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No.34098の一覧
[0] とある盗掘屋の話[Legeres](2012/07/17 14:57)
[1] 第二話[Legeres](2012/07/17 14:57)
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[34098] とある盗掘屋の話
Name: Legeres◆647cadf5 ID:69e8f726 次を表示する
Date: 2012/07/17 14:57
 アヴァロン……お伽話に出て来る島の名前だ。

 英雄達が眠る島。
 その他にも美しいリンゴが目を引く楽園とも言われてる。
 だが、一番有名なエピソードと言えば、
とある王が眠る地であると言う事だ……

 俺は、そんな空想上の島が実在すると言うのを偶々、ロン
ドンの古書市場で見付けたどれぐらい昔に書かれたのか……
 想像も付かないくらい古くてボロボロで、触っただけで
崩れ果てそうなラテン語で書かれた日記帳から知った。
 そこで俺はとう……ゲフンゲフン。
 アヴァロンからアーサー王の墓を始とした金目の
調度品を発掘する事に決めた。


 英国領ロンドン。チャイナタウンから500m程離れた
ホテル『チャシャー』 そこのシングルルームは安いとは言え、
シーツは綺麗に整えられていたし、室内は塵や埃と
いったゴミが一切無く快適な部屋であった。

 そんなチャシャーホテルに宿泊する東洋人の男
『緒方圭一』 はベッドから起き上がると、ボサボサに
なった髪をガシガシと乱暴に掻くと、背筋をピンと伸ばし、
大きな口を開けて欠伸をした。欠伸をすると、目から涙が
流れて来るが、それを手で拭う。
 彼は寝覚めの一服を味わおうと、椅子にだらしなく掛かっ
たジーンズのポケットから白地の中心に赤い円が置かれ、中に
『LUCKY STRIKE』 と書かれた煙草の箱とオイルライターを取り出す。
 煙草の紙箱を上下に振り、開け口から出てきた茶色いフィルターが
付いた紙巻き煙草を一本取り出し、それを銜える。そのまま、
オイルライターの上部の蓋に右手の親指を掛けて中のドラムを露にし、
そのままドラムを親指で回そうとした所で壁に貼られたマークに
目を留めた。

 『NO SMOKING!!』

 寝ぼけ眼で見た『禁煙』 と言う文字に気が付いた彼は、
苛つきを込めて大きく舌打ちをしてから銜えた煙草を箱の中
に戻した。それから、ベタつく汗の嫌悪感と重度の喫煙者特有の
ニコチン中毒の症状である苛つきを僅かでも解消する為にシャワー
ルームに入った……
 シャワールームに入った彼は、パンツやシャツと言った
着てる物を脱いで適当に置くと、自分の頭部よりも高い位置に
設置されたシャワーヘッドの前に立った。そのままお湯の
バルブハンドルを回すと、彼の頭上に温かい雫が大量に降り注いで
来たのだった。

 それから20分後、ゆっくりと汗を流し、最後には冷水を浴びて
眠気を完全に醒まし、頭をスッキリさせた彼は身体をバスタオルで
拭き取ると、パンツやシャツと言った下着を履いてからヨレヨレに
なったシーツが乗っかったベッドに座り込んだ。そのままスツールの上に
置かれたプラスチック製のラミネートシートに包まれた今にも崩れそうな
羊皮紙に書かれたラテン語を読み始めた。

 アルトリウスこと彼の騎士王であるアーサーは、甥である
モルドレッドにクーデターを起こされてガリア(当時のフランス、
ドイツ、オランダやベルギー一帯の事) から急いで帰る羽目になった。
 で、クーデターを起こした自身の甥とその兵達と言った
反逆者を殲滅する事に成功したものの……
 アーサー王自身は重症を負ってしまった。

 アーサー王を治療する為に従兄弟にして
コーンウォール公カドルの実子であるコンスタンティヌス3世は、
彼をアヴァロンへと送った。その後はコンスタンティヌス3世が
ブリテンを取り仕切る様になり、実質上の王となると
言うのが歴史として残った訳だ……

