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No.34495の一覧
[0] 電子人形 -プラグマティックガール- (短編)[kanata](2012/08/10 09:46)
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[34495] 電子人形 -プラグマティックガール- (短編)
Name: kanata◆39944513 ID:6d3f9d3f
Date: 2012/08/10 09:46
別の物を書いていますが、電撃二次で逝ったので供養させてください。
次回に向けて、一次を通過するに足る点がどこにあったのか、知りたいのです。
残念と言えば残念なのですが、落選するだろうというのは分かっていたので……。






   《type-Enter》

 アインは男の頭蓋から端子を静かに抜いた。
 自身とターゲットの他に人の気配がしたからだ。
 脳裏に選択肢が三つ浮かぶ。
 一つ、逃走。
 二つ、待機。
 三つ、戦闘。
 即座に三つ目を否定する。わずかなりとも騒音を立てるのは好ましくない。
 一つ目も若干迷いながらも廃棄する。大半の情報は抜き取ったが、脳の深層部に隠された記憶データが意識によるプロテクトに阻まれて、まだ入手出来ていない。秘密という意識はとてつもなく厄介だ。
 二つ目を選択するのが最善に思えた。
 意識のない男をベッドの下に押し込み、アインは音を立てないよう、細心の注意を払ってクローゼットに忍び込んだ。
 気配と微かな足音が部屋に近付いてくる。このゆったりとしたリズムからして、通路を使い慣れた使用人である可能性が高い。
 部屋の前を通り過ぎるだけなら良いのだが。
 しかし、世の中そう上手くいくようには出来ていない。
 ノックの後、ドアノブが回った。声を通す程度に開く蝶番。
「旦那さま……、○○社の方がご挨拶をしたいと……」
 舌打ちしたい気分だったが内心だけに留めておく。
 ○○社と言えば新興の武器商社だ。総合ブローカーたる男のパーティーに来ていないはずがないか。
 男が休憩のため自室に戻ったところを狙ったはいいが、まさかこんなに早く呼び戻されるとは想像していなかった。各国に太いパイプを持つブローカーには五分の休息も許されないらしい。
 部屋にいないと勘違いして、そのまま他の場所へ探しに行ってくれれば問題はない。だが、部屋に入ってきたら沈黙させる必要があるかもしれない。
 パッと見では痕跡などの把握は難しいだろうが、部屋の中で間近に観察された場合は違う。完璧に痕跡を隠す余裕はなかった。
 体内のPPPに命じて、読み取りのままスタンドバイさせていた状態を解除する。ダウンロード途中だったデータが破損するのが分かったが、それも仕方がない。右手人差し指の先にPPPによる端子を形成する。
 嫌な予感は当たるものだ。中年のメイドが「旦那さま……? 失礼いたします」と部屋に歩を進めてくる。
 非常に不味い状況だ。
 ベッドの下はとっさに隠しやすい場所であったが、それゆえに立ち位置や角度によっては見つけられてしまう。
 もしあのメイドがアインの存在に気付かない振りで、大量の敵を呼び寄せてしまったら。ダウンロード中に囲まれてしまったら逃げることは困難だ。
 それよりも先に注意を引きつける。希望ではなく、予測で未来を組み立てる。
 クローゼットをわずかに軋ませて、スリップドレスの白色に明かり色の線を描かせる。
 メイドの足が止まった。
 それを確認してから、わざとゆっくり、見せ付けるように扉を閉じる。
 次のメイドの行動によって、アインの取る動きも変わる。そこを間違えたら終わりだ。即座に脱出措置を取らなければならない。
 もっとも間違える気はなかったが。
 クローゼットの中を確認しようと近付いて来たならば、開けた瞬間に端子を挿す。ハッキングに多少の時間はいるが、所詮は一介のメイドだ。大したプロテクトがかけられているわけでもないだろう。戦闘修練を積んでいなければ、声を出す前に物理的に黙らせることも出来る。
 逆に部屋を出て、警備を呼ぼうとした場合。
 メイドが取ったのはこちらだった。
 爪先を翻し、扉へと駆け寄る。
 アインはクローゼットを限りなく静かに、素早く脱出し、そして跳んだ。微かな踏み切り音を聞いたメイドが振り返り、その顔が焦燥に彩られる。視界の予期した位置にアインが見当たらなかったからに違いない。
 天井を蹴り、アインの姿を探すメイドの背後に着地、後頭部に端子を突き刺した。
 プロテクト、クリア。
 本来のコントロールを行う脳からの指令を妨害し、偽装した命令をPPPに発信させる。
 『合図があるまで、眠れ』
 強張っていた体からぐたりと力が抜けるのを受け止め、一息つく。端子は抜かず、記憶領域にアクセスしてこの部屋で起きたことを削除する。直近の短期記憶ゆえにさほどの時間は要らない。
 改めて、男に端子を挿し直し、もらうべき物をもらう。乱暴になるが、男の脳も借りて並列演算で強固なプロテクトを解除していく。負荷が限界を超えると持ち主に多大な影響が出てしまうため、今回のような隠密作戦ではなるべく使いたくない手段だが時間がなかった。
 脳が爆発する寸前でなんとかオールクリアし、目的の記憶をダウンロードする。検証は後で行うとして、今はとにかく持って帰ることが重要だ。引き延ばせてもたかが数分、それ以上は不審に思われる。
 ダウンロード、コンプリート。
 用意していた偽の記憶データを植え付け、二分後に目覚めるよう設定してから端子を完全に抜き取る。
 ベッドの奥に回り、男に近付くに当たって使っていたドレスの内側、スカートの裏地に固定していた別のドレスに着替える。男の同業者が連れてきた女の物に似ているのは、もちろん意図的である。男と仲が良いとは言えず、長居はけしてしないだろうということも作戦に織り込んである。
 そして、仰向けに寝ている男に馬乗りになった。
 男が目覚める。
「クソッ! やらせはせんぞ!」
 今まさに意識を奪おうとしていた。そんな体勢で待ち構えていたアインを殴りとばす。本来なら殴られる拳を受け止めることも出来たが、大人しくベッドから転げ落ちておく。
 突然の展開に彼が違和感を覚える行動は慎まなくてはならない。せっかく色事を装う華奢なベッドに押し倒される記憶を植えつけたのだから。
「警備! 何をしておる、さっさと来い!」
 枕元の電話に怒鳴ったのを聞き、予定通りにスイッチを押した。
 爆発音。
 同時に部屋の明かりが全て消える。
 メインの電気設備を破壊したのだ。
 すぐさま予備系統が働き始め、明かりが回復する。だが、アインにはその一瞬で十分だった。
 三階の窓を突き破り、アスファルトの駐車場へと飛び降りる。
 着地と同時に転がり、衝撃を逃がす。体内のPPPを振動させてダメージを分散させるのも忘れない。
 走り出しながら煙幕を張る。設置花火のように縦に伸びる煙を貫いて、弾丸が頬を削る。昏倒しかけた脳を察知しPPP制御に移行、あらかじめドアロックを外しておいた客の車を適当に選んで飛び乗る。
 キーロックに端子を挿す。解除。エンジンを回す。
 離脱。
 何かをされる寸前だった、と捏造された記憶を持つ男が追跡に労力をかけることはないはずだ。これを口実に同業者に圧力をかけていくだろう。
 アインは少数の追っ手を完全に撒いた後、乗り物を換え、変装し、日常に紛れた。

