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No.34217の一覧
[0] 嘘の不死【東方永夜抄】[名前](2012/07/15 19:47)
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[34217] 嘘の不死【東方永夜抄】
Name: 名前◆e4a4d4a0 ID:edd9fcca
Date: 2012/07/15 19:47
【挨拶です、飛ばしたい方はどうぞ】

始めましての人です。

以前にじファンで乗っけてたのですがそこが閉鎖になるんでアルカディア様にお世
話になることにしました。

要するに初心者です。要するに転載です。

立ち居振る舞いがおかしいと思いますが、できるだけ迷惑にならないように、そして早く馴染める様にしたいと思っています

これからよろしくお願いします。

では、注意書きをば


※東方の永夜抄の二次SSです


注意書きじゃねえorzだが何を書けばよかったんだ

ゴホン(咳払い

では、もし読んでいただけるのであれば下へスクロールしてください。


◇◆◇◆◇◆◇


「ふう……」

蓬莱山輝夜は永遠亭の縁側に腰を下ろし、息を吐いた。
空には満月。中秋の名月と呼ばれる、ただの満月。
輝夜は、先ほど藤原妹紅と竹林で死闘を繰り広げてきたばかりであり、そのせいで着ていた服は炎に焼けてしまった。
輝夜自身は、自分のほうが優勢に事(こと)を終えたと思っているのであまり気にしてはいないが。(妹紅のほうも同じ事を考えていたりするが、余談である)

「あ、姫様こっちにいましたか。ご自分の部屋にいると思ってたので……遅くなりました、着替えです」
「ん、ありがと、鈴仙(レイセン)」
「……いくら永遠亭は安全だからって、着物一枚羽織っただけで縁側にいるのはやめてください。品格とか、常識とか……そういうものが疑われますよ」
「…………」

輝夜は鈴仙と呼んだウサギ耳のついた少女の言葉を無視して着替え始めた。
鈴仙・優曇華院・イナバ、輝夜と同郷の少女である。

「姫様、縁側で何して……ああ、月を見てたんですか?」
「……ええ」

幻想郷で見える月は、外の世界の月と違い、幻のようなものである。違いは、月人が住んでいないこと。
輝夜を追いかけるものがいないこと。
彼女は月の世界で禁忌とされる不死の薬を飲み、流刑として裁かれ、地上に配流された。
地球は、温かくて良いところだった、と輝夜は記憶している。
自分を拾ってくれたおじいさん、優しく育ててくれたおばあさん。誠実に求婚を望んできた男たち。無上の権力を持ちながらも、無理に迫らなかった帝(みかど)。
輝夜の地上での記憶に悪人はいない。
現在の輝夜にとって、悪は月人である。
地上に流刑に決定したのにそれを覆し、不死の薬の研究試料にしようと連れ戻しに来た。そのとき一緒に輝夜の元へ来た永琳の手助けによって月人を出し抜いて月人から逃れ、追っ手をかわすために幻想郷へ逃げ込んだ。
助けてくれた永琳には感謝している。受け入れてくれた幻想郷の管理者、八雲紫にも感謝している。どちらにも、感謝してもしきれないくらいだ。
けれど……
今の自分には生きがいが無い。(外の世界ではそういう者を、にいと、というらしい)
いや、一つだけ。妹紅と殺し合いをすることだ。
彼女は自分が求婚を断った男のうち一人の娘で、輝夜が求婚を断ったせいで父は、というふうに輝夜を恨んでいる。いや、恨んでいた。
彼女も不死の薬を飲んだ。帝に渡したのが地上に唯一の不死の薬だから、どうにかしてそれを飲んだのだろうと輝夜は思っている。
輝夜が妹紅と会ったとき、彼女は生きることに倦んでいた。宿敵(輝夜)をずっと見つけられずに、これからもそのように生きていくことに悩んでいた。
一方、輝夜も、目的もなく生きることに倦んでいた。
そんな二人だったから、不死である身では殺し合いが生きがいになるのも不思議ではなかったかもしれない。
殺し合えることを喜び、
殺し合うために生きる。
もちろんそれは痛い。叫び声をあげたくなるほど痛い。
しかし、生きがい(殺し合い)が無いと、心が干からびていく。干からび、ひび割れ、終いには崩れてしまう――――――

「姫様?聞いてます?そういうわけで服も安くないので、もう妹紅さんと死闘するなとは言いません、でも服のことは気を付けてくださいよ?」

物思いをしているうちに、鈴仙の声もろくに耳に入ってこなかったようだ。
それに生返事をすると、鈴仙は行ってしまった。寝るには少し早い時間だし、永琳から出された課題をしに自分の部屋へ行ったのだろう。
去り際に月を見て、

「綿月様……」

と、か細い声で言ったのが輝夜には聞こえた。決して空耳ではないだろう、切実な声だった。
彼女と同郷の輝夜だが、決して内に抱く感情は同じではないのだ―――それに今更ながら気付いて、寂寥を感じる。
足音がして、振り返ると永琳がいた。
八意永琳。蓬莱山輝夜の一番の親友にして一番の恩人。
不死の薬を作った張本人でもあり、薬について知っている事実とその立場を利用して、本来は流刑では済まなかったのを助けてくれた。
幻想郷という逃げ場を見つけてくれた。
永遠亭という住まいを作ってくれた。
いつも蓬莱山輝夜という人間のそばにいた。
それが輝夜にとっての八意永琳。

「ウドンゲが、衣料代が高くて困るって、悲鳴を上げていたわよ?」

非難するでもなく、面白がるでもなく、気負わずに話す。それが永琳の話し方だった。

「……私の前ではそんな様子、微塵も見せなかったわよ」
「心中の全てを人にさらけ出すなんて、子供のすること。私も貴女も何歳になったことか。同じようにウドンゲも子供ではないわ」