 これを記した人物の名前は
損傷が酷くて読み取れなかったが、修道士の様だ……
 これによると、彼はアルトリウスとコンスタンティヌス3世が
随伴させた騎士達と共に出発したコーンウォールを
起点としてアヴァロンへ向けて出発した。
 これによると、コーンウォールからローマ帝国と協力関係に
あったアイルランドを南から迂回する航路でアイルランドを避け、
そのまま西へと向かった。それを含め、アヴァロンに着く迄に
掛かった日数は約1週間程……
 現代だと、多分1日か2日で到着するな……
当時の船は櫂と帆の両方を使うカヌーの怪物みたいな船が主流だったし、
天候による悪影響もあっただろうしな。今の海図と日記に残された
星座や星の位置を調べれば島の大まかな位置が解る。筈だ……
 
 だが……
 其処まで行く宛が無い。
 船のチャーターに機材、燃料費……全部挙げてたらキリが無い。
盗掘するにしても金が必要だ。どうやって費用を得るか……?
 それに下手すればアイルランド海軍かフランス海軍、
それかスペイン海軍と言った何れかの沿岸警備隊に拿捕
されて捕まる可能性が大だ。
 あの海域は、軍艦と貨物船、タンカーが24時間年中無休で
うろついてる……
大戦時代の大西洋で暴れまわったナチのUボートの群れも
真っ青なくらいに。

 青年は資金不足も含めて先行きが完全に真っ暗闇な事に
頭を抱えながら時計を見ると、時計の短針が10の位置を。
長針が3の位置を過ぎてる事に今更ながら知った。
彼は遅めの朝食を食べに行く為にジーンズやジャケットを
羽織って部屋を出るのだった。

 取り敢えず、朝飯を食べに行こう……
腹減ってる時に考え事しても纏まる物も纏まらないしな。

 40分後……

 ホテルの禁煙区域を出て直ぐに煙草を吸った彼は、
ジーンズのポケットに両手を入れ観光客や地元の華僑
やイギリス人で賑わうチャイナタウン内を歩いて散策して居た。

 時折、見掛ける屋台では英国名物であるフィッシュ&チップス
と呼ばれるタラとスライスされたジャガイモが揚げられて
醸し出される香ばしい香りや、最近流行りのトルコの肉料理ケバブの
香りに鼻を動かし匂いを楽しんでると、花が詰まったバスケットを持った
少女が近付いて来る。

 「お兄さん、お花買わない?」

 「I have not money. (金持ってねえよ)」

 彼はそそくさと少女から離れると、目的の安食堂に向かうのだった。
麺と大きく作られた看板が目立つレストラン
『Wong Kei』 はピカデリーサーカス駅から比較的近い安食堂で
恐らく、英国一サービスの悪い店であると彼は思って居た。

 何せ、思いっ切り「Muther Fucker!!」 と、悪態を吐かれた事も
有れば、何を食べようか迷ってたらキレられた上に、黒焦げの具材が
入ってたと文句を言うと料理を片付けられてから放置された。
もう一度声を掛けたら「忙しい」 と逆に怒られた……
 終いには、広東語か北京語で喋りながら他の客を勝手に相席させる
……他の店だったら考えられない対応だぞ?
 日本でやったら3ヶ月で客足無くって閉店に追い遣られるぞ。

 でも、不思議な事に潰れない。でもって、そんな嫌な感じはしない。
ロンドンチャイナタウンの謎だな……俺もあの店の
サディスティックな対応に慣れたのか、それともあの無愛想な店員に
調教されたのかは解らないが、彼処までハッキリと悪態吐きながら
応対して来なかったら逆に恐怖を覚えるかも知れない……
 
 そう思いながら彼は口に銜えたままの短くなった煙草をゴミ箱に
捨ててから、ワン・ケイの硝子戸を潜って何時もの様に悪態雑じりの席指定を受けようとした。だが、何時もは
無愛想な上に、仏頂面で悪態を吐きまくる店員が笑顔で応対して来た。

 「いらっしゃいませ。ワン・ケイにようこそ!!
  お客様、地階の席にお座り願えませんか?」

 嘘だろ?
 この店の店員が客に笑顔見せた!?
 しかも、丁寧な言葉遣いを使ってる……
完璧なキングス・イングリッシュだったぞ?
 アイアンメイデンじゃないけど、絶滅2分前の前兆か……? 

