遠いハルケギニアといふ地にルイズといふ極悪人いたり。
貴族という立場から民を見下し、一家全員での悪行三昧。
さらには呼び出した人間の使い魔をまるで奴隷の如く扱う非人が如し振る舞い。
まこと許せじ。
さすがの仏もこれには怒髪の一点。
ついにはルイズを家族ごと地獄へ落としたなり。
地獄へ落ちたルイズたち、その居振る舞いを変えること一切なし。
反省の色など欠片もないと見える。
その上「早く元の場所へ返せ」とわめき散らす。
地獄の鬼たちもどえらい連中が来たと囁き合ふなり。
暴れるルイズたちを鬼たちが力ずくで閻魔の元へ連れて行くとす。
閻魔はルイズたちを見るなり顔を不機嫌にし、「こんな極悪人はついぞ見たことない」とお怒りになられた。
「お前たちの悪行三昧、まことに許し難い。終わることのない苦しみを以て償ふがいい」と即決なさった。
しかしルイズたちは納得がいかぬと魔法を以て抵抗を試みる。
ルイズの魔法は虚無といふ特別な魔法であるが閻魔には通じぬ。
「なんと往生際の悪い連中だ。貴族とはまこと常識のない」と閻魔はお怒りになり、天をも貫くほど巨大化するなり。
そしてルイズたちをつまみ上げると、ジュージューと音を立てる油の池の中へと放り込んでやった。
「ギャアアアア」とまこと汚い声を上げルイズたちは苦しむなり。
熱で全身の皮膚が瞬時に焼け、はがれ落ち、剥き出しになった肌をさらに焼く。
閻魔の力で死ぬことの出来ぬ体になったルイズたちは痛みと苦しみだけを延々と味わふ。
黒く焦げ始めたあたりで一度引き上げると、閻魔の力で体を元の状態に戻し、再び油の池にルイズたちを放り込む。
これを何度も何度も繰り返すなり。
ハルケギニアで最強の名を欲しひままにしたルイズの母カリーヌも、さすがにこれには耐へ切れずに命乞いをする。
だが閻魔は知っていた。
カリーヌはそうやって命乞いする民を殺したど畜生だといふことを。
今、カリーヌは彼らの苦しみをよふやく理解したといへる。
油の池地獄はそれからひと月ほど繰り返されたところで一旦止めとなる。
これだけではルイズたちの悪行を精算することは出来ぬ。
さらなる地獄へとルイズたちをいざなふために止めとなったのだ。
「これは始まりに過ぎぬぞ。お前たちはまだまだ苦しむのだ」と閻魔は言った。
巻之一 油の池地獄
これにて完なり。
巻之二を乞ふご期待。