隣、いい? ときいてきたので無言で右に避ける。左に永琳が座る。

「同じように、貴女に見せて私に見せない感情もあるのでしょう。それで、なんて言ったの?」

鈴仙が輝夜に何を言ったか、をきいているのだろう。

「何も言わなかったわよ。ただ、帰り際に『綿月様』ですって」
「そう……」

目をやれば、永琳も月を見上げている。
鈴仙も、永琳も、私は月を見るためにここにいるんじゃないのに……
そのまま数分が経ち、唐突に永琳が聞いてきた。

「悩むなんて、貴女らしくないわ、輝夜。私に言ってみなさい」
「別に、悩んでなんか……」
「いいえ、今の貴女は悩んでいる。いいから、言ってみなさいな」

永琳も、輝夜も、視線を交えない。永琳は月に、輝夜は外の竹林に視線を注いでいる。

「私は、妹紅と殺し合いをしている……それが悪いことだとは思ってない。もう、それは生きがいみたいなものだから」
「医者に向かって大層な物言いね。まあ、精神医としてはそれを止めるべきだとは、今の私は思っていないけれど」
「でも――――――」

輝夜は言葉を切る。

「永琳、不死の薬の作り方を言ってみて」
「長久命の薬と超強化肉体回復薬。あとは副作用を抑えるいくつかの薬の配合」

すらすらと暗誦する永琳。医者である前に薬師である彼女以上に新薬の創造に長けたものはいない。

「私は薬師じゃない。でも、月であなたの手伝いができないものかと、勉強に励んだ時期があったのよ」
「結局三日坊主で終わった、あれね」

予想よりしっかり覚えられていて、輝夜は苦笑する。

「そう、三日だったか、四日だったか、薬の勉強をしてみた時期。その時に見つけたのが不死の薬。禁忌だった、でもそれ以上に私はその魅力に取り付かれた。『不死』の薬ではなく、『禁忌』の薬に」
「そして、地上に降りることになった……」

いろいろと端折(はしょ)った言葉に輝夜はまた苦笑する。

「でも、私は分かってる。不死の薬は夢の薬なんかじゃないって事」
「…………」

永琳は答えない。

「ねえ永琳。妹紅はいずれ……|死ぬでしょ?(・・・・・・)」
「…………」

永琳は答えない。
また、数分が経った。

「……長久命の薬による寿命の大幅な長久化。その伸びた寿命を消費して強化された肉体回復薬は効果を発揮する」
「…………」
「私たち月人は寿命が無い。いえ、無いわけではないけど、それに近い。そんな月人が長久命の薬を飲んでも目立った効果は無い。けれど、傷付くたびに寿命を消費して傷を治す強化された肉体回復薬が体を直すなら、月人といえども寿命は」
「もういいわ」
「寿命は有限となる。ならばあらかじめ寿命を伸ばしておけばプラスマイナスゼロ、いえかけてわって元通り、というべきなのかしら。それが月人に合った不老不死の」
「もういい」
「不老不死の薬のメカニズム。でも地上の」
「もういいって言ってるでしょ!」

輝夜が叫ぶ。それは永琳に対して、という叫びではなく、もっと悲痛な響きを持っていた。

「……不老不死の薬は月人のからだに合わせて作られたもの。分かってる――――――分かってるわよ、そんなこと。だからあの時帝に渡しても何の問題も無かった。ちょっとの間傷の直りが早くなるだけで、不老不死のように寿命が延びるだけで、――――――放って置けば普通に死ぬ、嘘の、不死の薬」
「何も言わないわ」
「だから、妹紅があんなにあの薬に適応していることが奇跡みたいなもの。体質的に薬が馴染みやすい体だとしても、偶然とは思えないほど、運命だとしか思えないほど、適応しすぎ」

輝夜はいったん言葉を切る。

「だから私は怖い。いつ妹紅の体が寿命を消費しつくしてしまうか。いつか適応しすぎた妹紅の体に異変が起こるんじゃないか。私と、殺しあえなくなってしまうんじゃないか……」
「…………」
「わたし、月にいても居場所がなかった。永琳がいてくれなかったら、わたしは長い寿命のほとんどを使わなかったかもしれない。地上に降りてよかった。おじいさんもおばあさんも、いい人たちだった。求婚してきた男たちも、悪い人はいなかった。幻想郷に来てから、やっと普通の生活を見つけた。あわただしくなく、平和で、穏やかで。妹紅がいた。人生で初めて、生きがいを見つけた。でも……」

輝夜が永琳に向き直る。目には、秋の雨粒より大きい雫。

「わたし、失いたくない……! 妹紅が死ぬかもしれない、今すぐかもしれない、ずっと後かもしれない、でも、確実に、絶対に、妹紅は、妹紅は……!」
「輝夜……」

永琳は輝夜の頭を抱きかかえた。輝夜は永琳の胸の中で声を押し殺して泣いた。
この蓬莱山輝夜という少女は、精神的にとても弱い。精神医として永琳が見た中で精神が最も強いのは博霊霊夢である。精神は単純に比較できないものだともちろん分かっているが、霊夢は輝夜の数十倍精神が強い。実年齢では輝夜のほうが百倍は勝っているのに。それどころか、診療所を訪れる人里からの人間よりも精神は弱いかもしれないと永琳は思っている。
いっそう力をこめて輝夜を抱く。
月を仰ぐ永琳の目に、幻想郷の月が映る。
満月は、いずれ欠ける。


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