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No.34561の一覧
[0] (IS)インフィニット・イクサス 狂人が夢見た漆黒の無限[九束](2012/10/21 21:40)
[1] 1.混ざる[九束](2012/08/13 01:06)
[2] 2.侵食[九束](2012/08/18 20:54)
[3] 3.残業[九束](2012/08/13 01:04)
[4] 4.ブリュンヒルデとドイツの冷氷[九束](2012/09/10 22:42)
[5] 5.敵意と[九束](2012/08/15 13:56)
[6] 6.困惑と[九束](2012/08/19 12:38)
[7] 7.そして好意[九束](2012/08/19 12:46)
[8] 8.グスコーブドリ[九束](2012/08/25 21:18)
[9] 9.勧誘[九束](2012/09/09 12:54)
[10] 10.門戸と襲撃[九束](2012/09/22 19:42)
[11] 11.入獄または入学[九束](2012/10/12 22:07)
[12] 12.デュノア時々たらし後シャルル[九束](2012/10/21 14:18)
[13] 13.シャルロット・デユノアという女[九束](2012/10/21 21:51)
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[34561] 8.グスコーブドリ
Name: 九束◆a9ba9ff2 ID:72ee2259 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/25 21:18
「何故、貴方は研究をしているのですか?」
研究所の屋上、肌寒くなってきた私達以外誰もいない屋上で、私は切り出した。
「えーと、それは『お前なんで生きてるの?』的なそういう圧力的なものかな?あ、もしかして屋上ってそういう!?」
怯えるようなリアクションで後ずさる博士。
「ち、違う!たしかに誰も居ないところで聞きたかったのは事実だがそういう意味じゃない!」
「じゃあどういう?」
「…博士くらいの年齢ならば本来は義務教育の最中のはずだ。私と違って、それ以外の生き方を知らないわけでもない。なのに、何故博士は今、研究をしているのですか?」
私にはここしか、軍しか無い。
愛国心など無い。
忠誠心など無い。
だが、ここ以外に私は生きる術を持っていない。
ここ以外によりどころを知らない。
強く有ること以外、私は私の有り様を知らない。
存在価値を肯定できない。
しかし、博士はそうではない。
数多く有る選択肢の中、わざわざここにいる。
彼は守られていた。
織斑教官に。
では何故彼は今こうある?
私と同じように、何かに迫られているのか?
それとも別何かがあるのか?
それが、知りたかった。
博士を見つめる。
一挙手一投足を見逃さないように。
「何故…かあ…」
博士は困ったような表情をした。
そしてしばらく考えた後、言う。
「追いつきたい人が…いるんだ」
「追いつきたい人?」
「あぁ、現代のグスコーブドリの様な人だ」
「グス…なんだそれは?」
「あぁ、そうか。ラウラはドイツ人だもんな。知らなくても無理ないか。俺の国で昔書かれた小説の主人公だよ」
百年以上も昔だけどねと、博士は付け加える。
「その主人公は苦労人でね。彼は幼い時に仕事の大変さや生きる辛さを身を持って学ぶんだ。勉強して大きくなって小さい頃からしていた仕事をしなくて良くなっても、その経験を彼は決して忘れなかった」
「それで?」
「彼は自分が経験したつらい思いを人々にさせたくないと研究者になって人の幸せのために戦ったんだ。火山ガスを利用して雲をつくり、噴火の被害を減らしたりした。そうして日照りや冷夏から人々を救ったんだ」
まるで自分のことのように嬉しそうに語る博士。
「何故、そいつはそんなことをしたんだ?所詮、他人のことだろう」
何故そいつは自分がしたつらい思いを他人にさせたくないと思ったのだろうか。
「幸せにしたいからさ」
「幸せ、に?」
「そう。ラウラ、君は人から感謝された時、どうおもう?そうだ。このまえ試験でクラリッサがなくした彼女にとって大切だというデータチップを見つけた時、すこく感謝されてたじゃないか。そのとき、どう思った?」
「…どうって」
言われて思い出してみる。
「なんとなく気恥ずかしいような、落ち着かない変な気分だった」
「だけど、不快なものじゃない。そうだろう?」
「…そうだとおもう」
「それはね、とてもとてもいい物なんだ」
「そう、なのか?」
「あぁ、そうだ。グスコーブドリは自分の命と人間の幸せを天秤にかけて人間の幸せをとった。人間の幸せが、彼にとって幸せだったんだ」
自らの命よりも優先したい欲求。
それはどれほど苛烈な感情なのだろう?
「俺の追いつきたい人もグスコーブドリの様な人なんだ。だから、俺も…」
言葉を切って、博士は月を見上げる。
「そう…オレも…俺も…」
博士も今、その欲求が渦巻いているのか。
「彼に追いついて、彼女のように」
それはとても…
「グスコーブドリのようにオレの研究でみんなを幸せにしてやりたいんだ」
心地が、よさそうだ。




