村はずれのあばら屋。
そこを取り囲んだ村人たちが叫びます。
「出てこい!吸血鬼!」
「お前達が一番怪しいんだ」
「俺達が確かめてやる!」
村人たちは疑心暗鬼に陥っています。
村はずれに引越してきた親子が怪しいと、こうして弾糾を始めます。
その様子を少し離れたところで見ながら。
「なるほど」
エルザにだけ聞こえるような声でテオが言いました。
「エルザも分かっておるではないか。げに恐ろしきは人間の心。それを利用するとはなるほど、賢いな~」
「花まるをあげましょう」
まるで算数が上手にできた子供を褒めるように、テオとエンチラーダはエルザを褒めます。
それは、極自然で、当然のような褒め方でした。
「ふふん」
エルザは得意そうに鼻を鳴らします。
エルザの策は至極単純なものでした。
『自分以外の誰かを、吸血鬼に見立て殺させる』
なるほど単純ですが、とても有効な手段です。
実際、村人たちは面白いように自ら疑心暗鬼の渦に流されています。
村はずれの親子が怪しいと、こうして家を取り囲んでいるのですから。
エルザが最初にしたことはグールを作ることでした。
最近になって村に移り住んできた占い師の親子。
そのどちらか片方をグールにしてしまえば、当然もう片方が吸血鬼であると村人は思うでしょう。
だから、エルザはその親子の息子のアレキサンドルをグールにしました。
というより、その親子が越してきたからこそエルザは食事を開始したとも言えます。
よそ者が越してきた瞬間から吸血鬼被害が起きれば、どう考えたって犯人はそのよそ者だと思うでしょう。
そうすれば後は簡単。
村人たちの疑惑がそのよそ者親子に集中する頃合いを見計らって、その片割れがグールであることを、ワザとばれさせます。
当然住人たちはそのもう片方を吸血鬼として殺してしまうでしょう。
それで万事解決です。
之によって罪のない人間が命を落としますが、別に吸血鬼であるエルザは全く構いはしません。
そしてそれはテオも同じでした。
別にテオは、平民の命などどうでも良いと思っているわけではありません。
ただ、其れよりもすっとエルザの安全のほうが優先順位が高いと思っているのです。
エルザに食べられしまった人間や、吸血鬼だとして殺される人間に対して、お気の毒であるという感情こそありますが、ただそれだけなのです。
それは、我々現代人が。動物愛護精神を持ちながら同時に獣肉を食べる感覚に似ていました。
例えば、今、私達が鉈を持ってして犬や猫、うさぎやフェレットなど自分の身近にいる動物を殺せば、途轍もない罪悪感が自分を襲うでしょう。
しかし、その一方で、我々は当然のように牛や豚の肉を食べます。
人は動物を愛しながらその一方で容赦なくそれを殺せる矛盾した心を持っています。
テオの感覚はそれと同じものでした。
彼は、下手な貴族よりもよっぽど平民に対して寛大です。
彼は快楽や怒りや義務感で人殺しはしませんし、出来ることならば人を殺したいとは思いません。
しかし、必要であると判断すれば容赦なく殺します。
少なくともテオにとっては、自分と然程の縁もない人間の命などより、エルザの食事のほうが優先順位としてはずっと高いのです。
ですからエルザの狡猾で残酷に見える策も、極自然に納得し、そして感心するのです。
「さて、問題はあの騎士殿だが」
そう言ってテオはシルフィードの方を見ます。
「私達がちゃんと調べるから!ちょっと待っててなの!」
村人たちにそう叫ぶシルフィードの物腰は、どうにも頼りなく貴族らしくありませんでした。
「なんだか頼りない」
「吾としてはそれが逆に怖いな。どう見てもあれは騎士の物腰ではない。しかしタバサを従者にするほどの騎士が本当に頼りないとは思えない」
「??」
「誘ってるんじゃないか?」
「ああ、そうか…囮?」
「相手は腐っても花壇騎士、少しでも油断したら…ボン!だな」
「なるほど」
そう言って二人は再度シルフィードを見ます。
見れば見るほどにその姿は頼りなく、如何にも襲いやすそうです。
「お前たち止めるんじゃ!皆が争っている場合じゃない」
そこに村長が現れて皆を諌めはじめました。
結局村人たちは引き返しますが、その表情からは不満が見て取れます。
再度このようなことが起きるのは、時間の問題だろうとテオは思いました。
◇◆◇◆
夜になり、村の赤子や幼子や娘が村長の屋敷に集められました。
各家で吸血鬼に怯えるより、皆で一塊になったほうが安全だと誰かが提案したようです。
村人たちの中には、一箇所に人を集めれば一度にやられてしまうのではと心配そうに言うものもおりましたが、村長にメイジが二人もおられるので安心であると説得されました。