     《type-Illegal》

 現代における医療技術の進歩は幾度かのIT革命と共にあったと言っていい。
 特に、第五次IT革命における最大の発見である、生体電子互換技術は新薬以上の効果をもたらした。
 人体とは原子や電子の集合体だ。これは万物にも言えることである。結束を解いてしまえば別の物に変化してしまう。形を保ったまま、物体を構成する要素を解体する――そんな半ば狂った考えの結果として、生体電子互換技術は産まれた。
 現状ではまだ実用化にはほど遠いと言わざるを得ないが、人体のブラックボックスのいくつかを解明するにも十分な役目を果たした。まさしく破格の技術だ。
 また、コンピュータで組んだ電子回路システムを生体電子と互換することで、すでに死んでしまっている神経回路を構築し直すといった、再生技術にも寄与している。今は電子として認識できる回路しか置換は出来ないが、そのうちに肉体その物を生体電子に変換し、ゼロとイチの電脳世界に侵入することも理論的には可能だと言われているのだ。
 様々なハード、ソフト、技術が開発、流用され新たな電子社会が構築されつつあり、また分野を超えた活用法が見出されていく。
 どのような技術や知識も活用しようと思えば、どのようなジャンルでも応用は可能であり、それが顕著に現れたのが第五次IT革命だったということだ。
 そして当然の如く、軍事的にも使われた。

 《PPP》。
 それは『Parasitic Political Painkiller』と呼ばれた。パラスティックポリティカルペインキラー、寄生的政治鎮痛剤。
 ある企業で人工的に創られた寄生虫の名称である。寄生虫というのもあまり正しくはない。
 高度な演算能力を有した生体電子による意識体。人間の生体電子に寄生しなければ生きていられない依存の強い人工生物だ。自我は持たず、寄生主の意志に忠実。いわばもう一人の自分とも表現出来る。
 人の生死すらも電子的な操作がある程度可能となった現在、情報の価値はさらに膨れ上がり、より貴重かつ重要な位置付けに置かれた。
 とは言え、機械の補助無しに演算、操作をただの人間が行うのは不可能に近い。スーパーコンピュータを利用して、かろうじて実現出来ているものを民生レベルで再現するのに何年もかかるだろう。
 その状況を逆手に取り、もし、単身であらゆる演算操作を可能とする人間を創れたら。
 アインは、とある世界的企業が巨額を投じて進める、PPPプロジェクトのプロトタイプなのだった。プロジェクト自体を4P、アインたちのことを5Pと研究員は呼ぶ。
 しかし、噂を聞いたごく僅かな人間は彼女たちをこう呼んだ。
 3PG『Programmed Paradoxical Parable Girls』。
 奇妙な寓話をプログラムされた少女たち。
 ――すなわち、『電子人形』と。


