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No.34561の一覧
[0] (IS)インフィニット・イクサス 狂人が夢見た漆黒の無限[九束](2012/10/21 21:40)
[1] 1.混ざる[九束](2012/08/13 01:06)
[2] 2.侵食[九束](2012/08/18 20:54)
[3] 3.残業[九束](2012/08/13 01:04)
[4] 4.ブリュンヒルデとドイツの冷氷[九束](2012/09/10 22:42)
[5] 5.敵意と[九束](2012/08/15 13:56)
[6] 6.困惑と[九束](2012/08/19 12:38)
[7] 7.そして好意[九束](2012/08/19 12:46)
[8] 8.グスコーブドリ[九束](2012/08/25 21:18)
[9] 9.勧誘[九束](2012/09/09 12:54)
[10] 10.門戸と襲撃[九束](2012/09/22 19:42)
[11] 11.入獄または入学[九束](2012/10/12 22:07)
[12] 12.デュノア時々たらし後シャルル[九束](2012/10/21 14:18)
[13] 13.シャルロット・デユノアという女[九束](2012/10/21 21:51)
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[34561] 9.勧誘
Name: 九束◆a9ba9ff2 ID:992a76f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/09 12:54
今日は朝からいい気分だ。
「うん、いい傾向だな。世界は」
朝、ニュースを眺めながらオレはそう呟いた。
「何がいい傾向なんだ?博士」
そしてすぐに帰ってくる声。
「あぁ。IS学園でも宇宙カリキュラムが始まるそうだ。アラスカ条約の宇宙進出規制条項がこれで事実上死文化した。ISは露払いには最適だ。人間がほんとうの意味で宇宙に出るのは近いよ」
「そうか。お前がいい気分なら私も嬉しい」
そう言って声の主は顔を緩める。
「あぁ、本来ならばいい朝のはずだな。…お前のせいで割りとケチついているが」
言いながら声の方向を向くと、銀髪の小柄な少女が俺が淹れた紅茶を悠々と飲んでいる。
メイド服で胸を張って。
「一夏の入れる茶は美味い。今日はアッサムか」
そしてそんな嫌味を完全スルーする少女。
おまけにファーストネームを呼び捨て。
「ラウラ、あのな…何で俺が入れた茶を飲んでるんだお前はそれ以前にどうやって入ってきたドアは内側から物理的にかける奴にしたはずだぞそもそもなんでメイド服なんだ!!!」
「あぁ、茶がそこにあったからだ窓から来たドアが開かなかったからな日本人の男はこういう格好を女がすると喜ぶとクラリッサから聞いたどうだ嬉しかろう」
どうだ!と貧相な胸を張る少女あらためラウラ。
「あのな、ラウラ。ドアを物理的に開かなくしたってことは朝入ってくるなってことなんだよ!」
今、俺は日本の研究施設に居る。
そしてなぜかドイツの軍人であるコイツ…ラウラ・ボーデヴィッヒが俺の護衛としてついていた。
5年リースで。
言うなれば、レンタル黒兎?
何でこうなった?というと話は長くなるが、どうやら俺が物理的にドイツ軍にOHANASHIした結果、こいつをさしだした―――という事になってるらしい。
旧東ドイツのVTシステムの開発していた研究所を物理的に吹き飛ばすという会話で。
濡れ衣である。
酷い誤解である。
どこかの歌のお姉さんみたいな格好をした馬鹿ウサギみたいに好き勝手に破壊活動が出来るような能力が俺にあるわけがないだろうに。
オレにできることといえば、核融合施設を暴走させてその付近30キロ圏を吹き飛ばすことくらいである。
核融合だから放射能とかの心配もなくてクリーンな暴走方法だ、マジオススメ。
あ、もしくはオーベルト社から割り当てられたアークバードを使ってプチコロニー落とし?
そんなわけで俺は無力だ。
酷いいいがかりである。
オレは弁解を要求するぞ!
そう内閣府で言ったら毎回スルーされる。
そろそろあの一帯区画ごと吹き飛ばしても俺は悪くないと思う。