村人たちは如何にも頼りなさ気なシルフィードに対して不満の声を上げそうになりましたが、その隣に居るテオをみて思いを変えました。
テオがベットを錬金したり、ゴーレムを作ったりする様を見て、このメイジならば安心だろうと思ったのです。
勿論、錬金が上手く出来たり、ゴーレムが達者に作れるからと言って、戦闘において強いと言うことにはならないのですが、普段からメイジというものに接することの少ない村人たちですから、魔法が上手に使えるメイジは無条件に強いと思ったのです。
テオたちの泊まっている場所がとても騒がしくなりましたが、テオは嫌な顔ひとつしませんでした。
それどころか子供の為に玩具を錬金したり、小さなゴーレムで子供をあやしたりしています。
「キャッキャ!」
「おじちゃん人形作って!人形!」
「作るぶんには構わんが次おじちゃんと言ったら泣かすからな、吾はお兄さんだ…ほれ!」
「わーい」
「おにじちゃん、私は猫のが欲しい!」
「なんだ!?おにじちゃんって!混ざってるぞ!お兄さんだ…ほれニャンニャンだ!」
「わー可愛い!」
「僕も、僕も作って欲しい!」
「私も」
「アタチもー」
「まて!順番だ!並べ!…誰だ、今吾のポケットに小石をねじ込んだ奴は!え?面白い石だからあげる?まあくれると言うならもらうが…よし!お前には特別に凄いものを作ってやろう…」
子供たちはテオに群がります。
なにせ娯楽の少ない村です。メイジが来ることなんて滅多にありません。
たとえ来たとしても、大抵のメイジは偉そうにふんぞり返るばかりで子供の相手などしてはくれません。
ですから子供たちに魔法を見せてくれるテオにすぐさま懐くのでした。
テオも子供たちに好かれて悪い気はしないようで、その表情は楽しそうでした。
そんな様子を少し離れたところで見ながらエルザが呟きました。
「テオ…大人気」
「まあ、ご主人様は今まで子供と触れ合うこともありませんでしたから、こういう状況が楽しいのでしょう」
「…」
「おや?エルザは嫉妬してしまいましたか?」
「してない」
「まあ、気にしなくても今日だけですよ、ご主人様に甘えたいのでしたら明日以降好きなだけ甘えれば良いのです」
そう言ってエンチラーダはエルザの頭をなでました。
エルザは嫉妬をしていなと口にしましたがそれは間違いでした。
容姿が自分と然程変わらない年齢の子供達に囲まれるテオを見て、言い知れない悔しさが心のなかに湧き上がるのを感じています。
しかしエルザは、その感情が嫉妬であると言うことに気がついていません。
なにせエルザはその感情を、産まれて始めて感じているからです。
自身に沸き起こる感情を理解できず、ただ静かに戸惑うエルザの様子を見ながらエンチラーダは何処か微笑ましい気持ちになるのでした。
さて、子供たちの相手が一段落してから、テオたちは夜食を食べ始めます。
人数が増えるからと、テオが特別に錬金したテーブルに皆、行儀よく座っています。
「ほれ、エルザ、吾の膝に…」
「大丈夫」
そう言ってエルザはタバサの横の椅子に座ります。
「エルザ…なんか不機嫌ではないか?」
「そんなこと無い」
エルザは否定しますが、その表情はやはり何処か不機嫌そうでした。
妙に不機嫌そうなエルザにテオは少し戸惑います。
そうこうしている内に夜食がテオ達の前に運ばれてきました。
エンチラーダと、村長の屋敷に避難している娘たちが作った料理が沢山並べられます。
実際それらの料理はとても美味しくて。
テオもシルフィードも上機嫌でそれを口に運びます。
そしてシルフィードがサラダを一口含んで、
「苦い!」
ぶほっ!っと吐き出しました。
さらにそれは、シルフィードの正面に居たテオの顔に見事に向かいます。
「危な!」
テオは咄嗟にそれを避けました。
「なにこれ!苦い!キュイ!」
「スイマセン!村の名物でムラサキヨモギっていうんです、苦いですけど体には良くて、その…」
「ははは、シルフィード殿、好き嫌いはあまり良くありませんな、苦いとは言え食べ物、食べて食べられない事はありますまい」
そう言いながら今度はテオがムラサキヨモギを口に含み、
「苦い!」
シルフィードと同じように吐き出しました。
それは先程のシルフィードと全く同じフォームで、そして同じ勢いでムラサキヨモギを吹き出します。
ただ一つ、同じでなかったのは、正面のシルフィードがそれを避けることが出来なかったことです。
「目ぇ!」
「予想の数倍苦かった」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