     ◆


 アインが例のブローカーに近付いたのは、フィーアの情報を持っているという噂が流れたからだ。
「やっぱりガセのようですね。せっかく持ち帰っていただいた膨大な記憶データですが、フィーアのことは一バイトも知らないようです。信頼度は元々低かったですけれど」
 ツヴァイがお手上げ、とでも言うように座っている椅子を回して、こちらを向いた。
 三つ編みにした長い深緑色の髪が宙を切る。
 四十インチの大きなディスプレイには複雑なコードや履歴が表示されている。多少は分からないでもないが、ここまで専門的な物になるとアインには手が付けられなくなってくる。
 情報処理に長けたツヴァイがこう言う以上、やはり噂でしかなかったのだろう。
 半ば『企業』の罠である可能性に賭けてもいたのだが、ホームに帰ってきて一ヶ月が経っても何ら変化のないところを見ると、本当にただの噂だったと結論するしかない。『企業』の罠ならば全員に届くよう、情報を操作するだろう。
 当てが外れることなど、よくあることだ。
 また地道に情報を集めるしかない。隠密に長けたドライを見つけだすのは至難だが、フィーアならばそう難しいことではないはずだ。
「早く見つかるといいですね……」
「四人集まらないと、一泡噴かせることも出来ない」
 要塞の如き本社ビルから逃げ出す際に散り散りになってしまったが、ツヴァイとはこうして合流出来た。
 捜索と同時に『企業』を攻撃する準備も着々と進めている。
 武器や移動手段の調達、予想されるPPP対策に対するカウンター、効率の良い落とし方など。だが人員不足だけはどうしようもない。
 アインも戦闘訓練を積んではいたが本来の専門分野は潜入工作であり、戦闘技術に関して一流であっても超一流ではない。敵の防壁を破壊するのは得意だが、実際に暴れるのはやはりフィーアのような専門家に任せた方がいいのだ。
 くきゅる、と音が鳴った。
 全くの予想外な音に一瞬、体が硬直するが、音源を察して思わず笑みを浮かべてしまう。
 一仕事終えたばかりのツヴァイは鳴らしたばかりのお腹を押さえて、恥ずかしそうに頬を染めた。
「ちょ、ちょっとばかり飲まず食わずだったものでして……」
「うん、解析お疲れ様。買出しに行ってくるから少し我慢して」
「お願いしますー……」
 雑多に積まれた書類の上に倒れ伏すツヴァイ。再び悲鳴をあげたお腹のために、アインは財布を持って玄関へと向かった。向かおうとした。
「それには及ばないよ。再開を祝して、いくらか買ってきたからね」
 いつの間に入り込んでいたのか、部屋の扉を背に、ドライが腕を抱えて立っていた。
 咄嗟にツヴァイを背に隠すよう移動し、アインは右手に端子を表出させた。同じプロトタイプに効くかどうかは試したことはないが、ハッキング能力に関してはこちらが上のはずだ。
「久しぶりに会った、っていうのに挨拶の一つもないのはあんまりじゃないかい?」
 ドライは悲しそうに目を伏せる。演技のように見えるわざとらしさは相変わらずだ。いちいち仰々しいとでも言うべきか。
「それなら、出会い方を考え直した方がいい。前触れもなくプライベートスペースに現れた人を警戒するのは当然」
「言われてみればそうかもしれないね。でも、だからと言って玄関をノックしたらアインは開けてくれたのかい?」
「そんなことをしてくるのは、ドライに良く似た身代わりを診立てた、『企業』の派遣した回収班ぐらいしかいない」
「だろう? 敵対しているつもりはないから、警戒は解いてくれよ。たった四人の仲間だろ、別れる時に誓った通り」
 しかし、アインは緊張を解かない。
 口だけならなんとでも言える。ツヴァイと違って、ドライやフィーアは戦闘面でアインを圧倒出来る分野を持つだけに、簡単に信頼しては危険だ。
 腕に通した近所のスーパーマーケットの袋を揺らして、ドライは頭を掻いた。真っ先にあの袋を手元から離したいところだが、地面に触れた途端に閃光を放つ、なんてことも考えられる。下手に触れられない。
 部屋に侵入される前に気付けなかった時点でドライが優位に立っている。
 固まっている雰囲気を打ち砕くように、彼女は話し出した。
「ボクも、そう簡単に信頼されるとは思ってなかったよ。だから一ヶ月も待ってあげたし、この部屋に入ってからも気付いてくれるまでここに立ってたんだ。君たちを殺したり、回収するつもりなら、今、ここにいないさ」
「じゃあ、あの噂はあなたが流したんですか?」
 黙っていたツヴァイが口を挟む。
 あるブローカーが希少な商品を秘密裏に入手した、という噂が流れていた。
 常に何人かの商人の情報網は握っており、こういった情報が得られる度に周辺情報を確認して網にかかるのを待っていたわけだ。噂が流れ始めた時期にちょうど男がパーティーを開くことを知り、タイミング的にどうやら商品を紹介する場に違いない、と踏んだ。
 顧客を調査したところ軍や傭兵団、マフィアの重鎮や有名企業の幹部などそうそうたる顔触れがそろっていた、ということも理由の一つだ。
 ターゲット層が明らかに違う人物を集めてどうするのか、不思議に思ったツヴァイが探し当てた商品の概要は『人間』だった。それも、少し特殊な。
 まさかドライが捕まるとは考えられず、だとしたらフィーアしかいない。
 だからこそ、あの屋敷に忍び込んだのだが、結果は全くのハズレ。
 ツヴァイはドライの仕掛けた罠に引っ掛かったのだ。ドライの言に従えば。
 そして追っ手を完全に撒いた、と思っていたアインは密かに尾行していたドライを案内してしまっていたらしい。こういったことをやらせたらドライは抜群に上手い。
「探知は君たち二人にかなり劣るからね。見つけられないなら見つけてもらおうと思っただけさ」
「それじゃあ、フィーアは」
「残念ながらボクも知らない。彼女のことだから紛争地域にでも行ってるのかもしれないね」
 肩をすくめるドライの様子に、アインは端子を体内に納めた。
「……分かった。ドライの言うことを信じる」
「ありがとう、嬉しいよ」
 ツヴァイも喜びを顔に出してに手を叩く。
「なにはともあれ、これで三人そろいましたね!」
 緊張感が抜けて緩んだのか、ツヴァイのお腹が三度鳴った。
 可愛らしい音色に噴き出したドライが袋を持ち上げて、
「色々買ってきたけど、どうせだし近くのトラットリアにでも行くかい?」
「そうね。……再会を祝して」