 彼は和やかな応対に対して戸惑いながらも、ウェイトレスの男性に
言われるままに地階の席に座ると、陶器製の茶器に注がれたジャスミン茶の
芳しい薫りを楽しみつつ、一口飲んでから何時も注文する品を頼んだ。
 料理が来る迄の間、彼は小さなノートを取り出して大まかに
纏めた内容を確認して行く。

 単純に予想すれば、コンスタンティヌス3世がモルドレッドを
唆してクーデターを起こさせてアーサー王への脅威として降り
掛かる様に仕向けた。予想通りか、計画と違うのかは解らないけど、
コンスタンティヌス3世はアーサー王を玉座から引き摺り下ろす事に
成功してる……
 後は、重傷患者のアーサー王にアヴァロンで治療に専念させる為に
王権を譲り渡させれば周囲の反発は少なめで自分が王に成れるって訳
なのかな? 証拠つうか証明する方法なんざ無いけど……
つうか、どうでも良いな。

 だとすると……アーサー王は消されてるかも知れない訳だ……
 その場合……アヴァロンが実在してるとしてもアーサー王の
調度品や遺体は見付からない。でもって、あの日記は贋作だと
言う事になる……

 うーん、サッパリだ……お手上げ。
 正直、言って手掛かりが少なすぎる……
 まるで、ピースが大量に欠けたパズルを組み立てて何が描かれてるか
当てろって言われた気分だ。パズルって言うよりは、ピクロスか?
 どちらにしろ、欠けたピースを探すのに時間と労力を割かなきゃ
いけない訳だ……さて、どうするか?

 「お待たせしましたぁ!」

 Wong Keiと書かれた白いシャツを着た女性ウェイトレスが、
圭一の注文した鶏とトウモロコシのスープと5本の春巻き、主食である
大盛りの炒飯が来ると、彼はノートをポケットにしまう。入れ替わりに
レンゲを手に取り、スープを一口飲み、ボリューム満点の炒飯にレンゲを
挿して掬い、朝食を始めるのだった。

 炒飯を半分ほど食べ、咀嚼する度に春巻きのパリパリとした表面の
歯応えと内部の柔らかな感触を楽しみ、飲み込む度に胃が満たされて
行く感覚を味わって行く。

 30分もすれば器に盛られた炒飯も春巻きも平らげた圭一は、
ジャスミン茶をグビグビと飲み干すと、テーブルに置かれたポットから
お替りを注いだ。それからは、時間が時間なのか、疎らな客足なのを
良い事にゆっくりと茶を飲みながらアヴァロンを探す為のプランを
練って行った。

 一度、実際に行ってみて大まかな下見をした方が良いな。で、
潜ってみて何か見付かれば本格的にお仕事開始だな。でも、今は……

 彼にニッコリと微笑みながらも、
目付きが鋭く『テメエ、何時までノンビリしてんだ?
       食い終わったら、とっとと消えやがれ』と目で男性ウェイトレスが語りかけて居た。

 やっぱ、この店は悪態吐いて、サービス最悪な方が落ち着くな……
 サービス良いWong KeiなんてWong Keiじゃない! 別の何かだ……

 圭一はやっぱり、前みたく『サービス最悪な店』
Wong Keiの方が良いと思いながら席を立ち、入り口にあるレジで
会計を済ませた。

 彼はレジを操作する20代くらいの若い女性ウェイトレスと
デートしたいと思った彼は、余分な代金を払う。

 「これは君へのチップ」

 彼は、自分がこの店で払うべき額とほぼ同じくらいの
価値がある10ポンド紙幣を彼女に渡すと、そのまま店を出た。

 店を出た客を見送り、受け取った10ポンド紙幣の裏を見ると、
そこには電話番号が書かれており、番号の脇には「Call me!」と書かれて
居たが、ウェイトレスは何も無かったかの様にポケットに
紙幣を突っ込んで入ってきた客に挨拶を行った。



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