エンチラーダはが心配そうにテオに駆け寄りますが、心配すべきはテオではなくシルフィードの方でした。
「目があ!目がぁ!」
シルフィードが目にかかったムラサキヨモギに悶えます。
その様子にタバサがシルフィードの元に駆け寄り…
悶えるシルフィードのサラダに手を伸ばします。
そしてタバサは瞬く間にサラダを食べつくしてしまいました。
そのあまりの食べっぷりに、テオも感心してしまい、
「吾の分もいるか?」
と言って、食べかけのサラダを差し出します。
「もらう」
そして、ドンドンとムラサキヨモギを食べつくしていきます。
そんなタバサにエルザが声をかけました。
「ねえお姉ちゃん、野菜も生きてるんだよね」
エルザのその言葉にタバサはうなずきます。
そして、なぜ自分ではなくタバサに質問をするのかと、テオが少しショックを受けます。
「スープの中の肉も、その鳥も全部生きてるんだよね」
「うん」
「全部殺してから食べるんだよね、なんで?」
タバサは答えます。
「生きるため」
「でもさ、でも。吸血鬼が血を吸うのも生きるためじゃないの?」
「そう」
「じゃあ何でお姉ちゃんたちは吸血鬼を退治しようとするの?なんで妖魔なんて呼ぶの?邪悪なんて言うの?やってることは人間と同じでしょ?」
「何で私に聞くの?」
タバサが言いました。
「お姉ちゃんなら答えてくれるような気がしたの…なんとなく」
それはエルザの本心でした。
エルザは何処か、タバサに自分と同じ物を感じていたのかもしれません。
見た目の年齢が近いとか容姿が少しにているとか、そういうことではなく。
何処か本質的な所で、自分とタバサに共通の物があるような気がしたのです。
まるで人形のような少女。
他の人間とは違い、タバサは何処か人間とは違う雰囲気を持っています。
まるで感情を持たない様な目をしているタバサであれば、感情のない冷静な答えを自分に与えてくれるのではないかとエルザは感じたのです。
そんな二人のやり取りを見ながら、テオはエンチラーダにそっと呟きます。
「エンチラーダ、コレってアレかな?思春期か?思春期特有のなんかややこしいやつか?」
「よくわかりませんが…エルザなりに色々と思うところがあるのでは?」
ヒソヒソとテオとエンチラーダが話します。
二人はエルザのいつもと違う様子に戸惑うのでした。
◇◆◇◆
「エルザ…何か思うことがあるのか?」
食後、部屋に戻ったテオがエルザに聞きました。
「ん…べつに無いけど、なんとなく、悪いことして無いはずなのに、何でみんな私のことを邪悪だって言うのかなって思ったから」
そう言ってエルザは下を向きます。
それはエルザのトラウマのようなものでした。
エルザの両親は無残にもメイジに殺されました。
殺された理由は吸血鬼であるからです。
しかし、エルザの知る限り、両親は悪い行いをしていたわけではありません。
ただ、人間が食事をするように、普通に食事をしながら生きていただけなのです。
それなのに、人間はその両親を邪悪なものであるとして殺してしまいました。
両親は何も悪くないのに。
何も悪くないのに殺されてしまった。
そして自分も。何も悪いことはしていないはずなのに。
村人や騎士は吸血鬼を殺そうと躍起になっています。
どうして皆は吸血鬼を邪悪だと言うのだろう。
そういう思いが、エルザの心の内にはあったのです。
「あのな、エルザ。この世の中にな邪悪なんてものは、そもそも無い!」
「え?」
テオの言葉にエルザは驚きの声をあげます。
「だいたいだ、悪いことと良いことってのは誰が決めた?吾か?お前か?王様か?神様か?」
「ええっと…皆が悪いことだって言ってるのが悪いことじゃないの?」
「其の皆って誰だ?」
「ええっと…人間?」
「そう、人間だな、つまり善悪なんて概念はな、人間が勝手に決めてしまったものなのだ。人間は万物の尺度である。つまりな、善い悪いと言う基準は、人間に取って多数派に利益をもたらすことが良い、多数派に不利益をもたらすことが悪いということだ、吸血鬼のお前が気にすることじゃない」
そう言いながらテオは立ち上がり、つかつかとエルザの方に寄って行きます。
「とは言えお前の気持ちもわかる。生き物は孤独である時、自分のしている事に疑問をもつことが多々ある。自分はこのままで良いのか?自分のしていることは間違いなのではないのか?とな。本来物事の善し悪しを決めるのは自分自身であるのに、その自分が信じられなくなってしまうのだな」
そしてテオはエルザの正面に立つとしゃがみ、彼女と同じ視線で言いました。