     《type-Negative》

 闇に溶ける黒い髪を見て、アインも行動を開始する。
 眼前には物理的にも、電子的にも、軍事要塞同様の厚い守りを誇る『企業』のビルがそびえ立つ。
 体内に寄生するPPPが久々の帰郷に喜びの声をあげた。気がした。
 暗い笑いが漏れる。
 私たちは、お前たちの故郷を塵と化すために帰ってきたというのに。
 夢物語は現実になるべきことではなく、語られているべきものだ。私たちは普通の女の子で良かった。
「私たちは言いなりの人形なんかじゃない……」
『アイン、正面に警備が集まってきています』
 監視カメラの画像を盗み見ているツヴァイから通信が入る。暴れる時間だ。
『数の力で圧倒するつもりのようです。正面ゲート開きます、今』
 強固な防壁にわずかな隙間が空いた。
 その隙を逃さず、ミサイルを撃ち込む。
 狙い違わず隙間から中に飛び込み、爆発が始まる。それだけで終わらせず、新しいミサイルを次々と撃ち込んでいく。狙いを散らして建物の破壊も忘れない。
 ミサイルが切れたところでグレネードを五個ほど放り込む。もしかしたらいるかもしれない生き残りを仕留められたら御の字だ。
「壊すよ」
 二つ、返事があった。

