28)
[5] 3話 クリス編追加 グロ表現あり。[みさりつ](2012/08/21 02:58)
[6] 閑話4[みさりつ](2012/10/10 20:13)
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[34631] リリカルなのは 恋愛比翼 AS編開始 (オリ主転生TS物) チラ裏から
Name: みさりつ◆45f3eed0 ID:a9391c8c 次を表示する
Date: 2012/08/21 03:30
リリカルなのは 短編 転生モノから題名を変えてきました。









自転車は危険である。




俺は白い、白い、視覚的に云うなれば、夏場の北海道釧路のごとくの濃霧の中を歩いていた。
霧フェスティバル状態である。



右手には自分以外の温度が感じられる。



がっちりとした恋人繋ぎで俺は友人と手を繋いでいる。

誤解はしないでほしい。
こうでもしないと目の前の道が、噂に聞く富士の樹海(夜中)並みに怖いのである。
しかし、恋人つなぎなど、生まれて初めてなのであるが。

つながれた手が温い、と俺は思う。
今この瞬間手を離せば、背中にタオルを入れ、汗をかいたときに抜き取ったような爽快感が得られるだろう。

それでもなお、俺は手を離せずにいた。

この手を離したら僕の魂まで伝々な気分である。
最近HD版買ったのに、と憂鬱な気分になる。

そっちよりもワンダっぽい気がする、この霧の世界は。
巨人を倒すたびの切なさと今の心細さはよく似ているだろう。







「俺たち二人は自転車にお互い傘を車輪に突っ込みあっていたらお互いこけて函館市八幡坂から下り落ちて死んだはずだ。
錐揉み反転してお互い後頭部から逝った。
どっちだったんだ?思いついたのは。最初に下に着いたら焼肉おごるとか、あんな変則的な漢気ジャンケンは」


お互い熱中しすぎて妨害行為に発展してしまった。
自転車で50キロぐらい出してしまいそこでの事故だ、


「え、二位がおごるんじゃなかったの?」

「ノリの良い高校生には悪いことをしたな、ホーマックで1万円くらいで売ってそうな自転車だとしても俺たちが借りて事故って死んだとすると大変悪いことをした」


自転車で下ったら楽しそうな坂道なので、ふたりして遊んだらこの様である。

「ああ、退学……にはならんよね?」

「大丈夫だろう、間抜けな北海道旅行中の観光客がテンション上げすぎて死んだだけだし」


「……まだ自分たち死んでないかもよ、緊急病院の中かも」

「いや死んだ」

「なぜ。」

「お前は死んだ」

「何故!?」

「落下後、お前の頭が先に割れたスイカのごとく、中身撒き散らし始めていた」

走馬灯?だろうか、そういうスロー再生で友人の頭が粉砕されたのを俺は目撃していた。

「………焼肉は自分がおごるのか、小樽のタレを最後にスープにして飲む焼肉」

「現実逃避はやめようか」


「現実なのか、此処は」

「わからない、歩いて歩いて、大体2時間ぐらいたったが、未だに何処にもたどり着けない」

「彷徨っている?」

「そうかもしれない、あの付近は神社、教会、寺が近い場所にあった………という理由でさまよっているのかもしれない」

誰が担当するか揉めているのかもしれない。


「北海道最古の神社とかあったしね」

「シスターがクラウンでスピードバンバンぶっ飛ばしているのにはびっくりした、トラピストバタークッキー美味しかったな」



「シスターさんが作っているクッキー、うまかった」

「勘違いしていないか?」

「ん?」

「シスターさんが作るのはトラピスチヌだ、トラピストは神父さんだ、俺たちが食べたのは神父さんの方」

「……どうでもいいわ」

確かにつまらない話題だったな。


しかし、ここまでお互い冷静だと、死んでいるような気がするのは気のせいではないのだろう。

すごい、どうでもいいのだ。


車のローンとか。
300万まで意味もなく貯めた貯金とか。


将来のためと月々給料の半分は突っ込んだ貯金が、無駄になっているというのに。

多分残った実家の家族が仲良くわけあっているだろう。


ちなみに独身だ俺は。

どうでもいいな。





しばらく俺たちは無言で歩いていた。


無言にも飽きたので、いい加減もう一度口を開いてみた。

「俺の実家は神道なのでな、多分この歩いている霧っぽい世界は黄泉だろう」

「そう、なのか?」

友人は霧をふらふらと見回すと、なんだかほっとしている。


その気持ちはわかる。




神道の家の俺にとって、黄泉とはそうそう怖いものではなかった。
生者は後ろを振り向けば駄目系だが、もう死んでいる人間にとっては意味をなさない。
逃走型神話の地獄というのは結構緩いものだ。



「自分は仏教だから……六道輪廻マジこわいから、お前の宗派の方でよかったな、まだわからないけど」



なるほど、こいつの宗派では俺たち二人はくだらない争い?で死んだから永劫戦い続ける修羅界に行かなければならないのか。
また自転車で永遠に傘を車輪に入れ合う必要があるのか?