「だから、主人たる吾が言ってやる。
本来は其の筋合いはないのだが。断言してやる。
エルザ、お前のしていることは正しい。人間基準なんぞにこだわるな胸をはれ」
テオの言っていることは人間の基準からすると完全に『悪』なのでしょう。
なにせ、人間を食べるという吸血鬼に対して、其の行動を肯定したうえで、胸をはれとまで言っているのです。
人殺しを推奨しているに等しいのです。
しかし、テオの言ってることは一人の使い魔の主人として、とても『善』い言葉でした。
なぜなら、その言葉でエルザは本当に救われたからです。
エルザは、親を早くに無くしました。
本来教えられるべき吸血鬼における物事の善悪を教えられないままに、人間に混ざり生きてきたのです。
すると、エルザに与えられる善悪の基準は、人間のものであり、エルザは人間の善悪しか知らずに育ってしまっていたのです。
人間の善悪の基準からすると、エルザの食事は悪い事になってしまいます。
必死に、人間が行う食事と自分の吸血行動をなぞらえ、自分のしている事を肯定しようとしますが、悪いことという人間基準の考え方がエルザの心のそこでエルザを苦しめてきました。
だからエルザは自分は悪く無いと、自分自身に言い聞かせます。
自分のしていることはただの食事だと。人間のしていることと同じ事だと自らに納得させようとしています。それでも、心の奥底では自分が悪いことをしているのではないかという、罪悪感のようなものがうごめいていました。
しかし、今。
エルザの保護者であり主人であるテオが、そのエルザの吸血行動について、胸をはれと言いました。
それだけ。
たったそれだけで、エルザの中の辛い気持ちが綺麗に消えてしまったのです。
「では、食後の運動だ、何の罪もないグールと、ばあさんをぶち殺しに行くかな」
そう言ってテオが立ち上がります。
あまりにも非道なその言葉。
恐らくソレは、エルザの気持ちを軽くするために、ワザと残酷な言い方をしているのでしょう。
そのテオの気遣いがとても嬉しくて。
「うん!」
エルザはできるだけ元気にそう言いました。
◇◆◇◆
「きゃああああああああ!」
少女の叫び声が屋敷に響き渡ります。
その叫び声を聞きつけたタバサとテオが広間に飛び込むと、そこには少女を片手で捕まえた一人の男がおりました。
「アレキサンドルよ!やっぱり彼がグールだったんだわ!」
その娘が言うとおり、それは昼間あの村はずれのあばら屋に住んでいた親子の息子の方でした。
しかし、そこに昼間の理性的な姿はありません。
まるで獣のように血走った目と、口からは牙を覗かせ、如何にもグールといった容貌でした。
グールはテオとタバサに気が付き、少女をつかんだまま逃げようとしました。
「ウインドカッター!!」
テオの魔法が見事にグールの肩に当たり、少女を掴んでいた腕は吹き飛びました。
グールの腕は胴体から外れましたが、それでも少女の体を離すこと無く少女の体をがっしりと掴んでいます。
テオはその手を剥がすべく、少女に駆け寄ります。
その隙にグールは窓から逃げてしまいました。
「吾は少女の介抱を、グールは任せた!」
テオがそう言うと、タバサは走ってグールを追いかけました。
タバサの姿が見えなくなると、テオはニヤリと笑い、そのまま口を開きます。
「大丈夫か?少女。なに、グールは直ぐに退治されるさ。しかし、所詮グールだからな。吸血鬼を叩かねばまたグールを作られてしまう」
そう言いながらテオはグールに襲われていた少女の肩をつかむ腕を引き剥がします。
「さあ、村人たちを集めよう、吸血鬼の正体はわかったんだ、なに、明日からは平和な村に戻るさ」
そして場面は冒頭のあばら屋に戻ります。
しかしそのあばら屋は昼間とは全く違う様相です。
村人たちが火をつけ、見事に燃え広がっていました。
モウモウと広がる炎は村を照らし、当たりはまるで昼間のように明るくなっています。
「死ね吸血鬼!」
「俺達を騙しやがって」
村の住人達は燃える小屋に向かって叫びます。
そんな様子を見ながらテオは、
「こんがりと焼けとるなあ」
まるでパイが焼ける様子を見ているかのように、軽い調子でテオは言いました。
何の罪もない老婆が、無残にも焼き殺されているのを目の前にして、この態度。
それは人間としてとても異常な態度でした。
そこにグールを倒し終わったタバサがやって来ます。
タバサは魔法で小屋を消火しました。
その行為に村人たちが不満の声をあげます。
「何をするんだ」
「証拠がない」
厳しい顔でタバサが言います。
「息子がグールだったろうが!どう考えてもあのばあさんが吸血鬼だ!」