     ◆

「もうさ、探しても見つからないんじゃないかな」
 ドライがそう言ったのは再会してから半年ほど経った頃だった。
 最近では近所の人に顔を覚えられてしまっていて、もはやセーフハウスではなく生活地になっている。
 追われているのも忘れてしまいそうになる。ツヴァイの努力のおかげなのだが。
「じゃあどうしろって言うんですか」
 撹乱の功労者たるツヴァイも反論はしているものの、疲れてしまっていて覇気がない。
 無理もなかった。
 なにしろ情報が出ない。時たま見つけたとしてもよくよく調べるとガセ。粗雑なフィーアのキャラクター的に問題を起こさない方が難しいはずなのだが……、という先入観が情報収集を担当するツヴァイに責任を重く感じさせている。
「何か考えがあるの」
 アインが尋ねると、ドライも自信満々にとまではいかないが、
「ボクたち三人で本社ビルを落とすのさ」
 そう、自信を覗かせる表情で言った。
「それが無理だからフィーアを探してるんじゃないですか~」
 テーブルに突っ伏してツヴァイが嘆く。
「まあちょっと聴いてよ。フィーアの情報が全く出てこない、という理由で考えられるのは三つ。もう死んでる、回収された、情報の出ないところにいる。だよね?」
「確かに前者二つだと探す意味はないけれど」
「情報が出ないのは、人がいないか、情報を発信出来るところにいないか、そもそも力を使っていないか。もしくは力を使っても疑われないところにいるか」
 ドライの言いたいことがなんとなく分かってきた。
「つまりフィーアは戦場を転々としてる、ってことですか?」
 ツヴァイもその可能性を切ってはいなかったようで、顔を上げた。紛争地帯における噂や情報は話半分に聞いていても足りないほど正確性に不足している。
「確かに活躍している女性の方もいますけど……」
「まあ目立った活躍をしない程度の分別はある、と期待しよう。で、もしフィーアが戦場を渡り歩いてるとして、きみたちならどうやって戦場に参加する?」
「それは……」
 どこかの軍か戦争屋と契約するのが手っ取り早いだろうが、アインはその選択肢を真っ先に否定した。フィーアが大人数で団体行動を取れるわけがない。
 だとすれば、
「傭兵か」
「たぶんね。それでもし、ボクたちが企業に対して宣戦布告したら、あちらはどんな手を取るだろう」
「警備部を備えてはいるけど、私たち相手だとしたら戦力を補強するはず」
「そこらの傭兵や戦争屋さんに話を持ちかけるかもしれませんね」
「そこまで話が大きくなれば」
「話を耳にしたフィーアが出てくるかもしれない」
 考えを場に馴染ませるかのように、ゆっくりとドライは頷いた。
 アインは腕を組んでうなる。
「でも、かなりの賭けになる」
 そこまでやってもし出てこなかったとしたら――その可能性の方が大きい――完全に防備を固めた『企業』の相手をすることになる。いつでも寝首をかける、という現在の優位性を失うことになるのだ。
 この差はあまりにも大きい。
 ツヴァイが囁くように言う。
「……わたしには、それをやろうとは言えません。わたしに出来るのはバックアップで、実際に危険な目に遭うのはアインとドライです」
 アインはドライに視線を向けた。
 彼女は苦笑して、
「言い出した本人がやりたくない、とは言わないよ。ただ、アイン、きみがこの作戦を認められないと言うなら、また別の方法でアプローチしよう」
「……どうして?」
 そんなに軽い気持ちで発案したわけではないはずだ。
「どうして、って……。だって、アインがリーダーだろう?」
 ドライは至極当然のことだと言わんばかりに肩をすくめた。
 ツヴァイまでもがコクコクと頷いている。
「リーダーなんかになった覚えはないのだけど」
「だってきみが一番目の『電子人形』じゃないか」
「……少し、考えさせて」


