この作品は『流されて藍蘭島』の後日譚の予告を兼ねた作品で15禁です。
なるべくやりすぎないように注意しますが、上記で述べたような表現が苦手な方は読まない方がいいかもしれません。
後日譚は士郎×あやね、行人×すずの作品で「アルカディア ×××SS」に投稿します。
よろしければ、ご覧下さい。
番外編「夢だって」
夢を見ていた。
いつも場所。藍蘭島に流れ着いて以来、ずっとお世話になっているすずの家。板張りの居間ではすず、とんかつと一緒にご飯を食べて他愛もないお喋りをして過ごす。そんないつもの場所で。
ボクは……すずを抱いていた。
「やっ……そんないきなり……! は、恥ずかしいよぉ……!!」
日が沈み、夜の静寂が支配する藍蘭島。
薄明りの月の光が二人の影を映す。影は重なり合い、熱烈に愛を求め合っていた。
「んぁっ! あぁん! んにぁああぁああああっ!!」
いつもの元気な声からは想像できないほど艶やかな『女』の声。
ぼくの下であられもない嬌声をあげるすずをなんで、こんなに愛おしいと思うんだ。
すずは大切な家族で……なんで、こんなことをしてるんだ。腰を振るのをやめるべきだ。そんな考えが脳裡によぎるが、すずの潤んだ瞳と目が合った瞬間。
そんなバカな考えは消えた。
お互いに顔を寄せて唇と唇を重ね合わせ、舌と下をからませて貪るように求め合う。よだれが垂れようが関係ない。
13歳とは思えない豊満な肢体は、白くなめらかな肌は汗に濡れて妖しく紅潮している。裸同士で睦み合いながら、やかて行人は限界を向かて。腰を振り続ける。
そして……。
「ううっ……」
布団の中で喉の渇きと激しい脱力感に襲われながら、行人は目が覚める。暑いはずだ。かたわらでは、四肢を絡みつけるようにしてすずの熱い肢体が密着している。
(ゆ、夢だったの……?)
どこから夢だったのか。ところところおぼろげだ。が確かに、すずとエッチな夢を……!
ぼんやりとした思考はやがて恐るべき現実に気づき始める。
(つっ! パ、パンツが汚れている……!!)
夢精に気づいた行人は顔を真っ青にして隣のすずを見る。
藤色の寝巻きがややはだけていたが、すやすやと眠っているすずの姿を確認して行人はほっと一息をつく。
(よかった……まだ寝ている今なら……ばれずに処理しよう)
できるだけ音をたてずにしがみ付いたすずの手足を細心に注意を払ってほどく。行人が布団から抜け出そうとした瞬間。
「にゃあああぁっ!!」
「!?」
突然のすずの悲鳴に行人はぎょっとする。
(ばれた!?)
驚愕の表情で振り返るとすずが行人と同じく真っ青な顔で呆然していた。
「す、すず……大きな声を出してどうしたの?」
「あっえっと……え、えーとね。変な夢を見てびっくりしちゃったの……」
「そ、そうか……ぼくもね」
「行人も?」
「ま、まあね……ちょ、ちょっとお腹が痛いから厠へ……」
無駄ににこにこしながらトイレに向かう行人。怪しすぎる行人の行動に違和感を覚えるが、すずの方もそれどころではない。
(……この年で、おねしょなんて……)
恥ずかして泣きそうになりがら、すずは汚れた股間を見下ろし泣きそうになる。濡れた衣類 が張りついて気持ち悪い。
それでも行人がトイレに向かった幸運を噛みしめながら、すずは考える。
(なんでおねしょなんか……やっぱり、アレかな。夢で行人が私に覆いかぶさって……)
目覚めたせいで急速に夢の記憶が薄れてきているがはっきり覚えていることがある。
どうしてか行人が険しい表情で抱きしめて。
なぜか自分から腰を動かし、変な声をあげて行人の唇を……!
「うにゃーーーーー!」
思い出したせいで……変な声が出た。
「……仕事、頑張ろっか……」
「……うん……」
天が祝福するかのような快晴の下。
かつてないテンションの低さで仕事に向かう行人とすず。身だしなみは整っているのにげっそりとした顔で全身からは妙な倦怠感がとめどなく溢れている。行く先々で村の仲間たちから心配そうに声をかけられるのをなんとか交わしつつ、もくもくと仕事をこなす行人とすず。
そこに、行人とすずと同じくらい落ち込んだ様子のあやねと遭遇する。
「……二人とも……」
「……あやね」
「「「……こんにちは……」」」
挨拶の後、ため息が漏れる。
「「「……はぁ……」」」
お互いに……調子悪そうと心配そうに見つめ合う三人。
「あやね、しんどうそうだけど大丈夫?」
「ありがとう。ちょっと夢見が悪くて……ねぇ」
「あはは。実はわたしも……」
「えっふたりとも?」
「じゃあ、行人さまも?
「……最近、稽古のしすぎかなぁ」
「もうすぐ『狩り物競争』だもんね」
「疲れているのじゃない? そういえば、疲れが『溜まっている』と男の人は白い液体を出すってお姉さまが言っていたような……」
「えっ? そうなの行人??」
「あやね。本当に、本当に……! お願いだからうちのすずに変なことを教えるのはやめてね?」
嫌な予感を察した行人があやねを睨む。あやねはおほほ~と笑いつつ、すずにアイコンタクトを送る。
(今度、教えるから後で家に来てね)
(了解!)
幼馴染の連係プレーに気づくことなく行人は危機を回避できたことに安堵する。
(……そういえば、このところ色々あってシテないなぁ……どうしようって落ち着け! 女の子の前に何を考えているのだ!?)
(……そういえば、夢の中で行人が白っぽい液体を私にかけてたような……うにゃあ! なんだか急に恥ずかしくなってきたよぅ……!?)
(……そういえば、昨日の士郎のあれってやっぱりあのこと……!? そんなの夢の中とはいえ、私にいっぱい出しているの……!?)
三者三様の想いを馳せる。お互い、顔が真っ赤になっていることに気づくことはなかった。
「じゃ、じゃあ、これからボクたちは仕事に行くから……」
「じゃあね~」
「二人とも頑張ってね」
分かれる3人。
すずはふと考える。
(そうだ。疲れが溜まっている行人のために今日は精のつくものをたくさん用意して元気を出してもらおう!)
行人の理性が爆発するその時まで、あと僅か。
その頃。
「あやねの調子が……」
「やはり、士郎様と契約したせいか」
「もしや、私の過去を『視た』のやもしれん」
「どういうことですか?」
「英霊と契約したものにはそういったことがあるのだ。戦火で焼かれた町や戦場の光景は、凄惨なものだ。そのせいでは……」
「……ここで話し合ってもだめね。今度あやねさんに確認しましょう」
「……すまない。私と契約したせいで……」
「そんなことはおっしゃらないでください!」
「そうです。皆で力を合わせてあやねさんを助けましょう!」
「ありがとう……!」
感動に打ち震える士郎。
だが数日後に、彼はエロ幽霊の烙印を押され、彼女たちから軽蔑の眼差しを向けられることになる。