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No.34335の一覧
[0] 【完結】よびだされて藍蘭島(Fate×ながさてれ藍蘭島 番外編追加)[秀八](2022/04/03 20:08)
[1] よびだされて藍蘭島 第2話「よびだして(前編)」[秀八](2020/10/01 16:07)
[2] よびだされて藍蘭島 第3話「よびだして(後編)」[秀八](2019/05/10 11:21)
[3] よびだされて藍蘭島 第4話「はなしあって」[秀八](2019/03/05 09:13)
[4] よびだされて藍蘭島 第5話「おどろいて」[秀八](2021/05/13 13:37)
[5] よびだされて藍蘭島 第6話「いろいろあって」[秀八](2019/05/23 15:02)
[6] よびだされて藍蘭島 第7話「ひどいめにあって」[秀八](2021/10/04 12:17)
[7] よびだされて藍蘭島 第8話「裁かれて」 [秀八](2019/05/10 11:28)
[8] よびだされて藍蘭島 第9話「不幸になって」[秀八](2021/10/04 12:19)
[9] よびだされて藍蘭島 第10話「夢叶って」[秀八](2023/02/09 19:43)
[10] よびだされて藍蘭島 第11話「 修行して」[秀八](2022/06/25 12:12)
[11] よびだされて藍蘭島 第12話「負けられなくって」[秀八](2019/01/26 13:20)
[12] よびだされて藍蘭島 第13話「対決して」 [秀八](2022/11/14 09:52)
[13] よびだされて藍蘭島 第14話「勝利して」[秀八](2020/12/03 13:16)
[14] よびだされて藍蘭島 第15話「化けて化かして(前編)」[秀八](2014/11/06 23:49)
[15] よびだされて藍蘭島 第16話「化けて化かして(中編)」 [秀八](2014/11/06 23:48)
[16] よびだされて藍蘭島 第17話「化けて化かして(後編)」 [秀八](2014/12/31 16:50)
[17] よびだされて藍蘭島 第18話「成長したくって(前編)」 [秀八](2014/12/31 16:42)
[18] よびだされて藍蘭島 第19話「成長したくって(後編)」 [秀八](2014/12/31 16:46)
[19] よびだされて藍蘭島 第20話「振り返って」 [秀八](2021/05/26 19:35)
[20] よびだされて藍蘭島 第21話「学んで教わって」 [秀八](2015/01/27 13:04)
[21] よびだされて藍蘭島 第22話「学びたくなくて」 [秀八](2015/03/26 23:33)
[22] よびだされて藍蘭島 第23話「謎めいて」 [秀八](2015/04/30 11:01)
[23] よびだされて藍蘭島 第24話「強くなりたくて」 [秀八](2019/05/11 12:37)
[24] よびだされて藍蘭島 第25話「つき合って」 [秀八](2015/11/16 17:31)
[25] よびだされて藍蘭島 第26話「勝ちたくって」 [秀八](2015/12/12 10:49)
[26] よびだされて藍蘭島 第27話「突然だって」[秀八](2016/09/15 17:09)
[27] よびだされて藍蘭島 最終話「星に願って」[秀八](2017/03/23 12:44)
[29] よびだされて藍蘭島 番外編「乗り越えたくって」[秀八](2016/12/13 11:16)
[30] よびだされて藍蘭島 番外編「夢だって」[秀八](2022/09/24 13:23)
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[34335] よびだされて藍蘭島 第21話「学んで教わって」
Name: 秀八◆8194e47d ID:cdc368b9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/01/27 13:04
第21話「学んで教わって」

 藍蘭島の夜は早い。
 夕焼けを空が染め上げる時間には、各自の仕事を終えて村人たちは帰宅していく。日が落ちる頃にはすで食事をすまして就寝の準備に入る。
 村の外れに暮らしているすずと行人もまたサイクルの例外ではない。
 一日の仕事を終え、疲れが出たのか布団に潜り込むと瞬く間に寝入ってしまったすずを横目で見ている行人。しばらくして完全に熟睡したことを確認するとすずが起きないよう細心の注意を払い、布団からそっと抜け出して家を出ていく。
 電灯など存在しない藍蘭島では月明かりと星空の淡い光があたりを照らしていた。行人は玄関に立て掛けてあった提灯に火を灯す。
足元を照らしながら向かった先は、海竜神社。
 夜の静寂に包まれ、厳かな雰囲気を感じながら、黙々と長い石階段を歩く。頂上まで登りきると門の前で寄りかかりながらあやねが待っていた。