 その夜、アインは二人に告げた。
「一月後、『企業』本社ビルを陥落させる」

     ◆

 フィーアは現れなかった。
 待っている余裕なんてものはない。進むしかないのだ。
 まずは地下に向かう。自社内サーバーがあるからだ。
 殲滅した一次隊の屍を乗り越え、警備人員で構成されているであろう増援が来ないうちに内部へと潜入してしまう。
 ルートについては、ツヴァイが事前に入手した設計図を元に練ってある。
『サーバールーム手前に待機四名。サブマシンガンで武装している様子』
 監視カメラで得られる情報をツヴァイから受け取り、その通路手前で壁に見当を付けて端子を突き挿す。比較的プロテクトの甘い電灯設備をハッキングし、暗闇を作り出す。
 広がる暗闇をPPPで解析し特攻、突然の暗幕に虚をつかれ、対応に苦慮している四人に銃弾をばら撒く。
 三人はその場で崩れ落ちたが、一人だけ銃撃に耐え、倒れながらも反撃しようとしている。慌てることなく、アサルトライフルをセミオートに変更し、正確に相手の頭蓋を照準、人差し指の動きのみで破壊する。
 壁を背に使いきった銃弾を補充する。敵は来ない。
 一度も使われていない敵方のサブマシンガンを拾い、マガジンごと銃弾をいただく。アインの持つ突撃銃では使えない弾丸だったので、一番具合が良さそうなサブマシンガンを頂戴し、PPPで電子ロックを解除する。
 アサルトライフルの他にもハンドガンやダガーは持ってきているが、武器は動きを妨げない範囲で持っているに越したことはない。
 サーバールームの鍵はさすがにプロテクトが堅かった。左手からPPPのコードを伸ばし、気絶している人の脳を借りる。
 十秒後、サーバールーム内部への侵入に成功した。サーバーラックの隙間を駆け抜け、すぐさまサーバーに接続、手ぐすね引いて待っていたツヴァイとコントロールシステムを繋ぐ。
「ツヴァイ、どう?」
『良好。全ロックを解除、防衛システムの対象をアインとツヴァイ以外に設定し直して、再起動しまし……っ、アイン後ろ!』
「戻ってくるなり、問題を起こしてくれるね……」
 声に振り返ると同時、筋肉が硬直する。動けない。
 全身が石のように固まった身体が床に投げ出される。
「僕が安全対策をしているとは思わなかったのかい?」
 声を聴けば誰だか分かる。
 こいつを恨まない日はなかった。
「室長……っ!」
 仰向けに転がったアインの視界に、白衣を着た痩せぎすの男が立っていた。小さな機械を手に悠然と歩いてくる。
「PPPに指示を出した。こいつの効果範囲内では生理機能を除いて活動を停止するように。まあ一人にしか効かないのが難点だがね」
 安全装置の予想はしていたが、ここまで絶対的な物だとは思っていなかった。
 PPPを使いこなしつつあるアインたちならば、指令を受けたところで改竄出来ると考えていたのだが、想像以上に創造主は絶対だった。
 安全装置に比べ、脆弱すぎる保全プログラムが活動を始める。アインに自由を取り戻すべく命令を書き換えようと頑張っているが、その作業は遅々として進まない。
 近寄ってきた室長の腕に抱えられる。アインの知っている室長に比べ、少し痩せたようだ。
 石のように硬くなった身体だが、皮膚まで硬質化してしまったわけではない。アインたちと違い、室長の腕が温もりを伝えてくる。
「アイン、きみ一人だけかい、ここにいるのは。ツヴァイは……後で迎えに行くことにしよう」
「殺さないの。そんな悠長に質問している隙に、私がPPPの管理を取り戻すかもしれないというのに」
 室長は暗い瞳で、以前と変わりない笑みを浮かべた。
「殺すだなんてとんでもない。ただでさえ、一体破損しているんだ。きみたち残りの三人には研究に協力してもらわないといけない」
 ――破損?
「……フィーアが?」
「知らなかったのか? とすると、ドライか。我々が回収したフィーアからはPPPが抜き取られていてね、目下、奪った犯人を捜しているところだ」
「嘘」
「嘘を吐いてどうする。さあ、アイン。良い子だから、ドライの居場所を教えてくれ」
 直後、ドライが現れた。
 室長の背後に。
「後ろ」
「え……?」
 室長は表情を驚き、と言うよりも戸惑いで彩り、振り返ろうとした。しかし、その前にドライがトリガーを引いた。
 乾いた音がする。
 室長の顔が真紅に散った。
 紅い生命がアインに降り注ぐ。
「終わったね。あとは仕掛けた爆弾を起動して、このビルを破壊すれば、全部なくなる」
「ドライ……」
「――と、本当に思ってた?」
 惑うアインの迷いを断ち切るように、ドライは死体の取り落とした安全装置を遠くへと蹴った。