それとも食べ物で争ったから餓鬼道か?

うむ

黄泉がいいな。


ん?

黄泉比良坂は下り?上り?どっちだ。

まぁいい。



「そっちは人生修行だからな、こっちは死ねば神様だから黄泉の国の方が良いな、でも、俺はどちらかといえばお化けにテストもない方がよかった」

まずは友人に感想を述べる。


「水木しげる好きだもんなーお前。自分は水樹奈々が好きだ」


水樹奈々?

よく知らない、が、友人がよくカラオケでよく歌っているから、イノセントスターターぐらいなら歌えるようになった。


「俺はミズキングの方が好きだ」

紅白に出てくれればテンションも上がりそうなのだが。



「で?どうなのよ実際」

「まぁ」




取り敢えず、二人共死にました。



多分確実に。


「お前は」

「一緒に死んでくれ、心細いから」


がっちりと手が結ばれる。

痛いな、と俺は思った。

「今この手を離せば、俺は生き返るかもな、自分の頭が潰れるの見てないし」

こいつに引っ張られていいる可能性も否めないのだ。

すまん友人よ、やはり命は大切なのだ。

さらばだ。

「離すな」

くそ、恋人つなぎとはこんなにも離しづらいのか。

「そもそもなんで俺はお前と二人で北海道旅行に行ったのか…」

「お互い暇だったから」

「そうだったか」


俺は疑問を抱くと友人が残念そうに

「離してもいいよ」


と言うが。


そもそもの話。

「いや………そもそも27にもなってたった一人の友人とたった二人であんなにテンション上げて事故ったのか?それがわからない」

何故二人きりであんなにはしゃいだのか。


「自分は恋人のつもりだったのだけどね」



は?






「そういえば、お前女だったか、友達過ぎて忘れていた」

右腕に寄り添うCというサイズの中途半端な胸の感触に今更思い出した。





生まれてこの方27年間小中高大社と同じ場所で生きていた友人だったので、忘れていた。
友情の絆の方が世の中強いのだ、多分。


「婚前旅行じゃなかったのかよ」

死ぬ直前まで周りがカップル多かったといえ、影響されないで欲しい。

こいつと世界三大夜景を見に行ったのは失敗だったか。
一緒に映画見に行っても、恋愛系ばっかりだしな、この友人は。


第一、俺らが勤めていた会社は社内恋愛禁止だろうに。



「暇を理由にする婚前旅行もないだろう、それに、一人称が自分とか言ってしまうタイプは苦手なんだ、自分がなさすぎて、あと口調が乱雑である」

長年、友人づきあいが長いせいか、友人は俺と同じ言葉遣いを好む。
流石に外ではそれなりにまともな口調だが。

「深いこと言ってるつもりだろうけど、一人称を自分の名前で呼ぶタイプじゃないと自分なんてないんじゃないか?」

27超えて社会出てて、そういう奴は多分いない。筈。

「どうでもいいが自転車を借りたとき高校生のちょっと暗い方に「リア充死ね」と言われたからそれが原因かもしれない」

「おい、どうでもいいけどその高校生に罪悪感残るだろうが」

「どうでもいいけ早くリアルに帰りたいな」

「話きけ」

「なんだ」

「結局、このまま生きていたら、自分たちは結婚してたのかな?」

友人は疑問を上げる。

「ありうるな」

取り敢えず可能性が高い方を肯定する。


「そうか、それがわかれば何も怖くないな」

友人、いや彼女は微笑んだ。



「そうかよかったな」



ああ、そうか。


旅行中、本当に笑わなかったのはこういうことか。
なんだかヤキモキしていてこいつが楽しそうじゃないので俺も楽しくなかったのだ。


こいつは楽しそうに笑った。


なんだか、俺も楽しくなってきた。


うん


俺は片手を伸ばし、人差し指を前に向け。

「お互いやっと未練はないようだな、さ、おいきなさい」

こいつの未練と俺の未練が合わさって












「は?突然スカイハイのモノマネとか意味わからんぞ」

彼女が変な顔して俺を見つめる。

しばしの沈黙が生まれる。

「相変わらず変な奴……」

とぼそりと言われるが。


「彷徨って……いたわけではないようだ」

なるほど。

では





「ちょっ」

俺は黙って、友人、いや恋人の片方の手で頭を持ち上げる。
お互い身長170なので、持ち上げるというよりも引き上げるといえば正しいだろう。
彼女は身長の割に俺よりも小柄な顔つきで、唇も中々小さい。