【IS学園ニュース】IS学園は20XX年度より宇宙活動プログラムを開始します
本校では新カリキュラムとして20XX年度より新たに宇宙活動プログラムを授業科目として導入します。
本カリキュラムは核融合発電の普及により急激に商業宇宙開発が進むことを鑑み、ISの平和利用の一環として本来のISの開発目的である宇宙活動機としての分野に貢献するための人材育成を目的としています。
カリキュラムの内容はこちら(リンク:宇宙活動カリキュラム.pdf)を御覧ください。


【毎朝新聞】コラム:歴史は繰り返す
昨日3月7日、国際IS委員会の承認に基づき、文科省はIS学園に対して宇宙活動カリキュラムの認可を行った。
従来、アラスカ条約によって禁止されていたことによりISの宇宙での組織的活動は禁止されていたが、今回の承認決議によりIS学園のカリキュラムではその活動が認められることとなった。
これによりIS学園は来年度より宇宙活動カリキュラムを実施すると発表した。
また、IS学園はカリキュラムを行うにあたり、活動拠点としてオーベルト社より中軌道のアークバード用補給基地1基を購入している。
3月7日。またしても3月7日だと筆者は思う。
20世紀の悪夢、第二次世界大戦へのカウントダウンが始まったのも3月7日だ。
1945年3月7日。この日はナチスドイツがラインラントに進駐し、それにより事実上第一次世界大戦の平和条約であるヴェルサイユ条約が死文化した。
20XX年3月7日のアラスカ条約改正によるIS学園による宇宙活動キャリキュラムの承認をこれと照らしわせる筆者は心配性であろうか?
軍事危機に際して結ばれたアラスカ条約。それが今、朽ちようとしているのではないだろうか?
ある聖職者が記した言葉がある。
―ナチが共産主義者を攻撃した、私はなにもしなかった。
―私は共産主義者ではなかったから。
―次に彼らは社会主義者を攻撃した。私はなにもしなかった。
―私は社会主義者ではなかったから。
―次に彼らは労働組合を攻撃した。私はなにもしなかった。
―私は労働組合には参加してなかったから。
―次に彼らはユダヤ人を攻撃した。私はなにもしなかった。
―私はユダヤ人ではなかったから。
―ある日、彼らは私を攻撃した。私は初めて抵抗した。
―しかし、その時には、何もかもが手遅れだった。
私の心配は、この聖職者の言葉とは違い、杞憂であることを願いたい。






「うんうん。いい傾向だね世界は♪」
こつごつとした岩の上に座りながら満足そうに記事を読む束。
「まーさか生きてるうちに木星を目の前で見れるとは思わなかったなぁー…」
その横で俺は感嘆の声を漏らした。
目の前には褐色の渦を巻く星――木星。
「ビリーの作ったプログラムのお陰で束さんの無人機研究は当社比2倍で進行中だよ!メイドさんも高性能だし生活も充実だね!束さんの野望はまだまだ進むよー!」
ハイテンションで俺に言う束。
今、俺、ビリー・Gは木星の環にある名も無き小惑星に居る。
衣食住つきで。
割と快適だ。
そろそろ天からお迎えがくると思っていたが、物理的に登るほうが先だとは思わなかった。

奴について行った俺は、無人ISの開発を手伝うことになった。
ただの無人機ではない。それならば、束は一人で作れる。
俺が作ったのは自らで考え、思い、進化する人工知能を搭載したIS。
あいつのプログラムを盗んで以来、数十年にわたって高めてきた俺の作品。
それを、ISにつぎ込んだ。
ある意味では、俺と束の子供のようなものかもしれない。
そういう方面の感情は、俺も束も皆無だが。

今、太陽系内では調査用の無人ISが飛び交っている。

「で、次はどうするんだ?天王星か?それともオールトの雲を調査するか?」
「そろそろ準備できたし、青い星に引きこもってる人間を引きずり出そうかなって」
「お前なら、一人でも何処までもいけるだろう?」
「ばかだなあ」
疑問を口にすると呆れたような表情と罵倒を束が返してきた。
「1から10まで全部一人でやったら効率が悪いじゃん。何で君を誘ったのか考えなよ」
辛辣な上にうざい。
「…で、どうするんだ?」
「逃亡生活をやめる準備と、一人私の仕事が出来る人を誘おうかなって」
「俺みたいにか」
「そうそう♪私の予想が正しければ、彼はちょー良い人材だよ!目的も一緒だし、そりも合うんじゃないかなっ!」
「どういうやつなんだ?」
質問する。
「うーん、一言で言うと…」
束は口に指を当てながら考えて…いい例えが見つかったのか満面の笑みで言った。




「グスコーブドリの様な人、かなっ!」




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