【イリア・プラティエ邸 滞在時】
イリア・プラティエの一週間は学生とは思えないほど忙しい。
役者という特殊な肩書を持つ彼女は、毎朝のランニングで体力作りと発声練習に始まる。
その後は、週3回の日曜学校に通う。無い日はすぐに劇団の練習に合流するし、学校があってもその後に合流する。
練習後は個人練習を積み、その後に基礎の発声練習にダンスの練習もある。
それを夜まで行い、家に戻ってご飯を食べて寝る。
大体はその予定だが、親友のセシル・ノイエスと出かけたりする時は、基本的に突発的な休日ができた時か、空いている時間ができた時だ。
そんな学生にしては激務な日常を送っているイリアだが、そこに最も神経を消費するというべき『看護』というものが入った。
人ひとりの看護とはいえ、常人は膨大な精神を消費する。体力も取られ、人によってはノイローゼになる人もいるくらいだ。
そんな大変な看護を、ただでさえ忙しく体力を消耗するイリアが、ルシアを保護した事により負うことになった。
だがそんな事情が、イリア・プラティエに適応されると思ったら大きな間違いだ。
介護という大変な作業に追われている身であるが、イリアはそれを全く苦にはしなかった。
そもそもイリアは役者という職業と、そしてその訓練を呼吸と同じように捉えており、疲れはあっても疲労困憊という言葉とは無縁であった。
そして介護が必要になった時、いつもの練習を少し早く切り上げ、自宅に住まわせた小さな男の子の為に急いで帰ったのだ。
扉を開けると、彼女のベッドに青い髪の、女の子にしか見えない男の子が小さく寝息を立てている。
保護した当初、手当の際に身体を見る機会があったのだが、当初は女の子だと思っていた。
外見年齢上、平坦な胸を見ても何の違和感もなかった。
・・・・・・私と同じで将来は絶望的かもと思ったイリアだったが、それは今はどうでもいい。
身体に付着した血液やら体液やらを拭き取ったりした際、注射痕で穴だらけになった皮膚や薬品で変色した皮膚を見て「女の子の身体になんてことを・・・」と唇を噛みしめた。
だが、股に差しかかった時点で、女性に無いものが付いている時点で、目が点になったのだ。
「なんか付いてる!?」
未来の大女優、イリア・プラティエ。
人生、生まれて初の、ゴールデンボールを見た衝撃である。
・・・例え相手が信じられない程の可愛さ、美人さを誇っていても、信じてしまう説得力がそこにあった。
「は~~~~。いいお湯ねぇ~」
チャプン、と音を鳴らして湯気が浴室に充満する。
ハーブの入浴剤を入れたお風呂は、ハーブの香りが凄い。
足を限界まで伸ばして、両腕を欲槽の縁に沿うように伸ばす。まさに広々と細い身体と細い腕。
それが伸ばしたお陰で脇も水面より少し上で丸見えになり、平均を下回る乳房はお湯の中で揺らぐ事無く浸かっている。
「・・・・・・そう・・・・・・ですね」
そんな彼女の膝の上、いや、ぶっちゃけ身体の正面、身体に圧し掛かるようにルシアも湯に浸かっていた。
お風呂に入るとの事で、稽古から帰ってきたイリアに布団から抱え上げられ、問答無用で浴室に連れ込まれたのだった。
「で、どう? こ~んな綺麗なお姉さんと一緒にお風呂って、テレる? ん?」
「・・・・・・テレるとは?」
「恥ずかしいって事よ」
「?」
「ぐっ、これは素の反応ねっ・・・・・・この年頃の男の子って恥ずかしがるはずなんだけど」
「?」
演技ではない素の反応に、演技のプロのイリアは即座に見抜いて悔しそうにする。
からかいたかったらしいが、見事に目論見は外れたようだ。
「やれやれ。君にはまだ早かったかな」
「?」
「ほら、おいで」
イリアはルシアの身体をグッと寄せる。
胸は彼の身体に押しつぶされ、彼の臀部は彼女のまたの付け根の上に来る。
「感じる? 男と女の違いを」
「・・・・・・・・・・・・」
「女の人っていうのはね、未来で、君をこうやってぎゅっと抱きしめてくれる人のことを言うのよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ルシアが辛い時に、悲しい時に、挫けそうになった時に、きっとこうしてくれる人が現れるから」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから、どれだけ人を嫌いになっても、傍にいる人を信じてあげてね」
「・・・・・・・・・・・・はい」
「ま、君なら心配いらないだろうけど、もし誰もいなかったら私がそこにいてあげるわ!」
冗談半分でイリアはそう言った。
真面目に話した事が少し恥ずかしかったからなのだが、その時、ルシアはその真っ直ぐな瞳を向けてコクンと頷いたのだ。
―――ドキっと、心臓が跳ねた。
その瞳に、彼の成長した将来の姿が見えた気がして、思わず鼓動が脈打ったのだ。
「ア、アハハハハ。ま、まあこのイリア様の身体を見たんだから、当然よね!」
「・・・・・・身体を見ると、一緒にいることになるのですか?」
「ん? ん~~~、どうだろ? でも私スタイルいいでしょ? 結構自信あるんだけど」
そう言って扇情的なポーズを取るイリア。
ルシアはその生来の天然さから、まじまじとイリアの肢体を見つめる。
染みひとつない身体。
長い手足。
ほどよくついた筋肉と決して太くない身体に、腰周り。
大きくない乳房だが、その頂点はピンク色でとても綺麗。
ルシアは記憶の片隅にある母との入浴を思い出し、女神であった母に適わないまでも、人間の中では破格の身体付きだと判断する。
彼はコクンと頷いた。
「・・・・・・はい・・・・・・キレイだと思います」
「アハハハ。そうハッキリ言われるとテレるわね」
「・・・・・・レナもそうでしたが・・・・・・女性いうのは胸が膨らんでいるのですね・・・・・・痛くないのですか?」
「痛くないわよ? まあでも、だからって無暗に女性の裸は見ないこと。そういうのはもう5年くらい経ってからね」
「?」
意味が分かっていないルシアに、イリアはケタケタと笑いながらギューっと抱きしめたのだった。
そして、こうも思った。
もしかして、情操教育的な意味で行った今回のコレ。
・・・・・・・・・・・・逆に妙な事を教えちゃったかしら、と。
「ま、いっか!」
深くは気にしないのも、イリアの大雑把な性格故だった。
後に、今回の事がとんでもない事を引き起こすのだが、それはまだ、未来のお話。
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新年早々と何書いてんだ俺・・・・・・溜まってんのか!?(笑)
とまあ、急にこんなシーンが書きたくなったので、ガキ使見ながら書きました。
部分部分でハチャメチャなところもあると思いますが、後に直します。
・・・酒が入ってて眠いので、感想返しは明日に行います。ごめんなさい。