「すずには気づかれなかった?」
「うん。ぐっすり寝てたよ」

 そこでふと、思い出したように頬を掻く行人。

「でも……なんかすずに悪い気がするなぁ……」
「うふふっ。何言っているの。今さら……これもすずのためでしょ?」
「うーん。そうなんだけど……」

 行人の複雑そうな顔を見ながらあやねが含み笑いする。木製の扉を開けるとそこいたのは。

「よっ。ダンナ!」
「遅かったじゃない」

 年若い女の子たちが声をかける。行人が入った神社の修練場にはすずを除く村中の若者たちが一同に集まっていた。

 藍蘭島にも学校は存在する。

 学校と言ってもカリキュラムは昔の寺小屋と同じ読み書き算盤。その他、琴や料理などの習い事。雑学、保健体育などを教えている。教師は村の若者の中で年長者のくないとまちだ。村では仕事が優先であること。そしてこの先生役のくないが気まぐれな為、月に1、2回だけ適当な日に開かれている。
 行人は改めて見渡すと座布団に座ったペンギンの姿を見つける。
人数は54名。14歳以上と未満の2クラスあり、生徒の大半は動物でウサギやきつね、くまにモルモットなどが授業を受けているのだった。日本で教育を受けてきた行人にとって動物と子供たちが会合に参加しているシュールな光景に苦笑が浮かんでしまう。
 普段、仕事をしている村の少女たちにとって一堂に会し、ワイワイとにぎやかな学校は楽しみの一つでもあるようだ。楽しそうに談笑している少女たちに壇上からくないが手を叩いて皆を静かにさせる。

「ほな、みんなそろったんので。明日の学校についての連絡をしまーす」

「「「「はーい」」」」

 少女たちの返事を聞きながら、さっきまで考えていた内容を頭の中でまとめようとしたが……三日間徹夜だったせいか考えがまとまらず、あまつさえ眠気が襲ってきたので代理に頼むことにした。

「んー……めんどいからちかげはん、あとよろしゅう……」
「……はい、ですの……」

 一瞬、戸惑ったがいつものことなので気を取り直し、すぐに引き継いで連絡を始めるくないの従姉妹・ちかげ。
トレードマークの丸渕の眼鏡の縁を触りつつ、事前に話し合っていた内容を思い出しつつ、口を開く。

「えー……明日の授業はですね……低学年の方は算数と習字、刺繍。そして、高学年に方は士郎さんの調理実習と行人さんの保健体育の実演がありますので道具を忘れないように」
「「「「はーい」」」」
「んっ? 今、何か変なこと言わなかった?」
「で、ここからが本題です。今日遅くに集まっていただいたのは他でもありません……ご存じの通り、すずちゃんが学校に来なくなってもう4ヵ月になります……!」

 行人の疑問を華麗にスルーしつつ、眼鏡の縁を触りながらちかげは力強く宣言する。

「ってなワケで!『すずちゃんの勉強ギライを直そう!!』作戦会議を開きたいと思いまよう
「「「「おーーーーーーーっ」」」」

 元気よく返事をする少女たちに交じって困惑している行人。そう、すずは大の勉強嫌いで特に数字や計算が苦手である。そのせいで学校を抜け出したり、最近では朝から行方をくらまし、サボるようになっていた。

「……どうりでボクが島に来たばかりの頃、すずが学校のことをまったくふれないと思ったよ……」
「でしょうね」

 行人は苦笑いをしながら、こそこそとあやねと小声で会話する。

「しかし、その割には将棋とかはムチャクチャ強いんだよなぁ……」
「その様子じゃ、負かされたようね。ほら、好きこそ物の上手なれって言うでしょ?」
「はいはーい。そこっ! 注目―――ですの!!」

 びっと行人たちを指差すちかげ。

「重要事項ですので、ちゃんと聞いて下さいね」
「「はい」」
「えーーーと……明日から教室がいつも使っている龍神神社から変わります」
「えっ、どうして?」

 行人の疑問にちかげは答える。

「いつも使わせていただいている神社の道場ではすずちゃん、警戒してカンづいてしまいますからね。だから誘い込みやすくする為、私の家の近くに校舎を新しく建てましたの」
「ええっ! わざわざその為に!?」
「ちゃうちゃう、前々から棟梁はんに頼んどったんや。ただ設計をちかげはんにしてもろたら時間くうてしもてな。一昨日、完成したんや」
「へー。そうだったんですか」 
「まぁ……せっかくなんで色々と凝ってしまいまして……」
「へー?」

 黒い笑みを浮かべるちかげに行人は不思議そうな顔をする。

(((((まーた何か仕込んだんだな……))))

 ちかげの表情の意味が理解できるあやねたちはまたロクでもないことが起きそうなでげんなりとした。

「てなワケですずちゃんを校舎に連れて来るまで、皆さんは学校のことを悟られないよう、いつも通りに振舞って下さい」
「「「「はーい!」」」」
「誘い込む役目は行人さん。よろしくお願いいたしますね」
「えっ! ボクが!?」
「前回、行人がすず姉ぇに学校のことをもらしたから逃げられたんじゃない」
「せやったら責任とったらなあきまへんなぁ」
「うっ……だって内緒なんて知らなかったし……それにちょっと、気が進まないなぁ。そんなに嫌がっているのに無理やりって可哀想じゃない? そっとしておいてあげたら?」
「まあ、確かにそうですけど……」