     《type-Synthesis》

「どうして?」
 信じられない気持ちでアインは尋ねた。
 たった四人の仲間。そう言ったのに。
「どうしてフィーアを殺したの」
 ドライは何も答えなかったが、少し笑った。
「何をしたか分かってるの」
「分かってる」
 左手から端子を伸ばして、ドライはシステムをいじった。全ての隔壁が閉まるというアナウンスが響き、サーバールームの扉も音を立てて閉まる。
 操作が出来る、ということは情報処理専門のツヴァイよりも強い能力を保持していることに他ならない。
「本当に、フィーアのPPPを……」
「ああ。ボクが奪った」
 陽気に聞こえる普段の口調を忘れてしまったように、ドライは淡々と言葉を紡ぐ。
「知らなかったんだ。アイン。きみのPPPをボクのPPPで吸い出したら、きみ自体はどうなると思う?」
「……分からない」
 そもそも摘出したり、PPPだけを吸い出せるものなのだろうか。
 企業に回収された場合は、自身ごとPPPとして生体電子変換されるのだろう、ぐらいにしか深く考えたことはない。アインがもう一人の自分を見る時が来たならば、それこそがアインの死ぬ時なのだ。
 そうされないために戦っている以上、考えるだけ無駄だったし、なにより想像したくなかったのだ。
「PPPはPPPを吸い寄せる性質があるらしい。上位の――端子を挿した方のPPPに統合されるんだ」
 アインは無言で応えた。
「単なる実験のつもりだったんだ。神経回路に寄生していたPPPは様々な場所の電気神経を奪ったまま、ボクのPPPに吸収、統合された。結果、フィーアは廃人になった。生きてはいたよ。……生きてはね」
「合体が出来るなら、分離は」
 言葉を終える前にドライは首を横に振った。
「出来ない。合体じゃなくて、統合したんだ。完全にボクと混ざってしまって、分割しようにもどの何がフィーアの物だか分からない」
 紅茶のようなものさ、とドライは言う。
「瑪瑙色になるまでミルクを混ぜたら、もう元の澄んだ色には戻らない」
「……新しく淹れなおすことも出来ないし、ミルクを足してもミルクにはならない」
 全部を消したところで元には戻らない。全てを足したところで、同じ物にはならない。
「分かってる。ただの八つ当たりだよ。自分たちの浅慮で仲間を殺したっていうのにね。でも、何かを恨まないとボクは……」
 黙りこんで、俯く。
「だから私も殺すの?」
 その問いに、ドライはギクリと肩を震わせて、その後に乾いた笑いを浮かべる。
「殺す。……うん、そう。殺す……」
 何度も確認するように頷いて、
「……そうだよ、PPPを奪った後、ボクはアインを殺す」
「私のPPPを奪ったところでメリットはなさそうだけれど。ドライとフィーアの二人分だけで、十分なほどの能力を備えている」
「それは違う」
 アインに覆いかぶさっていた室長の死体をどかし、ドライはアインの頭を膝に乗せた。鮮血に濡れた身体が冷えていく。
「元々、PPPは一人で完結する物のはずだった。一人で全てを負担するには現在の科学力が及ばなく、仕方なく四人に分けただけ。PPPを宿すのは一人でいいんだよ」
「その言葉の意味、理解している? ……あなた、死ぬわよ」
 最先端の科学の結晶がアインたちなのだ。それ以上は行き先も不明なままの未踏の地だと言うのに。
「一人寂しく、海に沈むなんていうのは、裏切り者の末路みたいだよね」
 軽い笑いが乾いた雰囲気を湿らせる。
 生き残ったところで、PPPなんてオーバーテクノロジーを宿す私たちに安寧が訪れるとは思わない。
 今回のテロでアインたちの存在を知る者は爆発的に増加するだろう。
 アインたちはなんとでもなるが、問題は生存能力に欠けるツヴァイだ。常に逃げ回る生活は体力的に厳しいものがある。
 結局、捕らえられて実験台になるか、殺されるか、玩ばれるか。
 そんな未来が透けて見えたことを、アインは実行前に言わなかった。
 言えなかった。そんな未来があることを信じたくなかった。絶望の鎖を断ち切ったら、きっと希望があるのだと思いたかった。
 ドライだけは違ったのだ。
 現実をきちんと把握していて、その上で苦難を一人で引き受けるつもりなのだ。
 汚れた腕に傷ついた純心を抱えて。
「私を殺して、その後は?」
「ツヴァイのPPPをもらって、後は死ぬまで似たような研究をする企業とかを全部破壊していくつもり」
 ようやく対抗プログラムが安全装置の命令を凌駕しつつあったが、ドライはそれを見逃すほど甘い相手ではない。それを分かっているからこそ、アインは自分で切欠を投げた。
「そう……。そろそろお別れ、ね。……寂しくはないの」
 ドライが端子を生やした指をアインの首筋に添える。
「……寂しいけど……、寂しくないさ。みんながボクと一つになって、ボクが死ぬまで一緒にいるってことだから」
 躊躇の表れか、微妙に震えている端子を感じる。
 ゆっくりと肉の中に潜り込んでいくのが分かる。体内のPPPが同類の存在を察して集まろうとしているが、停止命令が未だにギリギリで効いていて、微動だにしない。プログラムは結局、間に合わなかった。
 二人分のPPPに解けないプロテクトはない。
「じゃあね、アイン」
 ツヴァイお手製のプログラムでもあれほど時間がかかったプロテクトが、ほとんど一瞬で解除される。
 停止命令も同時に削除され、PPPが端子へと殺到し、銃声と共に端子が抜かれた。収束すべき対象が離れたことで行き場を失くし、PPPが再び体内に散っていく。
「アイン……ッ! 無事ですね!」
「ツヴァイ!?」
 ビル近くの拠点で待機しているはずのツヴァイが息を切らして、扉の脇に立っている。
 大型の自動拳銃でツヴァイに狙いをつけるドライに向かって、拾い直したアサルトライフルで銃弾をばら撒く。ドライは舌打ちをして巨大なサーバーラックの影に隠れた。
「ツヴァイ、どうしてここに」
 企業の人員とドライ、どちらが来ても対応出来る位置へと引きながら、そのまま退却行動に移る。
「ドライにシステム権限を、奪われた時点で、おかしいと思いまして。いくつも隔壁が閉じてて、ロックを解除するのに、時間がかかりました、すいません」
 肩で息をしながらもきちんと付いてくるツヴァイ。
「ありがとう。とりあえず一度引く。室長は死んだから、一応の目的は達した」
「はっ……は。分かりまし、あっ」
 突き飛ばされる。
 たたらを踏んで振り向くと、交差路に佇んでいた拠点防衛用ロボットによる機関銃の掃射がツヴァイを壁に張り付けたところだった。
 ツヴァイの無力化を確認して掃射を止めたロボットにフルオートで銃弾を浴びせながら、一足飛びに近付き、PPPでハッキング。電源を落とす。弾の切れたアサルトライフルを捨てて、即座にツヴァイの元へ取って返す。
「ツヴァイ!」
「……失敗、しちゃ……まし、た……。ター……ット、せってい……」
 息も絶え絶えに、苦笑を作ろうと顔を歪めてツヴァイが言う。
 思い出す。防衛システムの攻撃対象はアインとドライ『以外』だ。直後にドライに権限を奪われて、設定を直す機会はなかった。
「ツヴァイ、生きてっ!」
 声をかけたが、もう彼女には届いていない。
 歯痒い。
 PPPならば多少なりとも延命措置を取れるのに、PPPを持つためにそれは出来ない。
 ツヴァイの瞳がアインを探すように揺れた。
「さい……まで、……たず、で……ご…………」
 ツヴァイの首が落ちる。
 『最後まで役立たずでごめんなさい』
 PPPが勝手にツヴァイの緩慢な、わずかな唇の動きを解析する。
 そんなことはない、そう言ってあげたかった。
 しかし、聴いてくれる相手はもういない。
 作戦を立てるだけ立てて、実行出来ないと自身の力不足を嘆いていたが、ツヴァイはアインに出来ないことをたくさんやってくれていた。それはとても大事なことだと、言ってあげたかった。
 それに今だって、ツヴァイがいなければ死んでいたかもしれない。
 どれほど救われていたのか、分からない。
 戦うのは私の役目なのに。
 守れなかった。
 ――高く響く靴音が思考を中断させる。
 まだ終わっていない。
「今まで、ありがとう、ツヴァイ」
 ツヴァイに端子を挿した。できうる限り、優しく。慈しむように。
 自分たちが死んだらPPPも一緒に死ぬ、そう漠然と思っていた。だが、ツヴァイのPPPは端子から宿主が死んでいるとは思えない勢いで吸い込まれてくる。死んでからさほど時間が経っていないからかもしれない。
 全てを奪い去り――統合が終わる。
 確かに意識出来るPPPは先ほどまでに比べ、強烈な違和感を放っていた。奇妙な圧迫感すら感じる。
 何が変わったか、というのはそれくらいで、スペック面で変化を感じ取れるようなことはなかった。そのうち分かっていくのかもしれない。
 しかし、それらの感覚以上に、ツヴァイと一つになったという充足感で満ち満ちている。
 アインは前を向いた。
 通路の先にドライが立っていた。
 ツヴァイの身体を丁寧に横たえてから、立ち上がってドライに相対する。
 アインが武器を取るのを待ち、ドライも両手で武器を構えた。
 ドライの構える近距離において最強を誇るサブマシンガンに対し、アインが腰から抜いたハンドガンは貧弱と言わざるを得ない。
 しかし、ここに至っては武器の差など、どうでもいいことだ。
「生き残ったら、きみは何をするんだ、アイン」
 アインはゆっくりとマガジンを抜き、銃弾を一発、取り出した。
「ホームに戻って、淹れたての紅茶を飲む。それからあのトラットリアで日替わりメニューを頼む。それを四人で食べる」
 マガジンをハンドガンの中へ戻し、スライドを後ろまで引いて、弾丸を装填する。
 抜き取った銃弾を二人の中央へと指で弾く。
「なんだそれ、ずるい」
 ドライが今にも泣き出しそうな顔で言った。
 くるくると回転しながら落下する弾丸が、二人の絡みあう視線を断ち切り――
 そして、銃弾が床に触れる。
「ボクが代わりたいぐらい」
 ツヴァイの選んでくれたハンドガンが一度、弾を吐いた。