だがまぁ、といってもこれだけ距離が近ければ、外さない。

「ん、今更ながら、ファーストキスだな」

俺は口元を寄せ、軽く彼女の唇を啄んだ。
口元に水気を感じた。

瑞々しい果実のむき身に口を当てたような感触だった。


「意味わからん!?」

彼女は叫んだ。
若干嬉しそうにしているので、しても悪くなかったのだろう。

お互いこの年で処女童貞なのでこれぐらいにしておこう。

俺もこいつも性については蛋白だからな。
どうせ一緒だからという理由でルームシュアしていたので、お互いの性生活についてはよく知っている。
最近あんまり自慰もしてないしな。


お互い、冷静になったところでまた前を歩くことにしようと決めた。


「さて、どうするかな」

27年で初キスなので、次に進むのはいつだろう。

それまでは

「まぁ、歩くか」

「この先は多分ヴァージンロードじゃないけどな」

「歩きたいのか」

「次回に期待」

「ああ、お前も300万貯めていたからな、二人で600万の結婚式できるぞ」

「友人一人も呼べないな」


「いないからな」


「ずっと一緒だけど、やっぱりお前は変だよね、君」

「そうかな、 ちゃん」

お互い、傍から見ててずっと一緒だったゆえに、友達が出来なかったのだ。

曰く、暑すぎて近寄れないとか。


最後にお互い俺たちは笑いあった。


そして霧は深く、深く、深く俺たちを包んでいった。










一話。レズになるのかホモになるのかどっちだろう、未来よ。



あまりにもな夢を見ていた。
昔過ぎて望洋としていた夢だ。


「すまんな、次回と言っていたが、今俺は女だ」

お前とは結婚出来ないな、と俺は思った。
同性結婚は日本の法律ではできないのだ。

自分は水色模様の布団から起き上がり、眼をさまして、両眼をこすると、今は何処に行ったか知らない恋人に詫びた。

何故か知らないが毎晩この夢を見ていているので、いい加減ほかの夢に変わってくれないだろうか

毎朝俺は頭を下げないといけないのだ。

これが俺のカルマだと言うのか。

今更ながら鈍すぎる自分に後悔がわくのだ。

「もう少し寝れば、本番までいくのかな?」

くそ、童貞のまま死ぬとは、今更ながら勿体無いぞ、俺。
あんまりそういうの気にしていなかったのだけれど、よくよく考えると、あの彼女のCの胸も録に触らず死んだのだ。
前世は胸があたっても「柔らかいな」としか感じなかったのだ。
そもそも恋人にもなっていないので、欲情しなかったのだ。
そういうところが彼女に言わせれば、「お前変」とのことなのだが。
くそくそくそ。なんて俺は勿体無い。

彼女のあの体を堪能しないで死ぬとは勿体無い。
化けて出るぞ。

しかも


毎朝、起きると何もない、股間が疼くのだ。

正しくファントムペインである。


なくして初めて気づくとは良い言葉だな。


「みやー、ご飯だよ、食べなさい」

俺が寝ているのは、いや私が寝ている部屋は一軒家の二階であり、階下から母の催促の声が聞こえる。
この女性と言うにはまだまだ未熟な9歳の女児の肉体は所謂低血圧?なので、いつも毎朝ギリギリまで寝てしまうのだ。
そしていつもキス止まりである。
なんて虚しい。