「証拠がない」
「証拠ならあったぜ!、コレが犠牲者の家の煙突の中に引っかかっていた」
そう言ってある村人がタバサの前に布を投げ捨てました。
それは絞り染めの赤い布でした。
今焼き殺された老婆の寝間着の一部です。
村人は口々にあの老婆こそが吸血鬼であると叫び、そしてその老婆が焼け死んだことで安堵の表情を浮かべます。
しかしタバサだけは違いました。
赤い布を見ながら、その厳しい表情を崩しません。
そしてその様子を見て、
「マズイな」
テオは言いました。
「え?」
エルザが聞き返します。
「アイツはまだ終わったと思っていない」
「え?でも…」
決定的な証拠、村人でなくても普通は老婆が吸血鬼だと思うでしょう。
事実、タバサは不満そうな顔をしつつも、何も言いません。
「ありゃ。納得がいってない顔だ、最悪の場合、帰ったフリして調査しかねんぞ」
テオの言葉が本当であれば困ったことになります。
吸血鬼騒動はこれからもう起きません。
エルザがここを離れるのだから当然です。
しかし。そうなるとタバサはどう思うでしょう。
吸血鬼は死んでいない。なのに騒動は収まった。
そうなると犯人は騒動の終了と同時に村を出ていった…
疑いがエルザにかかるのは明白です。
「仕方がないのう、ココは一つ、可愛いエルザのために吾が一芝居うつとするか…」
「一芝居?」
「ああ、吾は芝居は見るのも好きだが、やるのも得意なのだよ」
そう言いながらテオはタバサに駆け寄りました。
そしてタバサの耳元で囁くようにこう言いました。
「タバサよ…恐らく本物は別にいる」
「…!」
「犯人は煙突から入った、だがあんな証拠の布を残すほど間抜けが10人も血を吸えるはずがない。犯人は老婆を吸血鬼に仕立て上げている。小柄な奴、子供かそれに近い体格だ」
「…」
「少し…二人で歩けるか?」
タバサはコクリとうなずき二人はそのままその場を離れます。
村人たちは燃えた家の後片付けで、その二人に気づきませんでした。
誰もいない道を歩きながらテオは口を開きます。
「お前はこう思ってるんだろう?犯人は村に居る子供のうちの誰かだってエルザを含めてな」
「…」
タバサは何も答えませんでしたが、その様子から肯定の意が見て取れました。
「だがな…タバサ…お前は一つだけ見落としているぞ」
そう言ってテオは杖を握りました。
「それはな、そもそも犯人が村に居ない可能性だ…吸血鬼はな、確かに人間に紛れ込む…しかし、絶対に紛れ込まなくてはいけない理由はない」
そして会話の中に、ルーンの詠唱をそれとなく混ぜていきます。
「例えば森の中にかくれてこっちの行動を見ている。即ち…そこ!」
そう言ってテオは森の中に向かってウィンドカッターを放ちます。
無論そこには誰もいません。ただ虚空に向かって魔法を放ったに過ぎません。
そして次の瞬間。テオはめいいっぱいのウィンドを自分の体にぶつけ、反対側に吹き飛びました。
其の奇行。
その隣に居るタバサはこう思いました。
森の中にいる「ナニカ」に攻撃を仕掛け。反対に森の中の「ナニカ」の攻撃を受けたと。
「!」
タバサは森の中に吹き飛んだテオの身を案じましたが、そこに駆け寄るような事はしませんでした。
テオのことは心配でしたが、彼女はテオが飛んでいった方向とは反対側、即ち、テオを攻撃したであろう『ナニカ』が居る方に視線を移します。
そしてそれは姿を表します。
「気配を殺した我輩に気がつくとは…な~かなかのメイジではあるが、我輩を倒すには実力不足であ~る」
そう言いながら森の中から姿を見せたそれは、口には大きな牙を蓄え、小柄な体、まるで白磁のように白い肌、獣のように鋭い目。
まるで人形が動いているような。奇っ怪な妖魔がそこにはおりました。如何にもお伽話より現れたような絵に書いたような吸血鬼でした。
その様子を、その場から少し離れた森の中から見ていたエンチラーダとエルザは…。
「アレは一体…」
「えらいのが出てきた…」
遠くからそれを見ていたエンチラーダとエルザは、そのあんまりな吸血鬼に唖然とします。
確かにそれは見るからに吸血鬼でしたが、なんというか如何にも過ぎてかえって現実味のない変な吸血鬼でした。
「ふふ、アレこそが吾の考えた究極吸血鬼である」
「ご主人様!?」
「わあ、いつの間に!」
突然の声にエルザとエンチラーダが後ろを向くとそこにはテオが立っていました。
「要は犯人を別に用意してやれば良いのだ。タバサには吾の用意した究極吸血鬼ゴーレムと戦ってもらえば良い」
「…あれ、大丈夫なの?見た目的に」
「何をいうか、何処からどう見ても吸血鬼ではないか」