 行人の言葉に一理はあると頷くちかげ。対してくないは首を振って、行人に優しく問いかける。

「かと言って、ほっといたらいつまでもズルズルと嫌いなままになってしまいますえ。このまま勉強の楽しさを知らんでいるのも可哀想やないか?」

 くないの言葉にどちらかと言えば勉強が得意ではない行人は驚いたように考え込む。

「えっ、楽しさ? 勉強が楽しいか……そんなこと考えたこともなかったな」
「それにな、どうせ楽しむならみんな一緒がいいだよ」
「やっぱ、すずやんがいないと寂しいねん」
「そうや。むーどめーかーって言うやつや」
「そうこと」
「てなワケで頼んだわよ。行人様」

 少女たちの温かい言葉に行人は力強く頷く。

「わかった! 任せて……ん? でも、連れて来てもすずがちゃんと勉強しなきゃ意味がないよね」
「それなら私にお任せ下さい。学ぶことの楽しさ、答えを解く喜びを特別めにゅーでつきっきりで教えてあげます」
「おおっ! さすがは勉強家のちかげさんだ!」
「でも、前にすずっち。ちかげの特別めにゅーとやらを受けてしばらくのいろーぜになってたよな……」
「確実にすずの勉強嫌いに拍車をかけたわよね……」

 あやねと大工見習いのりんがこそこそとすずの勉強嫌いの原因について話し合っていると。

「それではこれで終わろうと思いますが、最後に皆さんに夜食を用意しています。士郎さん、お願いしまーーす」

 ちずるの呼びかけにひとりの青年が大きなお盆を持って部屋に入ってくる。

「さて諸君。夜分遅くに会合お疲れさまだな」

 突然現れた青年はお盆にのせたお椀と箸を少女たちに渡していく。なんだろうと見てみると香ばしい香りの漂うお茶漬け。
歓声を上げて喜ぶ少女たちを尻目にあやねが感心したように頷く。

「あら、気が利くじゃないの」
「無論だ。マスターの顔を立てるのも仮初とはいえ、従者の務めだ」
「仮初は余計よ! 見てなさい、すぐに私を認めさせてやるんだから!!」

 がぁーと叫ぶあやねを弄りながらテキパキと20名近い少女たちと行人に湯呑に入ったお茶を渡していく。その手際の良さにぽぉーと見とれている者のちらほら。そして最後にあやねの方を見て、眉をひそめる士郎。

「ちょっと、私の分は!?」
「むっ……私としたことが、一つ足りなかったか……」
「そ、そんなぁ……」

 がくっと項垂れるあやね。その間に台所に引っ込んですぐに戻ってくる。

「冗談だ。そら、君の分だけ特別だ」

 すっと差し出されたお椀。見上げると湯気とともにつんと鼻を刺激する香辛料の匂い。士郎から受け取るとそこには赤みがかったお茶漬けが。

「こ、これは……!?」
「君の好きな特製唐辛子と焦がしニンニク入りのお茶漬けだ」
「ないすよ、士郎!」

 歓喜の表情で食べ始め、女の子としてはどうかと思えるほど箸を使って豪快にかき込むとあやねはうっとりとする。至福の表情だ。

「ああ、おいひぃ……!」
「えー、本当にぃ?」

 小柄な少女が顔をしかめるながらも好奇心の負けたようで、箸を上手に使ってあやねのお茶漬けを一口食べる。この島で最年少のゆきのは味わうようにもぐもぐと咀嚼する。
 しばしの静寂の後、みるみる顔を真っ赤にして絶叫したのだった。

「か、辛いぃぃぃぃぃっ!!」
「ふっ、お子ちゃまねぇ……この辛さがたまんないのに……」

 地面にのたうち回るゆきのを尻目に恍惚の笑みを浮かべながらもりもり食べるあやねに一同はドン引きしていた。そこで口直しにお茶と自分のお茶漬けをがぶがぶ食べていたゆきのは驚いたように声を上げる。

「あれ、この梅干し、甘いよ……!」

 その言葉に他の少女たちも再度お茶漬けを食べ始める。

「あたしのは丁度いいだし加減でうまいぜっ!」
「これ、私の好きなサバだわ!」
「これ、うちの好きなたくあんの漬物が入っている!」

 自分の好みに合わせて調理していたことに気付き、お互いに食べ比べをしたり、お互いの感想を言い合ってわいわいと楽しそうに喋っている少女たちを尻目に士郎は黙々と食べ終えた食器を片付ける。そこへ先に食べ終えた行人とペンギンのペンペンも手伝う。

「感謝する」
「いえ、お茶漬けは美味しかったです。それにこういうことは……」
『オトコなら、当然のことデース』
「なるほど……さて、明日の授業はどうなることやら……」
『少なくとも、ひと騒動は起きるデース』
「あわわ……やっぱ起こりますかね……」

 少女たちの喧騒を聞きながら男たちは雑談をしつつ黙々とこなしていく。
 藍蘭島の夜は、今日も平穏に過ぎていくのであった。





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