「いまいくからちょっとまって、寝なおすから」


夢でないとわたしをそういう気持ちに出来ないのだ。
寝させてくれ、我が母よ。
今の現実に空虚を感じるのだ、ついていないから。

ただ疼くだけなのだ、古傷のごとく。

もっかい寝て、俺は彼女を抱きたいのである。
性欲とかそういうのを超えて、もっと近くになりたいのだ。

友ではなくなった彼女と。

私の魂が。

彼女を触れたいと、魂が希求する。
人の男女の交合とは高次になるとそういうものになるのだろう。

ふと、私は微笑む。
よく彼女から恋とか一生ないな、お前とか言われてきたが。
私は恋をしているのだ。

なんて心が揺れるのだ、恋。


「寝ぼけているよね!?早く食べて準備しないとバスくるよ!?」

「ああああ、起きるから、もう」

いつもどおりの朝だ。


さて、今日もいつもどおり過ごして彼女を探そう。



藤井都9歳、小学生三年女児の朝が始まる。



「なぁ都、兄さんと今日は出かけないか、近場の海鳴模型店とか、カラーリングは都の方が上手だし、今度は一緒に戦艦作らないか」

「今度は赤城がいいな、兄さん」

大学生の兄、藤井透が朝に出る味噌汁を私が啜っていると横で菓子パンを食べながら聞いてくる。

藤井家に生まれて早9年、最初は女児として生きるのに手間取っていないようなないような気がしたが
家族中は中々いいのだ。
特に朝からメロンパンというお菓子の様な朝ごはんを毎日食べている義兄とは仲が良い。
兄の趣味は中々通な趣味で私も付き合っていて飽きが来ない。
特に兄が趣味で書いている架空戦記は胸が熱くなるほどだ。


「ダメだよ兄さん、今日は都は私と空手の道場よ」

義兄の双子の妹、藤井鈴はすぐさま却下する。
こちらは朝からレトルトカレーという重い朝ごはんをチョイスしているらしく
見ていて、胃もたれがしないか心配になりそうだ。

私のもう片方に座る姉は激辛カレーを無駄なくスプーンで口に運び食べ終わると
テーブルにある水のピッチャーをコップに注ぐと一気に飲み干し、私の今日の予定を決める。

「決まりね、都」

「ずるいな、鈴」

「女の子は女の子同士で遊ぶものよ、兄さん」

遊ぶというよりも訓練に近いだろう、姉よ。

延々と組手の練習の相手だ。

嫌いじゃないが、一番疲れるのが姉とのスキンシップだ。

兄と同じく大学生の義姉だが兄と違いアウトドアな趣味で特に武道が好きらしく
近所の喫茶店の一家と再び手合わせすることを最近の目標としているらしい。

よく知らないが、その一家の長男の方に録に相手もされず瞬殺され、その悔しさをバネに最近は大学の講義もほどほどに武道漬けである。
なんでもその例の彼に恋心があったらしく、男らしく勝負して負けたら付き合えとかいって手合わせをして負けたらしい。


「都は私のように負けないように強くなって欲しいのよ、とか言うわけじゃないけど、なんか才能があるし、どこまでになるか楽しみなのよ」

と言って豪放磊落に笑う姉だが、少し勘違いだ。


「私は冷静なだけですよ姉さん、それに真面目にやっているから、それなりなんです」

習い事とは真面目にやればそれなりになるもの。
ましてや精神年齢が違う、物事の理解は私の方が道場の子供たちにくらべ上なのだ。
物事の理解があればどんな風に相手と技を競うというものではまずは負けない。
練習の効率化が大事なのだ、体を使う運動は。

あとは努力である。
効率の良い努力が報われる。


「頑張り屋さんだからね都は、ああ可愛い妹が出来て嬉しいわ」


頭を撫でられる。
兄も便乗して撫でられ、双方から猫可愛がりだ。

前世から変わらず受け継いだ表情の基本設定が仏頂面なのだが、どうやらそれでも二人にはお気に召したらしい。
父が昨年再婚してから毎日がこんな感じだ。

しかし、二人共大学生なのに、毎日妹と遊んでいていいのだろうか。

「飲みにとかいかないよね、二人共」

大学生は毎日飲んで騒いでが基本だったはず
そんな大学生活は前世で送ったことがないが。

「お酒は苦手なんだよね」

「同じく」

兄妹二人はそう言う。

人それぞれか、と理解する、

ちなみにこの義兄弟と継母と父の5人家族である。

父と継母は仲良く私たちの対面でラブラブしていて暑苦しい。




朝を食べ終え、身だしなみを行うとスクールバスが来るまで私は靴磨きを取り出し、自分が今履いている靴を磨く。
クリームと靴墨を使って靴に光沢が出るまで磨く。

まずはクリームを靴に塗るとブラシで磨き、最後に油分が高い靴墨を塗る。
靴磨きで最も良いものはストッキングであり、電線して敗れ、使い道のないストッキングで仕上げると、これはまた綺麗になる。