「ああ、そうでした、ご主人様は吸血鬼を演劇でしか見たことが無いんでした…」
「私の存在を否定してない?」
そう言ってエルザはため息をつきました。
そのあんまりな吸血鬼でしたが、それを前にしたタバサには余裕がありません。
「キョーキョッキョッ。吾のグールを倒したくらいでい~い気になりおってメイジが、我輩、究極吸血鬼が直々に地獄におくってやろう」
(不覚)
タバサはそう思いました
テオの言うとおりです。
なぜ自分は吸血鬼が村の人間に紛れていると決めていたのか。
確かに吸血鬼は人間に擬態します。
しかし、だからと言って必ず人間の中に居なくてはいけないわけではありません。
森の中に潜み、グールを使って村の人間を少しずつ襲うことも十分に考えられることでした。
もちろんタバサもその可能性を全く考慮していなかったわけではありません。
しかし、村人たちの心理を上手く突くやり方や、証拠を捏造する行動から、吸血鬼は十中八九村の中に紛れ込んでいると思ってしまったのです。
しかし目の前の吸血鬼を見て、タバサはその考えが大きく間違っていたことを理解します。
目の前の吸血鬼には気配がありません。
之ほど解りやすい容姿をしているというのに、まるで作り物であるかのように、存在感が希薄なのです。
事実、タバサはテオがその吸血鬼に攻撃をする瞬間まで、その吸血鬼の存在に気が付きませんでした。
驚くほどに、隠れることに長けている。
誰にも気づかれず村の中の様子を観察することは容易だったでしょう。
もしテオが森の中からこちらを観察していたであろう吸血鬼に気がつかなければ、自分は吸血鬼を見逃していた。
本物の吸血鬼の存在に気がつかないまま帰還していたか、或いはその前に吸血鬼に奇襲されていたかもしれません。
しかし、反省も後悔も今はしている暇がありません。
今は目の前の吸血鬼を倒すことを考えねば。
そして、タバサ詠唱をはじめようとしますが、その時にはすでに吸血鬼の詠唱が終わっていました。
「大地に眠る恨みの固まりよ、束縛により時間を止めよ!OnTime-OnTiーMeonTime!」
次の瞬間、地面から土が葛のように這いでて、タバサに絡みつきます。
それはとても強い力で、タバサは杖を剥ぎ取られ、身動きが取れなくなってしまいました。
「先住魔法!?」
それは今までタバサが見たこともない魔法でした。
「あんな見え見えなマヌケのふりなんぞしおって、引っかかるほど吾輩は間抜けではない。貴様の血をタ~ップリと吸った後は、あのメイジの血をゆ~っくりと味わってやる」
そう行って吸血鬼は笑いました。
その吸血鬼は間違いなく強かったのです。
「キョッキョッキョ!その程度の実力で吸血鬼退治とは片腹痛い!」
「意外と強いですね…」
その様子を遠くから見ていたエンチラーダが言いました。
「当たり前だ、弱い吸血鬼では現実味が無いのでな」
「でもこのままじゃあのお姉ちゃん死んじゃわない?」
エルザが言いました。
正直、エルザとしてはタバサの命などどうでも良かったのですが、タバサが負ければ計画が崩れてしまいます。
タバサには吸血鬼を倒してもらって、国に「吸血鬼は死んだ」という報告をしてもらいたかったのです。
「安心しろ、そのへんは心得ておる………ではそろそろ行くかな」
そう言ってテオはエンチラーダとエルザの隣から姿を消しました。
「キョッキョッキョ!!どうしたメイジ!手も足もで…グハ!!」
突如、吸血鬼の両足から鉄の槍が出現しました。
そのショックで吸血鬼は魔法を解き、タバサの体に自由が戻ります。
「さあ めがねよ きゅうけつきの うごきは われが ふうじたぞ いまが ちゃんすだ」
タバサが振り向くと、そこには体を押さえ、苦しそうにしながら魔法を唱えるテオが居ました。
吹き飛ばされた時に破損したのか、其の両足は無くなっており、体を引きずるようにしてそこに寝そべっています。
彼が魔法を使って吸血鬼の両足を貫いたのは明白でした。
しかし吸血鬼は、すぐに両足から鉄の槍を引き抜くと、再度タバサの方に向かって魔法を唱えようとします。
しかし、其れをのんびりと待つタバサではありません。すぐさま落ちている自分の杖を取ると魔法の詠唱をします。
「ウンディ・アイシクル!!」
タバサがその呪文を唱えると、空気中の水分がみるみるうちに氷の矢へと姿を変え、吸血鬼に向かって行きます。
そして吸血鬼が魔法を唱え終わるよりも先に、その氷の矢は見事に吸血鬼の体を貫きました。
「オ・ノーレェェェェェェッ!!!」
攻撃を受けた吸血鬼は、断末魔を叫び、
そして…
ドッカーン!!!!!