…いや、本当に濡れ衣だよ?マジで。

そんな感じで、濡れ衣で危険人物認定された俺は、ドイツ軍から『お詫び』としてコイツの5年レンタル権が何故か入ってきた。

その結果、コイツは四六時中俺の周りで待機したり護衛したり研究を手伝ったりベットに潜り込んだり紅茶を勝手に飲んだりメイド服を着てドヤ顔をしたりしている。

研究を手伝ってくれる時と護衛時以外には割りと突飛な行動をする。

この前はフライパンで叩き起こされた。
涙目でラウラを見たら何故かカラフルな学生服もどきを着ていた。
意味がわからない。
そろそろ千冬姉に相談するべきなのかもしれない。

…あれ?そういえば千冬姉って今どこで何してるんだ?
俺がラウラレンタルすることになった時に一緒に日本まで帰ってきたところまでは覚えてるんだけど、その後数ヶ月ぐらい会ってないな。
っていうか今別にドイツ軍の教官でもないっぽいし、なにやってんだ千冬姉。
ま、連絡がないってことは生きてるんだろう。
ケータイ番号は知ってるし。

話を戻そう。

本来ならこのチミッコは速攻でチェンジをするところなのだが、たちの悪いことにコイツは能力そのものは優秀なのでチェンジせずに研究に協力してもらっている。
多少不快だろうと研究が早く進むほうが優先だ。世界はままらないものである。死ねばいいのに。

嫌なことを考えるのはやめて、今日の研究予定を考えよう。







研究室に入ってデスクを見た途端に今日のやる気がごっそり持っていかれた。
きっとカミサマって存在は俺がピンポイントで嫌いなんだと思う。
横を見ると、ラウラが状況を理解できないのか呆然としていた。
そしてその様子を心底楽しそうにニコニコと見ている女性。
超ウザい。
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」
なんかのたまい出しましたよこの人。
「みんな死ぬしかないじゃない」
即座に二の句を継ぐ。
言葉は割と本心である。
「やけっぱちすぎるよ!続きはそんな言葉じゃないよ!?」
ガビーンと行った効果音が出そうなくらいのオーバリアクションをするソレ。
だんだんソレの評価が下がっているのは気にしない。
「だいたい同じようなニュアンスじゃないですか元ネタ」
夏目漱石の『それから』を引用するとか。
めんどくさい。
「もうどうでもいいんでそこの窓から『ティロ・フィナーレ!』とか言いながら飛び降りてくれません?見なかったことにするんで。あ、首と胴体離しながらやるとなおGOODです」
「私の扱いひどくないかないっくん!?感動の再会なのに!!」
「チェンジで」
「誰と!?」
「箒と」
オレにとって厄災しか持ってこなさそうな人と俺と親しかった幼馴染、同じ篠ノ之で選ぶなら迷うことなく後者を選ぶ。
「わ、私を選ぶなら今ならこのおっぱいとかついてくるよ!?これだけでもそこの貧乳眼帯娘ととっかえるメリットはあるんじゃないかな!?」
なんか必死になるソレ。自分のおっぱい鷲掴みにしながらアピってくる。
「や、別におっぱい欲しかったらおっパブでも行きますし」
金ならあるし。政府とからの報酬とか核融合関連の特許料とか。
「荒んでる!荒んでるよいっくん!!」
誰のせいだと思ってるんだコレは。
…。
面倒くさい。
面倒くさいので。
「…おいラウラ、篠ノ之博士がお帰りのようだ。とりあえず簀巻きにしてからIS学園にでも捨ててきてくれ」
ラウラに処分をお願いすることにした。
「生きてればいいか?」
そして殺る気満々のラウラ。
やる気があるのはいいことだ。
「達磨にするくらいならいいんじゃないか?」
個人的には死んでもらったほうが助かるんだけど、箒が悲しむしなあ…。
「わかった」
短く言ってラウラがISを全展開する。
はじめから殺意全開である。
「篠ノ之博士、覚悟―――」
そして俺はティーカップを3つ用意。
冷蔵庫からミルクを取り出してたっぷりカップに注ぐ。
涙目だった束さんの目元が急に細くなる。
魔法瓶から休憩用に持ってきた紅茶をティーカップに注いで。
「やめてよね」
束さんがつぶやく。
「なっ!?」
ラウラの口からは驚きの声。
俺は一口今作ったミルクティーを口に含む。
やっぱりミルクティーは先にミルクを入れるに限るね。
「本気でIS使って、君が私にかなうはずないじゃない?ねえ、いっくん?」
「ま、そうですよね」
窓の外には複数のIS。
形状から、恐らく無人機、か?
ぱっと見ただけで10機はある。
いくらドイツのエースであるラウラとはいえ、勝ち目はない。
「紅茶入れましたけど、飲みます?」
「いただこうかなっ!」