どうせまだまだ成長するので1年も履けない靴なのだが、靴はピカピカとしていないと嫌なのだ。
父に買って貰った値段が高い磨きセットは私の宝物である。

無心になれるのだ、靴を磨くと。

靴を磨いてると悟りを開けるような気がする。

それを兄妹二人は私が外を出るまで、面白そうに見ている。
家族の中では、私のこういう趣味が見ていて面白いらしい。


そうしてスクールバスが来るまでに靴を磨き上げ、私は
普通のランドセルよりも少しカバン型というのか、シックな革作りのランドセルを背負い私はいつもどおりスクールバスに乗る。
一番後ろの座席にランドセルを下ろす。

「……ランドセルに傷が」

作日、クラスの男子生徒と少し拳を使った挨拶をした時にでも傷がついたのだろう。
このランドセルは頑張れば中学校でも高校でも使えるのだ。
お店に持っていて改修してもらうと、使い込んだ見事な鞄になるのだ。

ふふ、10年以上使い込んだ革の鞄になる私のランドセルよ。
私は育てあげよう。

革系磨きセットをランドセルから私は取り出した。


「みやちゃん、朝からまた磨いてる…………」

「ま、いつもどおりよね、都は」

「綺麗好き……なのかな?」


「おはよう、なのは、すずか、ありさ、今朝も姦しくて元気でいいね、ちなみにこうして革は大事にすると、綺麗になるんだよ」

「おはよう」

と同級生の三人は声を揃えるように朝の挨拶を返してくれる。
私の中でこの三人は小学生にしては大人びている子供たちなので、落ち着いた会話が出来て助かっている。
一度この私の行為について説明すると、ほかの子供と違いバカにせず、それなりに賞賛してくれたので嬉しかった。
このランドセルをアスファルトでずりずりと引きずる男子生徒と私は相容れないのだ。

勿体なさすぎるので、見ててちょっと、あまり気分がよくない。
人それぞれ価値観があるので文句は言わないが、小中高一貫の私立の特製の鞄だ。
値段はそれなりにするものである。

6万円だったかこのランドセル。


親に掛ける負担もそうだが、私的に絶対大事にしないとだめである。


頑張れば、次に受け継ぐのも可能なのだ。




アリサから言えば、「気が長すぎる……」
なのはから言えば 「…にゃはは……職人さんみたい」
すすがから言えば 「物を大事にして偉いね」

とのことだが。

三人が仲良く会話をしている尻目に、私は趣味に没頭した。



いつも同じような学業が始まった。

学校の授業とはそのようなものだが、私は普通にその授業を受け、普通にそのカリキュラムをこなす。
予習復習は当たり前なので、成績は悪くない。
学校のテストは受験と違い、基本的に学校で教えたこと以外テストには出さないので、私ぐらいの精神の熟成があれば、真面目に行えば
常に満点とはいかないが高得点は基本である。
あとは簡単なエラーさえ取りこぼさなければ、時たま頭の固い大人では解けない問題を出題する私立の小学校といえども学年でトップは出せる。
受験で出た数的推理の問題に苦戦した過去があったが、今では司法警察系の公務員試験ならクリア出来るほどにもなった。
このまま勉学を励めば食うには困らないだろう。

ゆえに昼休み、お弁当を食べながら三人が話題にしている将来の話も私にとって安泰な話なので気軽に答える。
アリサ、すずか、なのは、と9歳にして末恐ろしくなるような話題だったが、私は問われるとこう答える。

「私は最低限度のお給料を稼げる職業に就くのも難しくないような気がする」

「いやいやそういうことじゃないでしょ、夢よ夢!」

アリサに突っ込まれ、残りのすずかとなのはに苦笑される。
苦笑しているがお前たち、お前たちも苦笑するぐらい、大人びた将来の話だったぞ。
そのぐらいの年だったら、お花屋さんとかぬいぐるみ屋さんとか言うのが普通だろう。
なのはも含めて三人とも家を継ぐとか、そういう視野の夢って、中々出来ないのが9歳だぞ。