「「「爆発した!?」」」
爆発してしまいました。
目の前で粉微塵に飛び散った吸血鬼に、タバサはぽかんと口を開けるばかりです。
遠くで見ていたエンチラーダとエルザもぽかんと口を開けるばかりです。
「ふむ」
テオだけが満足気にうなずきました。
「…………爆発した」
再度タバサがつぶやきます。
「爆発するタイプの吸血鬼だったんだろ?」
テオが言いました。
「そんな吸血鬼、本には載ってなかった」
タバサはココに来る途中に呼んだ吸血鬼に関する書物の内容を思い返してみましたが、どのページにも爆発する吸血鬼なんてものは書かれていませんでした。
「書物に書かれていることだけが全てでは無いよ。現実は驚きで溢れている、それともあれか?爆発されると何か不都合でもあるのか?」
「……」
タバサは今ひとつ釈然としないものを感じましたが、それを口にはしませんでした。
タバサの目的は吸血鬼退治であって、吸血鬼の生態調査ではありません。
なぜ吸血鬼が爆発したのかは、タバサが気にすべきことではありませんでした。
目的である吸血鬼退治は終わったのです。
其れ以上に何か仕事を剃る必要も、考える必要も彼女にはありはしませんでした。
後はタバサは其れを報告するだけです。
「…ええっと…」
「爆発って…爆発って…」
あまりの結末にエンチラーダとエルザは呆然としています。
◇◆◇◆
さて、こうしてザビエラ村の吸血鬼騒動は収束しました。
村には平穏が戻り、村人たちは安心して眠れるようになりました。
騒動が終われば、テオたちも村に留まる理由がありませんから、帰りsじたくを始めます。
部屋で荷物をまとめながら、テオが言いました。
「ふむ、まあ吸血鬼だから当然とはいえ夜でよかった」
「???なんで?」
「いくら精巧に作ってもな、所詮ゴーレムだ、昼間の光の下で観察されれば作り物だというのは一目瞭然だ。夜だからこそ騙し通せたとも言えるな」
「騙し…通せたのかな?」
エルザには一抹の不安がありました。
確かにあのゴーレムは精巧なものでした。まるで生きた本物の吸血鬼です。
しかし、不審な点が全くなかったわけではありません。
言動や行動は微妙に変でしたし、肌も妙なテカリ方をしていました、使っていた魔法も、本来の吸血鬼が使う先住魔法とは違いますし何より最後の大爆発。
怪しい点は幾つもあります。
しかし、テオはその不安を払拭するように言いました。
「さあな、だが、大切なのはタバサが吸血鬼と直接戦ったという事実だ。彼女はこれで任務をこなしたことになる。終わったか疑問の残る任務を再調査することはあっても。確実に終わった任務を再度調査するほど騎士団というのは暇では無いだろう。タバサは気づいていたのかもしれんし気づいていないかもしれん。ただ、この村から吸血鬼は消え、今後この村では吸血鬼被害が出ないのは確かだ。それで良いんじゃないか?」
そう、たとえタバサがエルザが吸血鬼であるということを疑ったとしても、エルザはテオの使い魔なのです。
其れを敵にまわすということはテオを敵にまわすということ。
一応建前上は任務をこなしたタバサが、ワザワザテオを敵にまわすという危険を犯してまでエルザを退治しようとは思わないでしょう。
「ご主人さま…そろそろ」
「ふむ、ではエルザ行くか」
そう言いながらテオが部屋を出ると、ちょうとタバサも身支度を済ませ部屋を出るところでした。
しかし、タバサは一人きりで、隣にシルフィードの姿は見当たりません。
「おや、シルフィード殿は何処に消えた?」
「もう先に帰った」
「そうか。まあ有能そうな御仁であったが、故に忙しいのだろうな」
そう言ってテオは笑います。
そして次の瞬間ナニカに気がついたように表情を変えました。
「シルフィードと言えば!そうだ、タバサメガネ、ここに使い魔の竜を連れてきているか?」
その言葉にタバサはビクリと体を震わせました。
もしかしてシルフィードの正体に気付かれてしまったのかと思ったのです。
「…連れてきてるけど…何?」
タバサは恐る恐る尋ねます。
「帰り、竜に載せてくれ、リュティスまでで良いから」
真剣な表情でテオはそう言いました。
「…良い」
タバサは断ろうとも思いましたが、此処であまりテオを蔑ろにして此処での出来事を風聴されても困ります。
リュティスまでならと、タバサは首を縦に振りました。
そしてその返答にテオはわかりやすく顔をほころばせます。
「よかった、帰りは馬車に乗らなくてすむ」
「テオ胃酸まで吐ききってたもんね」
「助かったあ、本当に助かったあ」
そう言ってテオはガシリとタバサの手を握ると、それをブンブンとふるのでした。
こうして四人は竜に乗り家路につきます。
「はっは~竜に乗ってしまえばこっちのもんだ、コノ重ったらしい足なんてポイだ~!」
竜に乗るやいなやテオは両足をそこらに捨ててしまいました。
動かすのに魔法を使う義足はテオにとって付けていて面倒なものだったのです。
四人をのせた竜はグングンと飛び上がり、凄い速さで進みます。
「お姉ちゃん」
空をとぶ竜の背中でエルザがタバサに話しかけます。
「何?」
「昨日はゴメンナサイ」