     《type-EINS ”Pragmatic Girl”》

 昨日の日替わりはキノコとサーモンのクリームシチューだった。
 この程度の簡単そうなメニューなら作れるかもしれない、と思い立ち、顔馴染みになった店主にレシピを聞いてみた。
 ウチの味を盗むのは難しいぞ、と笑いながら書いてくれたレシピには、ご丁寧なことに材料を調達するお店まで書いてくれている。
 散歩を兼ねて、あちこちを回り、食材をそろえて帰ってくる頃には夕日が沈んでいた。
 レシピを見ながら包丁を構え、鍋をおたまでかき回してみる。
 少し焦がしてしまったが、見た目には大差ないクリームシチューが完成した。
 だが、どうにも味に納得がいかない。昨夜食べたシチューはもっと美味しかったような気がする。
 少しだけ容器に入れて、トラットリアに持っていってみた。
 どれだけ人がいいのか、店主は目こそ丸くしていたものの、一口食べてすぐに原因を特定してくれた。
 ブラックペッパーをわずかに振りかけたクリームシチューは、とても美味しかったように思う。しかし、やはり昨夜食べたシチューと比べると物足りない。
 大人しくトラットリアに通いつめることにしよう、と心に決めた。


 PPPを起動する日常は、まだ来ない。









※備考(作品情報と言い訳)
・某サイトのある企画のために半日程度で書き上げた物(削除済み)を、お慰み程度に改稿したものです。長編が間に合わなかったので、これを投げました。そのため、設定・構成・キャラクター・ストーリー、すべてにおいて練りが甘いというか思いつきのままです。
・途中、重要なセリフの中でキャラクター名を間違えています。

以上のことを踏まえて、どうか殴っていただけるとありがたいです。


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