--小休止--


ラウラには外してもらった。
俺が誘拐されるかもしれないと言って抵抗したが、ISの数的にお前が居ても結果は変わらないといたら渋々納得した。
「で?」
束さんに短く一言切りだす。
そしてそれに反応して束さんが口を開く。
一言で意を察してくれる人はいいね。
束さんじゃなかったわりと心が癒されてたのに。
「船を作るから私のところに来てくれないかなっ!」
そして提案する束さん。
「イヤです」
即答。何でアンタの道楽に付き合わなきゃいけないんだ。
「核融合関連技術の技術者が極端にこの世界は少なくてねー。色々探してるけど中々逸材が居ないの。特に私の船を作るのには、磁気流体力学の優秀な技術者が必要なんだ!だからねえ、私と一緒に宇宙船を作ろうよ!木星までの露払いはできてるから、目標は天王星かなっ!1年以内にはオールトの雲を探索しようかと―――――――」
そしてそんなオレの言葉を無視して一人でしゃべる束さん。
「束さん」
それを面倒になって遮る。
話を聞く限り宇宙船をい作りたいのか。束さん。
それそのものは魅力的な提案だ。
宇宙船は人間が進歩するには、より多くの富、幸福を得るには必須だ。
だけど、俺はそれには協力する気にはなれない。
何故?
その宇宙船はただの束さんのおもちゃだろう。
人間の役には立たない。
「貴方なら一人で出来るでしょう」
それ故に、拒絶の意味で言葉を出す。
「時間をかければね。でも私はせっかちなのよ。そして欲深なの」
そんなものは貴方の勝手だ。
オレを巻き込まないでほしい。
「貴方は何をしたいんですか」
「神様を見つけて愛を教えてもらいたいなって」
「愛?」
「神とはすなわち愛。私はそう思うの。そして人間にソレを与えた神は、ホンモノの神はこの広い宇宙のどこかで私達が苦しんでいるのを傍観している。そして、それを指を加えて見ていられるほど、私は無欲じゃない」
ホンモノの神…?
「もし神が全知全能だというのであれば、私はそいつを引きずり出して聞かずにはいられない。何で私をこうしたのか。なんで私に何も与えてくれないのかを」
既視感が胸の中に流れる。
過去、同じ言葉を聞いたことがある.
それは、尊敬するあの人。
懐かしい人が脳裏に浮かぶ。
「話がそれたね。返答はどうかな?」
言って、束さんが俺を真っ直ぐ見つめる。
あれは人間の目だ。
冷たいようで温かいようで怖いようで…惹かれる。
ひどく懐かしい思い。
滾る部分だけだけど。
懐かしい。
…もしかして。いやそんな。ありえない。
ありえない?
オレの存在そのものがそうじゃないか。

ありえないなんて”ありえない”。

思考は順ぐりグルグルと堂々巡り。
その隙に身体が思わず彼女の手をとってしまいそうになる。
束さんがそれを見て微笑む
「っ!」
何をしたんだオレは。
でも…
だけど…
「…」
だが、
「ひとつ、いいですか?」
確かめずにはいられない。
「何かな?」
それに対して束さんは微笑みながら返す。
オレと同じ時代の人でなければ知らないはずの言葉。
それを聞こうと思う。
「フォン・ブラウンはあの星につきましたか?」
オレの言葉を聞いた束さんは少し顔を歪める。
ナニカ不愉快なものでも思い出したかのように。
「木星到達第一声はホシノの息子だったよ。満足した者の言葉だった。気安く愛を語って、不愉快だったね」


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