「みやちゃんの夢は?なりたいものとか」

となのはに問われる。


「夢……」

夢と問われると、難しい。

話すのが。

とても乙女が夢見るような夢なのだから。

だがまぁ彼女らはあんまり笑わなさそうなので、答える。


「私は運命の人を探しだし、愛し合うのが夢」

そうだ、私は想っている、生まれ変わっても、そんなことがどうでも良いくらいに
あの彼女は私にとっての女が良すぎた。


絶対に見つけ出す。

同性なのが難門だが、別にもう結婚とか、気にはしない。
きっと彼女がいれば私は楽しくなるだろう。

故に合わなければ、寂しい。



すずかあたりが、いい夢だね、と答えてくれたのに、少し嬉しくなった。


ほかの二人は

私のロマンチストな発言に戸惑っているようだ。

私自身そういうキャラでもないしな。

仏頂面で言い放つセリフでもないし。




「まぁ取り敢えず、見つかるまで、いろんな場所を探さないと駄目だね」

日本に居ない可能性があるし。
必要となれば自由な時間がある学生のうちにいろいろな場所に行かなければならない。

だから最近英語の勉強に力を入れている。

なるべく彼女が秘境とかに生まれ直してなければ嬉しいのだけど。
紛争地帯とかに生まれられたら、困る。


一般人が行けないし。





















俺は夢を見ていた。

あいつの夢だ。

「眠っていたのか、クリストファー」

「ああ、ゼスト隊長、眠っていたぜ、ばりばりの仮眠だ」

「さっさと起きろ、出動だ」

「あんたが仮眠室に来るってことはそういうことだよな、同期のゼストさんよ、給料分は働くぜ」

俺は昔の夢を思い出して起き上がる。
そして虚しくもなる、既に昔の夢は昔であり、等に乾ききった夢だ。
それでも現実とやらはいつだってそんな感傷を無視して襲いかかってくる。

俺はいつもどおりとなった官給服を纏い、いつもどおり使う、デバイスを持って出動準備を行う。

「で、隊長、敵は?俺のようなおっさんが要るんだろ?ウチの隊の若造じゃ、対応しきれないか?若いってのはまだまだ慣れてないから疲れやすいもんだ」

最近の激務でウチの隊の奴らは疲れが溜まっていたしな。
フォローの為にこうして休ませてもらったんだ。


「すまんなクリストファー、本来なら海に行くつもりのお前を引っ張ってしまって。この忙しさだ、録に趣味も行えないだろう」

「覚悟していたさゼスト、友人の頼みは断らないのが俺の誇りでね、海に行く元々の目的も不純なものだしな、趣味の次元世界旅行は今度にするよ」

ファンタジックな世界に生まれて数十年、俺ももうおっさんだ、魔法に夢見るのもやめておく年だ。
まさか、アニメで見ていた世界に生まれるなんてまぁ、物珍しい。
あいつは、深夜枠のアニメを見るタイプじゃなかったな、そういえば。

「世界、広すぎんだよなぁ……」

あいつを探すにも、世界が広すぎる。
なんだよ次元世界って。



ちくしょう。

「運命の相手か……ふっ、いつも思うが、存外お前もロマンチストだな、この前の縁談は良い話だったがな……陸のエース、クリストファー・クローゼル」

ああ、ミゼットのおばさんが勧めた縁談ね。

美人な子だけど、俺は決めた人がいたから断っていた。
もう思考的に男だから、ああいうのも良いかな、って思ったがやめておいた。


「同じく陸のエースのゼストさんはどうよ、ウチの隊のメガーヌとかお似合いだぜ」

「ふ、俺のような男には勿体ないさ」

「あっちはどう思うかわからんよゼスト…ちっ、おっさん同士、乙女みたいな会話しないでさっさと行こうぜ、ゼスト。夢を見るの若造の仕事、おっさんは夢を魅せないとな」

「ああ往こうか、戦友」

「ヤヴォール、カメラード」

俺は前世で見た14歳神が書いたお話の最近ルート開拓された戦友のごとく渋い声で答えた。
容姿もそんな感じだから、似合うんだよな、俺。
まさかSTS編の数少ないおっさんと同期になって、今では陸の双璧とか言われるようになるとか意味わからんね。
戦うためのような才能があって、その才能を磨いて、世界回ろうとか思っていたら、こうなっているとは人生わからんよ、本当。
これで前世女とか言ったら、キチガイだよな。

ベルカ系のガチムチ近接魔導士だし。

男に生まれた時点で再び出会うことを諦めたが、どうなんだろうなあいつは。

「どうでもいいか」


しっかし。

すまんね、 君

今度出会ったら、あれはなかったことにしてまたまた友人付きあいしおうぜ。


俺は三十路越えのおっさんだけどな。












あとがき


思いつきで書いてみた。


原作知らずの主人公
原作知りのヒロインが再び出会うまで錯綜するお話です。







需要ありますかね?






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