「こんにちわ~」
「誰かと思えばあんたか」
昼飯をかっ食らっていたら、急に来客があった。
また性懲りなく慧音かと思えば、別の顔馴染み。
「飯の匂いにでも惹かれたか、ゆゆさん」
「ん~? 何か言った?」
もう頂かれていた。流石ゆゆさん、自由度マジパネェ。
「あ、美味しいわね~これ。なんて料理?」
「知らん。八雲さんが置いてってくれる食材を適当に刻んで炒めて煮込んだものだし」
男の料理なんてそんなもんだ。
「根菜類となんかの肉が主なのは分かるんだがね」
「熊~? それとも猪~?」
「恐らく妖怪の肉ではないかと、血の色がアレだったし。まあ食えば同じだ、好き嫌い良くない」
「それもそうね~」
妖怪だろうと何だろうと肉は肉だ。別に毒があるわけじゃない。
そもそも俺悪食だし、プラスチック以外なんでも食える自信がある。
「あ、そう言えばね~新月くん」
「なに?」
「ここの守護者さんに新月くんの家に行くって言ったら、貴方が外に出るよう説得して欲しいって――」
「おのれ慧音め! ゆゆさんを使おうとは不届き千万、恥ずかしいとは思わんのか!」
「そう言われたら、「ひきこもってる自分を恥ずかしいとは思わないのか!!」って返して欲しいって~」
え? ひきこもりが? 恥ずかしい?
……なんで?
「え、ひきこもって何か悪いの?」
「…………さあ~?」
うむ、ゆゆさんにも分からないのか。
じゃあ俺にも分からん。
まったく慧音め、訳の分からんことを言いやがって。
だぁから余計に婚期が遅れるのだ。
「俺は外に出ないぞ。出てたまるか、断じて!」
「別に出さないわよ~。私だって気付いたら1年ぐらいお家の中から出てなかったりするもの」
「流石ゆゆさん。無意識でそこまでやってのけるとは。だが例えゆゆさんでも幻想郷ナンバーワン引きこもりの座は渡さん!!」
「別にいらないけど……」
ならば安心だ。
ゆゆさんは何故か非難されがちな俺の数少ない味方だからな。もし彼女が生きていたら結婚申し込んでるところだ。
あ、でも式を挙げるのに外に出なきゃならんな……よし、前言撤回。
ひきこもりを一瞬でも止めるくらいなら一生独身で行くぞ俺は。
「あらあら~ふられちゃった」
「またもサトラレ現象が。幻想郷って実は覚妖怪の巣窟なのか?」
しかしそうなると、地霊殿のボスが地底に居る意味全く無いよな。
無駄骨乙。
「あれ、でも考えてみれば人間相手にもサトラレていた記憶が無きにしも非ず」
「だって新月くん分かり易いもの~」
「なんとぉっ!」
慧音とかにも度々言われていたが、やはり俺は分かり易いのか!
これはいかん。具体的に何がいかんのかいまいち不明だが、とにかくいかん。
よし、今日からは常にポーカーフェイスで通そう。
さて、トランプトランプ……
「ねえ、新月くん。別にポーカーフェイスは、ポーカーやりながらしなくてもいいのよ~?」
「……なんとぉっ!?」
新事実発覚だった。
だが、だったら何でポーカーフェイスっつうんだよ。意味分かんねえ。
「世の中理不尽共和国」
「どこの国~?」
当然国境などありません。
妖夢がゆゆさんを迎えに来るまで、一緒に食べたり話したりしてた。
……お陰で食料の在庫が残り1週間分を切ってしまった。
ヘルプ! 八雲さんヘールプ!