「…」
「お姉ちゃん皆のために頑張ってくれてたのに…私変な質問しちゃった」
「構わない」
そう言ってタバサは首をふりました。
「お姉ちゃん、私、なんだかお姉ちゃんのこと人形みたいだなって思ってたんだけど…」
「けど?」
「やっぱり人間なんだね」
それは決別の言葉でした。
自分とは違いやはりタバサも異種族なのだという意味合いを込めた言葉でした。
そして自分は人間とは違うのだという意味合いを込めていました。
しかし、その意味合いを読み取れないタバサはその言葉を嬉しいと思いました。
人間。
タバサは無口無表情で、何処か感情を抑えています。
タバサ自身、辛い現状を受け入れるために、出来るだけ感情を殺し敢えて人形のように振る舞う節があります。
しかし、だからこそ。タバサは誰よりも人間らしく有ろうと心の内で思っています。
それはテオが貴族になれないがゆえに、貴族であろうとする気持ちに似ていました。
「そう言えばご主人様、先程から妙に無口ですがどうかしたのですか?」
竜が飛び始めてからテオが一言も口を開いていないのを不思議に思ったエンチラーダがそう言いました。
心配そうに聞くエンチラーダに対してテオはこう答えます。
「…高いの怖い」
まさか主人の口からこんな言葉が聞こえてくるとは想像していなかったものですから、さすがのエンチラーダも驚いてしまいます。
「じゃあ、何でワザワザ、竜に乗せてもらったのですか!?」
「馬鹿者、乗るまでこんなに怖いとは思わなかったのだ!!もっとドッシリ飛ぶと思ってた。あと早いし!吾、この前の火箭の件で色んな意味で星になりかけて以来、早いのと高いのがトラウマなのだ!!!せめて、手すり。手すりを付けてたも!」
「…」
「あ!エンチラーダ今、コイツ情けないとか思っただろ!」
「いいえ思っておりません。むしろ母性本能を擽られると思いました」
「おいタバサ!この竜の鱗を錬金して手すり作って良いか!?」
「だめ、ぜったい」
テオの言葉を断固断ります。
「プルプル、こら、エルザ、膝から降りるな、体の安定が悪くなるだろ!ただでさえ足がない分重心が上にかかってるんだぞ吾は!お前は吾の膝のうえだ!」
「うん!」
そう言ってエルザはテオの体にシッカリと捕まります。
少しも離れないように。
「その役目でしたら私が…」
そう言ってエンチラーダが自分を指さしますが、
「待て待て、お前の体重だとさすがに吾の膝がしびれるだろ」
「…ああ、微笑ましいやら妬ましいやら羨ましいやら」
竜の上はとても賑やかでした。
その喧騒を聞いて。
タバサはコイツラ乗せるんじゃなかったと後悔するのでした。
◆◆◆用語解説
・相手は腐っても花壇騎士、少しでも油断したら…ボン!だな
「それからな 一歩でも動いたら ボン!だ」
のパロと思われるシーンのパロ
・思春期特有のなんかややこしいやつ
罪とは、悪とは、生きるとは…みたいになる。
中二病に近いものがあるが、微妙に違う。
・罪悪感
原作でエルザは妙にこの「食べる」ことに対する罪悪にこだわっていたように感じた。
吸血鬼が食事をして何が悪いのかと言うようなことをタバサに聞いていたのだが、
本来吸血鬼であれば、我々が食事をすることに疑問を感じないのと同じで人間を食べると言うことに疑問を感じないはずである。
なのにエルザは食べると言う行為を自身で肯定していながら、その行為の善悪を人間に訪ねていた。
心の何処かに罪悪感が在ったのではないかと妄想してみる。
理由も考えてみたらこの話のような内容が出来た。
吸血鬼としての教育を受けていないエルザは、吸血鬼として少し異常なのだと思う。
そして人間でありながら人を殺すことに罪悪感を感じないテオもまた異常なのだろう。
・人間は万物の尺度である
ギリシャの哲学者プロタゴラスの言葉。
これは「人間こそが世界の基準なのだ!」と言う意味ではない。
人間それぞれが尺度であり、その一つ一つが真実であると言うこと。
つまり全ての基準は相対的であるということ。
・究極吸血鬼
テオの考えたカッコイイ吸血鬼・
・OnTime-OnTiーMeonTime!
つまり「オン、タイモン、タイモン、タイム!」
実際は時間を止めるわけでも無く、先住魔法でもなく、アース・ハンドのような魔法を遠くからやっているだけ。別にこのあと掃除機で空を飛んだり、妖精の国に行ったりという展開は無い。
・其の両足は無くなっており
ダメージの演出と同時にもう一つ意味がある。
要は魔法の同時使用が難しいと言うこと。
吸血鬼がヤラれる瞬間、一時的にだがテオは数種類の魔法を同時使用する必要があった。
数種類の魔法の同時使用はかなり大変らしい。
少しでも負荷を減らすために、自分の足を作っている魔法を消しておいた。
・オ・ノーレェェェェェェッ!!!
断末魔といえばこれ。
・爆発。
実際ネタで書いたが、一応明確な理由もある。
究極吸血鬼はゴーレムであり、暗がりだったから如何にも本物の吸血鬼のように見えたが、体を調べられればそれが作りものであることはすぐにバレてしまう。
だから最後、爆発し、粉微塵にして死体を調べられるのを防いだ。